国立大学職員日記
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■はじめに
 師走です。ボーナスです。となればこれに関するエントリーの一つでも書くのがお約束というものです。という訳で今回も平成24年12月のボーナスである「期末手当」と「勤勉手当」の情報をまとめてみました。
 平成24年度の月例給与及び期末・勤勉手当に関しては平成24年度人事院勧告で前年度水準より改定無しと判断され、また平成24年2月に成立した国家公務員給与削減法も既に6月の期末・勤勉手当から反映されているので、実をいうと今回の平成24年12月の期末・勤勉手当では前回6月実施分と比較しても特に目立った変更点はありません。ただ年度単位でみると、国家公務員給与削減法の影響により前年度に比べてかなり大幅に支給額が落ちている点は注意が必要です(詳しくは下図参照)。
 また今回はタイトルにあるとおり、勤勉手当がゆっくりと勤務実績評価型(「成果主義的」と言った方が分かりやすいかもしれませんが、人事行政等では「勤務実績に基づく評価」のような文言が使用されているため、あえて「勤務実績評価型」と表現しています)になっている件を取り上げてみました。これは今回の資料を作っている際に偶然発見したのですが、特にこういうことをやっている最中であると人事院等のアナウンスで聞いて無かったため、見つけた当初はちょっとびっくりしました。ただ勤務実績評価型の給与体系自体は平成18年度から開始された給与構造改革でも念頭に置かれていたものですし、個人的にも時流に沿っている良い傾向だと思います。それだけにもう少しこのことをアピールすればいいのにと思ったりもしたのですが、給与の勤務実績評価型への傾向はこれを嫌う教職員も少なくないと思うので、もしかするとそれへの配慮なのかも知れません。そうであればこのエントリーみたく取り上げない方が良いのかもしれませんが、見つけちゃった以上は取り上げます。国家公務員の給与など言い争いがあってなんぼでございます。


■算定方法について
 今回は先に算定方法を掲載します。詳しくは下図のとおりです。
 基本的な枠組みに変動はありませんが、現在は国家公務員給与削減法に基づく減額が行われている最中ですので、計算の最後に9.77%の引下げの処理が付いているのが特徴です。この処置は平成26年3月まで、回数としてはあと2回(平成25年6月と平成25年12月)続きます。
 また前回6月の期末・勤勉手当ではアホな与党のせいで平成23年度中に支払われた月例給与と期末・勤勉手当の0.37%分の引き落としがありましたが、これはあくまで平成24年6月のみの処置でしたので、今回及び今後は無い予定です。









■支給月数について
 上にも書いた通り、平成24年度人事院勧告では給与月数の引き下げは行われていませんが、国家公務員給与削減法による引下げが発生しています。この引下げは厳密には「給与額」の引下げなので、この「給与額」の引下げ率である「9.77%」をそのまま「支給月数」に反映させるのは、実は正確な計算方法ではありません。しかし、とにかく最終的に支給される金額がかなり低くなることをわかりやすく表現するため、下図ではあえて平成24年度の支給月数を、「3.95月」から単純に9.77%分引下げた数字である「3.564月」で表しています。この点、本エントリー独自の表現方法であることを、特にご注意ください。





 具体的な内容については、上のとおりかなりガッツリと減っています。過去7年間で最も支給月数が多かった平成19年・平成20年に比べると、わずか4年で1月分近くの減少、さらに手元にある「公務員給与法精義(第四次全訂版)」に掲載されている昭和50年度からの期末・勤勉手当の支給月数の変動から見ると、最も高かった平成3年と平成4年の5.45月からは2月分近く減少しています。今回の支給月数は国家公務員給与削減法の影響を受けているのでやや特殊なものですが、大体20年で2月分の減少であることを考えると、あと35年で国家公務員のボーナスは消滅するのかも知れません(あながちあり得なくもないような…)。


■期末・勤勉手当が次第に勤務実績評価型になっている話
 さてここからが今回のエントリーの本題です。まずは下図をご覧ください。





 この図は平成18年度以降の期末・勤勉手当の支給月数合計における、期末手当と勤勉手当の支給月数と全体におけるその割合を表にしたものです(説明をわかりやすくするため、ここでは国家公務員給与削減法による引下げは含めていません)。
 見てわかる通り、期末手当と勤勉手当はともに支給月数が下がっていますが、全体における勤勉手当の割合は上昇しています。これを見て「あぁ、確かに期末・勤勉手当がより勤務実績評価型になっているな」と思った方は罰ゲームとして今から腹筋20回やってください。実は上の図の情報だけでは個々の職員の勤務実績に応じて期末・勤勉手当の支給額に差異を設けるという意味での「勤務実績評価型への移行」は完全には読み取れないからです。
 ここで要点となるのは勤勉手当における「成績率」の存在です。そして結論から言うと、期末・勤勉手当において個々の職員間の勤務実績に応じて支給額に差異を設けるためには、現行制度上は「勤勉手当の成績率の比率」を操作するしか方法が無いのです(先に示した各手当の算定方法を参照)。
 ここでもまだ「え、どういうこと?」と思った方はついでに腕立て伏せも20回やった上で次の図をご覧ください(筋トレはバランスよくやらないといけませんしね)。





 この図は勤勉手当における「成績率」の推移をまとめたものです。ご覧のとおり、支給月数の低下に伴い、成績率も全体的に低下しています。しかし、ここではそのことはひとまず置いておいて、各支給年月における「良好」「優秀」「特に優秀」の「比率」に注目するため、次の図をご覧ください。





 この図は各年月の「良好」の成績率を「100」と仮定した場合に、「優秀」や「特に優秀」の下限・上限の値(つまり対「良好」成績率の比率)がどのくらいになるかを示したものです。そしてこの表こそが、個々の職員の勤務実績に応じて期末・勤勉手当の支給額に差異を設けるという意味での「勤務実績評価型への移行」を示している証拠となります。

 具体的にはどういうことか、例を挙げて説明しましょう。
 まず表において、平成18年6月時の勤勉手当の勤務評価「良好」の場合の成績率を100とした場合、「優秀」の下限は約110となっています。ここで手当基礎額や期間率等の状態がまったく同じであるAさんとBさんがいると仮定します。この場合、もし平成18年6月にAさんの勤務評価が「良好」で、その支給額として100万円をもらえば、Bさんの勤務評価が「優秀の下限」である場合にBさんは約110万円の勤勉手当の支給を受けることとなります。今度は平成24年12月の場合に目を向けます。この場合、「優秀」の下限の比率は平成18年6月の値から少し上昇して約114となっています。そのため、先ほどとまったく同じ条件下でAさんが勤務評価「良好」で100万円もらえば、Bさんは今度は勤務評価「優秀の下限」で約114万円もらえることとなり、AさんとBさんはそれぞれ過去と同じ勤務評価を受けているにも関わらず、Bさんの取り分はAさんに比べて増加する、つまり、個々の職員の勤務実績に応じて期末・勤勉手当の支給額に差異を設けるという意味での「勤務実績評価型への移行」が実現されている訳なのです。

 先ほど「期末・勤勉手当全体における勤勉手当の割合が増加しただけでは「勤務実績評価型への移行」が行われた訳では無い」と書きましたが、これについても補足しておきます。先ほどのAさん・Bさんの例で例えると、Bさんの受けた「優秀の下限」成績率は平成18年6月と平成24年12月では110と約114で数字が異なっていましたが、実はこの数字を平成18年6月と平成24年12月で同じにしたまま、期末・勤勉手当における勤勉手当の割合を増加させることも可能なのです(「期末手当」の支給割合の平成18年6月と平成24年12月における値を、「勤勉手当」の支給割合(成績率)のそれの低下率を超えて低下させてしまえば良い)。しかしこれでは勤務実績評価型へ移行したとは言えないため、上のように「成績率の比率」まで確認する必要があった、という訳です。


■期末・勤勉手当全体において勤勉手当の割合が増加している理由(「パイの奪い合い」防止策)
 さて、いったんここで話を変えます。
 上の章で、結局「勤務実績評価型への移行」は「成績率の比率」の変動の話であり、「期末・勤勉手当全体における勤勉手当の増加」とは直接には関係していないことを示しました。しかし、実はもう少し視野を広げると、「期末・勤勉手当全体における勤勉手当の増加」もまた「成績率の比率」の変動に伴う、一種の緩和策である可能性が見えてくるので、そのことだけこの章で説明します。

 まず先ほどの表をもう一度ここに引用します。





 この表において自分は、「期待値」という項目を設定し、欄外の説明にあるように一般的な「良好」「優秀」「特に優秀」の配分割合によって算出される職員一人当たりの勤務評価の期待値を示しました。そしてこの数値は年々上昇しています。つまり、「良好」「優秀」「特に優秀」の勤務評価がまったくランダムに(偏差なく)職員に割り振られるなら、一人当たりが長期的スパンにおいて受け取る勤勉手当の支給割合は増えている訳です。しかし実際には「良好」「優秀」「特に優秀」の勤務評価は各職員の能力に応じて割り振られることになります。そして、なおかつ国家公務員のように全体予算が限られた原資の割振りの問題である以上、「良好」「優秀」「特に優秀」の勤務評価が職員間の能力の高低に応じて偏差を伴って割り振られる場合、一部の職員が受け取れる割合が低下する可能性があるという、いわゆる「パイの奪い合い」の問題が発生するのです。そしてこのことを示したのが次の図です。





 これは先ほど成績評価「良好」を100で固定していた表に全体予算の項目を加え、今度はその全体予算の値を固定した場合における各成績評価区分の一人当たり取り分を逆算したものです。
 見てわかる通り、「優秀」「特に優秀」の取り分が増える一方で、「良好」の取り分のみが減っています。つまり、「パイの奪い合い」においては成績評価「良好」を受ける可能性が他の職員より多い職員、もうめちゃくちゃ乱暴に表現すると、特にこれといった取り柄も無く勤務評価が平均未満であることの方が多い職員にとっては「勤務実績評価型への移行」なんて無い方がありがたい、ということになります。
 当然、このような傾向がある場合には該当する職員からの反対が予想されます。そしてこれに対する予防策が、「期末・勤勉手当全体において勤勉手当の割合の増加」なのではないかと、個人的には思うのです。

 その具体的内容ですが、実際に数字を挙げて説明します。
 まず上の図において、勤務評価「良好」の職員が全体予算100,000の際に受け取れる値は平成18年度で「96.435」、平成24年度で「95.098」と、約1.38%の落ち込みとなっています。しかし、期末・勤勉手当全体における勤勉手当の割合、つまりパイ自体は一番最初に示した通り、平成18年度の「32.58%」から平成24年度の「34.18%」と約4.88%増加しているのです。そして、パイの増加分が勤務評価「良好」の取り分の落ち込みを上回っている((1-0.0138)×1.0488≒1.0343>1.0)ため、少なくとも期末・勤勉手当の支給額全体における、勤務評価「良好」の職員が受け取れる勤勉手当の割合は、勤務評価「優秀」または「特に優秀」の職員の割合と比較するとここ7年間で下がっているが、その職員の過去の割合と比較するとここ7年間で上がっている(ちなみに支給額自体は支給月数が低下しているので全職員仲良く低下している)となります。
 いわば他の職員と差をつけるが、その職員の時系列上からの比較においては損をさせていないという、とてもうまいやり方をしている訳です。これが意図的にされたものかどうかは明記している個所を発見できませんでしたが、おそらく意図的なものだと、個人的には思っています。


■おわりに
 そんな訳で平成24年12月における期末・勤勉手当の支給情報と勤務実績評価型への移行に関する考察でした。
 自分は夏はバイク・ツーリングであちこち走り回ってますが、冬はこれといって出かける予定も無いので、大体毎年この時期に冬の間に読む本を「積読」しておいて冬の間にじょじょに消化していきます。今年はいつか読もうと思っていた長編小説(赤波文庫赤版で4冊あるやつ)を含め7タイトルを購入して本棚にも既に挿入済み。期末・勤勉手当の支給額も下がったことですし、今年の冬は例年以上に本でも読みながら、のんびり過ごそうと思っています。

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コメント
 
 
 
Unknown (gucci replica)
2016-05-12 15:53:36
当然、このような傾向がある場合には該当する職員からの反対が予想されます。そしてこれに対する予防策が、「期末・勤勉手当全体において勤勉手当の割合の増加」なのではないかと、個人的には思うのです。
 
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