ポコアポコヤ

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「月と蟹」感想 道尾秀介

2010-11-11 | 小説・漫画他

凄く引き込まれました。道尾さんお得意の小学生の男の子が主人公。そして虐待されている友人、こっそり誰かと逢瀬を重ねている母。今までにも道尾作品には、こういう感じの話が幾つかあったかと思うのだけれども、本作はそれらの頂点に立つというか・・・一番ぐつぐつ煮込んで良い出来になったシチューの様な作品になった様な気がします。何か賞とか取るかも。4つ★半~5つ★未満

えっ!という驚きのどんでん返しとかは無いけれど、これに関しては先日の「プロムナード」でご本人が、そういうのをいつも期待されるのは辛い・・みたいな事を書いていたので、私も今後はそれを期待するのは辞めようと決めていました

そういうのが無くても、充分、本作は凄く面白かったです。

小学生3人(主人公の慎一、春也、鳴海)の関係が微妙に変化してゆく様子や描写が絶妙です。ここまで書けるのはほんとに凄いです。
同じ様な体験はしてないのですが、友達と段々親しくなって行く高揚感、2人だけの秘密や基地、そこに第三者を勝手に入れちゃってちょっと面白くない・・・気持ち。
なのに、2人が親しくなってしまい自分だけが取り残された様な気持ちになり、つまんないの!という苛立ち感など、あったよなー!!って思い出しましたよ。

あと、「理由ずけ」を人は探し、欲しがるというエピソードも、解るなぁ~と思いました。
じいちゃんの片足が無くなった理由が、子供時代に山に置いてけぼりにし片足がびっこになってしまった事件からの負い目から・・というのとか・・。
鳴海が母を幼くして亡くして淋しくて、慎一と上手く話せなかったのが、慎一の父がガンで早く亡くなってから、普通に会話出来る様になった・・・のとか・・。
あと、お母さんがなかなか台所からテーブルに座らない・・(何かやってる方が気詰まりじゃないから)っていう処とかも、良く見てるな~

★以下ネタバレです 白文字で書いています★
机の中に届く酷い手紙は、もしや・・と思っていたら、やっぱり春也がやっていたんですね。2人は仲良しだったものの、家で虐待されている春也は、そういう事で気晴らしをしてしまったって訳だったのだけれど、、何も一番親しい子にやらなくても・・と切なくなりました。2人の関係の描写で、クラスの中で、転校生の2人だけがランドセルで登校し、次の日から自由バックを持って来た春也と、数ヶ月経ってから自由バックを持って行く様になった慎一・・・このエピソードとか、ぐわん~と来ました・・・。
それにしても、交際相手(鳴海の父)の運転する車に、飛び出して行くなんて・・。お母さんの気持ちを考えると、凄く可愛そうだったな・・・。結局別れる事になってしまったわけで・・お母さん、まだ若くて綺麗だったのにね・・。でも子供っていうのは、母親が、女性であることっていうのは認めたくないものだからね・・。そんなの気持ち悪いとか、つい思ってしまうのは解るけれどもね・・。この年頃だとなおさらね。
 道尾さん作品にお決まりの、男女の秘め事を、つい聞いてしまう羽目になるというシーン。今回も有りましたね 車の中に潜んでて・・って
でも、最後はハラハラしました。あのナイフでどうなっちゃうんだろう?って。

以上

「月と蟹」道尾秀介 2010-09
鎌倉近辺に住む小学生3人。主人公の慎一と大阪弁の春也、転校生だった2人はクラスで浮いている存在。2人は放課後、海で魚やヤドカリを捕まえる遊びをし、その後、山に二人だけの秘密の場所を作り、そこで遊ぶ事を楽しみにしていた。
そこに鳴海という女子が加わる。実は、鳴海の父と慎一の母はこっそり交際中であるようだ・・・。

「プロムナード」「背の目」
「片眼の猿」「シャドウ」
「月の恋人」「ラットマン」
「カラスの親指」「ソロモンの犬」
「光媒の花」
「鬼の跫音」
「龍神の雨」「向日葵の咲かない夏」感想
「球体の蛇」「花と流れ星」

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8 コメント

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Unknown (なな)
2010-11-11 21:52:32
こんばんは。
私も「プロムナード」を読んでから「どんでんがえしがある」って期待をしなくなりました。
それ以前は道尾さんには絶対に騙されるって思いながら読んでいたので。

小学生の心の動き関係の変化などの描写、本当に絶妙でしたね。
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ななさん☆ (latifa)
2010-11-13 21:34:47
こんにちは~ななさん
うわ~!ななさんも同じですね。プロムナードを読んでから、どんでんがえしに期待しなくなったなんて。
こういう読者がいるって事は、あのエッセイ本を道尾さんは出して大正解だったのかもしれませんね。

ホント、鎌倉だというのに、ドロドロして全く明るさが無い本でしたね。
でも、なぜか、私は、こういう暗い内容が大好きです。
先日伊坂幸太郎さんの「マリアビートル」を読んだのですが、あまり面白く読めなくて・・・、私は断然こちらの「月と蟹」の方が好きだし、引き込まれました。
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Unknown ()
2010-11-16 20:32:14
小学生の心理描写がとてもリアルでした。
どんでん返しの作品はそれはそれで楽しいですが、こういう文芸色の濃い作品もいいですよね。
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花さん☆ (latifa)
2010-11-18 14:23:38
こんにちは~花さん
道尾作品には、こういう小学生が主人公ってことが多いですよね。
昔の事なのに、よく少年の心理がここまでリアルに書けるなあ・・・と感心します。
どんでん返しには期待しなくなったものの、いつか忘れた事、ああっ!と驚くどんでん返しのある話も書いて欲しいな、とも思います(←ワガママ)
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こんにちわ (牧場主)
2010-11-18 16:07:55
この作品好きです。

>友達と段々親しくなって行く高揚感、2人だけの秘密や基地、そこに第三者を勝手に入れちゃってちょっと面白くない・・・気持ち。
なのに、2人が親しくなってしまい自分だけが取り残された様な気持ちになり、つまんないの!という苛立ち感など、あったよなー!!って思い出しましたよ。

そうそう、私も分かります。
あの、男の子同士に、女の子が加わる抵抗感・・・
男祭りの亀山社中?にお龍を連れてきた龍馬を受けいれられない気持ち・・・?
(最近龍馬は見てますか?)
小玉ユキさんっていう方の「坂道のアポロン」っていうコミックでも、秘密の地下室に女の子を連れてきてしまう男の子に、「・・・」ってなる男の子がいて・・・

私はやはり、さっぱりしていてほしい男の子の友だちから不幸の手紙をもらっていた、あれを問い詰めるあたりがぐっときました。
こう、分かっていても、明らかにしたくない、けどもう、限界っていう・・・
美しい友情が、ヤドカリの内臓みたいに、グロテスクだった・・・
でも、お互い、自分を守る為に必死で、やっとこさ形を保っていたのに・・・
あれがぶちまけられる瞬間が、こう、表面張力が決壊してしまうような、ああ~、っていう・・・

私も最後、ナイフ、あれで良かったと思います。
人を殺すのに使われなくても、消してしまいたいような記憶、心の奥底にいつまでもくすぶりつづけていくだろう記憶になることは、もう、道尾さんがそこまで丁寧に書かれて築きあげていたから、同じだと・・・
事件にまで発展しなかった、からこそ、私は評価しますね。




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牧場主さん☆ (latifa)
2010-11-20 14:01:49
こんにちは~牧場主さん
ちょっと気が早いですが、もうクリスマスの飾り付けも作って飾っているかな~と思い、絵文字もクリスマスバージョンにしてみました。

男子集団に女子が混ざると・・は、個人的には、なんで入れてしまうのよ?!って、憤慨しちゃう方です。映画とかその他小説でも、あ~せっかく良い感じで楽しくやってた処に、なんで紅一点の女子を入れるかなー!こりゃ絶対色々事件が起きるぞ、絶対その子を入れた為に今のこの良い感じが壊れるぞ、って第三者なのに、アタフタしちゃうんですよ。

龍馬、以前毎週見ていた旦那が、見なくなっちゃって(その前の7時からの時間帯で、もやもやサマーズってやつを彼が真剣に見ているせいで、お風呂タイムが変わってしまった)私も段々見なくなってしまったんです・・・。
でも、たまに見ると、お龍さんのお肌が調子悪そうだなあ・・と、内容より違う方に意識が行っちゃったりしました。

「坂道のアポロン」は、是非見てみたいんです! 以前王様のブランチって番組で特集していて、ソソられました!

>不幸の手紙をもらっていた、あれを問い詰めるあたりがぐっときました。あれがぶちまけられる瞬間が

そうそう!
私も、遂に言ったか!と、そこのシーンは、私はラストの方よりも、テンション上がってしまいましたよ。
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泣いてしまいました (真紅)
2011-03-19 18:28:12
latifaさん、こんにちは~。
その後物資は大丈夫? 物流はちょっとずつ回復してきたけど、放射能が心配だよね。。
素人だから、TVの解説とか聞いてても全然わからんよ。。う~ん。

で、この本だけど。私は『プロムナード』だけ読んでて、道尾さんの小説は初めてだったんですよ。
latifaさんが↑記事で「何か賞とるかも?」と書いてらっしゃるけど、ホントに直木賞、来たね~。
ウチの子が小5なんで、泣けて泣けて仕方なかったな。。ウチの子も、こんな寂しい思いしてるんじゃないか、とか思って。
もう、子どもに泣きながら聞いてしまったよ~、「寂しくない?」って(笑)。
「泣くんやったらその本向こうの部屋で読んで!」とか言われながら。ハハハ。
でも、母親が泣いてるのって、それだけで子どもって辛いかもだよね。。反省。。
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真紅さん☆ (latifa)
2011-03-20 10:54:47
こんにちは、真紅さん
なんとか昨日並んで、米とかティッシュは買えたけど、ガソリンが入れられないから、車が使えなくて仕事に出られないでいるんだ~。暇だわ~~~。でも気分的に映画とか小説とか見る気にあんまりなれないんだよなぁ~時間はたっぷりあるんだけどー

で、初道尾作品がコレだったんだね~。プロムナードを先に読んでおられるなら、人間的に道尾さんにちょっと親近感がある状態で、入ったって感じだよね
私も情熱大陸見たよー。うん、うん、ビックマウス爆裂だったね。最近の、しかも運動系じゃない若者には珍しいタイプよね。
その番組で「自分は、これから、直木賞とったコレより面白くない小説は書きません」みたいに宣言していて、おおお~~すごいわ・・・って思ったよ。自分を追い込んで、ふるいたたせるタイプなんだと思うけど、キツイよねぇ~

これを読んでる真紅さん家の状態(息子さんとのやりとり)、微笑ましくて、クフフ・・って思ったわ。大丈夫よ~
凄く子煩悩なママと、ママ思いの優しい息子さんだもん
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