「かんぽの宿」売却劇を吉本新喜劇の舞台に見立てれば、竹中平蔵大臣(当時)が仲介の不動産屋さん、財界トップリーダーの一人である西川義文氏が売り手、もう一人の財界トップリーダーである宮内義彦氏が買い手です。庶民である観客から見れば、三人とも「しめしめ」と目で示し合わせている情景です。
これを新聞社説はどう見たのか?「社説ウオッチング:『かんぽの宿』売却」(毎日新聞朝刊 2009年2月15日) 記事を以下に整理し直しました。
<第1期> 1月6日、鳩山総務相が、オリックスへの譲渡見直しを表明。109億円という譲渡金額、オリックスへの一括譲渡、小泉政権下の規制改革・民間開放推進会議議長がオリックスの宮内義彦氏であることに注目が集まった。
毎日1回目社説は、「売却などの際の手続きを国民に広く示し、そのプロセスもできる限り公表することが望ましい」と主張し、与党に民営化企業の資産売却について考え方を示すよう求めた。
朝日1回目社説は、「理由が不明確で納得できないのは、鳩山氏の『待った』の方ではないのか」「西川社長が説明した内容は、しごくもっともに思える」などと、総務相批判に終始した。
日経1回目社説は、「総務相の姿勢は到底納得できない」「所管大臣が入札結果に堂々と介入するのは常軌を逸している」と、総務相批判に終始した。
産経1回目社説は、総務相批判に力点を置きつつ、日本郵政の説明不足も指摘した。
<第2期> 70施設の施設費が約2400億円だったこと、旧日本郵政公社が1万円の評価で売却した物件が6000万円で転売されていたことも判明した。
毎日2回目社説は、「政治問題にまでなっている現状では、オリックス不動産への売却凍結は、当然の措置だ」と主張し、施設の査定や譲渡方法を見直し、結果を国民に公表するよう改めて要求した。
読売、東京1回目社説と産経2回目社説も、入札経緯の公開、情報開示などを日本郵政に求めた。
朝日2回目社説は、引き続き総務相に対する批判姿勢を維持しつつ、「日本郵政にも注文がある。売却が問題視されてからも、入札についての情報をきちんと出さず、疑念を膨らませる結果になった」と、日本郵政側も批判した。第1期の主張から論調をやや修正したように映る。
日経2回目社説は、「総務相の主張は説得力を欠く」と、相変わらず明確な根拠を示さない総務相を批判し、日本郵政が譲渡凍結を表明したことについて「何とも不可解だ」「『公明正大な手続きだ』といいながら、満足な説明もなく簡単に折れた日本郵政の西川善文社長の姿勢にも問題がある」と批判した。合理的説明のないまま総務相の意に沿う決断をしたのが問題だという主張である。現在の契約を維持すべきだとの姿勢だ。
<第3期>2月に入り、最終入札で応札したのはオリックス不動産1社だけで、2社目の金額は日本郵政の推計値だったこと、売却対象だった東京都世田谷区の「レクセンター」が入札の最終段階で除外されていたことなどが判明し、一連の入札に対する疑惑が深まった。最終的に譲渡の白紙撤回が決まる。
毎日3回目社説は、譲渡契約の白紙は「当然」とし、国民への情報公開とともに、70施設の「個別施設ごとの譲渡」や、法律で決められている12年9月末までの廃止・売却の「期限延長」の検討などを提言した。
朝日3回目社説からは、総務相への批判が消えた。代わって、入札に「謎めいた部分が出てきた」とし、入札への「疑念」や白紙撤回の経緯などについて「納得できる説明」を日本郵政と西川社長に求めた。
読売2回目社説は、「契約を撤回したのは当然」とし、入札の経緯や売却価格などについて「日本郵政は洗いざらい報告し、説明責任を果たす必要がある」と主張した。