Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

セロクエル

2012-01-26 09:17:26 | その他
在宅でひどい昼夜逆転やせん妄に対して、この薬を使用出来る
ようになってから困ることが少なくなりました。
セロクエルは非定型抗精神病薬に分類され、保険適応病名は
「統合失調症」ですが、以下を見て頂くと分かる通り、平成23年
9月より「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」
に対しての使用は保険審査上認められる事になりました。
(セレネース、ルーラン、リスパダールも同様です)

http://www.ajha.or.jp/admininfo/pdf/2011/110928_2.pdf

セロクエルの特長は、セレネース・リスパダール等と比較して
抗幻覚・妄想作用は少なく、反面錐体外路症状の副作用も
とても少ないとされています。そして何と言っても鎮静作用が
強く、不眠に対して強い味方になります。

せん妄は、簡単に言えば「主に体調が悪い時にみられる、半分眠っている
状態」です。治療の基本は、出来るだけ副作用の少ない薬を使って、
「夜眠って頂く」ことなので、セロクエルはその点もってこいの薬です。
昼間の幻覚・妄想に対してセレネースやリスパダールを使うより
ずっと良い結果になると私は感じています
(もちろん、状況により併用が必要な事もあります)。

余談ですが、せん妄に対して抑肝散という漢方を使うのが流行りに
なっているようです。確かに、効くことはあると思いますし、副作用の
少なさから第一選択とする事は私も賛成です。
しかし、内服が非常に大変であるため、終末期のがんの患者様に
限って言えば、気軽に試せる薬とは言えません。
お湯や柑橘系のジュースに溶かすと飲みやすいという事ですが…。

話を戻します。セロクエルも、もちろん夢の薬ではなく副作用にも
気をつける必要があります。まず、糖尿病には禁忌です。
肝機能障害の経験がありますし、25mgでも鎮静が強過ぎて昼間まで
眠ってしまう事もあります。誤嚥・転倒・廃用に注意し、適宜半錠にする
等の対応は必要です。尚、腎機能低下に対し通常減量の必要はなく、
半減期も短いのが特徴です。