ポリティカルセオリスト 瀬戸健一郎の政治放談

政治生活30年の経験と学識を活かし、ポリティカルセオリストの視点から政治の今を語ります。気軽にコメントして下さいね!

人事異動内示~市長の人事権の範囲。

2007-03-24 03:35:45 | 市議会議員として
公益通報制度を市長部局から独立させるべきだという議論をしてきました。しかし、草加市の制度はあくまでも市長の附属機関であり、せめてもの客観性の担保(市長の独善性の回避)のために、公益通報委員会の委員の選任を市議会の議決要件としました。

■内示直前、草加市の人事異動~公私混同・越権行為をチェック。

市役所の人事は市長の専権事項。私は基本的に市役所人事は市長の生産性が最大化するように、市長自身が判断をすべきことだと考えています。しかしながら、市長の公私混同や越権行為などがあれば、これらの問題を改善させることは市議会本来のチェック機能のひとつです。

定年退職する部課長などの後任人事のために、年度内最大の人事異動となる4月1日からの新年度人事が来週の月曜日、3月26日に内示される予定です。

■2元代表制の一翼を担う議会事務局の役割と重要性

草加市議会事務局には議会事務局長以下11名の有能な職員が配置されています。しかし、その誰一人として、草加市議会によって直接採用された職員はおらず、すべて市長部局からの出向というかたちで24万市民の負託を受ける草加市議会の実務を担っています。

地方分権が進み、多くの権限が市町村に委譲されるにつれて、様々な市町村の新しいルールづくりを担う市議会の役割は、増大する事務を処理する市長部局同様に大きくなっています。市町村長の権限が強くなれば、2元代表制の一翼を担う議会の権限もそれに伴って強くならなくては権力構造のバランスは崩れてしまいます。

市長部局には千数百名の職員が居るのに、議会には11名。直接、膨大な事務事業を処理するために市長部局にそれなりの人材が必要であることは当然とはいえ、議会事務局では11名の職員で30名の議員の庶務、調査、議事をこなし、立場として対極となる市長部局の事務をチェックする機能を果たすわけですから、その職責は重大であり、複雑です。

■議会事務局人事は議長に帰属~市長の不当介入。

木下市長はこの議会人事に対して、議長の意向に反して介入しようとしています。当然のことながら、議会を構成する議員たちにとって、議会事務局のスタッフは議員活動にも議会活動にも不可欠な人材であり、その人事権は法的にも明確に議長に帰属しています。

市長は職員全体の人事を掌握している最高権力者ですが、議会人事が議長に帰属していることを尊重し、議会への派遣とその引き上げに当たっては、議長の意向を確認しなければなりません。もし、市長が議長の意向に反して、議会人事を動かせば、それは市長の議会人事への不当介入ということになります。

■3月26日(月)の草加市役所人事異動内示に注目!

今度の月曜日の人事異動内示がどのような中身になるのか、だれもが納得のいく人事であるかという視点に加えて、手続きとしても間違いのないものであるか、注目していかなくてはなりません。

■ディベート&コンセンサス~「対立」ではなく、「対話」。

議会は議員30人が結束してこそ初めて、市長の権力とバランスが保てるのです。日本はディベート社会ではなく、コンセンサス社会ですから、この2元代表制というシステムそのものが理解されにくい国民性が存在していると言えるかもしれません。

私が目指しているのは、対立もしくは、対決型の2元代表制なのではなく、対話型の2元代表制なのです。ですから、公益通報制度でも引くべきところは引きました。

草加市民の皆さま、どうかこのまちのデモクラシーを見守ってください。

※以下は全国市議会議長会の研究部会がまとめた報告書からの引用です。

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事務局職員に対する議長の人事権を実質的に確立し、その処遇面に十分考慮を払いながら有能な人材を確保するよう務める。

① 概説

地方自治法第138 条では、議会事務局の全職員は議長が任免し、常勤の定数は条例で規定、事務局長・書記長は議長の命を受け議会の庶務を掌理、書記その他の職員は上司の指揮を受け議会の庶務に従事、全職員の人事事項は地方公務員法(第6条)の定めによるとしている。

事務局職員の任免権は早くから議長の手に握られてきたはずだが、実際は執行部人事に組み込まれて短期間で異動が行われており、議長権限は形骸化してしまっている。このため、よほどの強力な議長でない限り、議会事務に精通して押しのきく10 年選手の職員を引き止めておくことができず、事務局の強化が図れないのが現状といえる。執行部と連動させないと、町村の場合には職員の昇進が妨げられるという悩みは避けられないが、いま少しとどまれるよう処遇面で改善を工夫するべきである。

② 沿革

区町村会規則で町村会に書記を置くことが追認・規定された後、前述のとおり町村制では、書記は議長が選任(市は市会の選任)となったが、実際は役場の書記が務めていた。明治44 年の町村制改正では、書記は議長に隷属して庶務を処理するとされたが、昭和18 年の町村制改正で書記は町村長の任命となり、それまでの「議長ニ隷属シテ」が「議長ノ指揮ヲ承ケ」と変えられた。だが、昭和21 年の町村制改正では、議長の任免に戻され、また定例会年6 回以上開会を理由に書記は常置となった。地方自治法になってからの経緯は既述のとおりである。

③ 欧米の事例

市町村の議会事務局の人事権については、ニューヨーク市が議長にありとしたほか回答がなく、参照できない。

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欧米の事例に回答が得られないのは、地方自治制度そのものが千差万別で、日本のように一元化されていないからです。全国すべての自治体が大統領制と同じ2元代表制をとっているのは日本だけだと言っても過言ではありません。

■市長と議員の理想の関係~デモクラシーのあるべき姿。

アメリカ合衆国では特に、大都市では2元代表制が取られていますが、議員と市長の力は均衡しており、相互の対話によって政策決定されていくシステムは日本以上にコンセンサスを大切にしています。規模の比較的小さな議会ではシティ・マネージャー制のように、議会における対話がそのまま決定されていくシステムになっていたり、市長を議員の中から選出する(議院内閣制のような)自治体もあります。

「政策主導の対話型の市政」を私は長年標榜してきました。対立、対決ではないのです。

だれもが幸せなまち―草加を創ろう。

※この人事異動内示後の記事「人事異動内示~市長が撤回」こちらをクリックしてください。

瀬戸健一郎
Kenichiro Seto
草加市議会議員
Soka City Councilor


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