九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

草津市のアオスジアゲハ幼虫

2017-12-09 23:24:44 | 日記


草津市のアオスジアゲハ幼虫
 我が家があるエルシティ草津弐番館にはソメイヨシノのなど庭木が茂っている中庭があり、その周りはネズミモチやアベリアの垣根に囲まれている。しかし管理人がこまめに伸びた新芽を切るので、なかなか変わった幼虫が見られない。その上草津市はチョウも少なく、エルシティ付近で見かけたチョウは10種を越えない。それと比べると大分市富士見ヶ丘の家の小さな庭は訪れるチョウが多く、50種以上のチョウが見られた。
おそら京都に近く琵琶湖岸の低地に東海道と中山道が合流する古くから開けた宿場町草津は、元々昆虫が少ないのだろう。その上、手入れが行き届き、クモの巣除去まで定期的にやっている都会のマンション群だから、ガの幼虫を見かけるのも年間通して10種にも満たない。だからそこは虫屋の住処としては適当ではないが、京都や大阪に近いので何かと便利で、散歩は京都の哲学の道へ、また夜の部の歌舞伎を年何回か妻と見に行き、今では海老蔵のフアンだ。
 弐番館を1周すると550歩前後なので、なるべく毎日数回歩く。そしてやはり垣根に食痕がついていないか、糞が落ちていないか調べる。その甲斐あって2017年9月14日、ネズミモチの垣根に生えてきたクスノキの若葉で食痕を発見し、探すと終齢近いアオスジアゲハの幼虫が1枚の葉表に2匹並んで止まっていた。チョウは典型的な独居性で特にアゲハチョウ科はかなり厳格な独居性である。野外でもカラスアゲハやキアゲハの幼虫が互いに個体間距離を十分取って食草の葉表に静止している写真を撮っている。だからアオスジアゲハの終齢近い2幼虫がぴったりとくっついているので大変驚いた。この様子だと蛹化も同じ葉でするかもしれないと期待して飼育箱に移した。しかし幼虫は別々の場所に移動し蛹化した。
おそらく垣根に生えたクスノキの幼木なので、それぞれが一枚の葉を座と決めても、葉を食べているうちに他人の座がある葉で、本来とるべき個体間距離を保つことができず鉢合わせしたらしい。しかし二匹の間で争いは起こらなかったようで、しばらく2幼虫は一緒にいた。そして9月19~20日離れた位置でどちらも蛹化した。
これは越冬蛹かと思ったが9月30日一つ羽化し、次々と同じ場所で見かけた他の幼虫も蛹になり10月3日までに4頭羽化した。その頃、まだ小さな幼虫が見られたから草津では11月初めに蛹化したものが越冬蛹になるらしい。アオスジアゲハは年数代繰り返すらしい。