きらくなたてものや

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長持ちする家とは

2009年01月17日 | 家づくりの理念
先代の総理が200年住宅構想を
掲げた影響もあると思うのですが、

最近よく、
家の寿命に関する問い合わせを
耳にします。

そのことに意識が向くこと自体、
とてもよいことだと思います。



では実際、
私の場合どうなのか。



先日、
私が関わる家づくりの記録が
テレビで放映されました。

その番組の中でも、
家の寿命について
触れていただきましたし、

その後番組を見た方々からも、
ありがたいことに、
この造りだったら○○年持つね、
というお言葉を数多くいただきました。

しかし私はそのような
ありがたいお言葉をいただいたとしても、
ハイ!この家は○○年持ちます、
と、堂々と返事できない自分がいます。

それはこの造り方に、
構造上不安があるとか、
そういうことではありません。

○○年持つかどうかは、
最終的に私ではなく、
住まい主自身が決めることだから、

私の口から○○年持ちます、
と言うのは、
少しはばかれるのです。

あるいは、
「持たそうと思えば」
という枕詞を添えます。

もっと言えば、
家の物理的な性能だけで、
○○年持ちます、と
気軽に言っていいのかという疑問が
常に頭に引っかかっているのです。



私は仕事柄、
建ってから何百年も経った
古い民家を見る機会があります。

そうした家の中には、
もちろんしっかりした
造りである場合が多いのですが、
中には正直申し上げて、
この造りで○○年よく持ったな…、
と思うこともあります。
しかも地震などで大きく傾いてもなお、
使い続けている家すら
見かけることがあります。

一方で、
築年数にかかわらず、
いい建物なのに、
まだ使えそうなのに、
壊される運命の家も
たくさん見てきました。

それが例えよい風景を作り、
周りの人たちに愛されていたとしても、

それを持っている人が
「要らない」と思えば、
基本的にはその時点で
寿命を全うしてしまうのです。

こうした経験をしていくうち、
家が長持ちするかどうかは、
物理的な理由もさることながら、
家を持っている人が
使い続けたい、住み続けたい、
という想いが、
実は大きく関わっていると
思うようになりました。

世の中の仕組みや
生活様式に翻弄されることなく、
持ち主にずっと愛され続ける家。

もちろん設計者として、
職人の技を生かし、
丈夫なように、
手が入れやすいように、
家の計画を考えます。

しかしそれはむしろ、
条件というより大前提、
そうした前提の中で、
如何に家が愛され続けるか。

そしてそのためには、
家づくりに関わる職人たちが
如何にその家に愛を注ぎ込み、
また建った後も愛着を持って
関わり続けることができるか、

私は家づくりに取り組む際、
このことを強く強く、意識しています。

ですから私にとって、
まずは目の前の建主が、
この世で生きている限り、
生活の伴侶として
その家も生き続けていてくれること、

「オレは、一生この家に住む」と
建主が言ってくれることが、
当面の第一目標です。

ではその次の段階、
私が今の時点で
建主の次の世代のことを
想像することは容易ではありません、
いやはっきりと、
分からないと言ってもいいと思います。

ただそうした家に対する愛情は、
住んでいる途中で急に盛り上がることは
ほとんどないわけですから、

例えどんな作りの家だったとしても、
家を新たに作る段階で
家づくりに関わる全ての人たちが
えがおで現場に顔を出し、
魂を込めることができるか、

次の世代に愛が受け継がれていくために、
今私ができることといえば、
そのことだと思うのです。

「設計者」という立場として、
家の物理的な性能を高々と掲げ、
後世に残していくことも大事かもしれませんが、
私はそういったことのお膳立てにも目を向け、
力を注ぐべきなのではないかと思っています。



何度も書きますが、
私が家の耐久性のことを聞かれると、
理屈っぽくなって、
何となくお茶を濁した返事をするのは、
造りがヤバいとか、
そういったことではないですからね(笑)。

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2 コメント

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伝統工法? (ひまわり)
2009-01-20 00:25:37
「ドリームハウス」を拝見しました。

 関東では、あの建て方が「伝統工法」なのでしょうか?
 番組を見ている限りでは、関西での伝統工法と言われている物と違うと思いました。
 強いて言えば、在来軸組工法と伝統工法の間では?

*基礎は『石場建て足固め構法 』ではありませんでいたよね?
返信する
石場立て (きらくなたてものや)
2009-01-21 18:30:36
石場立てと足固め、取り組んでみたいことの一つですが、残念ながら一昨年、法律がほぼぞれを許さない状況になってしまいました。

ただ私は実のところ、何が「正統」な伝統構法なのか、という議論にはあまり関心がありません。
伝統に学び、職人の技を生かしつつも、デザイン、現行法規、あるいは施工の合理性なども踏まえて木組みの計画を考えていきたいと思っています。
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