ポリティカルセオリスト 瀬戸健一郎の政治放談

政治生活30年の経験と学識を活かし、ポリティカルセオリストの視点から政治の今を語ります。気軽にコメントして下さいね!

TPPって?~環太平洋経済連携協定について

2011-10-28 05:00:00 | 市議会議員として
※あれから30年~元・アメリカ合衆国下院歳入委員長ビル・アーチャー氏との出会い
【毎日新聞】16年ぶりの再会(写真↑)を伝える1997年掲載の記事はこちら


最近ニュースでTPPってよく耳にしますね。久しぶりのブログ記事になりますが、私なりに少し、心境の変化があったような気がしていますので、これまでの論調と少し違うと感じる皆さまもあろうかと思いますが、思いつくままにおしゃべりします。どうぞ今後とも、きたんのないコメントをどしどしお寄せ下さい。

■TPPの正式名称と意味~大きな経済圏を考える。

TPPとは、Trans-Pacific Partnership(環太平洋のパートナーシップ)の頭文字で、もともとは、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement(環太平洋戦略的経済連携協定)というのが正式名称。"Trans-Pacific"=「環太平洋」、"Strategic Economic Partnership"=「戦略的経済連携」もしくは「戦略的経済パートナーシップ」、"Agreement"=「協定」といった翻訳語がそれぞれ当てはまるため、別名、環太平洋経済協定、環太平洋連携協定、環太平洋戦略的経済連携協定、環太平洋パートナーシップ、環太平洋パートナーシップ協定、太平洋間戦略経済連携協定、トランス・パシフィック・パートナーシップなどと様々な表記が使われています。

分かりやすく言えば、環太平洋地域、つまり太平洋を大きく取り囲む沿岸国が、大きく連携して、大きな経済圏を意識していきましょうというビジョンのことです。

■EU(ヨーロッパ連合)&AU(アジア連合)を考える。

かつて日本はアジア地域を欧米諸国の支配から解放し、「大東亜共栄圏」(だいとうあきょうえいけん)を実現するビジョンを掲げ、結果的に太平洋戦争に突入していきました。私はこのビジョンをもって、日本が他国の主権を踏みにじり、他国民の人権を無視して侵略戦争を展開したことを正当化できるとは思っていません。しかしもし、当時の日本が戦争ではなく、平和的な外交交渉や経済支援策によって、このビジョンを達成する道を選び取ることが許されていたら、その後の世界史における、EC(ヨーロッパ共同体)や現在のEU(ヨーロッパ連合)のような共栄圏をアジアに実現することが、もっと早く出来たのではないかという「夢」を見ることがあります。

つまり、AU(アジア連合=Asian Union)というビジョンはひとつの世界観として成立するのではないでしょうか。

■AU(アジア連合)+アメリカ合衆国+α=環太平洋

ところがもともとEU(ヨーロッパ連合)も、各国の国力や経済力だけでなく一定規模の地域的圏域を囲い込むことで連携し安定的な市場を拡大することに目的がありましたから、アメリカ合衆国は連合する相手国から除外されていました。もし、アメリカ合衆国が参加していれば、「環大西洋」="Trans-Atrantic"という言葉も生まれていたかもしれないと思います。

アメリカ合衆国のフロンティア精神は、ヨーロッパから大西洋を経て北アメリカ大陸の東岸から始まり、西に向かいました。そしてヨーロッパが直接接触することのない太平洋に抜けて、対日戦争に勝利し、覚醒しつつある眠れる獅子・中国との国交正常化も実現しました。

そして、英連邦(コモンウェルス)のオーストラリアやニュージーランドを含む「環太平洋経済圏」を確立し、この中心に存在することは、アメリカ合衆国の国益に叶うビジョンです。ですからアメリカ合衆国はAU(アジア連合)という構想を容認することはないかもしれません。

それでは日本にとって、環太平洋という大きなくくりの中に留まることは国益に叶うのでしょうか。もちろん、環太平洋と表現するかぎり、物理的に日本はその圏域に存在することは否定できない事実です。日米同盟という世界で最重要な二国間関係といわれる同盟国アメリカ合衆国を外して、あくまでもAU(アジア連合)を主張することは可能なのでしょうか。

■独立国・日本の国家観~アメリカに対する恐怖観念から脱却せよ!

日米地位協定の見直しによって、アメリカ合衆国海軍の艦船は日本のいかなる港にも、当該自治体の許可なく寄港できるようになりました。郵政省の解体民営化によって、金融や物流が解放されました。そして今度は、TPPによって「持たざる国=日本」が関税の撤廃によって国内の産業や農業を保護することが出来なくなるのではと心配されています。

私はアメリカ合衆国が田中角栄氏をロッキード事件によって失脚させたのではないかと感じることがあります。それは田中角栄氏がニクソン大統領よりも早く日中国交正常化を果たしたからです。それはアメリカ合衆国を差し置いて日本がアジア地域における信用回復と社会復帰を果たすことを意味していたと思うからで、田中角栄氏があのまま権勢を維持していたら、日本は私が「夢」に見た平和的にAU(アジア連合)を実現していたかもしれないと空想するからです。

それにしてもそんな大きな国家観や世界観を語る政治家がいなくなってしまったと皆さんも思いませんか。日本の政治家たちが、もしくは官僚たちが、日本の国家観を論じるよりも、アメリカ合衆国の意向を気にしながら、その対応に追われるがごとき国家経営を続けているのは、アメリカの意に反しては日本の政局を維持することはできないとでもいう観念があるからなのでしょうか。

恐怖が判断を誤らせることがあります。恐怖というフィクションを現実の出来事と区別することができれば、冷静な判断が出来ます。時に一部の政治家や一部の評論家はマスコミを通して恐怖を流布します。それが多くの人々の注目を集める効果的な方法だからです。しかし、私が最も必要だと考えることは、その恐怖に冷静に立ち向かい、予想される事実に対する効果的な対処法を見出すことです。

■等身大の日米関係を創りたい!~瀬戸健一郎【18歳】少年の思い変わらず。

このブログの冒頭の写真のビル・アーチャー元・下院歳入委員長に出会い、初めて「ジャパン・バッシング」(日本たたき)という言葉を聞いた1981年5月に、私は政治家になりたいと思いました。アメリカが本気になったら、トヨタも日産も東芝もソニーもつぶされてしまうのではないかと18歳の瀬戸健一郎少年は思いました。だから必死でビルに語りかけました。しかし日本の自動車産業はいまだアメリカの自動車産業を凌いでいる状況です。

オレンジ・牛肉交渉の時にもそうでした。日本のみかんはオレンジやグレープフルーツとは別物。今も日本のこたつで食べるのはオレンジではなくみかんです。私の知る限り唯一の実例は、日本でレモンが生産されなくなったことです。

関税障壁がなくなると、消費者の選択の幅が広がります。すると農産物も工業製品も品質が精鋭化されていきます。そして日本はその競争に勝ち続けてきたのだと私は思います。アメリカやオーストラリアの牛肉が安く入ることによって、私が子どものころよりも多くの牛肉を食べられるようになりましたが、それに伴い、高級黒毛和牛のステーキは比類のない質の高さを誇り畜産農家の経済を支えてきました。

世界に出ると日本の果物の品質の高さが際立っていることを感じずにはいられません。メロン、いちご、りんご、なし、ぶどう、どれを挙げても世界の最高水準の評価が与えられるべきものです。これらの価値を高め、伝え、海外にも広めていく国家レベルの販売戦略を持つことが、TPP参加後に必須条件となるでしょうし、広告・広報産業を発展させることもIT先進国としては真剣に考えていくべきです。

私は必ずしもTPP賛成派でも、反対派でもありません。

アメリカの圧力に負けるのでもなく、国内に広がる恐怖に慄く(おののく)のでもなく、しっかりと自分の足で立って考える。そんな議論をみなさんとしてみたい。そう心から感じています。

久しぶりのブログ記事なのに、とりとめもない内容になってしまったことをお詫び申し上げます。しかし、「等身大の日米関係を創りたい!」という初心は今も忘れるどころか、今も私の心の中でめらめらと燃え続けています。

どうぞ、皆さんも気軽に皆さんの思うことをコメントやメッセージで伝えて下さい。いろんな議論をしていきましょう。


瀬戸健一郎
Kenichiro Seto
草加市議会議員
Soka City Councilor


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
no way (noga)
2011-10-28 06:54:55
待ちの政治では、迅速な対応はできない。停滞気味である。

現実の内容は、「世の中は、、、、、」の内容であり、理想の内容は、「あるべき姿」の内容である。これは非現実である。
日本語には時制がなく、日本人は現実 (現在) と非現実 (過去・未来) の世界を独立させて並行して言い表すことが難しい。
非現実 (理想) に向かうための現実対応策が語れない。
現実から理想へと一足飛びに内容が飛ぶ。言霊の効果のようなものか。その過程が明確にされない。

時制を考慮することなく自分の思った内容を述べようとすると、現実肯定主義派と空理空論 (曲学阿世) 派のどちらかに分かれることになる。
これでは政治音痴は止まらない。
両者は話が合わない状態に陥り、議論ができない。そこで、悪い意味での数合わせで、民主的に、物事を決するしかないことを日本人は心得ている。
だから、多数がとにかく足並みをそろえる大連立の構想には意味があると考えられているのであろう。

守旧派の世界は理想的ではないが、過不足なく成り立っている。革新派の世界は穴だらけで成り立たないことが多い。
安心と不信の背比べである。だから、政治家は静観が多く、意思決定には手間を取る。
静観には現在時制を働かせるだけで十分であるが、意思決定に至るには意思(未来時制の内容)の制作が必要になる。
意思の制作に未来時制が必要であるということは、自分が意思を作って示すことも他人から意思を受け取ることも難しいということになる。
つまり、社会全体が意思疎通を欠いた状態のままでとどまっているということである。
それで、勝手な解釈に近い以心伝心が貴重なものと考えられている。

時代に取り残されるのではないかという憂いが常に社会に漂っている。
英米人の政治哲学に基づいて次々と繰り出されてくる条約締結の提案には、ただたじろぐばかりである。
自分たちには、哲学がない。理想もなければ、それに向かって踏み出す力もない。
筋道を明らかにされることのない指導者からの励みの要請に民は閉塞感を持っている。玉砕戦法のようなものか。
だから、我々は耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ必要に迫られることになる。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

この問題は一度きりにしないでください (匿名希望@オリジナル)
2011-10-30 14:03:44
 瀬戸さん。この問題は、草加市議の中で最も欧米を理解している貴方の見解が、一つの指標となると思われます。
 特にTPPが現実のものとなった時、草加市の生産者農家にどの程度の影響が出るのか。地元のあゆみの農協の協力を得るなどして、具体的な数値を算出して提示していただければと思います。農家代表というべきI市議はもちろん反対でしょうし、「TPPに賛成」と言った途端に会派を超えて市議会でも激論になってしまうでしょうが。
 この問題は、かつて田中角栄が日米繊維交渉打開のために3000億円を業界にばらまいて政治決着したレベルに終わらない、将来の日本人の精神や文化の面にまで影響が及ぶ重大事だと考えています。「開国やむなし」と判断するのか。それとも「鎖国」で徹底的に対抗するのか。この先、何度でも論じてもらい、情報の提供や、私見の開陳を積極的に行っていただきたい。
 国際派の瀬戸さんに期待しています。
たしか。 (らんらん。)
2011-10-30 14:23:05
こんにちは。
確か3月だったか?6月だったか?市議会でTPP反対の意見書を賛成多数で可決しています。市議会での結論は出ているのですから国政に委ねるべきだと思います。ちなみに、TPPは農業だけでなく金融・貿易・医療など24分野に範囲が広がります。そのことも考慮しなければならないでしょう。最後に、臨時議会で議長が公明党の宇佐美市議、副議長が平成クラブ・党派自民党の鈴木市議に改選されましたね。
どちらにしても、野田政権もこの問題で国民に信を問うでしょう。
解散総選挙は近いわけです。自由市民クラブも自民系、民主系でまた割れるんですか?この間、佐藤勇市議(自由市民クラブ団長・自民党草加支部副幹事長)とお会いしました。佐藤さん困らせたらダメですよ!
個人的には、市議会においても、自民党を含めた保守系会派の大同団結を願っております。この声、保守支持層にも多いのですから。
地方自治には、政党の枠組みはそぐわない (ようすけ)
2011-11-02 00:59:02
国政においては、議院内閣制なので政党政治というものが重要であります。
国の重要事項を政党内でも勉強会をして組織として、事に対処してゆくことが大事です。
しかし、地方自治においては「地方主権へ!」といわれている時代に、国政と同じように政党にこだわっていたら時代に乗り遅れるばかりか大きな損失を負うことになるのではないでしょうか。
地方自治は、特に市政は我々市民に最も身近なことを取り扱っているのだから、イデオロギーの違いを対話によって克服するような、そういう市政運営、市議会活動であるべきなのではないだろうかと思う。
論点がTPPとずれますが。 (らんらん。)
2011-11-02 20:12:58
こんばんは。
地方自治にイデオロギーがそぐわないという意見も一つの考えです。その一方、市議会においても、「教育・教科書選定」「自治基本条例」のあり方や、医師会との勉強会や予算要望含め、政党のイデオロギーが関係する事もあるのです。それと、住民要望の中では(治水・利水・インフラ整備など)県会議員・国会議員との連携も必要な時があります。
地方議員より国会議員に伝えよう! (らんらん。)
2011-11-12 14:33:08
こんにちは。
瀬戸議員にTPPは賛成だ!いや反対だ!と伝えたところではなにも変わりません。
草加であれば選挙区の国会議員に伝えましょう。衆議院なら民主党細川氏、参議院なら自民党古川氏、関口氏、公明党西田氏、民主党行田氏、山根氏、大野氏。草加だと、自民なら古川さん、民主なら行田さんのほうが地縁もあるでしょう。
支持政党があれば、その政党の議員に伝えましょう。
自民党でも民主党でもタウンミーティングなり国会議員との意見交換会がこの近くでは行われていますのでそこで、意見を伝えてみたらどうでしょう。
自民党新藤代議士ならば11月16日よる7時より川口駅東口フレンディアホールにて。
民主党行田参議院議員なら11月20日ごご3時より草加市立谷塚文化センターでタウンミーティングが開催されます。参考迄に。
らんらんさんへ (瀬戸健一郎)
2011-11-12 16:26:38
いつも、様々なご意見をお寄せ頂き、ありがとうございます。

ただし、2011-11-12 14:33:08ご投稿のコメントについては、一言、お願いを申し上げます。それは、このブログは私が有権者である皆さまと意見を直接交換し合う目的で運営しているものであることを理解して頂きたいということです。

「瀬戸議員にTPPは賛成だ!いや反対だ!と伝えたところではなにも変わりません。」というご意見はご意見だとは思いますが、とても残念なご発言だと感じます。このブログにご意見を寄せること自体を否定されているとも受け取られかねないからです。

より多くのご意見を私は、市会議員ですが聞きたいと願っています。以後、ご発言については、その課題について建設的に積み上げていくコンテクストで行って頂けると幸いです。

以上、よろしくお願い申し上げます。

瀬戸健一郎
らんらん氏の書き込みについて (匿名希望@オリジナル)
2011-11-12 17:18:10
 らんらん氏は、御自身のブログがあるのだから、そこで自説の開陳をされてはどうかと思います。TPPであれ他の問題であれ、言いたいことは結局のところ草加市議会の保守系会派の大同団結というのは、ブログ主である瀬戸さんに失礼ですし、瀬戸さんも書いている通り、「瀬戸さんに伝えるより、タウンミーティングなどで国会議員に直接伝えろ」と言うに至っては、瀬戸さんが提示したトピックについて、この掲示板で議論や意見交換をすることを封殺しようとしているようで、何をいわんやの一言に尽きます。
 瀬戸さんも、トピックの趣旨と明らかに合わない書き込みは、管理者の権限において削除してもいいのではないですか? 田中市政も2年目になりますが、政敵に隙を突かれるようなことのないようにしてください。
お詫び。 (らんらん。)
2011-11-12 19:05:56
瀬戸健一郎様。
先程はご迷惑をおかけしてしまい失礼しました。
国益とは?市益とは? (らんらん。)
2011-11-20 15:37:44
瀬戸議員。こんにちは。
先日は失礼しました。
TPPにおける見解をみるとアメリカ依存からの脱却を考えているのですね。
経済界は国益のために推進、農業や医療関係などは国益のために反対。どこを基準とするか?これを決めないと難しいです。
最後に、議会運営委員長就任おめでとうございます。議会報告会を市議会主導で開催することは必要だと思う者、定数削減を望む方大変だと思いますが頑張ってください。それと、匿名希望オリジナルさん、12月市議会から保守系会派が再編されて最大会派が変わります。田中市長の下保守系会派も変わるんです。

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