キツネノマド

松岡永子
趣味の物書き
(趣味とはなんであるか語ると長くなるので、それはあらためて)

この店に来ると雨が降る

2014-06-28 05:07:52 | 掌編
 しゃがみこんで、というよりほとんど寝ころがってほおづえをつく。そうして露地を見おろす。
 窓からの風景は、明度も彩度もみるみる落ちていく。ビーズをばらまくような音。ビーズの粒はどんどん大きくなっていって、もう自分がなにを言っているのかも聞こえない。ここでの記憶は雨ばかりだ。
 この店は焼け残った戦前の建物を使っているらしい。二階のギャラリー――二階とは名ばかりの、立ち上がったら頭をぶつけてしまう屋根裏部屋――に上ると窓から石畳の露地が見える。^部屋の壁には、外国の古い写真で作ったアンティークなアクセサリーがならんでいる。
 懐かしい、と思う。見知らぬものなのに懐かしいなんておかしなことだ、と思う。そう思いながら、懐かしいと思う。
 ここでの記憶は雨ばかりだ。

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1 コメント

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Unknown (熊村貴志雄)
2014-06-29 10:21:33
夏絞る どシャンぶりの雨☂ つゆ(水無月)そうめん

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