既存の常識やフレームワークを疑う

2010年02月08日 08時41分50秒 | 経営管理


Harvard Business Review ( ハーバード・ビジネス・レビュー ) 2010年 03月号 [雑誌]

ダイヤモンド社

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歴史学者に聞く
リンカーン流リーダーシップ:
反抗分子を集めてチームをつくる

歴史学者
ドリス・カーンズ・グッドウィン

第44代バラク・オバマ大統領は、昨今の危機的状況を乗り切るべく、政敵やライバルである大物政治家たちを閣僚に起用した。これは、異論や反論を恐れず、大統領選でのライバルすら集めて組閣した第16代エイブラハム・リンカーン大統領に倣ったものである。リンカーンのリーダーシップには、政治家に限らず、混乱期の舵取りを任されたビジネス・リーダーにとっても学ぶべき教訓がある。オバマの愛読書でもあるリンカーンの伝記Team of Rivalsの著者ドリス・カーンズ・グッドウィンに聞く。


なぜリーマン・ブラザーズは危機を回避できなかったのか
あえて戦うべき時:
協調や譲歩は本当のチームワークではない
ケンブリッジ・インターナショナル・グループ 創業者兼CEO
サジュ=ニコル A. ジョニ
ブーズ・アンド・カンパニー シニア・エグゼクティブ・アドバイザー
デイモン・ベイヤー

リーマン・ブラザーズは2008年秋に破綻したが、筆者らは「協調の文化」がその原因の一つであると指摘する。つまり、対立や論争を一掃するために制度やルールを変えた結果、だれも言うべきことを言わなくなり、ついには一蓮托生で職を失った。組織で賢く生きるには、互いに協調・協力し、時には譲歩し、反論や異論を慎むべきである、というのが社会の知恵である。しかし筆者らは、協調しながら競い合い、時には対立し、さりとてそれが落着すれば、再び協力する関係こそ真のチームワークであり、したがって、協調のスキルだけでなく、「戦うべき戦い」のスキルを身につけることが必要であると訴える。本稿では、バーリントン・ノーザン鉄道の改革、ウェルチの後継者争い、キャンベルの再生、ユニリーバのマトリックス組織の変更などの例から、戦うべき戦いのリーダーシップ・スキルを学ぶ。


既存の常識やフレームワークを疑う
脱「20世紀」的思考
こと経営・ビジネスの分野において、20世紀は「モデル化」の時代であった。実際、戦略やマーケティング、財務などの分野で、さまざまなモデルが発明されたが、その大半は経済学やORの演繹であった。これらのモデルは、いまなお利用されているが、どうもしっくりこなくなっているようである。これら20世紀の知を、現在に照らしながら疑い、新たな視点を見つけることで、21世紀にふさわしいモデルが見えてこよう。

例外の価値:ウィッキド・プロブレムを解くヒント
トロント大学 ジョセフ L. ロットマン・スクール・オブ・マネジメント 学長
ロジャー・マーティン
トロント大学 薬学部 教授
スティーブン W. シェーラー
スプロール化の終焉:「スーパーサイズ・ミー」から抜け出す
ジョージア工科大学 建築学部 准教授 兼ディレクター
エレン・ダンハム=ジョーンズ
管理と権限を放棄せよ
シートン・ホール大学 スティルマン・スクール・オブ・ビジネス 教授
A. D. アマル
CSCドイツ ディレクター
カーステン・ヘントリッヒ
ウエストミンスター・ビジネススクール 教授
ブラトカ・フルピック
利益を最優先すべきではない
サンダーバード国際経営大学院 助教授
ネイサンT. ウォッシュバーン


奇才のSF作家が予知する
ネット社会の近未来:
オーウェル的な危機は起こらない
SF作家
コリイ・ドクトロウ

ITとインターネットが、世界じゅうの個人の力を引き出し、新しい世界を切り開いていくと信じるSF作家コリイ・ドクトロウ。彼は、小説のなかだけでなく、コピー・フリーのブログの編集人、大学での研究など、インターネットの可能性について追求してきた。彼によれば、ジョージ・オーウェルが『1984』で描いたような危機が、インターネットにとって引き起こされることはないという。また、インターネットは人知を共有する手段であり、著作権によってコピーを制限したり禁止したりするのは、むしろ道徳に反する行為であると主張する。その一方、アマゾンの〈キンドル〉などによって、電子書籍が主流となるという予測には懐疑的で、そもそもコンピュータは人間の注意を散漫にさせるとも述べる。


ノーベル経済学賞受賞者は訴える
デリバティブを知ることが
金融危機の再発を防ぐ
ハーバード・ビジネススクール 教授
ロバート C. マートン

今回の世界金融危機の元凶は、デリバティブではないのか――。デリバティブは、金融に無知な素人はもとより、金融機関の経営陣や取締役会にとっても「ブラックボックス」である。このように仕組みがよくわからないせいで、先のように「デリバティブ犯人説」がまことしやかに語られる。しかし、金融工学の世界的権威であり、1997年のノーベル経済学賞受賞者、ロバート C. マートンによれば、まったくの見当違いであるという。むしろ、デリバティブの本質を正しく理解することこそ、安全な金融システムを実現するうえで最低限の必要条件であると訴える。

138年の歴史を誇るサーカスの団長が語る
サーカス・リーダーシップ:
一人多役のプレイング・マネジャー

リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス 団長
チャック・ワグナー

138年の伝統を誇るリングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカスの団長、チャック・ワグナーは、ブロードウェーの舞台で活躍したミュージカル俳優である。サーカスの伝統を守りつつ、ブロードウェー流の華やかな演出を取り入れ、大型スクリーンやハイテクを使った壮大なショーへと進化させた。また、観客に最高の公演を見せるために、ショーの最中はもちろん、舞台裏でも団員たちの手本として、みずからを演出する。彼は、ショーの進行役であり、また観客を喜ばせるエンタテナーであり、観客の目を持った観察者であり、また団員たちのメンターであり、伝統の継承者であり、またイノベーションの担い手である。このように一人でいくつもの役割を演じるワグナーの姿は、ビジネススクールで教えるようなリーダー像とは異なり、現場を大切にするビジネス・リーダーたちへの示唆に富んでいる。


ボストンコンサルティンググループでの実験が教える
プロフェッショナルこそ
計画的に休まなければならない
ハーバード・ビジネススクール 教授
レスリー A. パルロー
ハーバード・ビジネススクール リサーチ・アソシエート
ジェシカ L. ポーター

プロフェッショナル・サービスを提供する企業には、「顧客の利益を最優先に考える」という職業倫理ゆえ、年中無休でがむしゃらに働くという文化が染みついている。もちろん、ワーク・ライフ・バランスなど存在しない。筆者らは、ボストンコンサルティンググループの協力の下、超多忙を極めるコンサルタントたちを「強制的」に休ませ、その結果、仕事に支障を来たすのかどうか、あるいはリフレッシュして仕事の質が高まるのかを検証する実験を試みた。結果は、後者に軍配が上がり、コンサルタントからの評価も上々であった。しかも、このように働き方を見直すことがきっかけとなって、メンバー間の対話や知識の共有、上下関係や企業文化などに、好ましい影響が表れ、期せずして変革が起こった。


カリフォルニア・キュイジーヌの創始者が語る
サステナビリティの心得:
どんなに苦しくとも「質」に妥協しない
シェ・パニース 創業者
アリス L. ウォータース

アリス・ウォータースは1971年、カリフォルニア州バークレーに、地産地消のオーガニック・レストラン、シェ・パニースをオープンさせた。これが、体にやさしい食材を用いるカリフォルニア・キュイジーヌの始まりである。レストラン経営は水商売といわれるように、何度となく危機に見舞われたが、彼女はけっして「質」に妥協することなく、創業の理念を貫いてきた。いわく「サステナビリティは必ず利益に貢献する」。またウォータースは、スロー・フード運動にも関わり、「エディブル・スクールヤード」と呼ばれる食育にも力を注いでいる。創業者のアリス・ウォータースに、持続可能な経営哲学について聞く。

【1978年マッキンゼー賞受賞論文】
欧米流マネジメント行動の罠
東洋的思考のすすめ
元 スタンフォード大学経営大学院 教授
リチャード・ターナー・パスカル
ボトムアップ・コミュニケーション、コンセンサス経営など、日本企業の組織行動はアメリカ企業と大きく異なるといわれているが、筆者の調査によると、これらはむしろ共通点であり、顕著な違いは、あいまいさを尊重する、時には婉曲に時には単刀直入に指摘する、表と裏を使い分ける、試行錯誤しながら漸進的に取り組むことなどにあるという。アメリカ企業では、白黒をはっきりつける二元論的な傾向が一般的だが、日本企業は、部分と全体の関係性を大切にし、ホリスティックに考える。ほとんどの科学分野が、脱二元論・非線型の境地に達しているにもかかわらず、経済学や経営学はいまだ線型な論理合理主義が主流になっている。20世紀に体系化されたマネジメントの知に限界が訪れている現在、日本企業の経営慣行を再考することで、その再発明につながるかもしれない。

HBR Article
科学の知が伝統的手法を進化させる
意思決定プロセスのカイゼン
バブソン大学 教授
トーマス H. ダベンポート

イラク侵攻、サブプライム問題など、つまるところ意思決定の失敗である。多くの場合、意思決定は属人的であり、それゆえ偏見、不正確、非合理を伴う。いま求められているのは、意思決定プロセスのリエンジニアリングであり、最先端の科学の成果を用いて、体系的なプロセスを再構築することである。しかし残念ながら、科学的意思決定手法が数々開発されているにもかかわらず、これらを積極的に導入・実践している企業はきわめて少ない。本稿では、意思決定プロセスを改善する4つのステップについて解説し、シェブロン、EDS、スタンレーワークスなどの例を紹介する。



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