国立大学職員日記
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■はじめに
 今回は「科学研究費補助金」に関するエントリーです。とは言っても、実は財務・会計関係の知識がさっぱり無いので、単に「平成22年度の科研費のデータが手に入ったからランキングとかグラフを作ってみたよ」という程度のものです。
 本当は科研費の手続きやら使い方のルールなんかも知りたいんですけどね。縦割り業務って本当に担当の仕事以外の情報が入ってこなくて不便ですね。

■平成22年度 科学研究費補助金 配分額(合計)の上位100機関



 対象となる科研費は「新規採択分+継続分」であり、「直接経費+間接経費」の合計額でランク付けしてあります。
 採択件数の上位30位までは、文部科学省のホームページで見ることができるのですが、どこか物足りなかったので上位100位まで、それも露骨に「配分額」でランク付けをしてみました。国立大学が分かりやすいように色付けしてあります。
 1位はもちろん東京大学であり、その後に綺麗に旧帝大学が続きます。採択件数ではその次に筑波大学や神戸大学などの旧官立大学群が続くのですが、配分額で見た場合には東京工業大学が次点に続きます。
 国立大学以外の機関では9位に「理化学研究所」、20位に「産業技術総合研究所」が入ります。共に独立行政法人であり、教育活動を主としない、生粋の「研究機関」としてもこの二つが頂点のようです。
 私立大学のトップは慶應義塾大学で11位。次点の早稲田大学(14位)と並んで、私学のツートップといったところ。公立大学では首都大学東京の25位が最上位。

 上位100機関を概観して感じたことは、とにかく国立大学が圧倒的に多いということ。それが当たり前なのかもしれませんが、科研費が「研究費」の補助金であるなら、もっと「研究所」等が上位に名を連ねているものだと思っていましたので、少し意外でした。


※参考:上記100機関から国立大学を除いたランキング
 国立大学を除いた場合にどのような順になるのか興味があったので作成しました。




■「機関群」別の科研費の配分額と割合
 ここでは科研費を採択した機関を大きく10に分類し、どの「機関群」がどのくらい科研費を使っているのかを調べてみました。ちなみに「機関群」の分類方法は、元データの並び方を参考に、管理人が独自に判断したものです。



 円グラフが示す通り、科研費の大部分は国立大学に配分されます。その次に私立大学、独立行政法人、公立大学と続き、下位の機関群には極めて微小な額しか配分されていません。
 パーセンテージと棒グラフは次のとおりです。



■「機関群」別の、一機関あたりの科研費の配分額
 科研費の配分額では、私立大学が国立大学に続いていましたが、私立大学は国立大学に比べて、そもそも数が多いという事情もあります。反面、独立行政法人などは、配分額は少ないものの、機関の数も少ないため、一機関が受け取る配分額は多くなります。このあたりをまとめたのが下の棒グラフです。数字はその機関群における、一機関あたりの配分額の平均を表しています。
 結論から言うと、平均額で見ても、やはり国立大学は他を圧倒しているようです。




■終わりに
 データにまとめてみると、とにかく何から何まで国立大学が中心となっているのが科学研究費補助金でした。
 今回のデータは「機関別」にまとめたものですが、研究の一つ一つについて知りたい場合は「KAKEN - 科学研究費補助金データベース」という非常に便利なサイトがあるのでご利用ください。平成22年度のデータはまだ反映されていないようなので、いつか反映されたときに「研究課題別」の配分額のランキングなども作ってみたいです。

 ここからは(長い)蛇足。
 「KAKEN - 科学研究費補助金データベース」は上にも書いたとおり非常に便利なサイトで、各研究内容に関するデータを調べることができるのですが、肝心の研究成果や報告書などについて、全ての研究の全ての報告書を閲覧することができません(報告書をどの雑誌で発表したか、等の記載はあるので、追跡可能ではあります。また報告書を公開しているものも一部あります。詳しくは「CiNii - NII論文情報ナビゲータ」などをご利用ください)。
 科研費の各研究についてはその報告が義務付けられているため、国立国会図書館に行けば全ての研究の報告書を閲覧することはでき、また、国立国会図書館まで行かなくとも、国立大学であればそれぞれの図書館に、少なくともその大学で行われた研究の報告書は全て保管されているそうですが、やはり一般人が研究内容を調べようとする際には少々の手間を必要とします。
 報告の義務付けや、それを国会図書館に収納するルールは、それなりに優れたシステムではあると思うのですが、個人的にはもう少し一般人にも科研の成果に触れやすいシステムを作って欲しいと思います。具体的に言うと「科学研究費補助金の支給を受けた研究は、その報告書の全文をPDFにでもして、インターネット上に公開することを義務付ける」くらいのルールを設定し、文部科学省でも日本学術振興会でも国立情報学研究所でもどこでも良いので、そのPDFを一括管理して公表するサイトを運用してほしいのです。
 「各研究分野の学会や学術雑誌がその役割を果たしている」という意見もあるかと思いますが、研究成果は「無償」で「簡易にアクセスできる」条件下での公表が必要があると思います。これは「公的な資金により作成された研究成果は公共の財産である」と、個人的に勝手に思っているからです。国立国会図書館の存在により、「無償で公開」の部分は達成されているのですが、情報技術が進歩した現在において、「情報」を得るためにわざわざ外出しなければならない理由というのも考えにくいため、「簡易にアクセスできる」方法としてインターネットを利用して欲しいのです。こう考える理由の一つには、これを達成するのに必要な労力はさほど多くないのではないかと思うからです。20年くらい前ならともかく、今現在で論文を紙に記している研究者は存在しないと思いますので、論文データを電子化することは極めて簡単なはずです。データベースの構築やサーバーの運営などは、初期費用やランニングコストも掛かるとは思いますが、費用さえ準備できれば既存の技術や手法で簡単に作成できるはずです。
 Google社の「Google Scholar」が自分の求めるものに最も近いのですが、そもそも研究内容がネット上のどこかに置かれていないと始まらないという欠点があります。ルールを定める文部科学省や学術振興会が論文のデータさえ用意すれば、Googleに限らず、様々な組織が勝手に活用してくれるはずです。
 以上のこういった要望は、何も「学術の振興や普及」といった糞真面目なお題目に立って要求している訳ではありません。報告書や論文をネットで公開してくれと要求するのは、究極的には「自分がそれを読みたいから」です。もう少し一般受けしやすく言い換えると、「学術論文には娯楽的な読み物としての面白みがあるから」となります。
 「面白そうだから作ってくれ」というのは、「必要だから作ってくれ」の対極にありそうな要望で、どっかの事業仕分け人(女性)あたりに言わせると「このご時世にそんな贅沢は必要なんですか?」と突っ込まれそうですが、逆に学術研究において「面白いということ」をないがしろにしてしまっても良いのだろうかというのが自分個人の考えです。
 人は「面白い」と感じたことに対して、時に驚くほどの集中と持続を持って取り組むことがあります。そのような効果によって確立された技術が、今の世にも多く利用されているはずです。研究者のみならず、情報の受け手にとっても、「面白い」と感じたものについてより詳しい知識を得ようとすることは、業務の内外を問わず、非常に有益なはずです。「教養」「全人教育」「リベラルアーツ」の思想なんかはこういう考え方と親和的だと思います。
 もう一つ、「面白い」ということは民主主義的な考え方からも肯定できると思います。現在、もともと民主主義を貫く(べきはずの)立法機関のみならず、行政・司法機関においても説明責任や住民説明、裁判員制度のように民主主義的な要素の強い制度が利用されています。その際に重要となるものの一つに「一般市民でも理解することの出来るように説明を行う」という観点があると思います。「理解する」ということは「面白みを感じる」ことと同等ではありませんが、「面白みを感じる」ことは理解を促し、さらには自分と異なる意見にすら耳を傾けさせる効力があります。民主主義は多数決の原理と理解されがちですが、本来は多数決を行う前に充分な議論がなされることが必要な制度です。「面白さ」の追求によって理解と支持を促すことは民主主義によって決定したものに対して正当性と根拠を与えることにもつながります。
 こういった話とはまた別の次元で、科研費において「面白さ」を求めることは有益です。論文が公表され、それに触れる機会が増えることで「面白い研究」が世に出回れば、その研究は支持を集めることになります。支持があつまれば当然資金調達も容易になります。研究者にとってもこれは利点であるはずです。同時に、「面白い」と感じさせることで資金調達が容易になるのであれば、研究者たちは自分たちの研究成果を一般の人間が「面白い」と読めるように推敲するでしょう。ただ面白可笑しい脚色や、インパクトだけあるような内容に変えられてしまっては有害ですが、上でも述べたように「面白さ」と「理解すること」はある程度の関連性があります。「面白さ」を感じられるように「理解しやすくまとめること」が読み手の教養を深め、より科研に関する興味を強めたなら、それは非常に良い循環を生むと思います。
 このような循環を目指すための一手段としても、科研費の報告書の全文公表は利点があると考えます。論文の著作権や原稿料などの問題もあるかも知れませんが、「報告書を公開したこと」が社会に貢献したこととして評価されるようになれば、公開することにより得られる「別の利益(例えば研究者としての地位の向上)」も生むとと思います。
 毎朝新聞を読むように、学術論文がもっと日常生活の中に浸透すれば、良いか悪いかは別として、それは人生を「面白く」するような気がします。

コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
研究成果報告書の公開について (xx)
2010-07-01 23:23:03
平成20年度以降,科研費の研究成果報告書の様式が変更になり,一部の研究種目を除いて,電子ファイルで文部科学省または日本学術振興会に提出されるようになりました。
平成20年度科学研究費補助金における制度改正について(通知)[別添]:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/07120615/001.htm

また,研究成果報告書の全文が国立情報学研究所のKAKENデータベースから見られるようになりました。
例: 下記の画面中段の「この研究課題のドキュメント」のPDFをクリックすると成果報告書をみることができます。 http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/19840048
 
 
 
科研費ハンドブック (匿名)
2010-08-04 15:12:11
・科研費ハンドブック。DLしてみてください。
 これを読めば、科研費の使い方やルールがわかる。
 
 
 
附置研究所 (匿名希望)
2010-09-28 21:55:35
27行目あたりから、『もっと「研究所」等が上位に名を連ねているものだと思っていましたので、』とお書きしているので、一言。

国立大学法人には附置研究所(最近は○○センターと名称変更)が少なからずあります。(特に旧帝大)
 
 
 
今更ですが (Unknown)
2011-01-22 14:18:22
大学等研究機関に所属する研究者が応募する制度なので、単純に研究者の数が多ければ応募する研究者も多くなるので、研究費の総額は増えると思いますよ。
単年度当たりの配分金額が数十万円〜1億円くらいと幅広いので一概には言えませんが。

制度の概要やルールについては日本学術振興会のHPから調べられると思います。(本家の文科省より見やすいw)

新聞に増額とか基金化とか載っていましたが、いまいち情報がなくて来年度どうなるか気になっています。
 
 
 
見やすい表ですね (通りすがり)
2011-08-13 19:34:24
素晴らしいブログですね。
大変参考になりました。

個人的には、私学はもう少し支援されてもよいと思います。
 
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