中国ビジネスブログ「漢和塾の窓」

中国語や中国ビジネスに関連するテーマを、漢和塾の小川がつらつらと書き綴る・・・

あの頃の「リクルート」と、今の「中国」の政治(経営)手法・・・

2010-04-25 13:56:12 | 中国
1987年、バブルの絶頂の頃でしたでしょうか?私は、株式会社リクルートに入社しました。本来は、外国語系、しかもポルトガル・ブラジル語学科の私は、なんとなく当時の外為に強かった東京銀行か、先輩のいた三井銀行に会社訪問をする予定でした。ひょんなことから、リクルートにアルバイトに行き始め、気がつけば、周りの熱気に飲み込まれるようにリクルートに入社(細かい経緯は省きます・・・)、紆余曲折ありましたが、16年もいてしまいました。マネージャーにならずに(なれずに)16年もいた社員は珍しいのではないでしょうか・・・

さて、そんなリクルートですが、今では「起業家輩出企業」などと言われることもあり、実際、多くの優秀な起業家がいることも事実。起業家の端くれの私も、実はリクルートを卒業してから、あらためてリクルート出身の社長や取締役に出会うことも多く、リクルート人脈と言うよりも、結果的にリクルート出身の方に救われてたりします。

が、そんなリクルートですが、もちろん皆が皆、会社を辞めているわけでもなく、私の同期は、すでに常務取締役に昇格、起業5年目の私などとは比較にならないくらい「大きなスケール」の仕事を動かしています。また、当時のリクルートは若い会社で、確かに若くして転職する人も多かったですが、決して、会社をただのステップと考えていたわけでもなく、江副元社長や多くの経営陣、あるいは同期、時には後輩に刺激されながらも、不思議な愛社精神に溢れていた・・・そのような実感は私にはあります。

実は、前回のブログで、中国政府の「トップダウンとボトムアップのバランス」について書きましたが、当時のリクルートこそ、それが最もうまくできていたのではないかと思います。一見、若い社員が自由に(勝手に)やっているように見えて、トップの理念、目標設定は明確で、とても厳しいものでした。「目標行かなければ人間じゃない!」くらいの強烈なトップマネジメントも存在していました。その厳しさの中で、その目標の達成や事業の改革をするためなら、個人の小さな提案で事業部を作ることもできる・・・下からのパワーの吸い上げもうまくできていました。また、そうして提案した事業には、上からの厳格な目標責任が求められるわけで、「秩序があってこそ、自由がある」、そのような言葉が当時のリクルートにぴったりだったように感じます。

日本は組織が優先、アメリカや中国は個人が優先などと、簡単に片付けてしまう向きもあるようですが、強い組織の中にいてこそ、個人の力が存分に発揮できる・・・そのような理想的な会社経営を、昔のリクルートには感じます。会社とは何か?と聞かれたら、迷わず「自己実現の装置!」・・・そんな言葉が当時にぴったりでした。

いずれにしても、中国企業とのマネジメント論を語る時に、中国企業が学び、模範にすべきは、「トップダウンとボトムアップのバランス」がうまく取れている、現在の中国政府の運営手法なのかも知れません。

岡本真夜さんと上海世界博覧会のテーマソング・・・

2010-04-22 13:54:44 | 中国
私が初めて、上海世界博覧会のテーマソングを聴いたのは、3月31日、上海出張中のことでした。外灘の特設会場で、欧米のオペラ歌手に続いて、雨の中で歌われていました。テレビで一瞬見ただけなので、特に気にせず聴いていましたが、別の国で、別の言語で聴いたためか、岡本真夜さんのファンにも関わらず、そのメロディが酷似していることには、まったく気付きもしませんでした。

結果的には、今回、中国側(主催者側)が、すぐに盗作であることを認め、また、岡本真夜さんも楽曲の使用を容認したことで、いつもならば、「盗作だ、盗作じゃない!」の水掛け論や、「やっぱり、中国は・・・」と言ったマイナスイメージを引きずらなくて済みました。テーマソングだけに限って言えば、「日中共同開催」的な気分とも言えなくもないです。

よくよく聴いてみると、盗作と言うより、コピーに等しく、作曲家の方もこれで名声が吹っ飛んだかも知れません。ま、音楽が似ていることはよくあることで、それを言い出せば、河口恭吾の「桜」と、徳永英明の「僕のそばに」のサビも酷似しています。初めて「桜」を聴いた時は、リバイバルかと思ったくらいです。

ORANGE RANGEに至っては、ヒット曲のサビメロをコンピューター分析して、混ぜたり、つなぎ合わせたりして、これまたヒット曲を生み出しているとか・・・ま、音楽の世界では、ド→レ、ド→ミ、ド→ファ、レ→ソなど、8音(3オクターブで24音)と音符の長さの組み合わせは、すでに使い尽くしているはずで、「どこかで聴いたようなメロディ」にはどうしてもなってしまいます。最後は、歌詞が意味するところのメッセージがすべてでしょう。演歌は、まさにその典型かも知れませんね。

急に音楽の話になりましたが、以前にもお知らせしていましたが、私のオリジナルライブが決定しました。日時は、5月30日(日)14:00~に正式に決まりました。ギター一本で5、6曲ほどのオリジナルソングを歌います。場所は、東横線「学芸大学」近くの「APIA40」というライブハウスです。1曲ぐらいは中国語で歌うつもりですが、いかんせん練習をする時間がなくて・・・会社の会議室にギターを忍ばせていますが、予選の時からそのままで、また弦がさび付いてしまいます。ま、忙しいは言い訳に過ぎませんので、マラソンも含めて、仕事のスケジュールの中に無理やり詰め込んで頑張りたいと思います。

それにしても昨今の天候は異常・・・初夏になったり、真冬になったり。5月1日の上海の天気は「晴れ」になることは間違いないでしょうが、ゲリラ豪雨などの副作用がないことを祈ります。



青海省大地震のその後が気になります・・・

2010-04-18 13:53:21 | 中国
随分、ブログの間が空いてしまいましたが、日本でも、中国関連のビジネスに前向きな企業や部署からは、中国語や異文化研修の依頼を多くいただいており、毎日が飛ぶように?過ぎていきます。その間に、中国は青海省では、巨大地震が発生、死者は1,500名前後と報道されていますが、行方不明者、負傷者の数も考えると、2,000名は超えてしまいそうで心配です。

四川の大地震の時は、発生二日目に上海に出張に行ったので、毎日、テレビから情報をとることができましたが、今回は日本にいるので、同じような画像しか見ることができず、そもそも地震の扱いは、かなり「他人事」のようにも感じます。政府首脳が現地に行く!という記事には、必ず「チベット族の反乱、反感を抑えるためだ!」とか、ネガティブなコメントがもれなくついてきますが、そんな事より、標高3,700メートル、富士山山頂と同じような場所に、外部から救援に行く困難をもっと問題にすべきです。援助に行った部隊も、急激な標高差では高山病になってしまいますし、スピードと物量が必要な中、かなり難易度の高い救助が求められます。

それでも、今回の地震発生場所は、青海省の中でも、比較的人口が少ないと言えば、少ない地域。人口が200万人を超える省都「西寧」で起きていたら、被害は数十倍にもなったでしょう。実際、1922年には、西寧で大地震が発生、死者は20万人にもなったとか・・・いずれにしても、チベット族の多いこの地域ではありますが、同じ中国の省で起きた惨事、私の会社の中国人社員もみなその後が気がかりなようです。

四川大地震の時にも、上海にいて感じたことですが、このような災害が起きた時、中国全土で募金活動が始まります。私もできることをしたいと思いますが、中国の募金は、誰がいくら募金した!と言うのを残すことが多いのが特徴です。記名式とでも言えばわかりやすいでしょうか。日本では、箱の中に投じたお金は誰のもので、それがどうなるかわかりませんが、中国では、○○さん、○○会社、○万元・・・と結果が残るようになっているケースがあります。日本人には奇妙かも知れませんが、中国人に聞いてみると「そりゃ、誰が本当にその災害のことを心配しているのかよくわかるし、自分のお金がどう使われるのかも知りたいですし・・」と言っていました。

上海では世界博がまもなく開催されますが、現在は、50万人のエキストラ(ボランティア)を動員して、実際の会場のパビリオンなどに並ばせ、開催前に混雑状況を把握しているとのこと、日本では考えられない「人口感」です。いずれにしても、その会場でもきっと募金コーナーがあちこちに設けられることでしょう。

大地震、アイスランドの噴火・・・自然の脅威には勝てませんが、最後に必要なのは、まずは国内、そして国境を越えた「助け合いの精神」なのかも知れません。






日本人死刑囚の刑が執行されましたが・・・

2010-04-06 19:26:34 | 中国
残念ですが、麻薬の罪は、日本と違い中国では重罪!仕方のないことだと思います。マスコミやネットの一部の論調には、「人権問題」に摩り替えている向きもありますが、中国人の犯罪者が無罪放免で、外国人だけ死刑と言うなら大問題ですが、単純に執行数で多いの少ないのと比べて批判するのはよくないと思います。死刑の存廃論でさえ、日本はもとより世界的にコンセンサスは得られてないのですから・・・

そんなことより、ふと思ったのが、じゃあ、沖縄でアメリカ軍兵士が犯罪を犯しても捕まらないのはなぜ?との疑問と憤りです。疑問を抱く以前に、日米地位協定の存在くらいは知っていますが、敗戦や、国の力関係が如実に法律に影響している・・・それを考えると、死刑であれ何であれ、日本でも中国人犯罪者は数多く逮捕されてますし、中国で中国の法律を犯せば日本人でも逮捕、量刑を科される・・・それは当然のこととも言えます。

中国の法律の場合、少し気をつけなければいけないのが、日本のようにすべて細部をつめてコンセンサスをとってから施行すると言うより、先の禁煙条例じゃないですが、まずはやってみる!ことにあります。その上で、問題点がいくつか出てきたら見直しもする、その上で検証、吟味したものを正式に公布すると言った流れになります。いわば仮の法律のようなものが先にあるわけですが、その時点で法を犯したならそれはそれで違法です。

また、税金関係の法律でも特にそうですが、法律が変わって罰金が科せられた場合に、その時点ではなく、過去数年に遡って罰金が科せられる場合もあり、移転価格税制等では、膨大な金額を突きつけられた日系企業もいらっしゃるとか・・・法全体の整備はまだまだ未成熟とは言えますが、運用は厳格と考えたほうがいいでしょう。

ちょっと、これくらいなら・・・日本のスピード違反よろしく、運よく捕まらなければいいやと言った甘い感覚で、危ない橋を渡ると、その代償は、ちょっと、これくらい・・・では、とてもすまなくなります。上海の世界博の期間中に、中国に出張に行かれる方も多いかと思いますが、喫煙者の方は、今までの「中国人は煙草を吸っている・・・」と言った既成概念は一度捨てたほうがよろしいかと思います。もちろん、公共場所での禁煙を規制したため、屋外、路上での喫煙が増えるなど、一部は時代が逆戻りしていると言った課題もあるようです。

このところ、一部の書籍の影響もあって、中国の本質を、かなり肯定的にとらえた文章が多くなっていますが、決して、私の仕事が中国に関係しているからではありません。あくまで、真実に近い事実を集め、自分なりに理解して、仮定してみる・・・最近はそのような工程で中国を見るようにしている・・・ただ、それだけのことです。

"自上而下"与"自下而上"的結合

2010-04-05 19:24:51 | 中国
雨模様、肌寒い東京に帰ってきました。14日間、中国は上海だけでなく、湖南省、安徽省にも行ってきたわけですが、東京の整然とした人の流れは、安心感と同時に、活気のなさを感じたりしますが、日本では、またぞろ「新党結成」だとか、目先の選挙で職を失いたくない凡人(本来は優秀・・・)が右往左往しています。国の舵取りは、巨大組織の経営と同じ。長期、少なくとも中期の事業計画を立案するトップと、それに基づいて各自で考えて実行に移す現場がいないと会社が成り立たないのに、日本の今は、次元の低い選挙のせいで、優秀な人さえ、その力を発揮できず、埋没してしまっているようにも見えます。

帰りの機内で、引き続き「CHINA'S MAGATRENDS(中国大趨勢)」を読み進みました。と言っても、まだ50P、四分の一にも満たない内容ですが、欧米人が分析した改革開放以来の中国の政治、経済体制について、いくつか興味深いワードを見つけました。例えば・・・

"自上而下"与"自下而上"的结合 = Top-down(トップダウン)とBottm-up(ボトムアップ)の結合

本の一部をそのまま抜粋すると、「中国の新たな社会の成長と安定を支えていくために、最も重要で、最も微妙で、最もポイントになる柱は、トップダウンとボトムアップのバランスである。これが、中国安定の鍵になり、中国独特の政治理念を理解する上でのポイントになる・・・」

共産主義VS民主主義と言った二極論の範疇に収まらず、今や中国は、長らくの封建制度、近年の混乱の中から、西側諸国にもできなかった新たな政治体制を生み出しつつある・・・と言うのが本の論調です。私は、これは、企業にもそのまま当てはまることだと理解しました。「秩序なくして自由はなし!」と言う文言も気になりましたが、これは、古くから孔子が述べていたことのようです。近代の指導者達は、小平の解放思想を受け付いで、一見矛盾しそうな概念で国を経営している・・・バブルだとか一過性のものではなく、国のトップが信念を持って指令を出し、人民はその方向性の中で、自主性を持って(勝手に?)活躍する・・・私が見た各省の平均的な生活水準の向上や、世界での地位の再浮上、その理由は、一般企業なら当たり前の運営を中国がしているからです。

上海の禁煙条例(急に小さな話にして終わらせてしまいますが)、これも市政府がトップダウンで明確な指示を出しました。それに対して、料理店、個人から不評や不満の声などもあがってきます。そんな中で、人民の反応を見ながら方向性を決めていく・・・ある意味レベルの高い政治手法と言わざるを得ません。政治家が尊敬されてなければ暴動にもなる・・・中国の政治は物凄いパワーがかりそうですが、見習うべきところもありそうです。