イタツキ日誌。

観たお芝居、歌舞伎、映画などの(不定期)記録です。基本ネタバレあり。

「ゆれる」

2006年07月15日 | 映画

映画『ゆれる』はもちろん、オダギリジョー目当てで行ったわけで
序盤はオダギリの色気にいちいち撃ちぬかれてたんですが
(「舌出せよ」とか。←このセリフヤバイまじで)
途中から俄然、香川照之の素晴らしい演技に夢中。

改めて、香川照之がすごい!! その演技力にゾクゾクしました。
抑え目ながら、時々、内に秘めている湿っぽい負の気持ちを
突然爆発させる芝居には目をそらせない。
和やかな日常と狂気をいったりきたり。
丸まった背中ひとつで、あれだけ強いメッセージを発する
芝居ができる人はなかなかいません。

この映画は、オダギリ映画なんかじゃなくて
完全なるカガテル映画だと言いたい!

メゾン・ド・ヒミコ』とか『アカルイミライ』とか
そういうオダギリ的雰囲気映画かな
という気持ちで臨んだのですが全然違う。
ああいった類の「映像写真集」じゃくて(それはそれで好きだが)、
ものすごく正当な映画です。

テーマは「兄弟の絆」ってことになってるけど
それ以上に、肉親どうしの呪縛だったり、
近しいからこそ一気に沸点まで達する危険がある情だったり
お互いが一生拭い去れない劣等感や嫉妬、
「奪われた者」「与えられる者」という意識など、
モヤモヤして一定しないものが本当に丁寧に描かれていて、
感動を通り越して、「ホォー…」と感心してしまった。

どの立場にも少しずつ感情移入できるし
それぞれの苛立ちや感情の爆発の理由が、ちゃんと分かる。
それを描きっぱなしで「真実は観客の心にある」的な
(ありがちな)放棄したやり方じゃなくて、
真摯に映像で応えようとしてる監督だと思いました。
無駄な映像やモチーフがいっさいないのな。

キャストは、それ以外もぜんぶいいんだけど
特にキム兄のねちっこい検察官役が最高でした。これは必見。
やなやつなんやろな~。

ということで、今後一切の香川照之を全肯定することにします!
年取れば取るほど楽しみ。


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