息子が小さい頃、母の家に蜂の巣ができた。
母は大騒ぎしてその巣を取ることができなくて、友達のおじさんを呼んだ。
おじさんは手際よく蜂たちを退治して、巣を壊してくれた。
蜂との戦いの中、おじさんは一匹の蜂に刺されてしまっていた。
唇だった。
唇は大きく腫れ上がり、ハリは取ったけどしばらくすごい顔だった。
その顔を見た息子は大爆笑!おじさんもつられて大笑いをした。
それからそのおじさんのことを息子が蜂のおじさんと呼ぶようになった。
蜂のおじさんはひとり暮らしで、子どもも孫も縁遠いせいなのか私のことを高校くらいの頃からよくいろいろと世話を焼いてくれていた。
子どもが産まれてからは孫のように関わってきていた。
鉄砲撃ちが趣味で大きな犬を飼っていた。
他にも野良猫を手名づけてみたり、花を植えてみたり動植物が好きな人だった。
蜂のおじさんは私達が仲良くしているデカおじさんと呼んでいるおじさんとも仲良くて、猟銃の許可をもらうときに担当の警察官だったデカおじさんと知り合った。
昨日、蜂のおじさんが亡くなったことを聞いた。
ひとり暮らしが厳しくなって、施設に預けられて1年もなかった。
友達の加治屋のおじさんというのがいて喪中ハガキが来たと連絡があった。
喪中???
私はむかついた。
どうして喪中?じゃあとっくに死んでるの?もう喪が明けてるの?なんで死んだことを教えてくれないの?
母はどうして私が怒っているのかわかっていなかった。
私は涙ながらに言った。
ずっと、おじさんひとりだったんでしょ。仲間達が支え合って生きてこられたんでしょ。誰がお葬式をあげたの?どうやって亡くなったのか聞こうともしないの!一番そばにいたのは私達じゃないの!なんでみんな平気なの!
母は黙っていた。
私はデカおじさんに蜂のおじさんの写真を持っていないかと聞いた。
おじさんはあるかもしれないけどわからんと言った。私に
「マキよ。なあ、おまえ。ひとりでのたれ死んだんじゃないだけましじゃろが。じゃっどんいっかせっくれてもよかったなあ。それもわかっとよ。元気にしちょっかねえっておもちょった。おまえは若けでそげん辛いとよ。おっどんたちもね、そげん長く生きるかわからんからなんとなく順番がきちょっごたっせいおまえのようには思わんとかしれん。向こうに行けばまたあゆっとよ。おっどんたちのほうがおまえより早えかいな。またすぐいっきょっち気がすっと」
(マキよ。なあ、おまえ。ひとりでのたれ死んだんじゃないだけましだろうが。でも教えて欲しかったよなあ。それもわかるんだよ。元気にしてるだろうかって思ってた。おまえはわかいからそうやって思うんだよ。俺達もね、そんなに長くいきるかわからないからなんとなく順番が来てるような気がしておまえのようには思わないのかもしれない。向こうに行けばまた会えるんだよ。俺達の方がおまえより早いからな。またすぐ会える気がするんだ)
なるほどな・・・と思った。
母から49日は過ぎてないと聞いたので、だったら蜂のおじさんはぐるぐるとみんなのところをまわっているかもしれないと思った。
それで母に蜂のおじさんは牡蠣のニンニクバター炒めが好きだったからそれを作ってテーブルに置いてやれといった。
私はおじさんが好きなナンチクのウインナーを買いに行こう。おじさんの弔いをする。
若い頃、おじさんとケンカしたことがあった。おじさんと母の家の庭を大掃除していると「お前はホントに働くやつだ」と褒められた。
私が家に行くとアイスクリームを食べるか?ジュースを飲むか?と言う人だった。
施設に入ってから「ラーメンが食べたい」「俺はいつ帰れるのか?」と言っていた。
甘いものも好きだったけれど糖尿がでたせいで好きなものはほとんど食べられなくなった。
今、おじさんは自由になったんだろう。
私のこの現世という劇にはいろんなキャストがいる。個性的な登場人物がいる。
クランクアップした人達もたくさんいる。
蜂のおじさんはクランクアップした。
私は来世のどこかでまたおじさんと共演をすることがあるといいなと思う。
母は大騒ぎしてその巣を取ることができなくて、友達のおじさんを呼んだ。
おじさんは手際よく蜂たちを退治して、巣を壊してくれた。
蜂との戦いの中、おじさんは一匹の蜂に刺されてしまっていた。
唇だった。
唇は大きく腫れ上がり、ハリは取ったけどしばらくすごい顔だった。
その顔を見た息子は大爆笑!おじさんもつられて大笑いをした。
それからそのおじさんのことを息子が蜂のおじさんと呼ぶようになった。
蜂のおじさんはひとり暮らしで、子どもも孫も縁遠いせいなのか私のことを高校くらいの頃からよくいろいろと世話を焼いてくれていた。
子どもが産まれてからは孫のように関わってきていた。
鉄砲撃ちが趣味で大きな犬を飼っていた。
他にも野良猫を手名づけてみたり、花を植えてみたり動植物が好きな人だった。
蜂のおじさんは私達が仲良くしているデカおじさんと呼んでいるおじさんとも仲良くて、猟銃の許可をもらうときに担当の警察官だったデカおじさんと知り合った。
昨日、蜂のおじさんが亡くなったことを聞いた。
ひとり暮らしが厳しくなって、施設に預けられて1年もなかった。
友達の加治屋のおじさんというのがいて喪中ハガキが来たと連絡があった。
喪中???
私はむかついた。
どうして喪中?じゃあとっくに死んでるの?もう喪が明けてるの?なんで死んだことを教えてくれないの?
母はどうして私が怒っているのかわかっていなかった。
私は涙ながらに言った。
ずっと、おじさんひとりだったんでしょ。仲間達が支え合って生きてこられたんでしょ。誰がお葬式をあげたの?どうやって亡くなったのか聞こうともしないの!一番そばにいたのは私達じゃないの!なんでみんな平気なの!
母は黙っていた。
私はデカおじさんに蜂のおじさんの写真を持っていないかと聞いた。
おじさんはあるかもしれないけどわからんと言った。私に
「マキよ。なあ、おまえ。ひとりでのたれ死んだんじゃないだけましじゃろが。じゃっどんいっかせっくれてもよかったなあ。それもわかっとよ。元気にしちょっかねえっておもちょった。おまえは若けでそげん辛いとよ。おっどんたちもね、そげん長く生きるかわからんからなんとなく順番がきちょっごたっせいおまえのようには思わんとかしれん。向こうに行けばまたあゆっとよ。おっどんたちのほうがおまえより早えかいな。またすぐいっきょっち気がすっと」
(マキよ。なあ、おまえ。ひとりでのたれ死んだんじゃないだけましだろうが。でも教えて欲しかったよなあ。それもわかるんだよ。元気にしてるだろうかって思ってた。おまえはわかいからそうやって思うんだよ。俺達もね、そんなに長くいきるかわからないからなんとなく順番が来てるような気がしておまえのようには思わないのかもしれない。向こうに行けばまた会えるんだよ。俺達の方がおまえより早いからな。またすぐ会える気がするんだ)
なるほどな・・・と思った。
母から49日は過ぎてないと聞いたので、だったら蜂のおじさんはぐるぐるとみんなのところをまわっているかもしれないと思った。
それで母に蜂のおじさんは牡蠣のニンニクバター炒めが好きだったからそれを作ってテーブルに置いてやれといった。
私はおじさんが好きなナンチクのウインナーを買いに行こう。おじさんの弔いをする。
若い頃、おじさんとケンカしたことがあった。おじさんと母の家の庭を大掃除していると「お前はホントに働くやつだ」と褒められた。
私が家に行くとアイスクリームを食べるか?ジュースを飲むか?と言う人だった。
施設に入ってから「ラーメンが食べたい」「俺はいつ帰れるのか?」と言っていた。
甘いものも好きだったけれど糖尿がでたせいで好きなものはほとんど食べられなくなった。
今、おじさんは自由になったんだろう。
私のこの現世という劇にはいろんなキャストがいる。個性的な登場人物がいる。
クランクアップした人達もたくさんいる。
蜂のおじさんはクランクアップした。
私は来世のどこかでまたおじさんと共演をすることがあるといいなと思う。
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