★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇夭折した伝説の天才ピアニスト ディヌ・リパッティのショパン:ワルツ集(全14曲)

2022-09-19 09:46:09 | 器楽曲(ピアノ)


ショパン:ワルツ集(全14曲)

ピアノ:ディヌ・リパッティ

発売:1962年9月

LP:日本コロムビア OL‐3101

 ショパンは、生涯で18曲のワルツを作曲したと言われるが、生前に出版されたのはわずか8曲であり、そして現在、通常演奏されるのは14曲である。当時、ワルツは大衆音楽としてウィーンなどで盛んに演奏され、ヨハン・シュトラウスなどがもて囃されていた。そんな大衆音楽としてのワルツに対して反発したのがショパンなのである。ショパンのワルツは、貴族趣味に貫かれてはいるが、時には舞踏のための音楽というより、精神的な面により重点が置かれた音楽ということにその存在意義がある。このLPレコードで、このショパン:ワルツ集を弾いているのは、夭折した天才ピアニストのディヌ・リパッティ(1917年―1950年)である。ディヌ・リパッティは、リサイタルでショパン:ワルツ集を弾くときは、作曲年代順ではなく、彼自身が設定した、より効果が上ると彼自身が信じていた順序で行ったそうだが、このLPレコードでも独自の順序で14曲を録音している。そして、ショパンが目指した精神的に昇華したワルツの演奏を、ものの見事に再現することに成功している。これは、師のアルフレッド・コルトー(1877年―1962年)をも越える演奏として、クラシック音楽録音史上に不滅の光を現在に至るまで投げ掛けている録音と言っても過言ではない。ディヌ・リパッティの手に掛かると、どのワルツも時代を超えて、その1曲1曲がリスナーに訴え掛けてくるかのように聴こえる。ディヌ・リパッティは、ルーマニアのブカレストに生まれたが、幼い時から病弱であったという。大ピアニストのコルトーにピアノの教えを受ける。リッパティのピアノは透明な音色をもち、その上に立って純粋な音楽を奏でるのである。そして曲全体を歌わせるがごとく弾き進むことに演奏の大きな特徴がある。その孤高なまでに洗練されたピアニズムは、他に例を見ることはできない。ショパンやモーツァルトなどを得意としたが、特にショパンのワルツ集は、師のコルトーをも上回り、現在でも絶品とされている録音である。また、フランスのナディア・ブーランジェ(1887年―1979年)などに作曲を学び、その成果である自作品を演奏した自作自演の録音も遺している。残念なことに白血病により、33歳の若さでジュネーヴ郊外でこの世を去ってしまった。このLPレコードのショパン:ワルツ集のほか、ショパン:ピアノソナタ第3番、グリーグ:ピアノ協奏曲、シューマン:ピアノ協奏曲など、演奏そのものだけをとれば、現在でもそれらの曲の演奏の最上位に位置するほどの名録音を遺している。(LPC)


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1 コメント

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Unknown (sucala)
2011-11-04 11:01:50
はじめまして。
リパッティーのワルツを検索しておりましたら、こちらにたどり着きました。
トラックバックと思ったのですが、30日前の記事でしたね。失礼しました。
本当にリパッティー、そしてこのワルツは素晴らしいですね。
またお邪魔しますので宜しくお願いします。
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