東京大空襲をくぐり抜けて 王子ペンション苗場のお父さん

２９日、夜、苗場から帰宅しました。
１９９６年の冬からほぼ毎年定宿としてスキーツアーを楽しませてもらっているのが、苗場スキー場の王子ペンション苗場です。ご主人の坂本信春さん（７６歳）は、５０歳当時ＮＥＣを脱サラし、退職金をはたいてペンション用地を購入。ロープウェーもなかった時代に、スキーを担いで八方尾根の第３ケルンまで上ったという時代の先を行くお父さんは、趣味を生業にしてしまったのです。
　わたしは初めて泊めて頂いてから、なんとなくしゃれた都会風の、それでいて人情味のあるご夫妻の人柄に惹かれて年末にスキーに行くことにしています。
　そのお父さんも年を重ね、今は病と闘いながら除雪、レンタルスキー、接客に文字通り奮闘されているのですが、今年ははじめてご自身の東京大空襲体験を語ってくださったのです。Ｂ２９の威力、焼夷弾が収束爆弾であったこと、爆薬はのり状で、飛び散ると家屋にくっついてあっという間に炎上すること、焼死体が累々と積み重ねられていたこと、戦後は米軍人と仲良くなり、東京裁判を傍聴し、東条英機の法廷での様子を直接見たこと、占領軍のマッカーサーも間近で観たこと・・・思いつくままに、当時の記憶を語るお父さんに、常連さんのもうひとりの高校教員のお客さんと耳を傾けました。これらの話は家族にもしたことはないそうで、その心境を私なりに推察したのです。
　これまで気がつかなかったのでしょうか、宿の階段の壁に写真のピカソの「ゲルニカ」がかかっているのです。日本軍が６年にもわたる重慶無差別空爆を経てこのゲルニカ空爆、そしてそれが日本全土への米軍の空襲となっていくのです。信春さんは戦後重慶にも旅したそうです。

　ゲレンデは、二日間の吹雪のあと、２９日は晴天でした。夏は旅館有志が共同設置したサッカー場に高校の合宿を誘致し、グリーンカップ大会を毎年開いているなどプリンスホテルの向こうを張って懸命に生きてきたお父さんです。まだまだその日を燃やし続けてほしいと切に思う三日間でした。

　ところで、イスラエル軍がパレスティナのガザを激しく空爆しているとの報道を苗場で目にしました。緊急の抗議メールが飛び込んでいます。それは、コメントに掲載します。