あるタカムラーの墓碑銘

高村薫さんの作品とキャラクターたちをとことん愛し、こよなく愛してくっちゃべります
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「我らが少女A」 第3章 30~32 (連載第96~98回)

2017-11-29 00:31:52 | 我らが少女A 雑感
はい、合田さんのターンですよ。

この二人の交差を見る限り、二人は周囲が考えているほど密接ではなかったということであり、合田はいまさらながらに困惑した。自分たちはいつ、どこで、二人が仲良しの親友だと思い込んだのだろうか。

合田さん並びに警察の眼から見た二人・・・朱美ちゃんと真弓ちゃんは「親友」だと思い込んでいた。

だけどね、しょっちゅう引っ付いているのが「親友」とは、限らないものよ。

小中学校の頃かな、私にも、一定の距離はあったと思うけれど、ある種の「共感覚」とでもいうのかな、そんな共有の感覚を抱いていた友達が一人二人はおりましたよ。

ちょっとしたことで感覚が一致したり、考え方が繋がっていたり、黙っていても話さなくても分かっていたり。
朱美ちゃんと真弓ちゃんも、そんな雰囲気じゃなかったのかな・・・?


週に一度の水彩画教室と、吉祥寺周辺での徘徊と不良行為でつながった二人の少女は、ほんとうはどんな関係で、互いに相手をどう思っていたのだろうか。合田は、自分たちが基本中の基本を見誤っていたことに愕然となる。

男女の感覚の違い、というよりは、大人の男と未成年の少女の感覚の違い、なのかもしれませんね。
警察にとっても「都合のいいように」「思い込んで」 物事を見てしまうんでしょう。

そしてここが、生きている人間が捜査するにあたっての、限界点なのかもしれない。
死者については、生きている人間の言動でしか、判断が出来ないから。


『拝啓
(中略)
                 敬具
平成二十九年四月吉日
              合田雄一郎
長谷川徹様
    侍史            』


出た! 合田さんの必殺技・お手紙攻撃。
思わず 「侍史」の意味 を調べましたよ。

今の時代、メールやLINEでのやり取りが主流になってますが、合田さんは安定してますね。素晴らしい。

メールで思い出したが、私が経験したひどいエピソードを一つ。
取引先に電話して、○○さんが席を外していたため、代わりに電話応対してくれた●●さんに「戻られたら電話をお願いします」と伝えたのよ。●●さんも「分かりました」と。

だけど、いつまで経っても電話がかかってこない。

約1時間後。もう一度○○さんに電話した。
そうしたら「電話がかかってきたなんて、知らん」と言うのよ。

「ええ!? ●●さんに電話をお願いしますって、伝えたんですけど・・・」
「●●? ああ、ちょっと待って・・・ごめん、社内メールで「電話がありました」って入ってるわ」

・・・ な ん じ ゃ 、そ ら 。

ちょっとメモして、○○さんの机に置いた方が、早いんじゃないのか! ○○さんも、いくら仕事でパソコンを使っていても、分刻みでメールチェックできるわけもなかろうが。

「何度注意しても、メモに書いたり、口頭で言うほうがめんどくさいらしくて、メールやLINEで用事を済ますねん。 仕事を休む知らせも、電話をかけてくるんじゃなくて、メールやLINEを使ってくるヤツもおる」・・・とは、○さんの話。

ホンマに呆れましたわ。


ちょっと会おうか。多忙な相手を慮って、合田は翌日自分から小金井へ足を運び、夕刻の乗降客が引きも切らない武蔵小金井駅構内のスターバックスで、出先から戻る途中のかつての同僚の不満を聞く。

ひゃああ、新たな地どり場所が! 既に立ち寄った方もいらっしゃいますか?

しかし私はコーヒーが飲めないので、スタバには一生、縁がないわ・・・。
それでなくても「紙コップで飲む」というのが、何か抵抗がある。紙コップ特有の匂いというものも感じて、美味しく感じない。だから会社でも、よっほどの場合で無い限り、マグカップで緑茶、ほうじ茶、紅茶を飲んでます。


杉並の自宅マンションに帰り、郵便受けに入っていた特命班の長谷川からの返信を開く。

『冷血』では東京都と千葉県の境目に住んでおりましたが、現在は杉並にお住まい。
合田さん! 加納さんに合鍵は渡してるんだろうねえ~!? 渡してなきゃ怒るよ。

警察大学校へ行くために、西武多摩川線を利用しているのは早々に判明しているのですが、加納さんのマンションと警察大学校へ通うルートが、ある程度絞られるんですね?

東京の地理と交通手段がさっぱり分からないので、何卒ご教授ください。


「我らが少女A」 第3章 22~29 (連載第88~95回)

2017-11-27 01:15:52 | 我らが少女A 雑感
自分のモタモタ、ノロノロ具合には呆れるしかないですが、お付き合いしていただいている皆さんに、改めて感謝の意を表します。

この堅実な、というより不器用な二人には、そんなことは大きな問題ではない。

雄太くんと優子ちゃん、これも<ゆうゆうカップル>ですな。偶然? (「ゆうこ」以外の読み方もあるかもしれませんが、「ゆうこ」でいいよね?)
本家本元は言わずもがなの、義兄弟の祐介と雄一郎。


あのね、べつにいいんだけど、あの何とかという幼なじみの人の事件からこのかた、雄太さんの時間が止まっているみたい。
詰問するというのではない、砂を食んだ貝のような、見えない棘を含んだ優子の物言いが、小野の優柔不断や集中力の欠如をかき混ぜ、かすかな不機嫌の泡を発生させる。
まだ半月だろ。事件でも事故でも、人が死ぬのはやっぱり気が重いよ。それに、ここのところ眼の調子も悪いし。


いくら死者とはいえ、過去に好きだった女の存在がちらつくのは、やはりいい気はしないよね、優子ちゃん。

一方の雄太くん、朱美ちゃんを想っていたことは事実だし。いなくなったことで存在が大きくなるという状況も、その気持ちも、分からないではない。

そういえば、合田さんもそういう状況の経験者だったんだ! 別れた元妻・貴代子さんが突然すぎる死に方を迎え、十数年経ても未だに気持ちの落ち着き場所が見つかっていないようだから。

でも、それはそれでしょうがないんだろうねえ。


警察は、朱美が野川事件について何か知っているとでも考えているのだろうか。かわいそうに、死んだ朱美はもう何を言われても抗弁できないのに--。

死んだ者(娘)にはとっくに語るべき言葉はないし、生きている人間(母)にも死者のことは分かる範囲でしか分からない。 亜沙子さんの苛立ちは痛いほど分かる。
それでも何かの手がかりを、藁の一本でも掴もうとする警察の思いも、理解できる。

被害者家族と警察が永遠の平行線のままなのは、その部分なんだろうなあ・・・。


どこかの女子高生を買春していたバカ。
いや、今夜の雪子の鬱屈は孝一ではなく、真弓の夫の佐倉亨が運んできたものだった。


にこりともせずに義理の母を問い詰めてくる銀行員のバカ。

どんな中身であっても個人差があろうとも、「男」という存在をまとめて「バカ」の2文字で一蹴できるのが、「女」の特権なのだなあ。

いや、もう、「バカ」以外の表現は、出来ないと思う。
「バカ」と「アホ」で、感じ方の微妙なニュアンスの違いは、読み手の皆さんの生まれ育った地域で差があるでしょうが、大阪で生まれ育った私の感覚では、孝一さんも亨さんも「バカ」です。この言葉には、一片の愛情も含まれておらず、蔑んでいるだけ。


十二年前は恐喝の常習犯だった少女が、いまは未婚のまま一児の母になり、ピンク色のエプロンをつけて老人保健施設で介護職員をしている。表向きの社会生活に限ったことかもしれないが、人間の可塑性の大きさには特命班の刑事たちもちょっと驚かずにはいられない。

栂野孝一に恐喝をしていた少女の一人、井上リナちゃんの現在の姿。
「昔は悪いことをしていたのに、今は真面目に」という、よくあるパターンの一つかもしれませんが、はてさて、それで片づけられるのかどうか。

しかし俗に言う「ブルセラショップ」って今もあるの? 今ならば、○ルカリなどで販売してるのかねえ?
日本の男の「性」に関する底なし沼のような貪欲さは、ほとほと呆れますね。世代が変わっても、これだけは変わらないんですね。ホントに「バカ」ですね。


リナは、自分も父親に復讐しているつもりだった、と言う。大手商社勤めで、いつも終電で帰宅し、妻がパート先の男と不倫しているのにも気づかない自信過剰人間。娘の夜遊びを知っても怒る勇気もない現実逃避人間。十二年前も同じ話をしており、それが調書に残っている。もっとも、リナの父親にしろ、栂野孝一にしろ、多感で恩知らずな思春期の娘たちの、勝手な思い込みや価値観の餌食になったというほうが正しいだろう。

またもや個人的な話になりますが、思春期の頃に一時的にでも父親を汚らわしく感じる時期を経ていない娘がいるということに、私は違和感を覚えることがあります。

両親が離婚して同居していないとか、父親が単身赴任やら、彰之のように漁船に乗っていて長期不在やら、そういう状況の場合は嫌悪感を抱かないだろうけれど・・・(逆に恋しくて仕方が無いでしょうから)

不幸なことかどうかは分かりませんが、上手に<「父」になれない「男」>が、多い気もしますね。あるいは、<「大人」になれない「男」>と言い変えてもいい。

かつて電車でたまたま隣に立っていた若い男性二人(推定20代)の会話を耳にして、特にそう思った。

片方の男性が、
「子どもが生まれて、嫁さん、俺の相手してくれへんねん」 「子どもが一番で、俺のことは後回しや。構ってくれへん」
と、愚痴をこぼしてて。
「旦那>赤ちゃん」でないと拗ねるのか!? 奥さんは旦那さんの「母親」じゃないぞ! どこまで子どもやねん! と。

同じ年齢であっても、総じて女性よりも男性のほうが精神年齢が低いですが、男が精神的に死ぬまで「子ども」のままだとマジで辛い。こういう「子ども」たちが、特に国の命運を左右するトップにいるとな。


特命班は母親の上田亜沙子、佐倉真弓、栂野雪子、小野雄太、浅井忍、井上リナを含む高校時代の遊び仲間にあらためて話を聴いて回る。それは、彼らにまた新たな疑心暗鬼をもたらした一方、刑事たちには老女の死という事件の中心から逆に遠ざかってゆく日々になったが、周縁に散らばっているピースを一つ残らず拾い集めない限り、『栂野節子の人生と生活』のパズルは完成しない。

今回の事件は、栂野節子殺しの加害者かもしれない人物が、先日殺害された上田朱美かもしれないという、二重の複雑さであるところが、混乱の元凶。
文字通りの「死人に口なし」。

このせいなのか不明ですが、「読むのを止めた」という人が多少はいるとかいないとか?
「分かりやすいことは書かない」のが高村作品の特徴ですから、「簡単で且つ分かりやすさ」を求めるのは、お門違いというもの。

この複雑さとやるせなさが、いいんじゃないですかー! 後々のちょっとした光明を感じ取り、カタルシスを味わえるのが、醍醐味なんですよー!

「我慢して読み続ける」のも、大切ですよ・・・と助言しても、読むのを止めた人が、この記事を読んでいるとも思えないですね、ははは。


真弓は最初の仕分けにひとまず成功していたのかもしれない、と刑事たちは思い直す。しかし、真弓が守ろうとしているものは、依然として分からない。かつての親友の名誉か、それとも自分自身の何かの秘密か。

被害者遺族の一人であり、事件当時は高校一年で予備校の冬期講習に出ていた佐倉真弓、旧姓栂野真弓について、特命班の刑事たちは、現時点で上田朱美よりもむしろ不透明な顔を覗かせているように感じる一方、その印象を生み出しているものを、なかなか整理することができない。

父親の孝一がやっていたこと、殺された祖母の節子のこと、その祖母と仲が悪かった母親の雪子のこと・・・。
それらが一斉に降りかかってきたのが、当時の真弓ちゃんの状況だったんだから、封印して忘れた記憶もあって当然だろうし、年月という戻せない時間もあるしで、現在の真弓ちゃんも、どうしようも無い状態でしょう。

それでも、これが何かのきっかけで封印された蓋が開かれる場合があるわけで。警察が賭けるのは、この一点だけなんでしょうね。


パソコン戻りました

2017-11-26 22:34:37 | 何となく、タカムラー気分(お知らせ含む)
が、ちょっと不安定なので、また再修理に出す可能性が有り得ます。 そのときは、またまたゴメンナサイです。

何故かというと、私が一度も使用したことのないスカイプのソフトが、勝手に立ち上がるんですよ。
不思議どころか、不審に思いません? 一度も使ったことがないのに! それが気味悪くて、気持ち悪くて。何かされたんじゃないか、と疑心暗鬼です。
パソコン立ち上げるたびにイライラするのも腹立たしいし。 

いったいどうしたら、よいのでしょーかー。(←分かる人には分かる某番組の定番の問いかけ)

***

高村さんが『土の記』(新潮社)で受賞された 平成29年度「野間文芸賞」「野間文芸新人賞」「野間児童文芸賞」受賞者決定のお知らせ が公式サイトで更新されましたので、リンクしました。

それにしても新潮社さんのサイトでは、未だに自社のサイトの文学賞のコンテンツに、この受賞のことが掲載されていませんね? 宣伝不足ですよ~!


この後、せめて1記事だけでも「我らが少女A」を更新します・・・。


祝 「我らが少女A」連載100回&祝 『土の記』が第70回野間文芸賞受賞&『レディ・ジョーカー』を語る

2017-11-11 00:35:03 | 何となく、タカムラー気分(お知らせ含む)
本日2017年11月10日(金)で、「我らが少女A」がめでたく連載100回目を迎えました。 
高村さん、お疲れさまでした。 これからどのように進展していくのか、楽しみです。
妹に愚痴られてもイヤミを言われても、ひたすら耐え忍びます。

いやー・・・とにかく妹がうるさいんだ。

「まだ毎日新聞取るの?」 「いつ連載終わるの?」 「どうせ本も買うのに、なんで新聞取るの。もったいない」 「まだ連載終わらんの?」 「スクラップしても、どこに保管するの」 「お金の無駄遣い」 「あとどれくらいで終わるの? 半年? 1年?」

や か ま し わ ー ! 

週1回は言われ続けている傷心の私を、どなたか慰めてください・・・しくしく。 

***

日付変わりましたが、第70回の 野間文芸賞 高村薫さん「土の記」が受賞 されました。

おめでとうございます!!

寡作の作家さんであらせられますが、受賞歴・受賞作がすごく多いですよね。

上記のリンク先は毎日新聞のサイトから。 土曜日の朝刊にも載りますね♪
野間文芸賞は野間文化財団主催で、講談社さんのサイトがまだ更新されてないので、更新されたらリンクします。

***

あともう一つ。先月のことですが。 地域によるのですが、朝日新聞で  (時代のしるし) 喪失感の中、見つめ直した昭和史 高村薫さん「レディ・ジョーカー」 が掲載されました。

関西版でも掲載されるかな・・・? とその時を待っていたのですが、未だに載らないので、業を煮やして、紹介。

上記がご覧になれない方は、ブック・アサヒ・コムの 見つめ直した昭和史 高村薫さん「レディ・ジョーカー」 でも読めます。 同じ内容、同じお写真です。