京都サンガF.C.○4-1●ヴィッセル神戸
2'バヤリッツァ
22'原一樹
45'吉田孝行
52'宮吉拓実
65'原一樹
■サプライズ発動
「観戦してる人が“エッ?すごいことしよったなー、そういう解決方法もあるや…”というのがサッカーの素晴らしさ。」「想像してないことがピッチの中で起こるのが魅力」、これはサポーターズミーティングで京都サンガの祖母井GMが語った言葉である(詳しくはこちら)。J2屈指の強豪・神戸を相手に回し、なんと京都はこの試合で4得点を挙げた。そのうち2つが、「そういう解決方法もあるんやー」っと観客を驚かせた得点なのであった。
バヤリッツァが原一樹のCKに見事に合わせた先制パンチは、サプライズではない。2得点目もサプライズではなく、むしろ「これぞ大木サッカー!」を体現したゴールだった。左サイド高い位置で福村貴幸がボールを奪うと、すぐに中に入れ、原がテクニカルに決めてみせたこのゴールは、まさに奪った瞬間から攻撃が始まっるという電光石火なゴール。守→攻の切り替えの早さを象徴した一撃といえるだろう。
神戸にはエステバンという要塞がいた。後半、そのエステバンの猛烈なプレスを受けた安藤淳が、見せたのは、ヒールパス。「あっ」と驚くべき局面打開の末、駒井善成が抜け出して前へと飛び出す三平和司にスルーパス。三平が折り返して宮吉拓実が3点目を決めるまでの一連の流れは、まさにサプライズだった。4点目もサプライズ。バヤリッツァの前へのフィードがラインアウトしたかに思えたところを諦めず追いすがり、敵陣に単騎突入して原の2得点目をお膳立てした宮吉の走りがサプライズ。今年の京都「驚き」がある。
■主導権
ゲーム全体を見れば、決して京都が主導権を握り続けた訳でない。相手をハーフコートに追い込むような京都の時間帯もあれば、神戸が中盤を制圧して主導権を握る時間帯もあった。攻める・守るでハッキリ分離される訳ではなく、攻→守/守→攻がまるで血の通う生き物のようにヌルヌルと入れ替わっていく展開は、時間の経つのも忘れてしまうほどに見る者をのめり込ませてくれる。エステバンが要塞となる時間帯は、神戸の主導権だった。だが、相手に主導権を握られた時に京都はよく守ったことと、逆に前出の3点目、4点目のように神戸の主導権を握られている局面から一気に逆襲して得点を奪うことができたこと、この2点が京都と神戸の明暗を分けた。注目の要塞・エステバンだが、京都のハイプレスが機能している時は、いまひとつ能力を発揮しきれていなかったようにも見えた。
それでも神戸はやはり「強靱」なチームだった。そして京都は「しなやか」。まるで弁慶と牛若丸の対決を見ているようで、やはり今年のJ2はこの牛若丸と弁慶が引っ張っていくことになるのだろう、と感じずにはいられない大一番だった。
■参考までに
後半からの布陣が随分といい感じだったので、フォーメーション図を。
最初からこの布陣でやっても面白いとぞ思う。原・三平の攻撃力を両立させようとすれば、これしかない。宮吉と駒井は入れ替えてもいける。いろんなオプションがあるに越したことはない。
〈京右衛門的採点〉
オ 7.0 …広い守備範囲と好セーブ連発で神戸の反撃を阻む。
安藤 6.5 …粘り強く、局面を前への意識で切り抜け、ゲームを組み立てた。
染谷 6.0 …前で奪い取る守備がよく決まる。ポポにはルックアップの隙を狙われていた。
バヤリッツァ 7.5 …CKを決め、ボールをことごとく跳ね返し、前に突進。鬼神。
福村 6.5 …2得点目のアシストは大木サッカーの理想型。粘り強い守備が光る。
秋本 6.0 …敵の狙いを読みよく効いていたが、リスタートからのミスが残念。
工藤 6.5 …前半はやや高めの位置で操り、後半も絶妙の配球でチャンスの素に。
横谷 5.5 …ポジショニングは抜群に良かったが、パスが合わない場面が多かった。
駒井 6.5 …攻守にチャレンジの姿勢が◎。特に後半のプレスがチームを助けた。
原 7.0 …相手を引っ張り出す動きでDFを攪乱。2ゴールはさすがのシュート精度。
宮吉 7.5 …縦横無尽に動き、攻守に活躍。ゴールもアシストも、プレスも、全部○。
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三平 6.5 …慣れ親しんだ右ワイドを何度も突破。愚直な動き直しの賜物。
酒井 6.5 …途中から入っても危なげなく、いいカットを見せるなど問題なし。
田森 6.0 …シンプルで落ち着いたプレーを披露。短い時間でも安定感があった。
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大木監督 7.0 …リードしつつも三平を投入し、勝ちきる試合を遂行。会心のゲーム。