二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2013 J2第11節 京都vs千葉

2013-04-28 | 蹴球

京都サンガF.C.△3-3△ジェフユナイテッド千葉
25'久保裕也
33'横谷繁
           40'米倉恒貴
           44'ケンペス
           81'田中佑昌
87'バヤリッツァ

■危険なスコア
“2-0は危険なスコア”というフレーズは、もはや“じゃあ、いつやるの?今でしょ!!”くらい使い古された表現だが、ともかくも、京都は前半にして2-0のスコアになってしまった。
 序盤はかなり慎重だった。特に左サイドの福村貴幸。千葉の右ワイド・田中佑昌が隙あらば裏を衝いてくるので、まるで上がれなかった。自重しながらも、左サイドは駒井善成が主導権を握り、ここは京都が制していたといっていい。24分、福村が思い切って前に出てクロス、そこに逆サイドの安藤淳が駆け上がって詰めて、こぼれ球を駒井が拾って仕掛けるという流れで得たFK。トリックプレーから久保裕也が豪快に決めて先制。さらに追加点も左サイドからだった。駒井が奪ってサイドを駆け上がる久保に出して鋭いクロス。これに飛び込んでいた工藤浩平はスルーする形になったが、さらに遠いサイドにいた横谷繁が落ち着いてゴール沈める。2-0。リードを奪った京都は勝ちに乗じてさらに前に前に進撃を続ける。両サイドが上がってイニシアチブを取った訳だから、以前として両サイドは高い。そして勝ち気はやっている時ほど、足元がお留守になっていることには気づかないものである。人間ってそういうもの。

■手薄を衝かれ…
 千葉は、序盤からフィールド中央では明らかに劣勢だった。どんなボールも京都の中山博貴が拾い、中山が繋ぎ、中山が止めた。千葉が意図的に中央を主戦場にすることを放棄したのかどうかは定かではないが(鈴木監督の話からある程度は読み解ける)、流れを変えたのは、中央を飛び越して左サイドから右サイドに大きく鋭く展開したボール。逆サイドの米倉恒貴には、紫のジャージは誰も付いておらず、まさに薄くなったサイドを衝かれての失点。さらに2失点目も米倉のアーリーな斜めロングボールから。これもサイドバックの裏の薄い部分をケアできていなかった。
 さすがに後半になると大木監督も薄い部分をケアしてきたのだが、それで何が起こったかといえば、千葉の攻勢に押されて最終ラインがジリジリと下がたというだけ。サイドをケアもするために布陣も広めになり、選手間の距離は大幅に間延びした。ところが3失点目も、薄い所を衝かれてしまったもの。中山に代わって入った山瀬功治が前目に張っていたため、全体が間延びした中ではバイタルエリアを守る田森大己のところは明らかに薄くなっていたのだ。そこでボールを動かされてからのスルーパス一発。結局、ゲーム自体も局面でのバトルも京都が制していたものの、手薄な部分をしたたかに狙う千葉の方がゲーム運びが上手かった。何とか同点に追いつけたものの、持てる力を出力MAXで発電しようとして、漏電してしまったようなゲームだった。
 もしかすると勝ちに乗じている時間帯にもう1点奪い切ってしまえば大差で勝てたのかもしれない。しかし、勝ってる時ほど慎重になれる武将が天下を取れるのが歴史の常。大胆さも大事だが、冷静さも大事だということを痛感した。


〈京右衛門的採点〉
 オ 5.5 …好セーブもあったが、サイドからのボールへの不安定さを露呈。
安藤 5.5 …狙いは良いのだが、どこか地に足が付かず。フィードの精度もイマイチ。
染谷 4.5 …簡単に奪われ、あっさり裏取られ、目測を誤り、後手後手の対応が目立つ。
バヤリッツァ 5.5 …強さを見せ、前に出ると頼もしいが、田中佑のスピードには苦慮。
福村 5.0 …攻撃面で貢献したが、守備でミスが多く、表裏一体の穴を作ってしまった。
田森 5.5 …拾い屋としては及第点だが、受け身の場面が多い。終盤はよく前に出たが。
中山 6.5 …ボールへの寄せ、バランスの取り方など出色。中央から追い越す動きも良かった。
工藤 6.0 …攻で質の高いフリーラン、守でスペースを埋める動きを披露。長いラストパスさえ決まれば。
駒井 6.0 …キレキレドリブルで左サイドを制圧。後半間延びしたせいか、存在感が薄くなった。
久保 6.0 …連携の中でゴールに迫る動きが良かった。トリックFKからのゴールも見事。
横谷 6.0 …最前線から降りてきてのビルドアップが目立つ。今日も身体を張って橋頭堡を築いた。
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宮吉 5.5 …ロングボール主体の攻めで左右によく動き、横谷との連携でシュートまでは絡めた。
山瀬 5.5 …タメは作れたが、相手に脅威を与える場面はで行けず。球捌きは抜群に上手い。
三平 ――
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大木監督 5.5 …リードした時の戦い方のコンセンサスは必要。交代はハマらなかった。







2013 J2第10節 京都vs鳥取

2013-04-21 | 蹴球

京都サンガF.C.○3-0●ガイナーレ鳥取
19'横谷繁
64'久保裕也
81'安藤淳


■明確な役割
 ここ最近フォーメーションも安定せず、根無し草になりかけていた大木サッカー。しかし、大木監督のサッカーはやはりボール奪ってこそ、と実感したこの試合。とりわけ目立ったのはダブルボランチの秋本倫孝と田森大己。法政大学以来の“親分と子分”は、まるでモグラ叩きゲームのように交互にファーストプレスを掛け続け、相手から選択肢を奪っていった。ファーストプレスは非常に重要で、例え第一段で奪えなかったとしても、周囲は次を予測して連動しながら囲んでボールを搦め取ればいい。周りを巻き込む好調時の大木式ハイプレスが戻ってきた。ボランチの位置でしっかり当たる、激しく奪う、素早く拾う、という秋本・田森コンビの献身的な動きはまるで百戦錬磨の老将のように頼もしく、「ここはわしらに任せて、おぬしらは前へと駆けるのじゃ!」と台詞を付けたくなるような親分・子分劇だった。
 もう一人、明確な役割を果たす者がいた。「俺が前線に潜り込んで踏ん張って敵を引きつけてやるから、お前らは薄くなった側面から崩せ」―。そんな猛将的な役割を完遂したのが、横谷繁だった。


■軸と駒
 横谷はこれまでの試合でも抜群のキープ力を見せてきた。しかし最前線で使って同じことができるか?…などと憂う必要はなかった。敵の真っ直中でボールを受け、マイボールにしたまま保持できるテクニックと強靱さ+適度に相手をいなして逃れる柔軟性があった。むしろ問題はその先。誰かか押し上げていかなければ、横谷を見捨てるだけになってしまう。
 前半、前線の踏ん張りに呼応してよく押し上げたのは安藤淳だった。最後列から原川力を従者のように使っては何度も追い越しをかけ、ゲームを作る。そして後半は左の駒井善成。福村貴幸との呼吸も去年から積み上げたものがあり、非常にスムーズ。2得点目はこの福村が横谷を追い越しながら密集から原川に出し、原川は機を見て飛び出した駒井にワンタッチで展開。駒井からのクロスを久保裕也がフィニッシュするという完璧に近い崩し。若駒たちが次々に沸き出すように出てこれたのも、やはり中盤の秋本・田森、前線の横谷という軸がしっかりしていたからこそだろう。いろいろとチャレンジを重ね、迷ったならば戻るべき「基本形」のような戦い方だった。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.5 …守備機会は少なかったが、終始冷静かつ大胆に広く守りきる。
安藤 6.5 …前半は攻撃を組み立て、後半は守備的にバランスを取る。
染谷 6.0 …ピンチを招くパスミスはあったが、カバーリングは安定。しかしカードもらいすぎ。
バヤリッツァ 6.5 …相手の好機を読みきったような潰し。攻め上がりでも味方を鼓舞。
福村 6.5 …奪って即フィードでの先制アシストなど、攻撃面でキレ。前でのカットも多かった。
田森 6.5 …献身的なファーストチェックは、チーム全体のハイプレスの号令に。影のMVP。
秋本 6.5 …強めのプレスに加え、バイタルエリアから自陣前まで広い守備範囲をカバー。
原川 6.0 …前を向くと鋭い動きを見せ、上手く球を散らした。相手を背負うプレーは課題。
駒井 6.5 …前半は消え気味だったが、横谷を追い越しだしてからは疾風怒濤の存在に。
久保 5.5 …存在感があり、シュートも貪欲だったが不正確。1点奪ったがもっとやれるはず。
横谷 7.5 …ボールを受ける、収める、タメるプレーで攻撃の起点に。さらに突破に飛び出しも◎。
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中山 6.5 …タイトなチェックと縦横無尽の走りでゲームを引き締め、京都ペースを加速させた。
中村 5.5 …ドリブルはまだキレを欠いたが、周囲を使う動きで3点目をお膳立て。
工藤 ――
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大木監督 6.5 …抜群のバランスを整え、終始ペースを握り続けるゲーム運び。




2013 J2第9節 岡山vs京都

2013-04-17 | 蹴球

ファジアーノ岡山△1-1△京都サンガF.C.
53'荒田 智之
           87'宮吉拓実

■変幻自在の功罪
「(チームの決めごとに)選手が少し凝り固まって躍動感が出てこない感じがある。手かせ足かせを少し外さないといけない」―と大木監督が言ったからかどうなのかわからないが、この試合では極めて流動的な部分があった。中盤の底、いわゆるアンカーのところ。前節までのアンカー役・田森大己は、最終ラインでプレーする時間が長く、代わりにそこに安藤淳が入ってみたり、福村貴幸に入れ変わってみたり、はたまた4バックに並んでみたり、実に流動的で難解だった(なので、あえていびつなフォーメーション図にしてみた)。それはもちろん岡山側の飛び出し役・関戸健二や石原崇兆を掴まえる相対的な面もあったのだろう。臨機応変で変幻自在の守備は、かなりの時間帯でマイボールを増やすという意味では効果を上げていたように思えた。しかし、その流動性ゆえにマーカーが混乱したのが失点場面。福村貴幸が奪い切れなかった後に入れ替わってバヤリッツァが外にクロスのチェックに行ってしまい、中には田森と、駆け戻った三平和司がいただけだった。マーカーを受け渡された福村が、どっちつかずの位置で漂っていたのが、何やら象徴的だった。


■功を焦る
「どうしても1点、いや2点返さなきゃいけない。連敗は許されない。得点したい」そんな気持ちをどの選手も強く抱いていたことは、十分に伝わった。だが個々がそれぞれに猪突猛進していけばどうなるだろうか?失点後に岡山に堅陣を築かれた京都の選手たちは、それはもうそれぞれがそれぞれに功を焦って前がかりにつんのめってバランスを欠いているように見えて仕方なかったのである。
 リトリートする「岡山の壁」に対し、原川力の展開に呼応した福村からのスルーを宮吉拓実が絶妙なトラップと冷静なアウトサイドキックで決めて何とか追いついたものの、ビハインドになって以降終了までどこか歯車が合わなかった印象。繋ぐのか放り込むのか、誰に合わせて起点を作るのか、誰がビルドアップするのか、サイドから抉るのか、中央から崩すのか、そうした攻めのアイデアも判然としなかったのが気がかりだ。勝ちたい気持ちゆえに手当たり次第に攻め急ぐようになったのが、もしも「周囲の雑音」の類であったならば、それはとても悲しいこと。もちろん、焦るような状況を作ってしまうこと(先制点を奪えず、奪われること)が原因なのだが、そこは開き直って、もう一度チームで連動するあの楽しい大木サッカーが見たいんじゃ!と思わず岡山弁でシャウトしたくなるようなタイムアップであった。


〈京右衛門的採点〉
 オ 5.5 …広い守備範囲で安定感した守備を見せたが、失点場面は間合いが合わず。
安藤 5.0 …ボールを保持してからの判断が遅れ気味。思い切りも欠いて躍動感もなかった。
田森 5.5 …最終ラインでチェック&ケアに働くが、失点場面は荒田に付ききれず。
バヤリッツァ 5.5 …奪う、止める、攻め上がると活躍するが、細かいミスも多し。
福村 5.5 …アシスト含め、機を見て駆け上がるなど大胆さはあったが、守備ではよく穴を空けた。
三平 5.0 …中林の攻守に遭った絶好ボレーが目立ったくらい。後半前目に入って少し持ち味出たが…。
中山 6.0 …前でも後ろでもよく顔を出し、豊富な運動量でチャンスを作ってピンチの芽を摘む。
横谷 5.5 …意欲的だったが、マークもきつく打開できず。セットプレーのキックもイマイチ。
駒井 5.5 …田中のケアに苦慮したが、攻撃のスイッチが入ると活力があった。ただし、単発気味。
 原 6.0 …いい形で攻撃が組み立てられない中、前線で収める動きが秀逸。満身創痍で途中交代。
サヌ 5.0 …動いてボールは受けるが繋ぐだけ。相手にはまったく怖さのないFWだった。
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中村 4.5 …挑んでもことごとく止められ、攻撃が停滞。抜けないドリブラーはキツい。
宮吉 6.0 …引いては狙う駆け引きから見事な同点ゴール。
原川 5.5 …こぼれ球をよく拾い、冷静に配球。ゴール前にもよく顔を出した。
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大木監督 5.0 …前節後の緊張感がチームにプレッシャーとして伝播したか。メンタルコントロールを。






2013 J2第8節 京都vs横浜FC

2013-04-14 | 蹴球

京都サンガF.C.●0-1○横浜FC
          1'大久保哲哉

■右翼不全
 布陣とは「陣を布(し)く」ということ。合戦ならば陣形はいろいろあるけれども、現代サッカーでは基本的に両翼に駒を配さねば成り立たない。両翼すなわち右翼と左翼。ポリティカルな意味ではなく、タクティカルな意味。京都サンガはずっと右翼が強い布陣が特徴的だったが、前節から左翼偏重になった。ビルドアップ力に長けた安藤淳を左に移したからだ。
 安藤左遷(もちろん、変な意味ではない)によって何が起こったかといえば、右翼の機能不全。特にこの試合は開始早々右翼から破られて失点を喰らったもんだから、染谷悠太はその後もずっと最終ラインから押し上げられず、三平和司が一人右翼で孤立した。三平が中盤低めにいても彼の得点感覚は生きない。要するに大きな攻撃力を欠いた状態に陥った。
 後半になって染谷をアウトし、安藤を右CBに回してからは右翼・左翼のバランスがようやく修正された。安藤も左にいた時とは別人のように舵を取り出し、三平もダイアゴナル・ラン(斜め走り)でゴール前に顔を出せるようになる。結果的には染谷―三平ラインが最大の「失策」だった訳だが、適性な左右バランスが見つかったと考えてみれば、多少ポジティブにはなれる。

■孤軍と援軍
 この試合で非常に気になったのは、とにかく簡単なミスが多かったこと。奪っても、出したボールをミスパスにしてしまうような場面。そして相手にアプローチするも、奪えない場面。理由はおそらく横浜FCが終始速くて長いボールを蹴ってきたから。敵の長距離攻撃に対応するため、陣形は縦に間延びしていた。選手間の距離が遠くなれば、途端にミスが増えるのが京都というチーム。そんな中で横谷繁だけは上手くボールを保持し、前に運ぶことが出来た。まさに孤軍奮闘という言葉がピッタリくるが、なぜ彼は孤軍だったのか。誰かが横谷にサポートに行けたなら、崩しや突破のパターンは間違いなく増える。そのために重要なのは、今日の布陣ならばアンカーのポジション。田森大己は間延びする布陣の中で余り持ち味を出せなかったし、機を見て攻撃に顔を出せるタイプでもない。もし鬼神のような推進力を持つバヤリッツァが二人いたならば、相手を潰しながら横谷の援軍に回ることもできるだろう(だがバヤリッツァは一人しかいない)。
 ともかくも、横谷という異能を今以上に生かすためには、横谷を孤軍にしないことが求められる。どうやらコンビネーションの熟成を待つ余裕もなさそうなので、中盤の並びの調整が必要か。復帰間近とも噂される山瀬功治を含め、駒は揃っているので、いろいろと試す価値はある。以下は個人的な意見。ある程度の守備力+攻撃に顔を出すタイミングが良く、良質なキック精度を持つ福村貴幸を中央の援軍候補に加えては如何?


〈京右衛門的採点〉
 オ 5.5 …失点場面はコーチング不足気味。強風を味方にできず、キックミスも目立つ。
染谷 4.5 …失点後に勇敢さを欠いて押し上げられず、全体が間延びする要因に。
バヤリッツァ 6.0 …能動的で前で刈り取る守備が目をひいた。攻め上がりも大迫力。
福村 5.0 …裏を取られる場面が多く、パスも正確さを欠く。65分の三平へのクロスなどでは本領発揮したが。
田森 5.0 …プレスの網が広い中、奪えず、止められず。カバーだけでは物足りない存在感の薄さ。
三平 5.0 …前半はだいたい孤立。後半になり攻撃のスイッチが入ったが、痛恨の絶好機シュートミス。
工藤 5.5 …ボールに絡むとチャンスを生んだが、下がり目にバランスを取ったことで機会は少なく。
横谷 6.5 …前向きの意識でよく攻撃を牽引。ファウルもたくさん貰った。あとは周囲との連携を。
安藤 5.5 …前半は×。右に入ってからは水を得たサカナのようにビルドアップしたが。
 原 5.0 …森下に抑え込まれ、いい形でシュートに持ち込めず。68分のチャンスは決めたかった。
サヌ 5.5 …左右によく動きながら基点を作っていたが、自分で狙っていく姿勢は欠けていた。
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中山 6.0 …豊富な運動量で守備から捌き、ゴール前への侵入まで持ち味を発揮。
久保 6.0 …中央では期待感を膨らませるアタックをみせる。サイドに流れるとミス多し。
宮吉 ――
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大木監督 5.5 …安藤を右に移す修正は良かったが、やや遅かった。ビハインド時の切り札も不足。