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「雪沼とその周辺」堀江敏幸

2024-04-09 | 小説・漫画他
雪沼という架空の町に住む人々の短編

ゆったり読む小説です。大きな事件とかサスペンスや衝撃的な内容はなく、普通に生活を送っている個々の人の人生を短編で読ませてくれる感じですね。
私は長野県のどこか・・をイメージして読みましたが哀愁があって、少し寂しげ。
凄く面白かった!とかじゃないけれど、穏やかに読書を楽しめる作品で好感を持ちました。3つ★半~4つ★

堀江敏幸さんは以前小川洋子さんと共著の本を出されていて、小川さんとどこか通じる処のある作家さんだな、と本作を読んで感じました。
図書館のリサイクル本のコーナーにあったのを文庫で薄い本なのでもらって来て読みましたが、あたりだった。

『スタンス・ドット』
小さなボウリング場。廃業まで30分という時にトイレを借りに立ち寄った旅行者のカップルに最後の1ゲームをプレゼントする店主。ピンの倒れる音が良い機種がある。
店じまいをすると告げたら、お別れ会だのなんだのと周りが騒ぐから、ひっそりとお店を一人で閉めようとする主人公に共感。

『イラクサの庭』
田舎で西洋料理の教室を営んでいた小留知先生が亡くなった。先生の経歴は謎に包まれている
イラクサのスープっていうのは初めて知りました。

『河岸段丘』
小さな製函工場を営む田辺さん
ロンという犬 機械修理の達人の青島さん(こういうメカニックさん貴重です)

『送り火』
書道教室に古民家の二階を陽平さんに貸し出した母親と二人暮らしの絹代。
教室を終えた子供達が軽食を食べたりTVを見たり・・と、そういう場であることが人気で(確かにこういうスペース良いね)母も生きがいにしていたが、亡くなってしまう。
いつも背筋がピンとまっすぐな陽平さん、墨の香りに惹かれる絹代さん。2人は結婚し、一人息子が出来たが・・・

★以下ネタバレ★



なんと・・・息子君は豪雨の日に自転車で見に行って濁流に流されて亡くなってしまう・・・。
それから13年が経っている。絹子さんはランプ集めをしていて、最後はその40あまりのランプに火を灯してみることにする。 あーー、これは切ないお話だな・・・。
以上
短編にしておくのが惜しいお話でした

『レンガを積む』
小さなレコード店の小柄な店主。
時代はコンパクト・ディスクだが、店主は古いオーディオにこだわっている。
彼の馴染みの客の好みを解っていて、レコードを選んでかけて興味をひかせる‥等の才覚がイイ!それにみごとにハマったお客さんの対応。
でも今ではその才能も衰えてしまった様です・・・

これも凄く好きなお話。そもそも、そういう古いオーディオとかレコードとかに愛着感じる人間なので。
こういう歴史あるレコード店をまるごと譲り受けるという話が来て受けて故郷に戻る、っていうのも解るわー。

この本が書かれたのが20年前なのですが、最近(そのまた20年後には)古いオーディオや、レコード、テープなどの再認識・流行が来て、海外での評価やらで古いレコード店は物凄く売れているみたいですよね。
これが書かれた時は、もうレコード、ステレオは、おしまいになっていくんだろうと悲しく思っていたけれど、世の中変わるものです!
今もあのレコード店が存続していて、経営が上向きになっていると良いなー。
これは映像化したら凄く良いのになーって思った作品です。

『ピラニア』
安田さんが経営する定食屋を訪れた信金の相良さん。
自分の作る料理に自信がない安田さん。控え目でマイナス思考?な処が、とても微笑ましい。
もっと自信持っていいんだよ!と言いたくなった。
信金の相良さんも口が小さいし普段麺は食べないんだけど、おばあさんから強くすすめられて一緒に食べて服にシミが出来ちゃったのね。

『緩斜面』
小木曾さんの紹介で消火器を扱う会社で働くことになった香月さん。幼い頃、凧あげをした。目印は赤い消化器入れの箱だったことを思い出す。

雪沼とその周辺  文庫 2007/7/30 堀江敏幸
小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説
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6 コメント

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Unknown (わぐま)
2024-04-09 11:50:14
ちは~~~^^
堀江敏幸さん、多分未読の作家さんです。小川洋子さんに似てるのか~~。うん、なんか想像出来る。
ほんと、ゆったりと読む感じの本ですね。
昭和を感じそうな内容。タイミングが合えば良さそうな本ですね。
我が図書館のリサイクルのコーナーにもあれば、即 持ち帰るのに(笑)とりあえず予約かごに入れました。いつか読むと思います。
わぐまさん☆ (latifa)
2024-04-09 15:13:14
わぐまさん、こんにちは!
私もちゃんと読んだのは、これがお初でした。

小川洋子さんから、乙女ちっくなテイストや、ちょっと不気味でシュールな処を除いて、現実っぽくした小説でした。

なんとなくだけど、わぐまさんはあまり好みじゃないような気がするような・・・(あくまでもイメージで)

図書館のリサイクルコーナー、3,4月の期変わりのせいか、ちょこっと本があったのよ。普段から一杯あるわけじゃなくて。

ただだし、返却しなくていいから、いつでも読めるのは嬉しいー
とはいえ、なんか作家さんに悪いなあ・・・
おや、単独では初読ですか (todo23)
2024-04-09 15:26:18
なかなか立て続けに読む作家さんでは無いので、時折思い出したように読んでいるうちに、何時の間にやら7冊読んでいました。
『いつか王寺駅で』や、何故か子育てを描いた『なずな』なんかも良いですよ。
ちなみに堀江さんは早稲田大学文学学術院教授。ゼミの出身者には朝井リョウさんもいて、朝井さんは堀江ゼミに入りたくて早稲田に入学したそうです。

http://todo23.g1.xrea.com/book/keyword.html?key=%E5%A0%80%E6%B1%9F%E3%80%80%E6%95%8F%E5%B9%B8
todo23さん☆ (latifa)
2024-04-09 18:38:12
todo23さん、こんにちは!
おお、7冊もお読みになられているんですね。

todo23さんの感想拝見して、はっとしました。そうだ・・ラストのしめくくりが、今一つ私にはピンと来ないというか、え・・ここで終わるの?って感じなのがネックでした。

もう一冊リサイクル図書でもらって来た本があるので「めぐらし屋」それを手始めに読んでみますが、その2冊も今度読んでみます。

私も経歴を読んで、朝井リョウ君の先生だったと知ってビックリ。
2人の作風等、全然違うので・・・。
懐かしい~ (こに)
2024-04-10 07:54:55
2010年に読んでいて細かいところは忘れていましたけどlatifaさんの記事で思い出させてもらえました。
再読します!
こにさん☆ (latifa)
2024-04-10 09:21:44
こにさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。

おっ、こにさん読まれたのは14年前ですか。
それじゃあ忘れてしまっても、しょうがないですよね・・・
でも、お声をかけて下さって嬉しいです。

そうそう、BSで「あきらとアキラ」WOWWOW版が放送開始になったんです。
今2話目を楽しく見ています。
映画よりも細かい部分も映像化されて、主役の2人も合ってます(特に向井君があってる)
大勢の人が出て来るお話なので、本よりも解りやすいかも。

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