元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「占いPod」:kipple

2010-09-08 01:12:00 | kipple小説

「占いPod」


真夜中の男と日なたの女が夕暮れの街を歩いていた。

日なたの女が言った。

「ねぇ、お腹空かない?」

真夜中の男が言った。

「空いた。あそこのソバ屋のカツ丼が喰いたい。」

日なたの女が言った。

「そば屋かぁ。たまにはいいか、じゃ、あたし暑いから冷やしタヌキ食べる」

真夜中の男と日なたの女は近くにあったソバ屋に入り、テーブル席について注文をすませた。

テーブルの上に占いPodがあった。

日なたの女が言った。

「占いPodだって。やってみる?」

その占いPodのモニターに『ひもを引いてください。一回、100円』と表示されていて、天辺に赤い紐がついていた。

真夜中の男が言った。

「いいけど。一回、100円?高くね?で、100円、どこに入れんだ?」

日なたの女が言った。

「あとで精算するんじゃない?あたしやるよ」

そう言うと、日なたの女は占いPodの上に付いてる赤いひもを引っぱった。

チンと音がして、一瞬、モニターの文字がグニャグニャになり、すぐに真赤な文章が大きくハッキリと表示された。


“あなたは、5分後に死にます”


「何、これ。あたし、5分後に死ぬって。感じわりぃ。」

と日なたの女は、ぷぅっと頬を膨らませて極彩色の爪で占いPodをガリガリひっかいた。

店はひっそりしていた。客は彼ら2人だけだった。

日なたの女が言った。

「あんたも、やんなよ。」

「だよな。」

そう言うと、真夜中の男も占いPodの上に付いてる赤いひもを引っぱった。


“あなたは、3分後に死にます”


「・・・だってよ。」

と、ちょっと口もとを引きつらせて真夜中の男は言った。

日なたの女は、再び、極彩色の爪で占いPodをガリガリひっかきながら言った。

「ってことは、もうすぐあたしとあんたは一緒にお陀仏って事ね」

真夜中の男が言った。

「100円でこれかよ。何かのギャグ?何かムカツクな。」

日なたの女が言った。

「二人とも、食中毒で死んだりして。」

真夜中の男が言った。

「そりゃ無いな。ほら、暖簾の奥でまだ作ってるぜ。ええと、占いPod通りだと、、、あと1分くれぇか。絶対に間に合わねぇー。」

日なたの女が言った。

「ま、暇つぶしって事かぁ。じゃさじゃさ、二人で同時に引いてみない?」

真夜中の男が言った。

「いいよ。」

そして、真夜中の男と日なたの女は、一緒に占いPodの上に付いてる赤い紐を摑み、“せぇ~の!”と同時に引いた。


“あなたたちは、今、死にます”




どっかぁぁぁぁああああああ~~んっ!

占いPodは爆発し、二人もソバ屋も跡形なく消え去った。

夕暮れから夜が滲み出し、街にきのこ雲が立ちのぼった。

その頃、南極で異常な現象が観測されていた。

南極のど真ん中、地球の地軸の南端から赤いひも状の物体が突き出しているのが確認されたのだ。

衛星から捉えたその映像は、あらゆるメディアを通して世界中に送信された。

そして、それを見た全ての人は思った。


・・・引っぱってみたい・・・




                   


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿