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英国はヴィクトリア朝をメインに創作関係や自サイト、雑記などを写真やイラストと共にお送りしていくのらりくらりなブログ。

ヴィクトリア時代の使用人 vol.28 黄昏が染める階下:諦めと折り合いをつける時

2007-06-27 18:53:57 | 使用人関係
このところ英国女王映画やドラマが日本で流行っているようです。もちろんそれはアカデミー賞主演女優賞を勝ち得たヘレン・ミレンの存在のおかげでしょう。世界不思議発見でも取り上げられた王室も、もともとはヘレン・ミレン主演の映画クイーンあったからこそ。BS2で放送されたエリザベス一世のドラマが見れたのもやはり彼女のおかげであり、自分としてはヘレン様、ありがとう!と声を大にして言いたいところです。そんな英国ブーム?なのか以前ケイト・ブランシェット主演のエリザベス一世の映画の続編が撮影されており、またどうやらヴィクトリア女王の映画も撮影されているとか。女王ブームなんでしょうか???とりあえず自分は嬉しい限りですが。
で、そんな英国映画の中で九月公開のミス・ポターが今一番気になる映画。前売りも特典つきでゲット済み。ピーターラビットの生みの親のベアトリクス・ポターの半生を綴った映画で、すでに英国では公開済み。クリスマスシーズンの映画だったので実は向こうの公式サイトは以前からチェックして、日本はいつかと首を長くして待っていました。うふふ。映画の中に使用人も出てくるのはチェック済みです。うふふ。当時のファッションが今非常に気になるところ。早く観たいでげす。
さて、で、今回の使用人特集。前回使用人が消えていくという話でしたが今回はもう少し具体的な話になっています。それではどうぞ。


◆諦めと折り合いをつける時

1.広がる使用人不足

使用人事情が苦しくなっていく中、エドワード朝
(19011910)に入ると、雇用者たちによる使用人の節約と使用人事態の減少が大きく目立つようになりました。多くの雇用者は負担の大きい住み込みの使用人から負担の少ない日雇い、またはパートタイムの使用人を雇うことでなんとか屋敷の使用人不足から逃れようとしました。また大勢の使用人で行っていた業務は機械を導入することで代用する家庭も出てきました。女性使用人の項目で触れた
洗濯女中も、洗濯工場という新たな仕事口を見つけ、雇用者側もそれを追うかのように洗濯を洗濯工場に委託するようになりました。
多くの使用人の減少は都市部でも見られましたが露骨に見られるようになったのは都内ではなく実はカントリーにありました。使用人の雇用問題が大きくなった当時、カントリーハウスの改装が行われ、その改装部分の多くは使用人の領域でした。改装部分を見ると、使用人寮が縮小し、食料貯蔵室、洗濯室がなくなっており、そこから使用人を大勢雇用しなくなったことがわかるのでした。

2.産業革命という使用人革命

使用人の減少は確かに進んだのですが、それに対して雇用者側は使用人を雇い続けるために何もしなかったわけではありませんでした。19世紀を終える頃、このような使用人不足の解消として色々と対策案が練られていました。まず雇用費用の低い外国人を使用人として雇うことでした。多くの外国人は英語を学ぶことと引き換えに、住み込みで働き、それは忠実かつ勤勉で、英国女中よりもはるかに早く仕事をするとして一部で絶賛されました。その職種がオペアガールau pair girlです。フランス、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、スイス、またフィリピンから雇うことが多かったようです。しかしながらこのように絶賛されながらも彼女とたちが利用されることは少数の家庭のみでした。その原因の一つとして、雇用者にとって使用人は使用人であって、教育するという考えがないことと、英語を教える手間もかかる、コミュニケーションも不自由になることで雇用費用との釣り合いが割に合わないと考えたからだろうと思われます。しかし一番の原因は、雇用者達は残念ながら彼女たちを「使用人」以上の人間としては見れないことでした

他の解決策として、使用人の領域に新たな場所を作るということでした。上流階級の女性を狙った「淑女手伝い」です。彼女たちの仕事は、女主人のしゃべり相手になるということでした。彼女たちは基本的に出のいい女性がなる職種であったのはいうまでもありません。雇用者と会話が成り立つ教養などがなければならないからです。実は彼女たちの出現はこの時期がはじめてではありませんでした。すでに1870年代から彼女たちの存在は検討されていましたが、階上とも階下ともどちらの世界にも属していない人間は、家庭内の人間関係の不和の原因になる、特に使用人との関係の摩擦が起こるということと、自分の出がそれなりなために決して使用人のするような仕事をしない、ということで彼女たちの評判は悪く1890年代にはその存在は一旦姿を消すことになりました。しかしながら、使用人不足を解消するための案として再び日の目を浴びることになったのでした。しかし、結局は同じ問題が浮上しこの案が使用人不足を解決するには全く役に立ちませんでした。
最終的に使用人の不足する家庭を助ける効果を上げたのは、機械に使用人の代わりをさせることでした。残念ながら使用人を増やすこともできず、また新しい使用人を確立することもできなかったため、産業革命で開発された機械を使用人の代わりに家庭に導入することで少なくなる使用人の節減に挑むしかありませんでした。毎日交換や手入れの必要な蝋燭やランプは電灯に受け継がれ、書いて郵送したり、運ばせたりした手紙は電話に代わり、誰かが洗わなければならない洗濯物は洗濯機に放り込み、何度も掃いては集めを繰り返した掃除も掃除機で二度手間をなくし、石炭などを燃やして手入れがひどくかかるレンジはガスレンジの導入でらくになり、それに伴いガス管も引かれ、何度も井戸や貯水地に汲みに行った水も、水道管の整備で蛇口をひねれば出るようになりました。工業界では家事に関する家庭用品の開発を行い、大掛かりで手のかかる自家製の家庭用品を大量生産し、ナイフの錆止めクリームや今では普通である小分けされた石鹸などの販売をはじめるようになりました。これも今までは使用人が作っていたものでしたが、その役目も機械に奪われてしまったのでした。



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