二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2013 J2第35節 京都vs長崎

2013-09-29 | 蹴球

京都サンガF.C.○2-0●Vファーレン長崎
13'バヤリッツァ
48'駒井善成

■影武者
 今、世間では代役のことを影武者と表現するのが(一部で)流行っているらしい。となると、この日体調不良で欠場した山瀬功治に代わってスタメンに名を連ねた宮吉拓実は、山瀬の影武者である。もちろん、山瀬と宮吉は違う個性を持ち、長所も短所も全然違う。宮吉の優れている所は、{ディフェンスラインとの駆け引き} {気配を消してからの抜け出し} {周囲への気配り}…あたりだろうか。しかしこのゲームの宮吉はどうもゲームに入れていなかった。サイドから中央に絞っていく動きをしても、それが効果的な攻撃に繋がっているかといえば疑問符が付く(相手への牽制という意味では効果的だった)。基本的にサイドにいるので、相手最終ラインとの駆け引きしようが効果も薄く…。山瀬の影になれず、宮吉としても周囲に上手く使われず、本領を発揮したとはいえなかった。影武者が落武者にならないことを願う。
 ところで宮藤官九郎氏の影武者の概念はちょっと間違っていて、本来影武者というのは、総大将の身なりをして一番目立つ所に身を晒して、敵勢を一身に引き付ける役目。護良親王の影武者となった村上義光などが有名だ。そういう意味では、相手を引き連れては身体を張ってファウルをもらっていた横谷繁こそ、素晴らしい影武者ぶりだった。

■じぇじぇじぇ!
 影武者(代役)といえば、酒井隆介は染谷悠太の代わりで出て好パフォーマンスを発揮し続け、今や京都の守備に欠かせない存在となっている。この日も相手に激しく寄せ、素晴らしいスピードでカバーしながら堅守を築いていった。
 このゲームをワンフレーズで言い表すならば「球際」。前半から長崎は寄せが速く、球際で決して負けない勇敢なチームだった。対する京都も球際に強く行き、競り合いでも酒井、バヤリッツァを中心に応酬。そしてオスンフンの「じぇじぇじぇ!」と驚くハイボールの強さ。長崎との対戦では、どうも守備陣が奮起するようだ。
 もっと「じぇじぇじぇじぇ!」っと驚いたのは後半からの福村貴幸の球際の強さ。危ないところに急行してはボールをさらって前に出す。2点目もそんなプレーが起点になった。けれども目を見張るべきは攻撃面よりも守備面の充実。これだけ球際で激しく行けるならば、頼もしいことこの上ない。
 後半、長崎は疲れて運動量が落ちたが、京都は落ちなかった。倉貫一毅と工藤浩平のベテラン勢のボールへの寄せも速く、寄せては返す波のように、激しく奪っては攻撃に転じることができた。守備の調子を上げていくことが、おそらく昇格戦線を勝ち抜く鍵。大木監督、わかってるじゃん。


〈京右衛門的採点〉
 オ 7.5 …クロスもシュートも防いで、止めて、弾きまくった。サンガの守護神、熱いよね~。
安藤 6.5 …自陣ゴール前から敵陣深くまで攻守に躍動。厳しい場面でも身体を張った。
酒井 7.0 …序盤にミスもその後は激しい守備で突破を防ぐ。前に行くバキとの関係も良好。
バヤリッツァ 6.5 …勇猛果敢な守備で空中戦得意の長崎攻撃陣に制空権握らせず。先制点も見事。
福村 7.0 …危ない場面に現れては救っていくスーパーマン。攻撃への貢献ぶりも大きかった。
秋本 6.0 …前半はミスもあったが、最終ラインのカバーで存在感。70分の大ピンチを防ぐ。
倉貫 6.5 …ボールの動く局面によく顔を出してはファーストプレス。安藤との補完関係も抜群。
工藤 6.5 …よくバランスをとりながら高い位置で奪う場面も。テンポを変えるパスも熟練の技。
駒井 7.0 …ガンガン仕掛けて長崎守備陣を退かせた。得点場面でも貪欲。運動量も途切れず。
横谷 6.0 …前線でよく身体を張ってキープ。もっと能動的に前を向ければもっと怖さが出るはず。
宮吉 5.0 …ボールが出てこないのか、受けに行けてないのか、攻撃に有効に絡めず。全体的に鈍し。
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三平 5.0 …右サイドで守備で追う時間が多かったが、決定的なシュートを外す。あーあ(ため息)。
中村 5.5 …プレスに突破に気合いは感じられたが、ミスも多し。打開するアイデアは持っている。
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大木監督 6.5 …相手の勢いをしっかり受け止め、最終的に走り勝つ展開。見応えある戦いぶり。






2013 J2第34節 京都vs富山

2013-09-22 | 蹴球

京都サンガF.C.○3-2●カターレ富山
55'酒井隆介
59'横谷繁(p)
          78'木本敬介
89'三平和司
          90'+2苔口卓也


■停滞
 ここ最近の“サンガあるある”として、「前半エンジンのかかりが遅れがち」というのがある。このゲームは登録上横谷繁と山瀬功治の2トップだったが、二人とも中盤でボールを受ける役割で、いわゆる0トップ布陣といって差しつかえなかった。横谷が引いてきて受ける→パス回しで停滞→ボールを失って富山のカウンター→富山がミスをしてくれる→前にボール出す→停滞…前半はだいたいこんな感じでちょっと進んでは停滞する、の繰り返しでエンジンかからず。あえてFWらしいFWを置かないこの布陣の意図に疑問を感じつつ、低調なまま前半終了のホイッスルが鳴った。暑さや降灰の影響もあっただろうが、駒井善成は簡単にボールを失いすぎたし、福村貴幸は簡単に速攻を許しすぎた。


■動くクサビ

 後半になると急に動きがよくなりがちなのもここ最近の京都サンガ。セットプレーから先制点を奪った後にはすっかりエンジンが温まっていた。そして前半は発揮できなかった0トップの意図も明確になる。横谷、山瀬に加えて駒井と工藤浩平の4人は、いわばクサビだ。1トップで使うような大型のクサビではなく、小さいけれどもいろいろな場所に打ち込める動くクサビ。彼らの一人を敵陣に打ち込んで、追い越す動きやリターンを受ける動きで敵陣を崩していく。―そんな意図がクリアになった。
 56分のプレーが象徴的で、ボール受けた横谷がそのままエリアに侵入。前には誰もおらず出し所もなかったが、工藤が囮のように横切り、後ろから山瀬が近付いた。そして山瀬に出しての強烈シュート。富山GK飯田健巳に弾かれたが、そこから得たコーナーキックが2度続き、2点目のPK獲得に繋がっていく。
 去年も最終的に0トップに到達した大木監督。後半からしかエンジンがかからないのと、ダイナミックさに欠けるのは気がかりだが、山瀬と横谷の能力を一番生かせる布陣だとは思う。あとは時間帯によってはシンプルにクロスを入れたり、積極的にミドルを浴びせたり、そこらへんのオプションの充実、ですかね?終盤何となく集中力を欠いて失点を重ね、すんなり逃げ切れなかったのは火山灰による影響ということにしておこう。うん。


〈京右衛門的採点〉
 オ 5.5 …終始灰を気にしてた様子で、割とイージーなシュートで2失点を許す。
安藤 6.0 …後半からは良いタイミングでのカットや駆け上がりでダイナミズムが出た。
酒井 6.0 …スピードでカウンターを封じる動き、大胆な上がりなどゴール以外も見所あり。
バヤリッツァ 5.0 …2失点とも苔口のスピードに対応できなかったことが原因。凡ミス多し。
福村 5.5 …簡単に抜けられてクロス入れられ放題。3点目を呼び込んだ果敢な上がりは評価。
田森 6.0 …中盤での潰しと最終ラインのカバーの役目を堅実にこなす。
倉貫 6.0 …前半はハマらなかったが、後半は前後左右によくバランスを保つ潤滑油に。
工藤 6.5 …飛び出しのタイミングが良く、多くのチャンスを生んだ。前線からのプレスも◎
駒井 5.0 …仕掛けては失い、集中力を欠くプレーも散見。足首を蹴られ負傷交代。
横谷 6.0 …自在に動いてボールを収め、攻撃の基点に。前への積極性があればもっとよかった。
山瀬 6.5 …周囲がよく見えている動きは抜群。3点目を生んだ泥臭い粘りも良かった。
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宮吉 5.5 …最初は硬かったが、サイドと中を往復しながらチャンスによく顔を出した。
三平 6.0 …身体を張るプレーが多かったが、宮吉に落とし、動き直して受けた3点目は見事。
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大木監督 6.0 …またも後半からチームを変える。できれば安心して逃げ切る試合運びを。

Jリーグの成長戦略に思うこと

2013-09-17 | 蹴球
「結局、金欲しさでしょ?」
今回のシーズン制改革案については、このひと言で片付けられてしまうのです。
なので、これからとりとめもなく書くことにはさほど意味為さないのです。という前置きをした上で駄文を綴ります。

そもそも何ゆえ「成長戦略」って話が出てきたのでしょうか?
ざっくりと平たく言ってしまえば

「このままではジリ貧になる」
  
どうしてジリ貧になると予測しているのかは、中西氏がいろいろ根拠を示して言っておられますが、その中で氏はこういう言葉を使っています。

・一般の人
・一般の方
・一般層


今のJリーグを熱心に見てる人は、もうそれだけで一般じゃない。特殊な存在ですよ、と。
ということは、彼の論法からいくとこのような分け方ができますね。
  
・特殊な人たち
・一般の人たち


氏はエルゴラのインタビューでは「一般からの関心が落ちている」ので、リーグの価値が降下すると言います。もう少しハッキリと、“スポンサーバリュー”という言葉を使っているのですが、これはちょっと置いておきましょう。

ここまでのことは、実は拙者も大部分で同意します。コア層はすごく詳しいけれど、関心がない人は本当にJリーグに興味がない。日常会話として話題にすら上らない。普遍性がなく、知識としてカルトな分野に入ってしまう。これはやはり問題だと思います。

図式化するとこんな感じでしょうか?

ところがここで一般からの関心を向上させるために、
Jリーグは「ポストシーズン制」が有効だという「改革案」を引っ張り出しました。
中西氏曰く「たくさんの人に見てもらう機会」…なるほどね。

たくさんの人に見てもらう機会、実は既にありますよ?

それは天皇杯の決勝。毎年決まった日時にNHK総合で放送していて、国内サッカーのテレビ中継では視聴率も良い方。最近ではJ2決戦となった京都-FC東京は前半9.2%・後半8.5%で、これも近年ではかなり良い方の数字です。

そうした「テレビという接点」が中西氏の言う通りライト層を取り込むきっかけに……なりますかね?
テレビというメディアの持つポテンシャルがデフレを起こしてしまっている昨今、これは甚だ疑問です。

では本来サッカーにさほど興味もない「一般の人たち」がそもそも何を見たくてサッカーを観るのでしょうか?それは本田でしょ!香川でしょ!内田でしょ!長友でしょ!遠藤でしょ!…そのことは今年のJ2で起こっている「AWAYガンバツアーのSOLD OUTぶり」、最近の「柿谷フィーバー」を見れば一目瞭然ですよね。

これは極論すぎるかもしれませんが、「一般の人」は特別なゲームもましてや充実したゲーム内容など求めてないのです。スター選手が見たいのです。
代表の親善試合で内容がイマイチでセルジオ越後がおかんむりでも、内田が元気に走っているだけで、本田がほっぺ膨らませてフーッと深呼吸するだけで熱狂するんです。
拙者は別にそのことを見下している訳ではありません。珍しきモノを見物したいという“物見遊山欲”は、古代から我々日本人のDNAに刻まれた享楽メンタリティですから。至極当然のことです。

逆にサッカーをきちんと観たい、チームをちゃんと応援したいという「特殊な人」が求めているのは、魂が震えるようなゲームですよね。殊更にショーアップしていただかなくとも「勝てば天国、負ければ地獄」というシチュエーションさえあればごはん3杯おかわりできます。具体的な例としては、J1J2入替戦でしょうか。ショーアップの余地すらない残酷な戦いの目撃者になれる体験は、サッカーの持つ最も真摯な結晶の部分に触れられるということ。それ以上のエンターテインメントはないのです。

長くなりましたが、要するにシーズン制の枠組みを変えることは、「一般の人」にも「特殊な人」にも、興味を引きつけるという意味においては
特段有効な手段とは思えないということ

特に「一般の人」は複雑なシステムを嫌います。オリンピックはメダルが懸かった決勝だけ観るのです。途中経過はどうでもいい。大半はメダルの懸かった試合しか見ません。

「えー?ファイナル見てくれるんでしょ?それならイイじゃん。それで興味持ってくれた人がファンになってくれるよ」―こんな意見もあるかもしれませんが、大半はファイナルしか見ませんよ、たぶん。それが「一般」たる所以です。

同様に「えっ?チャンピオンシップも真剣勝負じゃん。全サポが盛り上がるよ?」―こんな意見もあるかもしれません。これはやってみないとわからないですね。盛り上がるかもしれませんが、一方で釈然としない部分が残るのも確実です。
年間3位でもプレーオフで負けて昇格できず、それでも「決まってたルールだから」と割り切って特に文句も言わず悟りきるという体験を済ませているので、それは言い切れます。

もう一度まとめておきましょうか。


それじゃあこのシーズン制の枠組み変えるのは何のためなのよ?ってことになりますが、Jリーグが豪語している「スポンサー料10億円」欲しさであることは疑いの余地はありません。

ここで「スポンサーバリュー」という言葉をもう一度考えましょう。

リーグの価値は本来、どれだけ満足度が高いか、どれだけ顧客を満足させられるか、という点で語られないとおかしいのですが、中西氏の見解ではリーグの価値=スポンサーバリュー(金銭的価値)です。

サッカー日本代表にはスポンサーバリューがあって、Jリーグにはスポンサーバリューがない。
端的な尺度を持ち出せば視聴率の差ですね。

視聴率…この曖昧模糊とした用語を説明するために、ちょっと土地の値段に置き換えてみましょう。

日本代表は、いわば新宿とか渋谷の駅前です。人がたくさん行き交い、そこに看板出せばみんなが見てくれる。
超優良物件ですね。ナンボでも広告料がとれる。そうですね…仮に広告掲出料1000万円としましょうか?

Jリーグはもはや農地です。そこに看板建てても、たまに国道を通る自動車から見えるくらい。
広告掲出によるアピール価値は激薄です。10万円くらいで広告出し放題。
「これじゃダメだ!J農地にももっと人集めるようにしよう!農地に手を入れてお花畑にでもすればわかりやすく人が来てくれるんじゃないか?」―想像するにだいたいこんな感じですよね。接触機会を増やすこと=広告枠の価値を上げることが目的になっている、つまり完全に広告屋の論理です。極論すればその物件をプロモーションして実際に売れるかどうかは関係ない。その物件に看板広告枠が売れさえすればいいのです。

拙者は世間から注目を集めるために、もっといろいろとできることはあると思っています。そうやって「物件」の本質的な魅力をアップさせて、それに伴って広告料がアップする、「スポンサーバリュー」が上がるというのが正当だと思います。

週刊サッカーダイジェストでは後藤建生氏がこの本質を伴わない成長戦略をアベノミクスになぞらえていたのは上手い例えでした。そうなんです、結論ありきの誘導なんです。「この服を着れば必ずモテるようになるから、さぁまずはこの服に着替えて」的な。もちろん外見から整えることで、内面まで変わることもあるのですが…。

現状の方式のままで、まだまだ試すことはあるんじゃないんでしょうかね?

・注目試合を用意して冠スポンサーを食い付かせるアイデア とか
・ライト層が観たいと思える選手を呼んでくる算段 とか
・スターを自前でプロモーションする努力 とか
・もっと地方に目を向けた放映権のあり方 とか


「改革」自体には反対ではないのですが、その手法や方向性には疑問がある次第でございます。

言いたい事がうまくまとまらず、とりとめのない話になりました。









2013 J2第33節 千葉vs京都

2013-09-15 | 蹴球

ジェフユナイテッド千葉●1-2○京都サンガF.C.
16'田中佑昌
               66'安藤淳
               77'山瀬功治


■臆病な戦い
 前半の千葉の速すぎる出足と猛烈なプレスを何と表現したらよいのだろうか。千葉陣地に攻め入ろうともすかさず槍衾を作られ入り込む余地もない…みたいな。その攻撃的な守備の前に京都は為す術なく、ボールが三平和司に入ろうが、山瀬功治に入ろうがまったく収まらない。パスコースというパスコースは全部千葉が消してしまう。まるで相手の方が1~2人多い錯覚を覚えるほどに差があった。それにしても千葉に槍を突き付けられた京都の選手たちは臆病だった。特にボランチとサイドバックが前に出ないのだから数的不利感はますます広がってゆく(倉貫一毅は比較的冷静に前線へと配球していたが)。
 完全に千葉に主導権を握られたものの、セットプレー(CK)からの失点だけに抑えられたのは幸いだった。流れの中からのプレーでは、中央のケンペスには手を焼いたものの守備陣は最後のところではどうにか踏ん張れていた。問題は自分たちのボールになった時に前に出て行くことに対して臆病だったこと、ボール回しに対するためらい、判断の遅さだった。

■立場逆転
 後半になると、あれだけ出足の速かった千葉のプレスが鈍った。と同時に、京都は前線でボールが収まりはじめる。天皇杯佐川印刷戦同様、三平が引いてきて工藤浩平が積極的に前線に関与するようになったのだ。そして千葉と京都は、大林宣彦監督の映画か何かのように入れ替わりを果たす。時間が経つほどに出足が鋭くなる京都、前に出ることに臆病になる千葉…。千葉は、前半飛ばしすぎたに違いない。ペース配分を完全に誤っていた。
 相手を押し込んでしまう「型」にハマってしまえば、大木サンガは強い。ここ最近ブレーキ気味だった安藤淳がどんどん前に出て、敵陣に入り込む工藤と共にチャンスメイク。そしてアグレッシブさの塊のような中村祐哉の投入により、流れを完全に引き寄せた。工藤の美しいバイシクルシュートこそポストに嫌われたが、右安藤→左山瀬の大きな展開から、クロスに飛び込んでGKと競ったのは秋本倫孝。前半あれほど自陣釘付けだった選手が、ここにいた。秋本の粘りが生んだ安藤の同点弾は、千葉の心を折るには充分だった。逆転弾は駒井善成のスルーパス→抜け出した中村のクロス→右足で合わせた山瀬のシュートの3つが流れるようにシンクロした文句なしの美しいゴール。特に駒井と中村の機動力あふれるコンビネーションは、今後の反撃の鍵になるのではないかと思えたほど。
 終わってみれば、ゲームコントロールができなかった千葉と、コントロールできた京都。本当に強いチームならば終始ペースを握り続けるのだろうが、まぁ「後半勝負だ!」「倍返しだ!」も悪くない。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.0 …危ういミドルを弾き、追加点許さず。ハイボールも安定感。
安藤 5.5 …前半はひどい出来。後半自らチャンスを作ってゴールを仕留める。
酒井 6.0 …粘り強いカバーと慌て気味の処理が同居。三平ヘッドをクリアしたのはご愛敬。
バヤリッツァ 6.5 …久々に強さを発揮。終盤は完全に制空権握り、森本も封じた。
福村 5.5 …前半は積極性ゼロ。後半は良化。終了間際身を挺してシュートブロック。
秋本 6.0 …前半は後ろ向き。後半はボール拾いまくり、前へも出ながら同点弾を生む。
倉貫 6.0 …前後半ともバランスよくポジショニングと配球をこなす。渋い働き。
工藤 6.0 …守勢でも攻勢でも、ゲームの流れを左右する動き。バイシクルは惜しかった。
駒井 6.5 …豊富な運動量は最後まで途切れず、前へ後ろへ。影のMVP。
山瀬 6.0 …前半はミスの山を築いたが、大事な勝負所で得点を引き寄せるプレー。
三平 5.0 …前線でのポストは機能せず。チャンスもあったが、FWとしては物足りない。
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中村 6.5 …積極的な仕掛けでチャンスを拡げた。逆転弾のアシストは超絶。
下畠 ――
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大木監督 6.0 …適切な調整で後半ガラッとチームを変えた。3トップへのこだわりも捨てた。


2013 天皇杯2回戦 京都vs佐川印刷

2013-09-08 | 蹴球

京都サンガF.C.○4-0●佐川印刷SC
58'工藤浩平
67'工藤浩平
83'三平和司
87'三平和司

■前線分断
 世に4-3-3とされる現在の京都サンガの布陣。個人的には今まで1トップの疑念を捨てきれなかったのだが、この試合をみると前線には確かに3人のトップがいた。三平和司という1トップ、山瀬功治という1トップ、駒井善成という1トップが中央、左、右にいて、それぞれに違った個性で攻撃に基点となる………と、いいように書けばそうなるのだが、その実は串に刺さってない団子のようなもの。1トップ×3がバラバラに前にいて、3トップ同士が絡まない分断サッカーだった。
 山瀬をサポートする福村貴幸、駒井をサポートする安藤淳というのはまだしも、三平に至ってはまったくサポートがない。佐川印刷のプレスはかなりアグレッシブで、中央からボールを前に運べないのだ。もちろん、佐川印刷の戦いぶりは賞賛すべきだが、JFL相手にも通用しなくなった大木式3トップ、そろそろ見直しの時期が来ているのでは?

■その時、人が動いた
 後半になって大木監督は割と大きくテコ入れをしてきた。まず三平が引いて受けるようになり、入れ替わるように工藤浩平が前線へと飛び出すようになった。これは前半はまったくなかった縦関係の人の動き。もうひとつは、駒井が右に縛られることなく左にも流れて、いわゆる縦横無尽に動き始めたこと。ピッチを左右に横断する人の動きもまた、前半になかったものだ。先制点は左にいた駒井から。駒井がドリブルで切り込み、折り返しを工藤が詰めて叩き込んだ。さらに2点目は右の駒井が安藤のロングフィードに呼応して抜け出し、きれいなクロスを工藤がボレー。左駒井に右駒井、中を取り持つ工藤浩平…といった具合に解き放たれたように人が動き始め、相手を崩していけたのは、今後のリーグ戦の大きな参考になるのではなかろうか。

■牙を剥く虎のように
 この試合、もう一人特筆したい選手がいた。中村祐哉、今やサンガで唯一のユウヤである。海を渡ったユウヤもそうだったが、彼らは飢えた目をして勇躍する。祐哉はたった10分の出番だったが、まるで牙を剥いた虎が獲物を追うようにボールに喰らいつき、ためらうことなくボールを前へ前へと運んだ。83分、中村が粘って粘ってボールをロストせずにゴール前にふわっとスルーパス、呼応した三平が上手く合わせるもGK山岡哲也が至近距離で防いだ。そのクリアボールが浮き球になり三平がGKに競り勝ってヘディングで押し込むという面白ゴール。一見珍プレーの中にも、ゴールに飢える者たちの執着心があったことは見逃せない。その後も中村はロングフィードに抜け出してからの絶好の折り返しなど、見る者を爽快にさせる躍動感あるプレーを見せ続けた。
 今日試合を観た者の多くは、こういうプレーをもっともっと見たいと思ったはず。ここ最近の手詰まり感、閉塞感をぶち破るにために、飢えた目をした選手を最初から使ってみませんか?大木監督。


〈京右衛門的採点〉
児玉 6.0 …佐川印刷の決定的シュートを2本防ぐ。大きなミスもなく、コーチングもハッキリ。
安藤 6.0 …守りは激しく、攻めるタイミングも良かったが、キック精度はもうひとつ。
染谷 5.5 …何とか無難に持ちこたえたが、スピード勝負で遅れを取る場面は気になる点。
バヤリッツァ 5.5 …強さは見せたが、雑なプレーや裏へのケア不足もチラホラ。
福村 5.0 …前半は簡単に躱されピンチを招く散々の出来。後半はよくボールを拾った。
田森 5.5 …セーフティ優先で、最終ラインのカバーが多かった。良くも悪くも無難。
工藤 6.5 …前半はパス出しに迷っていたが、後半はスルっと飛び出し、しっかり詰めて2ゴール。
倉貫 5.5 …相手プレスがきつい時間帯は単純ミス目立つ。後半は低めで安定した。
駒井 7.0 …後半の縦横無尽ぶりは駒井の真骨頂。3アシストの数字以上に攻守に躍動。
山瀬 5.0 …意図が合わないパスが目立ち、組織的という意味では有効な働きできず。
三平 5.5 …前半はかなり不出来。後半、引いて受け、点で合わせにいく役割で本領発揮。
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中村 7.0 …奪う、仕掛ける、キープする、ラストパスその全てが敵陣に牙を剥いていた。
原川 ――
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大木監督 5.5 …前半は×。後半の戦いぶりは◎。この試合を糧にそろそろ4-3-3と訣別を。