元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「自販機」:kipple

2011-10-06 01:30:00 | kipple小説

「自販機」


ドッシャ降りの雨の中 ドッシャ降りの夜の中

オレは帰路を急いだ 訳もなく 急いだ

なぜなら!

ぼんやり” がオレの後ろから頭の穴を通って入ってきて

ドッシャ降りの雨に滲むオレの視界に映る木造二階建ての民家のベランダで 物干し竿からビチョビチョになって垂れ下がる青白いシーツに包まったドッシャ降り雨女に向かって オレの口を飛び出してゆき指令を与えたからだ!

「指令しろ!」と

ドッシャ降りの雨の中 オレの口から飛び出した“ぼんやり”を飲み込んだドッシャ降り雨女がオレに指令した

「この愚か者めがぁ!早く帰れ!さもなきゃ、ドッシャ降りに濡れて夜に溶けちまえ!」

面白くねぇなぁ!面白くねぇ!何もかもドッシャ降りの雨に溶けちまえ!

そして!

ドッシャ降りの雨の中 ドッシャ降りの夜の中

オレは帰路を急いだ 訳もなく 急いだ

そう言えば、松田優作が映画「野獣死すべし」で青木義朗をブッ殺し拳銃を奪ったのも こんなドッシャ降りの夜だったな

来い!拳銃!うしっ!来たな!

ありゃぁ? 何だ このドッシャ降りの雨の夜にドデカイ硝子を運んでいるヤツラガいるぞ

おいっ! そこの硝子売り! オレの前にその硝子を持って来い!

こなけりゃ撃ち殺すぞ! こんなドッシャ降り夜に硝子を運ぶ この極楽野郎!

オレは ブレイビクみてぇに優しくねぇぞ! トラヴィスみてぇな半端なバカでもねぇぞ!

どこの世界のどんなヤツもマフィアに資金繰りしてもらってるバチカンみてぇなもんだ!

オレが全知全能の神なら まずキリスト教徒から皆殺しにして地獄に落としてやらぁ!

おいっ! ほらほらほらぁ!気をつけろ! そぉ~っと オレの前に硝子を立てろ!

おいっ! ホオズキを噛む硝子売りA! どーでもいい硝子売りB!

テメーら、いい根性してやがるじゃねぇか! このドッシャ降りの雨の中! これも何かの因縁だぁ そーか テメーらはオレのために硝子を運んでいるのかぁ! そーか そーに違いねえ

おっと 滑るなよ 手を放すんじゃねぇ! オレの前でちゃんと押えてろ! 動かすな!

このでっけぇ鉄砲はなぁ! 南部式・甲の改良型でなぁ! 銃弾の代わりに入れ目が飛び出すんだよ!

入れ目は痛ぇぞぉおおおお~っ!なんせ この世のありとあらゆる地獄を見てきた哀れな奴らの眼球から作った生体ハイブリッド眼球だ!

バッキュゥ~~ン!

よぉ~し! 立てたな! 暗~い暗~い このドッシャ降りの夜に硝子売りが二人で オレの前に大きな硝子を立てた訳だ!

ドッシャ降りの雨の夜に オレの目の前に立つ大きな硝子は 当たり前のように鏡と化していて

ドッシャ降りの雨の夜に びしょ濡れの鏡と化した大きな硝子はビチョビチョなオレの姿を映していた

ドッシャ降りの雨の中 ドッシャ降りの夜の中

オレは帰路を急ぐんだ 訳もなく 急ぐんだ

オレの帰るところは 黄泉の国 このクソ面白くねぇ世界からオレは黄泉の国へ旅立つぜ

オルフェに習い ビッショ濡れの鏡と化した大きな硝子にオレはドタマをくっ付けて

さらば!くそったれた世界! とドッシャ降りの夜にビチョビチョなオレは びしょ濡れの鏡を通り抜け 黄泉の世界へゴーホームだぁ!

その時 再び“ぼんやり”がオレの頭の後ろの穴を通って入ってきて さっきのドッシャ降り雨女の声で再び指令を告げた

「振り向いちゃダメ!」

何を言ってやがんでぇ! そりゃ 黄泉の国から帰ってくる時の話だろ

と 思って振り向くとオレは驚愕し 目を見開いて絶叫した!

「ふんぎゃぁー! 何だぁ!そこのドッシャ降りの雨の夜の裏路地にビッチャビッチャに濡れて屹然と存在する自動販売機! オメーはいつから夜に明かりを灯すようになったんだぁあああ~っ!」

オレはいつの間にか夜中に煌々と光っている自動販売機に驚愕し! 夜中の自動販売機に灯りが戻った事にさえ気づかなかった己自身の人生修行の未熟さを思い知らされ

鏡に突っ込んだ半身をUターン

そうだ まだ早い オレの家には妄想の家族が待っている

オレが帰るのは黄泉の国じゃねぇ 暖かい妄想の一家団欒の家族のもとなんだ

そして 南部式・甲の改良型で硝子売り二人を撃ち殺し 硝子にも一発ブチ込んで粉々にすると

何となく しょんぼりとした気持ちを抱えつつも

ドッシャ降りの雨の中 ドッシャ降りの夜の中

オレは帰路を急いだ 訳あって 急いだ


そうなんです。

今宵 ドッシャ降りの雨の中 夜中の自動販売機にいつの間にか灯りが戻っているのに気付いたのであります

いつからですか? 今宵からですか? 節電はもういいのですか?

また 煌々と輝く夜が舞い戻るのか  冬になったら又 消すのかなぁ




                   おしまい


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)



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