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英国はヴィクトリア朝をメインに創作関係や自サイト、雑記などを写真やイラストと共にお送りしていくのらりくらりなブログ。

ヴィクトリア時代の使用人 vol.15 女性使用人:プラクティカリー・パーフェクト

2007-05-19 19:16:09 | 使用人関係
そろそろDVDの発売が近くなっているので、このヴィクトリア朝の使用人の記事を駆け足で更新しないと間に合わなくなりそうな感じです。まだ男性使用人にすらたどり着いていないので間に合うのかどうか……。まぁ、そのときはそのときですが。
さて、今回はメリー・ポピンズでも有名な子どもたちの身近な使用人・保母、乳母関連がテーマです。英国旅行で観たミュージカルのメリー・ポピンズが自分のなかでのナニー像になっているので実際の方たちのことを調べてみるとかなりイメージが違ってきます。もちろん原作も読んでみましたが、そっちのほうが実在のナニーのイメージにまだ近いかもしれません。またナニー・マクフィーも原作と映画と両方見ましたが、こちらのほうがナニーの仕事をわかりやすく見せてくれているような気がします。
ではそろそろ今回の記事を見てみましょう。表題はミュージカルのメリー・ポピンズからです。では、どうぞ~。


◆プラクティカリー・パーフェクト

子どもを持った家庭は少なくとも1人は子守女中だけでも家庭に雇うようにしていました。保母たちの多くは養成学校を出ていました。1890年代ではロンドンのノッティングヒルにノーランド養成学校ができ、中流階級の女性たちが幼児養育、教育を学んでいました。幼児教育のプロとして子どもの養育権を一任された彼女たちは上から保母頭、保母、乳母、子守女中と段階を踏んでいました。保母のなかでもまた2つに分かれ、「ウェットナース」と「ドライナース」があり、前者は女主人の代わりに子どもに授乳する役目を負っていました。そのため年齢も若く、多くは20代でした。一方後者は授乳の役目がないため年齢の幅は広く60を迎える老婆がしていたこともあります。

彼女たちの仕事は養育であり、子どもの躾に特に熱を入れることがほとんどです。特に上流階級になるごとに躾に関しては厳しく、のちの社交界デビューの準備も兼ねていました。もちろん子どもの身の回りの世話をはじめ子どもの遊び相手から食事の補助、子どもが病気になった時には介護をし、時には家庭で作れる薬を調合することもありました。このような子どもの養育に関わる仕事に従事していたため、他の使用人たちと揉めることもしばしばありました。子ども部屋の清掃では家女中が掃除するのかどうかで揉め、食事に関しては子どもの好き嫌い、栄養の面などで料理人と衝突し、また他の使用人と違い、乳母たちは食事を子ども部屋でとることが多かったために他の使用人と一線を引いていると感じられ疎まれるケースもありました。

基本的に大人と子どもの生活は交わることがなく、子どもたちが両親にあるのは朝や夜の挨拶のときでした。そのため子どもにとっては実質的な親代わりの彼女たちでしたが、必ずしも優しく接してくれたわけではなく、一部の保母や乳母たちは女主人たちに気付かれることなく子どもたちを虐待していたことがありました。泣いてぐずる子ども(特に乳幼児)に睡眠薬として阿片を飲ませ誤って殺すこともあり、また勝手なルールで子どもたちを服従させ、時に鞭打つこともありました。しかしこれらの残酷な例は極一部であり、ほとんどの子どもたちは優れた保母、乳母と過ごし、大人へと成長したあとも彼女たちに敬意を表し続けていました。

多くの使用人は外界との接触がほとんどなかったなかで、子どもたちに従事している彼女たちは特別に外に出る機会が多くありました。子どもたちを散歩に連れ公園へ出かけたからです。彼女たちの社交場である公園では、同じ職を持つもの同士が集まり、それぞれの家の噂話や自分自身の悩みを打ち明けるなど、解放された時間を持つことができました。しかし同じ職を持っているからといっても、公園は階級に左右された閉鎖された環境に変わりはありませんでした。子どもたちの身分によって彼女たちは子どもの遊び相手を選ばなければいけません。そのために、やはり保母や乳母たち同士の階級意識でのいがみ合いがありました。



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