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世田谷一家4人殺害事件の各種報道記事ファイル

世田谷一家惨殺、捜査難航の重大懸念 事件発生から1カ月

2007-02-15 | 世田谷-2001年報道
[2001年1月 報道日時・媒体不明]

 日本列島を震撼させた東京都世田谷区の宮沢みきおさん(44)一家4人殺害事件は、発生から29日で約1カ月を迎える。指紋や凶器など大量の遺留品から「決着は早い」とみられていたが、悪運強く逃亡する惨殺犯。恨み、物取り、変質者と犯人像は割れ、捜査員100人という大布陣で挑む警視庁成城署捜査本部も焦燥の色を隠せない。いまだ検挙に至らない理由は、そして、Xデーへのカウントはいつ始まるのか。
 惨殺犯の薄ら笑いが聞こえてきそうだ。柳刃包丁で宮沢さんの頭部を深々と刺し、泰子さん(41)の顔面を容赦なく切りつけた。
 捜査関係者は、「なかにはえぐられた部分もあった」といい、凄惨な現場に慣れた捜査員でさえ、壁、廊下、天井と赤のペンキをぶちまけたような惨状に思わず口を押さえ、目を背けたという。
 事件発生後の2日には、野田健警視総監が自ら現場に向かい、警視庁の威信をかけた捜査が開始されたが、第1期捜査(1カ月)を過ぎても、惨殺犯の行方は知れないままだ。

 【遺留品の数に意味はない】
 現場に残された遺留品は判明しているだけでも凶器の柳刃包丁、Lサイズのトレーナーなど5点以上を数え、まるで捕まえてくれと言わんばかりの多さだ。
 しかし、元警視庁巡査部長で警察ジャーナリストの黒木昭雄氏はこう話す。
 「犯人の指紋や血液は別としても、他の遺留品はすべて量販店で扱われている。こういうものは購入先こそ特定できるが、直接犯人とは結びつきずらい」
 時計やカメラ、車のマスターキーなど製造年月日が刻印され、どこで誰に売られたのか、所有者を特定しやすい「番号物」が見つかれば、捜査は飛躍的に進展するが、「この現状では本部が握っているとは思えない。今回の事件は遺留品こそ多いが、実質、決定打に欠けているんですよ」と指摘する。

 【漏れすぎた情報】
 捜査本部は発生から11日後の今月10日、トレーナーの写真を添え、「犯人は手にケガをしています」「血液型A」と記したポスター十万枚を配布、一般から情報を募る作戦に出た。
 だが、この約1週間前、全国紙で同じ内容が一斉に報道され、頑なに秘守してきた現場の捜査員は激怒したという。
 「警視庁の上層部が報道陣にリークしたのだろうが、犯人が新聞で情報を得て、病院へ行くのを止めたとしたら、致命的なミスでしょう」(黒木氏)
 右手のケガの情報以外にも凶器が大手メーカーの柳刃包丁で、靴は英国ブランドのテニス用シューズ28センチなど、当局の発表前に次々と情報が流出している。
 「上層部は積極的に情報を公開する方針と聞いているが、現場の捜査員は『勘弁してくれ』と憤っている。情報公開は間違えば、犯人に知恵を与えることになるし、逆効果にもなる。うがった見方をすれば、上層部が『一生懸命やってます』とアピールの材料に流しているとも受け取れるし、仮にそうなら犯人逮捕とは目的が違ってくる」と疑問を投げかけた。
 もっとも、情報公開の有効性を説く関係者も多く、元警視庁捜査一課長の田宮栄一氏は、「国民と情報を共有する、つまり、メディアの力を借りる手法は想像以上に効果がある。右手のケガについても、病院に行けば、足がつくわけだから、最初から考えていないでしょう」と反論する。

 【初動捜査の迷走】
 発生当日、タクシーの運転手が宮沢さん宅の付近で不審な中年男性3人組を乗せた。後部座席に10円玉大の“血痕”が落ちていたが、捜査本部の鑑定結果、チョコレートと判明。
 乗車時間と推定犯行時刻にもズレがあり、結果的に振り回されることになる。いまだ怨恨、強盗など犯人像も絞り切れず、出入口も玄関とされているが、風呂場の窓を疑う声はとどまらない。
 「玄関から侵入と読んでみたら、事件から20日たって2階の風呂場の窓を探ったり…。捜査では本来、出入口を最初に特定しなければならない。本部の迷いは否定できないでしょう」(黒木氏)

 【Xデーは…】
 すでに捜査本部では、聞き込みの「地取り」、被害者の人間関係を探る「カン取り」など大まかな捜査を終え、急を要する案件とそうでないものに分け、捜査員を再編成。深く潜行する第2期捜査に入った。
 田宮氏は経験則から「必ず捕まる」と断言するが、あるひとつの懸念も示す。
 「いま一番恐れるのは犯人が自殺するのではないかということ。捕まれば死刑を免れないわけだから」
 新世紀を迎える直前、一瞬にして4人の命を奪われた宮沢さん一家に報いるためにも、最悪の結末だけは避けなければならない。

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