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司法書士 岡住貞宏の雑記帳

東日本大震災から一年の節目における会長声明

2012-03-13 13:32:34 | 世の中のこと
東日本大震災から一年の節目における会長声明


平成24年3月11日
群馬司法書士会会長 岡住貞宏

 東日本大震災の発生から一年が経過した。
 直近の報道によれば、被災地において震災及び津波によって生じた「がれき」の処理は、いまだ全体の5%しか完了していないという。この事態に象徴されるとおり、被災地及び被災者の抱える問題は、いまだ多くが手つかずのままであり、解決にはほど遠い状況にある。
 被災地において法律家が取り組むべき課題も、また、その多くは手つかずのまま放置されている。とりわけ、福島第一原子力発電所の事故に関しては、損害賠償が遅々として進まず、被害者は困窮し、いら立っている。避難区域内の土地・建物等財物に対する賠償などは、その金額が膨大なものとなることが見込まれるためか、国及び東京電力ともに、あえてその言及を避けているように思われる節もある。さらに、このまま未解決の状況が長引けば、やがて損害賠償請求権が時効消滅する事態も考えられ、被害者救済の観点からは、由々しき事態が生じかねない。
 当会は、法律家である司法書士の団体として、震災発生以来、被災地におけるさまざまな法的問題に対処すべく、労力を傾注して来た。群馬県内に避難して来た被災者に対する避難所巡回相談、被災現地で開催された各種相談会への相談員の派遣、「被災者支援ホットライン」(祝日を除く月曜日~金曜日)による電話相談、そして被災地の法的問題を伝える情報誌「群馬司法書士新聞震災対策特別号」の発行と福島県内仮設住宅への巡回配布などである。特に「群馬司法書士新聞震災対策特別号」は、平成23年4月10日発行の第1号から始め、ほぼ1月に1回の発行頻度にてすでに第10号を発行し、通算で6万部(第10号のみで8000部)以上を被災者に対し無償配布した。
 これらの活動を実施するため、当会はのべ700名以上の人員を投入した。そして、言うまでもないことであるが、それらはすべて被災地・被災者に一切の負担をかけることのない無償の活動として行なって来たものである。
 司法書士は、「国民の権利の保護に寄与する」(司法書士法1条)ことをその制度目的とする。また、司法書士は、登記・供託・訴訟等の法的手続において、独占業務を認められた職業である。このような制度目的及び職業の性質にかんがみれば、国民の権利が危殆に瀕し、さまざまな法的手続を必要とする大震災後の現状において、被災地・被災者の法的救援に向けた活動を行うことは、司法書士の制度上の責務であり、職業上の義務であるというべきである。
 当会は被災地に所在の司法書士会ではないが、司法書士の責務及び職業上の義務に照らし、被災者のおかれた現状をとうてい座視して過ごすことができない。当会は、かつて阪神淡路大震災に際しても積極果敢な活動を展開した。現在の当会が行なっている活動は、その誇るべき伝統を踏襲することでもある。
 上述のとおり、いまだ法律家の取り組むべき課題は山積している。それらに目を背けることはできない。当会は、司法書士の責務及び職業上の義務を強く自覚し、これら課題の解決に向けたなお一層の努力を、被災者と共に続けて行く所存である。
 東日本大震災から一年の節目に、今後も被災地・被災者の法的救援に向けた活動を継続して行くことの決意を明確にするため、この声明をする。
以 上