あしひきの 八つ峰(を)の椿 つらつらに
見とも飽かめや 植ゑてける君
大伴家持 万葉集
山の尾根に幾重にも重なるように咲く椿。
その椿を貴方は庭にお植えになったのですね。
つくづく見ても見飽きることがありません。
貴方とも飽きることなく、いつまでもお会いしていたいものです。
家持が大原真人の館の宴に招かれたとき、もともと山奥に咲いていた藪椿を館の庭に移し変えた様子を愛でながら、主人を讃えた歌です。花そのものよりも、主人の美意識をたたえているため、感情移入しにくい歌ではあります。しかし、そこが可憐な椿の奥ゆかしさを引きたてるのかもしれません。