タラら々日記 漢方の薬眞堂

何故か学生時代のあだ名はタラ。
薬剤師として、国際中医専門員として日々の暮らしの中での事を書いています。

チャングムはいらないの?

2006-06-26 | 暮らしの中の中医学
『チャングム』というドラマを見ている方も多いと思います。

私はテレビは見ていませんが本で読みました。

聡明で勤勉なチャングムは幼いころから著名な医師のもとで医術を学び、宮廷にあがって台所を与かる女官をへて、医女になる話です。

もちろん昔の話ですから漢方薬です。

知識が豊富な上に勤勉ですから手に入れた書物は熟読し中医学でいう弁証施治が的確で素晴らしい。

現代にチャングムがいたら誰もがチャングムに見て欲しいと思う事でしょう。

2006-06-27

国王が病気になり宮廷医が半年治療したが治らない為、医女チャングムに声がかかった。
(当時は男性の医者の方が力があったようで女性の医者は医女といわれたようです。)
宮廷医は『食欲不振・汗をかく・気力がない・ときどき空咳・やや頭痛がする』の症状を風邪(ふうじゃ)と判断して九味きょう活湯を処方していた。国王のは回復せず、弱る一方だった。
これに対してチャングムは望診・脈診から胃胆焼症と診断して補中益気湯を処方した。

                  

九味きょう活湯は外から風寒湿の邪気が入りこんだ為、身体が重だるくなり、寒気・熱・しめつけられるような頭痛といった症状ていするのを治す方剤です。

微熱がつづき、汗が出て軽い寒気があり身体がだるいといった風邪のような症状が身体の弱りからきている事があります。

この時は補中益気湯を使います。

2006-06-28

チャングムは500年前に実在した女性で、史料からもすぐれた医術を持っていたことが読み取れるそうです。

漢方治療は弁証力によって効きがちがいます。またチャングムにでてくる薬膳といわれるものも枸杞の実やどくだみ茶やはと麦などが使われていることが薬膳ではありません。身体の状態にあわせて弁証施膳してこそ薬膳なのです。

現代における漢方治療にも名医がいます。

“老中医の診察室”という小説は鐘医師を中心とした医師達が患者の病状をどうとらえるか意見を交換しあいながら弁証していくものです。金壽山医師をモデルに実際のカルテをもとに書かれています。

内容は私達中医学を学ぶ者にとっては知識力・弁証力に感激するとともに、とても勉強になるものです。

この弁証の力があってこそ、漢方薬は効くのです。


2006-06-29

第1話は肺炎の話しです。

中医学は熱に対しては冷やし、寒に対しては温めます。

重症の肺炎患者を熱証とみていた研修医が温薬ばかりの処方を見ておどろき、鐘医師に尋ねます。

「肺炎の初期には辛涼清肺法を用いるのではないのですか?」
「ほとんどはそうでしょう。でも今回はちがいます。
  仕事柄寒湿の邪を多分にうけている。
  熱は高いが顔面の紅潮や目の充血は見られない。
  悪寒がはっきりある。
  口渇はあるが熱い湯を少しほしがるだけ。
  舌は紅くなく、乾いていない。白膩苔で覆われている。
  頭重感がある。
  このように寒湿があることがはっきりしている。
 また、6日目だというのに高熱があって悪寒がし、節々の痛み、無汗
 これは邪がまだ表にあるということになる。」
「でも、熱証もあります。
  便秘・尿が赤くて少ない・数脈など。6日もたつので化熱したのではありませんか」
 

2006-06-30


鐘医師は「よい質問ですね。」とほめてから
 「便秘は熱によるものではありません。
 発病前から便秘だったし、老齢期の腸液の不足によるものです。
 これは腹部に痛みが無い・張ってないなどからみわけられます。
 また、高熱がでれば脈は速くなるものなので、数脈だから表熱証とはいえません。」

この患者さんは漢方薬を服用し、大量の汗をかいて解熱しました。

鐘医師の弁証は的確です。第6話では脊髄炎で足が萎えてしまい歩けなくなった人を漢方薬と鍼と薬膳で治しています。

また、おごることなく他の医師達と意見を交換しながら方剤を決定していきます。

この話しは東洋学術出版社からでている『老中医の診察室』という中医学の臨床の基いてかかれた小説の一部をかいつまんで書いたものです。

興味のある方は読んで見てください。


2006-07-01

Aという植物は
Bという成分があって
Cという効能があるので
Dという病気の人が飲むと良い。

これは近代医学的手法です。
薬効に目をむけたやりかたです。

熱がでたら解熱剤を
咳が出てれば咳止めを
痰がきれにくければ去痰剤を
鼻水などのアレルギー症状も伴えば抗ヒスタミン剤を
というような形です。

『Dという漢方薬は糖尿病に効果があるというデーターがでてます』という指標で漢方薬を使うなら、糖尿病の人は全員Dを飲めばいいことになります。
最近はそういう使い方がされてる面もあります。
果たしてそれでいいのでしょうか?

それでいいならチャングムも鍾医師もいらないし、中医学を熱心に学んでいる人達も要らない、漢方書もいらないということになります。

人の方に目を向け、故人の膨大なデーターを勉強し、弁証に生かしてこそいい結果がえられるのが漢方だと思います。

梅雨と漢方

2006-06-19 | 暮らしの中の中医学
今年は梅雨に入るのがはやかったですね。

5月は五月晴れといえる日も少なく、なんだかズーッと梅雨だったような感じです。

梅雨のイメージは雨・暗い・湿気が多い・蒸し暑い・かびやすい・腐り易い・食中毒とあまりよくありません。

この湿気の多い季節は身体にも影響します。

特に体の中に湿の多いタイプはより影響をうけます。

湿は粘膩で重濁の性質があります。つまり、粘ってしつこく、重く濁って汚く細菌やかびが繁殖し易い、ってことです。

身体が重だるい・食欲がない・軟便や下痢っぽい・気持ち悪い・関節が痛い・頭が重い・痰がからむなどはこの時期におきやすい症状です。

また、風邪や咳がいつまでも治りにくいのも湿が影響していることが多くみられます。


2006-06-20

この季節になると思うのですが、それほど気温が高くなくても湿度が高いと蒸し暑さを感じる事があると思いませんか?

身体は半水中にいる状態で湿気で冷やされています。なのに何だか冷たくさっぱり咽ごしのいいものが食べたくなりませんか?

冷やし中華・つけそば・つけうどん・ビール・プリン・ゼリー・・・そうするとお腹も冷えて体調がわるくなります。

湿は陰邪です。体内に停滞し気機を阻滞する時は軽く発散させましょう。

その為、温かいものを食べて軽く発汗する方が身体がさっぱりします。

又この時期、紫蘇がのびてきていますが、紫蘇は軽く発散して停滞した気機を巡らす最適の食べ物ですので食事にとり入れていきましょう。

漢方薬では勝湿顆粒・平胃散など身体が重だるいときなど服用してみましょう。


2006-06-21

梅雨の気温が高めで湿度が多い状態は食中毒をおこす細菌やかびが繁殖しやすいので要注意です。

手洗いや調理器具の除菌など基本的な事は守りましょう。

私はこんな事に気をつけています。

作ったものは悪くなり易い季節ですのでなるべく早めに食べ、時間があいたときは食べる前に加熱します。

サラダなど火を使わずに料理したものはその場で食べます。

通常の生活の中で私達は細菌と共存しています。常在している細菌に対して抵抗力を持っています。でも増え過ぎたら対抗しきれません。

増やさぬ工夫が大事です。

特に普段から胃腸の働きが弱い脾胃気虚の人は抵抗力がないので注意しましょう。

2006-06-22

急性の下痢・腹痛などになった時は勝湿顆粒をすすめる事が多いです。

理由は勝湿顆粒が外感(邪気が外から入ってくる)時に使うお腹の薬だからです。

去邪+理気健脾の働きがありますが、痛みが強い、舌苔が黄色いなどの時は五行草茶を併用します。

更に下痢が酷い時は胃苓湯(フラーリンA)を併用します。また、
脱水ぎみにならないようにイオン飲料を飲みこまめに水分補給しましょう。
この時、冷たくしないで飲んでください。

また、下痢とともに気も出ていってしまい疲れやすくなってる時は気も陰(血や精や津液)も補える麦味参顆粒が最適で、胃腸も元気になります。


2006-06-23

また、神経痛や腰や関節の痛みがでたり、痛みが酷くなったりする方が多い時期でもあります。

湿気や冷えの影響が大きいです。

中医学では身体が虚になっている為、風寒湿熱の邪気が経絡に侵入する事によって気血の流れが阻害され痛みが出ると考えています。不通則痛(通じざれば、すなわち痛む)です。

治療法は虚を補い、邪気を追い出し、気血の巡りを改善するというものです。


2006-06-24

虚を補い、邪気を追い出す組み合わせになってる方剤に独活寄生湯(独歩丸)疎経活血湯があります。

独歩丸は補気血+補肝腎の働きが、疎経活血湯は補気血の働きがあります。

湿を中心に考える時に気虚によって水はけが悪くなって浮腫んだり、膝関節に水がたまったりするときは黄耆の利水消腫(水をさばいて腫れをとる)働きを利用します。

方剤は防已黄耆湯です。

また、食用蟻の食品がでています。
中医学で蟻は補腎壮骨(腎を補い骨を丈夫にする)
養肝栄筋(肝を養い筋を栄養する)
去風湿・止痛(風湿の邪気を追い出し痛みを止める)
活血化鵞(血の巡りの改善)の働きがあるものとして使われています。

また強壮剤としてもつかわれます。世界には蟻を常食している人達がいますが、腰や関節が弱い方は毎日少しずつ食して丈夫になりましょう。

血液サラサラとお血の話 Ⅰ

2006-06-12 | 暮らしの中の中医学
血液サラサラにいい事していますか?

「くろずのんでます。」
「たまねぎ食べてます。」
「霊芝のんでます。」
「薬用人参のんでます。」
「冠元顆粒のんでます。」
「病院ででてます。」
みなさん、色々ですね。

では、血液サラサラって?お血って?ということから考えましょう。

テレビで血液が流れている様子を見た事があると思います。
血液は勢いよく流れていて、その流れにのって赤血球や白血球がどんどん送られていきます。
細くなっているところは柔軟に変形し気持ちよく流れていきます。
こんな流れが血液サラサラというのでしょう。

ある日のこと

ママ大変血流計してきたらこんなになっちゃってた

血液がすみずみまで流れているかどうかを示す数値がびっくりするほど高くなっているわね。

うん。それに、すごーくだるくてヘトヘトだよ。

麦味参顆粒と衛益顆粒飲んであとで血流計してみようね。

30分後

元気も少し出て、血流計もよくなってた。

この2つの漢方はお血に使う漢方薬ではありません。どうして改善したのでしょう?


2006-06-13

麦味参顆粒と衛益顆粒をつかったのは「宗気」不足から血流が悪くなっていると思ったからです。

気の働きはいろいろですが「元気・宗気・営気・衛気」の四つに分けられています。

宗気は呼吸作用と心血の運行を推動する機能があります。

これは、補気薬によって血液サラサラになった1例です。

お血の3大症状は「痛む・しこる・黒ずむ」です。

こう言う症状がでてくるのにそれぞれの前段階(血滞)があります。

そして前段階(血滞)になってしまったそれぞれの理由もあります。

中医学ではその理由を気虚・血虚・陰虚・陽虚・痰湿・外感など分類していきます。

お血には活血化お薬が必要ですが、この段階では活血化お薬は使わないで大丈夫な事も多いのですが、少量使う時もあります。

2006-16-14

気虚で巡らすエネルギーが不足したり、気滞でエネルギーが滞ったり、水不足で流れが悪かったり・・・
それぞれの理由から血滞がつづくとお血「痛む・しこる・黒ずむ」の状態になります。

血液サラサラでない状態が1歩進行してしまったと言う事になります。

この段階になると活血化お薬は必須でしょう。

原因に対する方剤+活血化おの方剤で対処します。

活血化おの方剤はいろいろです。冠元顆粒・血府逐お丸・フッケツ錠・折衝お血散・その他

2006-06-15

更にお血の状態が悪化するとどうなるでしょう?

流れが滞る状態が続くことを想像してください。

際にこびりついたり、塊になったり・・・中医学で乾血といわれます。

他に古血とか死血とか凝血などというようです。

もう詰まって塞がってる状態また経絡が閉塞した状態です。

そうなると活血化お薬だけでは不足です。

破血薬といわれるものをつかいます。

破血逐お(破血しお血を駆逐する)中薬に水蛭(すいてつ)・しゃ虫などがあります。

水蛭はヒルです。テレビで吸血させてうっ血をとったりするのを見たことがありませんか?

ヒルに吸われたところは血が止まり難いそうです。

溶血成分は確かヒルディンとかいうのだと思います。

水蛭は閉塞した血を破血逐おする為服用します。


2006-06-16

このように血の流れが悪い状態には段階があります。

テレビや健康雑誌などから
「1週間たまねぎ食べれた方Aさんは血液サラサラでした」とか
「くろ酢のんで、血液がサラサラになった」とかの知識を得て実行している方は多いです。

それもいいと思います。血液サラサラと食生活のかかわりは強いので食生活の改善は必須だからです。

でも、自分の身体を知り、どの段階かを知ることから始めなければお血の改善は難しいです。

血滞お血お血+乾血

それぞれ違う位置にいます。

2006-06-17

中医学でお血とかかわりが強い五臓の関係を考えてみます。

「肝は血を蔵し、疏泄を主る」といい血の保持と循行の調節しています。

「心は血脈を主る」といい血液は心臓からおくりだされています。
 
「脾は統血を主る」といい脾気の固摂の働きが血液が脈管から漏れないようにしています。

また、心血の運行を推動する機能のある「宗気」は肺が吸収された清気と脾の運化によってえられた水穀の気が結びついてできたものです。

また、血脈は肺に集まり「肺の宣発作用」によって全身に散布されます。

こういった内臓の働きの弱りは血脈の循行に影響します。

暴飲暴食・偏食・ストレス・冷え(衣食住の不節制からも身体を冷やします)寝不足・過労など環境や生活リズムの乱れが五臓を傷害してお血につながることも少なくありません。

 大事なのは身体を大切にしようとする気持ちです。だから、養生が基本です。
 しかし、状態の進み具合に応じた漢方薬を服用する事も大切です。その場合でも、養生はしなければ穴のあいた壷に水を注ぐようなものだと思います。
 注ぐのを止めればまた減ってくるし、穴が大きければ相当量注がないとへってくる。なんとかしのげればいいほうで減るのを遅らせる程度になってしまいます。

ティータイム

2006-06-05 | 暮らしの中の中医学
足利学校に行ってきました。

高速道路から稲穂のようなものが黄色く実っている見て

妹「あれなにかしら?稲みたいだけど...」

父「あれは麦だと思うよ。六月は麦の秋と書いて“ばくしゅう”っていうんだよ」

なるほど、秋を思わせる景色が広がっていました。

妹「何麦かな?」

父「小麦だと思う」

今頃が小麦の収穫の時期なんですね。

小麦は益気養心除煩(気を益し、心を養って煩わしさを除く)の働きがあります。

黄帝内経という書物の中に「心病めば麦を食うべし」とあります。

甘麦大棗湯という漢方薬につかわれています。

2006-06-06

足利学校は日本最古の学校で、室町時代に学校の形になったようです。

掘りに囲まれた中に萱葺きの建物が見えます。落着いた風情です。

「入徳」「学校」「杏壇」3っつの門をくぐって中に入ります。

杏壇(きょうだん)は孔子が弟子達を教えた所に、杏の木が植えられていたことに由来するそうです。

先生が教壇に立つと言う時のキョウダンは本来、杏の字をつかうのかなと思いました。

ところで杏もまた漢方薬につかわれます。

杏仁(きょうにん)といって種子の部分で、咳止めの麻杏止咳錠や通便の麻子仁丸に入っています。

2006-06-07

学校門を入った左手に方状・庫裏・書院といわれる建物があります。

そこに『宥坐之器』と書かれたものがありました。

小さな水盤の中央に不安定な器がつりさげてていて水が多くても少なくても傾きます。

中庸をさすのだそうです。

中庸が大切という考えは人の身体にとってもそうです。

冷え過ぎず・熱し過ぎず・乾き過ぎず・湿り過ぎず・陰にも陽にもかたよらず・虚でも実でもなく、身体はバランスが大切です。

また、心においても五臓とのかかわりを前に書いたように感情は豊なことはいいことですがいき過ぎは五臓を傷つけます。

たとえば喜ぶことは心を活発にしますが喜び過ぎはオーバーヒートしてかえって心をわるくします。


2006-06-08


“みのもんたのさしのみ”という番組で関根勤さんが“ものまねの人物になりきっている時にできることが我に返ったとたんできなくなる”といっていました。

そういうことって物真似に限らずある気がします。

跳び箱、得意でしたか?

わたしは2年生くらいまではへいきで飛んでました。

でも、ある時,気づいたんです。

跳び箱って結構長さがあるんだ
手をついて飛んだその手は何時離すんだ
こわーい

その時からなんどやっても跳び箱の上に馬乗り状態。

もともと、きも(肝や胆)が小さい(弱い)タイプなんだと思います。

2006-06-09

 肝は脾と相克の関係にあります。

働き過ぎにならないよう肝が脾を抑える関係です。

ですから肝が実する(オーバーワークの状態)と脾は押さえ込まれ過ぎになって弱くなります。

その逆に脾弱なら肝実になり易いにです。

ですから、胃腸の働きの弱い子供は繊細なことが多いのです。

あっわたしが繊細だといってるわけでは・・・

とにかく、あの時、思考の結果、危ないと言う結論に至って跳び箱がとべなくなったんです。

2006-06-10


しろいんげんを食べるとやせるっていってたよ。

 いつも言ってるでしょ。食べて痩せれるものはあやしい物以外ないのよ。

・・・

その後、嘔吐などの中毒症状がでているので食べないでください。と放送されました。

わたしが中医学を柱にと考えるのは、
 ながーい間かけて人に使ってきている事と
 人に対して使っていった時の反応をもとにしてつくらたしっかりした理論を基に中薬や方剤を選ぶことができるからです。

 こんな地味で難しく解かりにくい中医学の話に耳を傾けてくださってありがとうございます

 時々複雑な症状にたいしてどう考えるか?どう応用するかを考え込んでるのを待ってくださってありがとうございます。