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ネタバレ全あらすじ「僕が殺した人と僕を殺した人」東山彰良

2018-02-22 | 小説・漫画他

最初、中国語の漢字表記が多く、登場人物の漢字名やら、慣れない状態で読み始めたので、とても読みにくくて苦労したのですが、途中から段々大丈夫になって、引き込まれて読ませてもらいました。

かつて見た台湾映画の雰囲気もあったかなー「モンガに散る」とか、その他・・。
タイペイを舞台にしていて、行ったことは無いけれど、旅行を綿密に計画した事があるので(直前キャンセルの憂き目に・・)知っている道路や地名等が一杯登場し、ああー、あそこを走ってるんだな、というのがあって楽しかったです。
また、台北の食べ物や、熱帯の植物や、蛇屋さんとか、龍山寺の占いで物事を決めたりするとか、読みながら、台湾にいるような錯覚にさせてくれます。


(あらすじ)
主要登場人物は3人。ユン、アガン、ジェイの同級生。1984年、13才、中学一年生。
成績優秀なユンは、6つ上の兄貴が死んでからノイローゼになった母と父がアメリカに一時行ってしまい、その間、父の友人のアホンさんの家に居候して、牛肉麺屋を手伝っている。アホンさんには、2人の息子がいる。太った幼馴染のアガンと弟のダーダー。

ジェイは小3の時に母が再婚して以後、義父に暴力をふるわれており、その頃から不良少年になって、怖いもの知らずな喧嘩の強い男として有名だ。2人の妹が上級生にちょっかいを出されているのを目撃すると、相手が4人なのに、一人で突っ込んで行くという、男気のあるやつで、ユンもアガンもジェイに憧れを持っていた。

最初にジェイと仲良くなったのはアガンだったが、喧嘩しながらも、3人とダーダーは、ブレイクダンスの練習にはげんだり、ナイキの靴をかっぱらったり、楽しく過ごしていた。
そんなある日、ジェイがいきなりユンにキスをしてくる。予想外な行動に、驚き、ユンはジェイを殴る事にする。この喧嘩は、ジェイがわざと負けたふりをして、まあ、一件落着する。

★以下ネタバレ★

その後、オヤジから酷く殴られ入院したジェイを2人が見舞いに行くと、オヤジに自分がゲイであることがバレてしまい、いつも以上に酷い暴力をふるわれた事を聞き、ユンは毒蛇を使って、オヤジを殺そうという話をもちかける。
死んだユンの兄の彼女が、蛇屋の娘だったし、その頃、台北には逃げた毒蛇がうろうろしていた事もあって思いついたのだった。

その間にも、アガンの母が客の男と家を出て行ってしまい、甲斐性なしのアホンさんと離婚調停になり、結果、新しい夫と新居で、息子2人を引き取り、暮らし始めたり、ユンの両親が日本に帰国したりと、彼らの身辺にも大きな変化があった。

3人は綿密な計画を立てて、いざ決行の日、なんと、無人になっていた(はずの)蛇を隠していたアガンの元家に、台南の友人宅に引っ越して行っていったはずの父アホンさんが、戻って来て、蛇にかまれて死んでいたのだった。彼は新しい時計2つを綺麗にランピングして持って来ていたのだった・・(泣)すっかり予定が変わり、実行は中止になる。

ユンがアガン達の住むマンションを訪ねて行くと、アガンは自首すると言い張るのだった。
ユンはもし自分が捕まったら、アメリカからやっと帰って来たものの、今度は過度な心配性になってノイローゼな母が、本当に狂ってしまうか死んでしまうかもしれないと思い、なんとか自首を踏みとどまらせようと説得するもダメで、アガンをレンガで殴りまくって、マンションから落としそうな勢いだった処、逆にマンションから落とされたのはユンの方だった。
こっそり立ち聞きしていた、ダーダーが兄を守ろうとしての行動だった。

ユンは一命はとりとめたものの、2年ほどベットに寝た切りで、その後、なんとかリハビリを経て、生活が出来る様になったものの、その時に受けた脳の打撃で、記憶障害や暴力的な性格へと人間性が変わってしまった。
その後、渡米。最初絵付けの仕事をしたりしていたものの、最初の残忍な犯行を起こし、7人の少年を殺し、サックマンと呼ばれる犯罪者になって警察に捕まり、最後は死刑になるのだった。

アガンはダーダーを守るため、事件の事を隠し、大人になり、今や兄弟で沢山チェーン店を持つ、牛肉麺屋のオーナーとして大成功していた。しかし弟は先日、天津の爆発事故に巻き込まれ亡くなっている。

ジェイは事件後、自分らのしたことがバレる不安もあって、法律書を読み漁る様になり、苦学の末、弁護士になった。
あの義父は、事件の後数か月して、行方不明になったままだ。(取り立て屋に追われていたので、どこかで殺されたのかも)
エリス・ハサウェイという同性愛のパートナーも得ている。(最初の彼氏は自殺してしまったようだ→あの大学生かな・・?)
現在、アガンからの頼みで、アメリカのユンの弁護人として、面会を繰り返すのだった。

ラストは、小3のはじめ、最初にユンがジェイと出会ったシーンが。
アガンと喧嘩して廊下に空気椅子みたいな罰を受けているときに、名字が変わるなどの報告の為に来ていたお母さんとジェイが校長室から出て来て、その帰りに、罰を受けているユンの胸の名前を見て、声をかける。
その年、ユンは自転車が欲しかったが、母親に反対されて、成績が一番だったら買ってもらえる約束をして、頑張って勉強したのに、1位はジェイだった。それでも自転車を諦められず、ちょっとだけアガンの自転車を借りるつもりだったのが、運悪く札付きの悪いやつに捕まって、取り上げられてしまうという事件があったのだった。それが喧嘩の理由。
かつて成績優秀だったジェイは、やはり成績優秀者のユンの名前は知っていたけれど、どんな風貌の人なのかは知らないでいて、それが初めて、お互いに解った時だったのですね。

死刑執行後、ジェイがユンと面会して、ユンが話した過去の出来事などを、本にまとめて、出版しようかな・・・と思っているところで終わる。
ジェイの留守中に、そのノートを見たエリスが泣いていて、「ユン君が君の初恋の人だったんだね」という。「そんなんじゃない」とジェイが答えるが、「もしサックマンが、あの太った子だったとしても、きみは、やっぱり書いたかい?」と言われ、言葉が無かった。
以上



(感想)
ミスリードさせられました。てっきり、現在弁護士になっているのがユンで、連続少年殺人犯になってるのがジェイだと思って、読み進めて行ったのですが、逆だったとは・・・。
荒くれ者のジェイが、実は低学年の時は、学校でトップのお勉強できる子だったことが後半語られます。そうだったのね・・・。
それにしても、ユンのその後の人生は悲しかった・・・。
最後は死刑執行されるのですが、不思議と読み終わって、そんなに悲痛な気持ちにはならなかったのは、なぜなんだろうか・・。

13才の夏、少年たちの描写が生き生きと描かれて、「スタンドバイミー」っぽい感じもありました。
作家の東山さんは、日本に幼い頃移住したものの、夏休みには台北に行っていたそうで、そのせいもあって、台北といえば夏の風景が強いそうです。当時の台北への東山さんのノスタルジーが凄く感じられました。

かつての台北の薄汚れた街角と、デトロイトの街が似てると感じる、という描写とかも良かったなー。
でも、昔から台湾に住む台湾人と、大陸から来た外省人(中国語を話し、台湾語が出来ない)との住んだり普段生活する場所が違っていて、線路を超えたら違う人種の場所、みたいなのとかも、興味深く読みました。

それにしても、みんな両親が、不倫したり、出てったり、行方不明(殺されちゃった?)になったり、大変ね・・・。
この本を読んだ後、直木賞を取った「流」も読んでみることにしました。
この小説の前段階?みたいなお話だそうで、舞台は同じ台北の廣州街だそうです。


(舞台になった場所 グーグル地図)
台湾に旅行に行った事がある、台北のリピーターの日本人って結構多いから、この小説を読むとハマりそうな気がするなー。
登場した場所を地図で辿ってみたら、狭い範囲の中の事だったのが良く分かりました。
皆が良く行く観光地の場所と重なっていました。


解りやすく、場所名に●を書き込みたかったのだけれど、やり方がよく解らず・・・。青〇と黄色〇などつけてます。下の方、小南門の近くがユンの家やアガンの元家(牛肉麺屋)、その上左あたりに西門(ダンスの練習したり、繁華街)、そこから西に行ったところに、萬華地区、蛇屋のある華西街、ちょっと下に龍山寺。
地図の上、油化街(ジェイの祖父が人形劇を披露しようとしたのをユンが代わりにやった)
地図の一番下中央に植物園。その右の赤い道路の先が、アガンとダーダーが引っ越して行った新居のある場所の近くです。



ちなみに、後から台湾に大陸からやって来た外省人は、20パーセント以下の人口だそうです。
でも、奇しくも、有名な映画監督の、侯孝賢(ホウ・シャオ・シェン)、アン・リー、エドワード・ヤン 、役者のチャン・チェン君、テレサテンもそうなんですね・・・。(二世、三世含む)
今は、昔と違って、そんな内省人とか外省人とか、区別とかあまり無く、暮らしているそうです。

僕が殺した人と僕を殺した人 2017/5/11 東山彰良

「流」

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