『消費増税分 > 賃金上昇分』は継続中 ~ 毎月勤労統計調査(H26.8)

2014-09-30 22:13:38 | 日記
厚生労働省が今日発表した『毎月勤労統計調査 平成26年8月分結果速報』によると、賃金に関する概要は次のようなもの。


(1)現金給与総額の前年同月比1.4%増、6か月連続増
  うち、一般労働者1.4%増、パートタイム労働者1.3%減
(2)所定内給与の前年同月比0.6%増、3か月連続増
  うち、一般労働者0.5%増、パートタイム労働者1.3%減
(3)所定外給与の前年同月比1.8%増、17か月連続増
  うち、一般労働者1.5%増、パートタイム労働者0.9%増
(4)所定内給与と所定外給与を合わせたきまって支給する給与(定期給与)の前年同月比0.7%増、6か月連続増
  うち、一般労働者0.6%増、パートタイム労働者1.3%減
(5)特別に支払われた給与の前年同月比14.4%増
(6)実質賃金指数(現金給与総額)の前年同月比は2.6%減(消費者物価指数は前年同月比4.0%上昇)


現金給与総額及びきまって支給する給与の前年増減率、月間現金給与額はそれぞれ下の資料1、資料2の通り。どのような指標で雇用情勢を評価するかは人によってまちまちだが、マクロ経済の視点では実質賃金指数の前年同月比2.6%減というのが最も目に付く。

消費者物価指数の前年同月比が4.0%上昇しているのは今年4月の消費増税(税率5%→8%)の影響が継続しているからだと思われるが、それが実質賃金指数を押し下げていることは否定できない。消費増税が、賃金上昇分を相殺すること以上の振る舞いをしているのだ。もっとも、それは増税前から含み置いていたことだろうから、労働条件が殊更に悪化したとはならない。

社会保障財源を賄うための増税は、いずれ必ず実行しなければならない。それをいつにすべきかは、論理的にも経験的にも確たることは言明できないので、よほどの景況悪化でもない限りは、その時々の政治判断に委ねるしかない。景況が相当に悪ければ、増税延期にわざわざ政治判断は不要だ。

次回の増税は2015年10月と法定されているが、判断時期は今年内だとされている。今のままの景況で進んでいくと、非常に難しい判断となる。極端な上振れは想定し得ないが、極端な下振れはあり得る。

この統計の結果が、増税の最終判断にどの程度の効果や影響を与えるかは定かではない。しかし、明るさを与える数字になることが望ましいに決まっている。だがもちろん、考慮すべき多くの要素の一つでしかないことも確かだ。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料





意外なデータ:若年労働者の主な収入源「自分自身の収入」62.9%、「親の収入」24.9%

2014-09-29 21:31:20 | 日記
先のブログ記事の続編。今月25日に厚生労働省が発表した『平成25年若年者雇用実態調査の概況』では、若年労働者(15~34歳の労働者)について行った様々な調査の結果を掲載している。全労働者に占める若年労働者の割合は28.6%、うち若年正社員18.3%、正社員以外10.3%となっている(資料1)。

この若年労働者の主な収入源については、「自分自身の収入」62.9%、「親の収入」24.9%という調査結果となっている。男では「自分自身の収入」78.9%で、「30~34歳」で「自分自身の収入」が9割超。女では「自分自身の収入」46.1%で、ピークの「25~29歳」層で53.8%、正社員では「自分自身の収入」75.3%、正社員以外では「自分自身の収入」40.9%で「親の収入」40.3%となっているなど(資料2)。

若年労働者とは、15歳から34歳までのことで年齢幅は大きい。だが、成人以降での就労者に関しては、「自分自身の収入」と「配偶者の収入」によって自分又の家族を自分たちの収入で賄えるようになることが必要と思われるが、実態はそうでもない。今後、その傾向は強まっていくのではないだろうか。若年労働者が自分たちの収入だけでは暮らしていけない状況が、少子高齢社会の側面の一つになっていく可能性がある。



<資料1>

(出所:厚生労働省『平成25年若年者雇用実態調査の概況』)


<資料2>

(出所:厚生労働省『平成25年若年者雇用実態調査の概況』)

介護職員の賃上げ方針 ~ “月額1万円”では全産業平均にはまだまだ遠い

2014-09-28 14:28:16 | 日記
今朝の日本経済新聞ネット記事によると、政府は2015年度から介護職員の賃金を引き上げるとのこと。

<記事要旨>
・介護サービス事業者が受け取る介護報酬に職員の賃金を増やす原資を加算。
・月額1万円程度の増額を目指す。
・介護は人手不足が深刻なため、賃上げで人材の確保につなげる。
・賃金以外に払う介護報酬は抑え、介護を支えるための保険料や税の負担急増を避ける。

介護保険と関係ない介護サービス事業はさておき、介護保険による介護サービス事業はいわば国家の公共事業である。介護職員の報酬を法定しているのだから、その賃金水準が他産業との比較においてあまりに低いとなれば、国の責任においてそれを引き上げるべきだとなる。

先のブログ記事に書いたが、私の試算(☆)では、年間1兆円の財源があれば、介護職員の給与水準は全産業平均のそれに比肩し得るものとなる。
〔試算(☆)〕
 ・介護職員1人当たり月3万円引き上げるのに必要な予算額:年間3180億円
 ・介護職員1人当たり月6万円引き上げるのに必要な予算額:年間6360億円
 ・介護職員1人当たり月9万円引き上げるのに必要な予算額:年間9540億円

産業別・職種別の給与水準については、下の資料を参照されたい。“月額1万円”では、全産業平均にはまだまだ遠い。因みに、先のブログ記事で紹介したが、介護サービス産業の場合、労働者と施設長では給与額に大差がある。

介護サービス産業それ自体は確かに人手不足ではある。しかし、他の産業を比べると介護サービス産業だけが突出して人手不足というわけでもない。先のブログ記事で書いたように、例えば離職率で見ると、産業計での離職率は14%台、介護職での離職率は16%台となっている(いずれも平成23年度)ので、介護職だけが特別に高い離職率ということでもない。

介護保険財政にも限りがあるのは当然のことだ。だから、「賃金以外に払う介護報酬は抑え」つつ、「職員の賃上げ原資以外の介護報酬では効率化策を徹底する」ことは、やはり当然のことである。



<資料>

(出所:厚生労働省資料

意外なデータ:若年正社員の転職希望理由のうち「賃金の条件がよい会社にかわりたい」は半数未満・・・

2014-09-27 13:54:49 | 日記
先のブログ記事の続編。厚生労働省が一昨日発表した『平成25年若年者雇用実態調査の概況』では、若年労働者(15~34歳の労働者)のうち若年正社員の転職希望理由に関して、下の資料1・資料2のような調査結果を掲載している。複数回答のアンケートなので回答者の気持ちがよく顕れていると思われる。

上位に挙げられた理由のうち、20%以上の割合であるものを挙げると、「健康上の理由、家庭の事情、結婚等で会社をかわりたい」(6位)は別として、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」(1位)、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」(2位)、「自分の技能・能力が活かせる会社にかわりたい」(3位)、「仕事が自分に合った会社にかわりたい」(4位)、「将来性のある会社にかわりたい」(5位)、「人間関係のよい会社にかわりたい」(7位)というのは、誰しも希望として持っている思いであろう。他の理由の項目も同様。

自分の希望通りの職場であるかどうかは、いったん就職してみないと体感できない。意外であったのは、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」が44.7%と半数未満であったこと。普通に考えれば、賃金は就職や転職の動機付けの最上位に来ると思われる。

だが、複数回答可にもかかわらず、この調査回答者の半数超の正社員は『現状の賃金』を理由としての転職は考えていないことになる。いったん手に入れた正社員の職場から転職していく動機付けとしては、賃金水準は最多ではあるものの、労働時間や人間関係など別の要素であることも少なくないことがわかる。



<資料1>

(出所:厚生労働省『平成25年若年者雇用実態調査の概況』)


<資料2>

(出所:厚生労働省『平成25年若年者雇用実態調査の概況』)

意外なデータ:「正社員として働きたい」47.3%、「正社員以外の労働者として働きたい」 28.7%

2014-09-26 23:00:40 | 日記
いわゆる非正規労働者の割合は年々増加し、2013年度は36.7%となっている(資料1)。年齢別で見ても、全ての年齢階層において、非正規労働者の割合は年々増加してきている(資料2)。非正規労働者が増えつつあることは、社会問題として捉えられている色彩が濃い。

厚生労働省が昨日発表した『平成25年若年者雇用実態調査の概況』では、この非正規労働者に関して興味深いデータが出ている。正社員以外の在学していない若年労働者(15~34歳の労働者)の今後の働き方の希望に関して、次のような調査結果となった(資料3)。


・「正社員として働きたい」47.3%、「正社員以外の労働者として働きたい」 28.7%、「独立して事業を始めたい」 1.6%
・うち男:「正社員として働きたい」62.2%、「正社員以外の労働者として働きたい」 11.2%
・うち女:「正社員として働きたい」40.0%、「正社員以外の労働者として働きたい」 37.2

あくまでも若年労働者に限っての調査結果ではあるが、要するに、正規労働者として働きたいのは5割弱でしかなく、非正規労働者として働きたいのは3割弱もいるということになる。正規・非正規の違いは、実態上、年金・医療や雇用・労働条件面などで大きい。

若年労働者では、そうした社会保障システムの重要性を感じ切れていないのかもしれない。今の正規・非正規に係る区分の下での正規・非正規の比率が、上述のような推移を辿ってきていることからすると、非正規労働者から正規労働者への転換を促すことは徒労でしかないのではないだろうか。

むしろ、社会保障システムにおいて正規・非正規の差を極力なくしていくような施策を打っていく方が得策と思われる。正規から非正規への流れという今まで来た道を逆戻りさせるより、正規・非正規に関わらず同じ安全網を敷く努力をしていく方が時代の流れに沿うような気がする。



<資料1>

(出所:厚生労働省HP


<資料2>

(出所:厚生労働省HP


<資料3>

(出所:厚生労働省『平成25年若年者雇用実態調査の概況』)

介護保険サービス需要は増加傾向のまま ~ 介護給付費実態調査月報(平成26年7月審査分)

2014-09-25 21:06:12 | 日記
先のブログ記事の続編。厚生労働省が今日発表した『介護給付費実態調査月報(平成26年7月審査分)』によると、直近の動きは次のようなもので、最近の受給者数の月次推移は下の資料の通り。

1)受給者数:介護予防サービス1,089.2千人、介護サービスで3,855.4千人
2)受給者1人当たり費用額:介護予防サービス40.7千円、介護サービス186.9千円

今年度に入る直前から、介護サービス受給者数は増加傾向が継続中だ。介護保険財政の持続可能性を慮れば、「受給者1人当たりの費用額」の上昇をいかにして抑制又は削減していくかが最大の課題。これは、今後ともそうであり続けるだろう。

受給者数は今後とも漸増していく見込みであり、そういう中で介護保険財政の持続性を維持するには、「受給者1人当たりの費用額」の漸減は必須となる。医療給付にも通じることだが、介護給付について『総額規制』を強行するための素地が敷かれ始めるのはもうじきであろう。

本当は、今すぐにでも介護サービスの『総量規制』を施すべきだ。医療はとっくに切羽詰まっている。医療サービスを先行させるか、又は医療サービスについても同時に『総量規制』を導入するか、いずれにせよその実施は遅きに失しかねない状況にある。




<資料>

(出所:厚生労働省資料

「老後」に介護を必要とする場合に住みたい場所は? ~ 「在宅」が4割、「施設」が3割

2014-09-24 20:53:04 | 日記
先のブログ記事の続編。先月29日に厚生労働省が発表した『平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書』では、年をとって生活したいと思う場所についての調査結果が掲載されている。

このうち、年をとって「介護を必要とする場合」にどのような場所で生活したいかについては、「住み続けた自宅」(18.7%)も含めて「在宅」での生活を望む者が43.1%、「特別養護老人ホームなどの施設」が29.8%、「病院などの医療機関」が9.2%となっている(資料1)。年齢階級別では、全ての年齢階級で「特別養護老人ホームなどの施設」が多くなっている(資料2)。

医療と介護は目的が違う。医療は在宅回帰を目標としているが、介護は終の棲家であることを主な目標とすることが多い。介護を必要とする場合に医療機関に住みたいとの希望は1割あるのは、本来目的に照らすと合わないことになる。「在宅」(4割)と「施設」(3割)が合わせて7割となっているのは、本来目的に合う人が多いという点で妥当だ。

今後の介護保険事業を展望した場合、「在宅」と「施設」のいずれを増やしていくかは、介護保険財政見通しに大きく依拠するはずだ。介護サービスが日々進歩していくことは歓迎されることだが、介護保険財政との兼ね合いを考えると、介護保険サービスについて完全かつ満足なものを期待することにはかなり無理がある。現にそうだ。

「在宅」でも「施設」でも、介護人材を確保するための所要人件費は確保しつつも、介護保険サービスの内容に関しては、相当の合理化をしていかざるを得なくなるだろう。介護保険サービス需要の急増傾向は当面変わらず、介護保険サービス供給が追い付く日は全く見通せない。先のブログ記事に書いたような『選択と集中』を、介護保険財政の投入先に関しても断行していくしかないだろう。



<資料1>

(出所:厚生労働省『平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書』)


<資料2>

(出所:厚生労働省『平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書』)

雇用調整助成金(2009~13年度) ~ 不正受給割合1.4%、1人当たり不正受給額83円

2014-09-23 16:38:19 | 日記
昨日の朝日新聞ネット記事によると、「雇用調整助成金」について、2009~13年度に1265社191億円の不正受給があったことが厚生労働省のまとめでわかったとのこと。


<記事要旨>
・助成金は、売上が急減した企業が社員を解雇せず、休業にとどめれば、1人1日7805円を上限に休業手当の最大3分の2を国が補う。
・09~13年度、月5千~10万社が申請し、支給額は計1兆3815億円。
・虚偽申請などで、09年度91社8億円、10年度355社37億円、11年度295社52億円、12年度339社60億円、13年度185社34億円の不正受給。


支給額の総額が1兆3815億円であるのに対して、不正受給額の総額が191億円なので不正受給額割合は1.4%となる。総額ベースで見ると、191億円というのは決して看過できない金額だ。では、1人当たりに換算すると、どの程度になるのか。

09~13年度での雇用調整助成金の支給状況は下の資料の通りで、09~13年度の支給対象者数は計46088067人。単純計算すると、09~13年度の年平均での1人当たり受給額は5995円(=1兆3815億円÷46088067人÷5年)となる。

不正受給額については、09~13年度の年平均で1人当たり83円(191億円÷46088067人÷5年)となる。09~13年度で月平均76.8万人(=46088067人÷5年÷12ヶ月)の個人を対象とする助成金を1円たりとも不正なく支給することの難しさは、こうした点からも見て取れる。



<資料>

(出所:厚生労働省資料

日本の総人口 ~ 1億2704人(平成26年9月1日現在(概算値);前年同月比▲22万人)

2014-09-22 17:24:45 | 日記
総務省統計局が今日発表した「人口推計(平成26年9月報)」によると、概要は次の通り。


〇平成26年9月1日現在(概算値)
 総人口:1億2704万人(前年同月比▲22万人(▲0.17%))

〇平成26年4月1日現在(確定値)
 総人口:1億2713万6千人(前年同月比▲21万9千人(▲0.17%))
    ・ 0~14歳人口:1632万3千人(前年同月比▲ 16万5千人(▲1.00%))
    ・15~64歳人口:7832万8千人(前年同月比▲113万8千人(▲1.43%))
    ・65歳以上人口:3248万4千人(前年同月比+108万4千人(+3.45%))
 日本人人口:1億2554万5千(前年同月比▲26万1千人(▲0.21%))


下の資料で示されるように、総人口は減少してきている。内訳を見ると、0~64歳人口が減少している一方で、65歳以上人口は増加している。年齢区分の方法にもよるが、いずれにせよ少子高齢化は確実に進みつつある。長寿化により年金受給期間が長引き、少子高齢化により現役世代の一人当たり負担額が増えていく。

医療・介護保険制度の在り方もさることながら、年金保険制度と生活保護制度の在り方も相当に合理化していく必要があることは、こうした統計からも容易に理解される。



<資料>

(出所:総務省統計局資料

主要企業にはアベノミクス効果大 ~ 平成26年主要企業夏季一時金妥結状況

2014-09-21 20:40:29 | 日記
一昨日に厚生労働省が発表した『平成26年民間主要企業夏季一時金妥結状況』によると、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業のうち妥結額を把握できた374社について、集計結果のポイントは次の通り。 

○平均妥結額:800,653円(対前年比54,319円(7.28%)増) 
○平均要求額:把握できた260社で853,560円(対前年比50,419円増)

もう少し具体的に見ると、主要企業の夏季一時金妥結状況では、電力・ガスが大きくマイナス、通信と運輸で若干のマイナスである以外は、とても芳しい成績だ(資料1)。電力・ガスに関しては、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の規制運用面での悪影響が大きいと思われる。

一時金妥結状況では、今季の成績がとても良い。これらの指標は主要企業374社の集計結果であるが、この限りにおいてはアベノミクスは高く評価されることになるだろう。国全体の賃金・雇用情勢の改善も少しずつ現れているとの統計もある。しかし、大都市部以外の地方経済は決して喜ぶべき状況にはない。

安倍政権は先の内閣改造以降、地方創生を主要課題に掲げている。地方創生相を任命してまで力を傾注しようとしている。従来型の全国一律で“ナショナルマキシマム”を目指す政策手法ができ得る財政事情ではない。各地方の中核都市への人口誘導策など『選択と集中』を加速化させていく必要があるはずだ。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料

認知症の行方不明者:10,322人(H25年;警察庁発表)、5,201人(H25年度;厚生労働省発表)

2014-09-20 15:39:30 | 日記
行方不明になった認知症の人等に関する『調査結果』が厚生労働省から昨日発表された。その概要は次の通り。

(1)身元不明者の状況
 平成26年5月末現在、139市区町村で把握された身元不明者のうち認知症の者は35人、認知症以外の者は311人、合計346人。
(2)行方不明者の状況
 平成25年度、855市区町村で把握された認知症の行方不明者5,201人のうち同年度中に発見された者の割合は4,646人(97.2%)。
(3)行方不明に関する施策
 平成26年4月1日現在、徘徊・見守りSOSネットワーク事業は616市区町村、GPS等徘徊探知システムに関する事業は345市区町村、その他の事業(見守り体制の構築等)は385市区町村において実施されており、いずれかの事業を実施している市区町村は約6割。

この調査の対象は40歳以上の身元不明者となっている。この数が多いか少ないかに関する評価は難しいところだが、警察庁が平成24年から統計し始めた結果を見ると、平成24年で9,607人(11.8%)、平成25年で10,322人(12.3%)となっている。かいつまんで言えば、行方不明者の1割強は認知症の者なのだ。詳しくは、下の資料1を参照されたい。

尚、平成25年中に届出を受理した行方不明者は83,948人で、うち男性が53,916人(64.2%)となっている。より詳しく見ると、年齢別では10歳代が19,858人(23.7%)、70歳以上が15,160人(18.1%)、20歳代が14,952人(17.8%)、30歳代が11,179人(13.3%)の順となっている。詳しくは、下の資料2を参照されたい。

警察庁の調査結果(平成25年に10,322人)と、上記の厚労省の調査結果(平成25年度に5,201人(うち4,646人は同年度中に発見))の間には、大きな差がある。今後、こうした統計上での相違を明らかにしつつ、認知症の行方不明者に係るデータを容易に理解する手法を確立していく必要がある。類似の調査の結果がこれほどまでに違うと、調査そのものへの信頼性が醸成されないからだ。



<資料1>

(出所:警察庁資料「平成25年中における行方不明者の状況」


<資料2>

(出所:警察庁資料「平成25年中における行方不明者の状況」

「老後」に一人になった時に住みたい場所は? ~ 「住み続けた自宅」(7割)を含めて「在宅」が8割

2014-09-19 23:38:28 | 日記
先のブログ記事の続編。先月29日に厚生労働省が発表した『平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書』では、年をとって生活したいと思う場所についての調査結果が掲載されている。

このうち、年をとって「配偶者がいなくなり一人となった場合」については、「住み続けた自宅」(68.3%)も含めて「在宅」での生活を望む者が80.9%に上っている(資料1)。年齢階級別でも、全ての年齢階級で同様に「在宅」での生活を望む者が大きな割合を占めていることがわかる(資料2)。

この結果は当然のことのように思われる。政策的には、医療・介護が必要な人(その人の健康寿命を超えた場合)と、医療・介護が不要な人(その人の健康寿命を超えていない場合)で、全く違うものになる。医療・介護に係る公的資金の投入額を最も合理的なものにするにはどのようなシステムにすべきかは、大まかには地域包括ケアシステム(先のブログ記事の資料1)ということになるのだろう。

しかし、現内閣の『地方創生』のように何らかの勢いをつけられそうな空気の時に、幾つかのモデル的な中核都市への人口誘導策を半ば強引に打ち立てていかないと、2025年での地域包括ケアの実現目標は到底無理だ。高齢化の速度が速いのだから、速い速度の人口誘導策を断行していく必要がある。それを実行し始める地域・地方は、持続性は比較的高まるだろう、そうでない多くの地域・地方は、じきに消滅するはずだ。既に消滅の危機にあるからだ。



<資料1>

(出所:厚生労働省『平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書』)


<資料2>

(出所:厚生労働省『平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書』)

平成25年の自然増減数(出生数-死亡数) = ▲23.9万人

2014-09-16 20:55:06 | 日記
今月11に厚生労働省が発表した「平成25年(2013)人口動態統計(確定数)の結果」の概要は次の通り。

○出生数(平成25年):1,029,816人(前年比▲7,415人)
○合計特殊出生率(平成25年):1.43 (前年比+0.02ポイント)
○死亡数(平成25年):1,268,436人(前年比+12,077人)
〇自然増減数(平成25年)▲238,620人 (前年比▲19,492人)
○婚姻件数(平成25年):660,613組(前年比▲8,256組)
○離婚件数(平成25年):231,383組 (前年比▲4,023組)

下の資料からも、人口が減少していく過程にある日本。先のブログ記事などからも、少子高齢化が進む途上にあることがわかる。この統計は、今後当面は少子高齢化の断面となり続ける。

婚姻件数が増えていないことを憂う向きもあるだろうが、婚姻減少と少子化に関連があるとすれば、婚姻制度の在り方を見直すことも十分あり得る。自然増減数が相当のマイナスであるが、この傾向が続くと見込まれるのだから、出生以外で人口増を図る政策も真剣に検討すべきである。従来の発想に囚われてばかりいると、少子高齢社会は乗り切れないだろう。少子高齢社会は、未知の社会なのだ。



<資料>

(出所:厚生労働省資料