◇5月20日(日曜日)晴れ
関東大会/大宮公園球場
東海大甲府4―1宇都宮工
前評判の高かった宇都宮工の右腕、星知弥(3年・右投右打・180/78)が沈没した。この日のストレートの最速は自己記録より2キロ遅い144キロ。十分なスピードである。それが相手の脅威にならなかった。
まず気になったのはステップする位置。星から見て左側(左打者方向)にステップしすぎた。先にマウンドに立った東海大甲府の右腕、神原友(3年・右投右打・180/85)のステップ位置に従ったのだろう。神原も当然ステップ位置が左側に行きすぎ、毎イニング、体を開いて投げる右腕の競演という、見る側にとってはありがたくない形になった。
ステップ位置とともに、始動のとき“ひねり”を加えてからバックスイングに入るので、ひねり返しで左肩は開く理屈になる。二重の開く要因を抱えれば、開くのは当たり前だ。ストレートは高めに浮き、スライダーは抜けて制球難に陥り、東海大甲府打線は高めに抜けるストレートに的を絞ればよかった。
1回の渡邉諒、斎藤景介、2回の相原洸介、3回の斎藤と、中盤までの多くのヒットはストレートを打たれたもの。中盤以降はスライダー主体に配球を変えたが、制球重視で腕の振りを抑えた球に威力はない。今度はスライダーに的を絞られて加点された。
体を開いて投げるというのは、反動を使って投げたい、という心の欲求の現れである。この欲求をどれだけ抑え、合理的な投球フォームに向かっていけるのか――。ダルビッシュ有(レンジャース)ですらこの道を歩んで、今の地位を築いていることを忘れてほしくない。
東海大甲府打線では渡邉諒(2年・遊撃手・右投右打・180/78)がよかった。昨年も関東大会(習志野戦)を見ていい選手だと思った。このときは3番・高橋周平(中日)のあとを打っていたのでスラッガータイプに育っていくのかなと思っていたが、この日は1番を打っていた。思い返せば、昨年もバッティングの形はコンパクトだった。ノートには打撃に対するあれこれの中に混じり、「ショートゴロで4.42秒。まあまあの足」と書かれていた。この日はどうだったのだろう。
第2打席で左中間に三塁を放ったときの三塁到達タイムはあっと驚く11.15秒。私が今年見た中ではアマチュア球界ナンバーワンの速さである。準々決勝は選抜4強の健大高崎が相手。ここでどんなバッティングと走塁を見せるのか、今から楽しみである。
[註] 5/19の前橋育英対県川口、5/20の健大高崎対帝京の観戦記は<ホームページ>に掲載します。http://kosekijunjihomepage.com/