本を購入する時は2~3冊まとめて購入することが多いのですが、そのうち特に気に入ってしまった1冊を一番最初に読んでしまった暁には、その世界に浸っていたくて何度も読み返したりするものだから、すっかり他の本のことを忘れてしまって、そのうち読み気もそがれて我が家には読んでいない本が山ほどあります。(汗)
本作は、『ルート225』でその演技にすっかり魅せられてしまった多部未華子が主演する最新作の原作であること、しかも「第2回本屋大賞」を受賞した作品ということで読んだのですが、評判通り、本当に素晴らしかった。。
3回読み返しましたが(今回またサ~ッと流し読みしたので4回か)、たぶんまた少ししたら読みます、何度か、くりかえし。。
しばらくはこんなに没頭する本は出て来ないかも。
あまりに没頭して1回目はあっという間に読んでしまったのですが、読みながら残り少なくなるページの厚みを見つめて、なんだか淋しい気持ちになったのもひさしぶりです。
読んでいる間ずっと感じていた幸福感。
いつまでもいつまでも浸っていたい世界観。。
朝の8時から翌朝までの一昼夜、80キロの道程を夜を徹してただひたすら歩き通す「歩行祭」。。
生徒たちは、団体行動と夜という特別なテンションを借りて、親しい友人といつもならできない深い話をしたり、好きな人に気持ちを打ち明けたりして一夜を過ごす。
そんな中、高校生活最後の3年の歩行祭で、貴子はある秘密の賭けをしていた…
それはこの歩行祭の間に、まだ一度も話したことのないクラスメートの融とたった一言でいい、話しかけて、返事をしてもらうこと。
融は実は貴子と異母兄弟で、彼女はずっと避けられているのだ。
この2人の気持ちの変遷を軸に、そのたった一夜の出来事を、それもただずっと歩いているだけで特別な事件が起きるわけでもない中で、主人公たちの秘めたる心の葛藤を通して描いて、文中の言葉でいう「青春の揺らぎや、煌めきや、若さの影」といったものをきゅんきゅんと感じさせてくれるのです。
ただ歩いているだけなのに、どうしてこんなに引き込まれるんだろう?
彼らの高揚感や疲労感、達成感まで、こちらも一緒にその空気に触れているような気になってワクワクドキドキしてしまう・・・こんなふうに表現できる恩田陸さんの筆力にはただただ感嘆。
とにかく主人公2人と、彼らを取り巻く友人たちの個性豊かな人物描写がリアルで本当に素晴らしいのです!
お互いに親友にも秘密にしているこの事実、でも気になってしかたがないお互いの存在、2人の間に流れる共犯者のような緊張感。
そんな2人を級友たちは「好き合っている」と勘違いして、あれこれおせっかいを焼いたりしながらも、みんながみんな相手を思いやり、濃やかな気遣いで相手の気持ちに注意深く寄り添っている。
丁寧に描かれた彼らの気持ちが、切ないほどに伝わってきて、それを感じられる自分がまた嬉しくなるのです。
それから文章やセリフの中にもドキドキするフレーズがいっぱいです。
「当たり前のようにやっていたことが、ある日を境に当たり前でなくなる。こんなふうにして、二度としない行為や、二度と足を踏み入れない場所が、いつのまにか自分の後ろに積み重なっていくのだ」
「大人と子供、日常と非日常、現実と虚構。歩行祭は、そういう境界線の上を落ちないように歩いて行く行事」
「もう一生のうちで、二度とこの場所に座って、このアングルからこの景色を眺めることなんてないんだな」etc...
時間も、場所も、連続して繋がっている。
そんな当たり前のことをあらためて認識させられ、その一瞬一瞬を積み重ねているからこそ現在(いま)があるのだと、どの一瞬もかけがえがないのだと教えてくれる。
なんだかうまく言えませんが、あ、わかる、っていう感じ。
そしてこの物語がこれほど心の琴線に響くのは、自分はもう決してあの「時間」には戻れないのだけれど、でも確かに通過したあの頃に想いを馳せられるからなのかもしれません。
わたしは女子高だったし、全然こんな素敵な出来事なんてなかったけれど、それでもいろんなことにドキドキしたあの頃がやっぱり懐かしい。
1回だけ過去に戻れるのなら、やっぱり大人になってからでは決して同じドキドキは味わえない、いろんな境界線上にいたあの頃に戻って、もう一度ドキドキしてみたい。
そして、決してたやすくはないだろう彼らのこれからの時間に想像を膨らませることができるのも、静かな余韻が感じられて、とても爽やかでノスタルジックな感慨に浸れる読後感でした。
ぜひぜひ、いろんな年代に人に読んでほしい小説です。
ルールーのお気に入り度
★★★★★(※5段階評価5)
※こういうの大好きです♪
文庫化されたので、ぜひぜひ!
←ひっそりと参加中♪_(-_-)_ペコリ
★続けて映画レビューもどうぞ→コチラ
おまけ
あとわたし的にツボだったのが、融の親友の忍がタイミングの話をした時に、例えとして
「もっと子供の頃に『ナルニア国ものがたり』を読んでいれば、今とは違った自分がいたかも」
みたいな話をするんですが、わたしは原作は読んでないんですが、この映画の評価はものすごく低くて、嗚呼、わたしももしかしたら小学生の頃このお話に出逢っていたら、もっと違った感想だったのかも?なんて思ったりしてしまいました。(^^;;;
本作は、『ルート225』でその演技にすっかり魅せられてしまった多部未華子が主演する最新作の原作であること、しかも「第2回本屋大賞」を受賞した作品ということで読んだのですが、評判通り、本当に素晴らしかった。。
3回読み返しましたが(今回またサ~ッと流し読みしたので4回か)、たぶんまた少ししたら読みます、何度か、くりかえし。。
しばらくはこんなに没頭する本は出て来ないかも。
あまりに没頭して1回目はあっという間に読んでしまったのですが、読みながら残り少なくなるページの厚みを見つめて、なんだか淋しい気持ちになったのもひさしぶりです。
読んでいる間ずっと感じていた幸福感。
いつまでもいつまでも浸っていたい世界観。。
朝の8時から翌朝までの一昼夜、80キロの道程を夜を徹してただひたすら歩き通す「歩行祭」。。
生徒たちは、団体行動と夜という特別なテンションを借りて、親しい友人といつもならできない深い話をしたり、好きな人に気持ちを打ち明けたりして一夜を過ごす。
そんな中、高校生活最後の3年の歩行祭で、貴子はある秘密の賭けをしていた…
それはこの歩行祭の間に、まだ一度も話したことのないクラスメートの融とたった一言でいい、話しかけて、返事をしてもらうこと。
融は実は貴子と異母兄弟で、彼女はずっと避けられているのだ。
この2人の気持ちの変遷を軸に、そのたった一夜の出来事を、それもただずっと歩いているだけで特別な事件が起きるわけでもない中で、主人公たちの秘めたる心の葛藤を通して描いて、文中の言葉でいう「青春の揺らぎや、煌めきや、若さの影」といったものをきゅんきゅんと感じさせてくれるのです。
ただ歩いているだけなのに、どうしてこんなに引き込まれるんだろう?
彼らの高揚感や疲労感、達成感まで、こちらも一緒にその空気に触れているような気になってワクワクドキドキしてしまう・・・こんなふうに表現できる恩田陸さんの筆力にはただただ感嘆。
とにかく主人公2人と、彼らを取り巻く友人たちの個性豊かな人物描写がリアルで本当に素晴らしいのです!
お互いに親友にも秘密にしているこの事実、でも気になってしかたがないお互いの存在、2人の間に流れる共犯者のような緊張感。
そんな2人を級友たちは「好き合っている」と勘違いして、あれこれおせっかいを焼いたりしながらも、みんながみんな相手を思いやり、濃やかな気遣いで相手の気持ちに注意深く寄り添っている。
丁寧に描かれた彼らの気持ちが、切ないほどに伝わってきて、それを感じられる自分がまた嬉しくなるのです。
それから文章やセリフの中にもドキドキするフレーズがいっぱいです。
「当たり前のようにやっていたことが、ある日を境に当たり前でなくなる。こんなふうにして、二度としない行為や、二度と足を踏み入れない場所が、いつのまにか自分の後ろに積み重なっていくのだ」
「大人と子供、日常と非日常、現実と虚構。歩行祭は、そういう境界線の上を落ちないように歩いて行く行事」
「もう一生のうちで、二度とこの場所に座って、このアングルからこの景色を眺めることなんてないんだな」etc...
時間も、場所も、連続して繋がっている。
そんな当たり前のことをあらためて認識させられ、その一瞬一瞬を積み重ねているからこそ現在(いま)があるのだと、どの一瞬もかけがえがないのだと教えてくれる。
なんだかうまく言えませんが、あ、わかる、っていう感じ。
そしてこの物語がこれほど心の琴線に響くのは、自分はもう決してあの「時間」には戻れないのだけれど、でも確かに通過したあの頃に想いを馳せられるからなのかもしれません。
わたしは女子高だったし、全然こんな素敵な出来事なんてなかったけれど、それでもいろんなことにドキドキしたあの頃がやっぱり懐かしい。
1回だけ過去に戻れるのなら、やっぱり大人になってからでは決して同じドキドキは味わえない、いろんな境界線上にいたあの頃に戻って、もう一度ドキドキしてみたい。
そして、決してたやすくはないだろう彼らのこれからの時間に想像を膨らませることができるのも、静かな余韻が感じられて、とても爽やかでノスタルジックな感慨に浸れる読後感でした。
ぜひぜひ、いろんな年代に人に読んでほしい小説です。
ルールーのお気に入り度
★★★★★(※5段階評価5)
※こういうの大好きです♪
文庫化されたので、ぜひぜひ!
←ひっそりと参加中♪_(-_-)_ペコリ
★続けて映画レビューもどうぞ→コチラ
おまけ
あとわたし的にツボだったのが、融の親友の忍がタイミングの話をした時に、例えとして
「もっと子供の頃に『ナルニア国ものがたり』を読んでいれば、今とは違った自分がいたかも」
みたいな話をするんですが、わたしは原作は読んでないんですが、この映画の評価はものすごく低くて、嗚呼、わたしももしかしたら小学生の頃このお話に出逢っていたら、もっと違った感想だったのかも?なんて思ったりしてしまいました。(^^;;;
あと、未だに漫画好きで旦那に「そろそろ止めろ」と言われてるけど止められず、本棚にワタシの本(主に漫画)が浸出している事を責められ・・・
あぁ、何も考えないで思い切り本を読みたい
何度か、本屋さんで購入をためらっている本の1冊ですが、そんなにイイなら読んでみようかな・・・
最近、ようやく「セカチュー」の原作を読んだけど、映画とドラマに影響されてるワタシは原作に違和感を感じてしまいました
読んでから観る、観てから読む、読んでも観ない、観ても読まない・・・
その時の自分の捉え方なんだろうけど・・・
殿ちゃんに読み聞かせる絵本でもきっと良い本はたくさんあると思うので、この本は自分の時間ができてからでもぜひぜひ読んでくださいな。
でもこれはとてもイイですよ~
普通にけっこう厚い本だけど、引き込まれるのであっという間に読めると思いますよん。
マンガはねー、わたしは社会人になってからはあまりたくさんは読んでないけど、好きです。(^^;;;
最近は浦沢直樹モノか猫村さんくらいしか読んでいないけれど、読み出すとそれこそ没頭してしまって他のことすべて忘れそうです。
「セカチュー」は、わたしも原作を単行本で持っているけど、ダメでしたわ…
あんなに薄くて簡単な本なのに、どうしても引き込まれなくてさー
途中で読むの止めてしまいました。
なんか素直に感動とかできなかったのよね。
>読んでから観る、観てから読む、読んでも観ない、観ても読まない・・・
原作アリ映画の場合、どれがいいとも言えませんね。
ただ、本はいくら読んでも悪いことはないと思うよ。
他のナントカ賞は好みにあわないものが多いんですが、本屋大賞は今のところハズレなし!と安心して読んでます。
ホントただ歩いている話にこんなに引き込まれるなんて・・・!
改めて恩田さんってすごいなあ、って思いました。
ホント、本屋大賞はなかなかツボにくる作品が多いですね。
『博士の愛した数式』もすごく好きな本でしたが、映画はちょっとガッカリした部分があって…でも、この『夜のピクニック』は映画も大満足でした♪
ようやく『ピクニックの準備』も見ましたよ。
それぞれにいろんなドラマがあったんですね~