鴨川日記

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医療改革審議、怒りのメルマガ

2006-04-28 21:48:57 | 科学と医療
4月25日のメールマガジンで民主党の山井和則議員が医療の現状に憂える熱気がこもった記事を書いておられたのでコメントと転載をしたい。山井議員は小児科医と共に当直して実態を把握したりしているので100%正しいとは言えないまでも信憑性が高い意見だと思う。少なくとも与党や厚労省からそれに勝る熱気は感じられない。

順序は違うが、まず医師不足の実態についてもめたという部分。山井議員が「最新の医師の過不足の調査結果を出すように」と言っても、川崎厚労大臣は「いま、調査しているので夏まで待ってほしい。今あるデータは平成9年のデータしかない。それによると医師は足りている!」と答弁したそうな。山井議員は、そんなんじゃ話にならん!!といろいろと言い返されたとのこと(引用文参照)。この2~3年の激変を把握していないとはどういうことだろう。

更に山井議員は医師不足の中で起こっている最悪の事態は、医師の過重な労働が放置されてきたであると指摘し「いま、病院で起こっていることは『立ち去り型サボタージュ』だ」と言う。つまり「文句を言っても労働条件は良くならないので、病院を辞める。開業医になる。過酷な労働条件の産婦人科、麻酔科、小児科、へき地などを選ばない」という傾向で、「形を変えた勤務医のストライキと言えるものです」と言い表している。なかなか実態をある意味うまく洞察していると思う。

小児科や産婦人科の医師不足について連日といっていいほど報道されているが、山井議員の「小児科では女性医師が4割、産婦人科では5割です」、それでも「月平均の時間外労働は100時間以上、・・・月平均4、5回の当直・・・」という記載をみてバラバラに聞いていた情報がつながりました。「このような実態で、女性医師が果たして働き続けることができるのか」という問いかけは至極まっとうだと思います。

時々、衆議院などの議事録を見たりもするが「こんなお粗末な国会審議には情けなくて涙が出ます」という実情を国民が考えながら監視する必要があるでしょう。

最後に山井議員は今のまま医療制度改革の政府案が成立すれば、2006年は「医療崩壊元年」として歴史に残るでしょうと与党・厚労省の不作為に怒りを表している。

以下に山井議員のメルマガを引用します。いつものよりかなり長くなっています。



やまのい和則の「軽老の国」から「敬老の国」へ
       - Yamanoi Kazunori Mail Magazine -
             第809号(2006/04/25)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
 今日(4/24)は、多くの方々から千葉の選挙のお祝いを言われ、
 うれしい一日でした。
 国会での民主党の雰囲気も明るくなってきました。反転攻勢にがんばります。

○まず1つ。先日、会津藩の掟(おきて)が、渡部国会対策委員長の
 部屋に飾ってあると書きました。そのとき書いた「おきて」に加えて
 もう1つ大きな「おきて」があるのです。
 それは、「ならぬものはならぬ」という「おきて」です。
 この言葉が、渡部委員長の部屋に大きく飾ってあります。
 この言葉の意味は、
 「やってならぬことは、どんな理由があっても、絶対にやってはならない」
 ということです。非常に重い言葉です。

○さて、先週金曜日の与党の強行的な採決により、25日と26日に
 参考人質疑が決まりました。それぞれ午前中3時間半です。

 民主党が呼ぶ参考人は四人。産婦人科の女医さん、がん患者の団体の方、
 医療経済の学者さん、連合の担当者の方です。

 それぞれ今回の政府の医療制度改革案などについて貴重なご意見を
 いただきます。
 25日に来てくださる女医さんは、女性の医師の勤務を続ける大変さに
 ついて語っていただきます。

 このメールマガジンでも小児科や産婦人科の医師不足のことを書き
 ました。小児科では女性医師が4割、産婦人科では5割です。
 にもかかわらず、今までから述べているように、月平均の時間外労働は
 100時間以上、それに更に加えて、月平均4,5回の当直。
 その際には、ほとんど仮眠もとれず、2日連続の32時間連続勤務。

 このような実態で、女性医師が果たして働き続けることができる
 でしょうか。結婚や出産、あるいは、体力の衰えを機に、小児科や
 産婦人科の医師を辞めたり、開業したりする女性医師が増えるのは
 当然です。

 しかし、厚生労働省は女性医師の雇用継続について有効な支援を
 してきませんでした。院内保育所の設置や、短時間労働の選択、
 そして、3交代のシフト制など、やるべきことは多いのに、
 対策は進んでいません。

 小児科、産婦人科の医師不足問題は、女性医師問題とさえ言えます。
 
 今まで日本の医療は病院の勤務医の方々の献身的な過重な労働基準法を
 完全に違反した労働により成り立ってきました。

 しかし、女性医師が増えた今日、そのような「根性主義」では、
 もう制度が持たないのです。

 25日は、子育てをしながらも産婦人科、新生児医療の最前線で
 働く女性医師の方を参考人としてお越し頂き、お話をお聞きします。

 これはひいては女性医師だけの問題ではなく、すべての日本の職場に
 おいて、女性がいかに働き続けにくいか、家庭との両立に女性は
 いかに苦労し、いや、奮闘しているかということです。

 医療の世界も男社会から、男女共生の世界に転換せねばなりません。

○もう1つ。今日24日の厚生労働委員会の理事懇談会では、医師不足
 問題でもめました。
 民主党は、「最新の医師の過不足についてのデータを出すように」と
 与党に迫りました。つまり、地方の病院が医師不足が原因で閉鎖され、
 小児科、産婦人科、麻酔科などの医師不足が深刻化しています。

 「最新の医師の過不足の調査結果を出すように」と言っても、

 「いま、調査しているので夏まで待ってほしい。今あるデータは、
  平成9年のデータしかない。それによると、医師は足りている!」
 と、川崎大臣は答弁しています。

 「平成9年といえば、9年前。そんな古いデータに基づいて国会審議は
  できない。 最近では、インフォームドコンセント(説明にもと
  づく医療)により、一人の患者さんにかかる診察時間も伸び、
  研修医制度で若手の医師も減り、医療の高度化も進んでいる。
  にもかかわらず、9年の前のデータにもとづいて、よくも『医師は
  足りている』と答弁できますね。そんな無責任はいい加減な話は
  ない。9年前の実態調査にもとづいて、医療制度改革の法案をつくる
  なんて、あまりにもお粗末」
 と、私は言いました。

 医師は各分野で不足しています。しかし、その実態を表に出せば、
 医師を増やさねばならなくなります。そうすれば、今回、政府が
 提出した「医療費抑制」を第一目的とした医療制度改革法案が、
 成り立たなくなるのです。だから、政府は、最新の実態を出さない
 のです。

 どこの病院でもいいです。病院に行けば、医師不足の実態がわかり
 ます。にもかかわらず、全く実態から目をそむけている政府には、
 医療の未来を語れません。

 私は大学時代、工学部で酵母菌の研究者でした。だからかもしれませんが、
 根拠やデータもなく議論することに、強い違和感を覚えます。
 国会で医療の未来を審議するのに、現時点で医師が不足しているか
 否かも、9年前の調査しかない。こんなお粗末な国会審議には情け
 なくて涙が出ます。医療現場で必死になって献身的に働いている方々、
 また、より良い医療を受けたいと願っている患者さん。
 その方々の声を届ける責任が私たち国会議員にはあります。

○もしかしたら、私の最近のメールマガジンは医師の立場に偏りすぎて
 いると思われるかもしれません。実際、看護師や薬剤師をはじめ、
 医療従事者すべてが過重労働に苦しんでいます。
 しかし、私が最近、メールマガジンで医師のことを書いている理由は、
 医師が過酷な医療現場を立ち去ることにより、医療現場がいま、各地で
 崩壊しているからです。

 つまり、先ほど書いたように月時間外労働が100時間以上、月に4,5回の
 当直では、ほとんど仮眠もとれず2日連続の32時間連続勤務。
 労働安全衛生法での、過労死危険ラインを大幅に突破し、労働基準法を
 完全に違反している小児科、産婦人科、救急医療の現場でいま、
 何が起こっているか?

 医師が「過重労働だからおかしい」と労働組合をつくって主張する
 でしょうか? 「労働時間を短くしろ」と要求しても、そもそも医師が
 いないのですから、無理なのです。
 それに、
 「高い給料もらっているし、患者の命を預かっているのだから、
  過重労働に不平を言うのはおかしい。医師は聖職だ」
 という批判もあります。

 だから、今まで病院の勤務医は大きな声では、自らの労働条件の
 過酷さを訴えることはしませんでした。
 日本医師会もどちらかと言えば、開業医の団体であり、病院勤務医の
 悲鳴はなかなか国会には届いていませんでした。

 その結果、過酷な労働はずっと放置されてきました。
 しかし、もう限界です。いま、病院で起こっているのは、
 「立ち去り型サボタージュ」別名「逃散(ちょうさん)」
 と、呼ばれる現象です。

 つまり、文句を言っても労働条件は良くならないので、病院を辞める。
 あるいは、開業医になる。楽な診療科に移る。そもそも医学生が、
 過酷な労働条件の産婦人科、麻酔科、小児科、へき地などを選ばない。
 という傾向です。
 これは、形を変えた勤務医のストライキとも言えるものです。

○厚生労働省が、労働基準法違反の現状を黙認している。もし、
 おかしいと指摘すれば、医師不足が明らかになってしまう。
 また、何よりも1つの救急病院を労働基準法違反で摘発しても、
 実は、ほとんどすべての救急病院が、労働基準法違反の実態があり、
 労働基準法違反を摘発すれば、日本の医療体制が崩壊してしまう。
 これを黙認している厚生労働省の責任は大きい! 

 逆に、病院も正確に労働基準局に労働実態を届け出たら、違反になる
 ので、違反にならないような書類しか出さない。
 その結果、病院も厚生労働省も過重労働の医師を守ってくれない。
 それどころか、ますます事態は深刻化し、医師が逃げていく。
 医師が逃げれば逃げるほど、残った医師は、過酷な労働を強いられる。
 こんな医療崩壊スパイラルが、今すごいスピードで進んでいます。

 安心してお産ができない国、安心して子どもが医療を受けられない国、
 地方では十分な医療が受けられない国に、日本はなろうとしている。

 しかし、その「医療崩壊」の現実をわざと見ようとしない政府。
 そして、患者や家族も医師への要求はエスカレートするが、病院の
 勤務医の労働条件の向上にはほとんど関心を示しません。
 そして、医療訴訟が最近、増えています。小児科や産婦人科を
 志望する若手医師が減るのも当然かもしれません。

○ここまで書くと、「山井は医師の代弁をしすぎだ」とお叱りを受ける
 かもしれません。しかし、今ここで、救急病院や産婦人科、小児科を
 はじめとする過酷な病院勤務医の労働条件を改善しないと日本の医療は
 崩壊します。
 患者も過労状態の医師からは良い医療を受けることができません。

 そして、今、多くの医師が過酷な医療現場から「立ち去ろう」として
 いる時、それを食い止めるのは、医師を増やすこと、開業医や他の
 診療科から援助を受けることなどのために、多くの予算を集中的に
 投入せねばならないのです。

 すべての医師が過重労働なわけではないです。
 地域によって、病院によって、診療科によって、また、開業医か勤務医か
 によって、仕事の大変さと収入に大きな差があります。
 それをある程度、平均化することが必要ですし可能です。

 しかし、そのためには多くの予算が必要になるため、政府は「医療崩壊」
 を防ぐ具体的な政策を今回の医療制度改革案には盛り込んでいません。

 今年、この法案が成立すれば、2006年は「医療崩壊元年」として歴史に
 残るでしょう。

 怒りはおさまりませんが、夜中3時半になりましたので、メールマガジン
 これで終わります。長いメールマガジンに最後までお付き合いくださり、
 有難うございました。
                       山井和則

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4 コメント

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同感です (江原朗)
2006-04-30 19:48:17
小児科医療、産科医療の崩壊は国民のわがままを無限に受け入れた政策の結果と思います。山井さんにはお会いしましたが、とても真摯な方でした。
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コメントありがとうございます。 (ユリカモメ)
2006-05-01 13:01:39
江原先生、コメントありがとうございます。地元京都でありながら山井議員にお会いしたことはありませんが、信頼に値する議員だと思います。しかし、今は政治家に委ねるだけでなく、現場の医師自体が問題を考え、おかしいことにはおかしいと言っていかないといけない時期ですね。
返信する
小児科医は過労死が多いとの医師会雑誌の論文 (江原朗)
2006-05-09 15:44:27
医師会雑誌に小児科勤務医が他科の医師に比べて過労死の比率が高いと論文を書きました。



返信する
コメントありがとうございます。 (ユリカモメ)
2006-05-10 20:43:05
江原先生、小児科医の過労死について論文発表されたとのこと、ご尽力に敬意を表します。少しでも、役人に示せるものを持ち、変えていければと思います。
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