kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ランゴ(字幕版)

2011年10月31日 | 年間ベスト3
日時:10月30日
映画館:バルト11
パンフレット:A4横版700円。値段の割に内容は薄い。
その他:ウチの小僧と一緒。

ゴア・ヴァービンスキー監督の「メキシカン」を観た時、伝説のエングレーブ・ピストルを巡るという展開やオープニング・タイトル、マリアッチ楽隊など全体にウエスタンの漂いを感じたものだが、大ヒット作「パイレーツ・オブ・カリビアン」では、この監督がマカロニ野郎であることに確信を覚えた。

金貨を巡る三つ巴の戦い、「世の中には2つある。」のセリフなど「この監督って「続・夕陽のガンマン」が好きな野郎だ。」と嬉しくなったし、その後、「デッドマンズ・チェスト」ではガトリング大砲、「ワールド・エンド」では横並び一列のウエスタン行進とマカロニチックな音楽、そして三角決斗(タランティーノばりに言うなら「メキシカン・スタンドオフ」)と随所にマカロニ描写を忍ばせてくれていた。(世の中のものが何でもマカロニに見える妄想じゃないぞ!)

前置きが長くなったが、その彼が砂漠が舞台のアニメを撮るという。いやがおうにも期待が高まるじゃないか。

しかもタイトルが「RANGO」。マカロニ野郎検定では、「「~NGO」というタイトル、もしくはキャラクターを5つ以上あげろ。」という問題があるくらいだ。(ウソ)
Django,Ringo,Garringo,Shiringo,Shango,Durango,Gringo,Cjamango,R-R-Ringo・・・・とにかく、ンゴはガンマンの名前なのだ。

カウボーイ&エイリアン」で肩透かしを喰らった復讐・・・もとい、元を取るぞ。

で、結論から言えば、予想以上の大ウエスタン!
(以下、暑く暑くネタバレをします。ワタシが絶賛するなら、観に行こうというガンマンは決して先には読まないように。)

マカロニなテーマ(しかもモリコーネではなく、もっとB級っぽい。)に乗って、オープニングタイトル「RANGO」。なかなかいい味で、隣に小僧がいることも忘れて大爆笑。

主人公は役者に憧れるカメレオン(仮面ライダーのカメレオン男みたいだ)。ペットだった彼はひょんな交通事故から砂漠に放り出される。この事故のシーンに「ラスベガスをぶっとばせ!」のジム・トンプスンが出てくるだけで、また大爆笑。普通にアニメを見に来た観客は何のことか当然、分からない。

その後、貧困にあえぐ寒村に紛れ込み、伝説のガンマンと勘違いされ、自分もなりきってしまう。「サボテン・ブラザーズ」を引き合いに出すまでもなく、売れない役者が勘違いされ、陰謀渦巻く「命が価値を持たなくなったところ」に迷いこむ典型的なストーリーだ。

主人公には名前がない。「何て名だ?」と問われ、その辺のもの(ここでは酒ビン)から名前を名乗るのは「用心棒」からの伝統である。

登場キャラクターは他にカエル、ヘビ、ネズミ、ダンゴムシと、はっきり言ってワタシの目からも見て、気持ち悪い。しかも、どいつもこいつもホコリまみれ。もはや、フリークスっぽくさえあるのだが、マカロニ・ウエスタンのキャラも客観的に見れば、基本的にこんなのだよな。

車いすに乗った町の黒幕リクガメ(声はネッド・ビーティー!)やしっぽの先がガトリング銃で、冷却時の回転音がガラガラの音とかぶるという冗談としか思えないガラガラ蛇の殺し屋(声はビル・ナイ)なんて大拍手だ。

水不足にあえぐ町は「クイック&デッド」のようだし、鳥瞰で眺める景色はまんま「ウエスタン」。この町を救うため、ランゴは自警団を結成し、悪党一味(ジジイのボスはハリー・ディーン・スタントン!)を追いかける。音楽を奏でるのはフクロウのマリアッチ楽団。しかも、途中エレキを取り出して、ガンガンにソロをやる。ウエスタンにエレキ。マカロニの伝統だねえ。

中盤の見せ場となる大チェイスでは、ハリー・ディーン・スタントンにバンジョー・バージョンの「ヴァルキリーの騎行」、コウモリ、ワイルド・バンチ、ガトリング銃、マッド・マックス2と字だけ連ねると何のことか分からないが、もう大興奮!ぜひ、一度観てほしい。

この手の物語の常として、主人公のウソがばれ、痛い目にあう。自分を見失い、自暴自棄になった彼がさまようシーンは泣け、その後、この世の向こう側にたどり着く様はまるで「デッドマン」。

そこで、ランゴが西部の魂に出会い、生きる道を啓示されるシーンに、マカロニ野郎のワタシはその出来映えに大号泣。マカロニ野郎なら人生に行き詰まった時には見直したい名シーンだ。ただのオマージュにも安直なパロディにもしなかった監督のセンスに脱帽するしかない。

クライマックス、ランゴは砂塵の中からポンチョ姿で登場し、当然、決闘となる。これだよ、これ!西部劇で見たいのは。
あと、シメとして派手な爆発もあるのだが、このアングルが完全に「夕陽のガンマン」のエルパソ銀行。

原色アニメのエンド・クレジットで「ランゴ」のテーマが流れるのだが、初めて聞いたにも関わらず、サビの「ランゴ~、ランゴ~、ランゴぉー」はちゃんと歌えてしまう、この安定感。(笑)

劇場を出る時、「ペッ!」っと唾を吐きたくなる(←誉め言葉)満足感は久しぶり。たぶん、今の世の中、実写ではこの面白さは出せないだろう。CGアニメの方が質感が高く、やりたい放題のウエスタンが撮れるなんて、皮肉だよな。

ということで、次回、マカロニ大会のコスプレは「ランゴ」が有力候補になるのだが、さすがのワタシもこのコスプレは躊躇するな。(笑)






題名:ランゴ
原題:RANGO
監督:ゴア・ヴァービンスキー
声の出演:ジョニー・デップ、アイラ・フィッシャー


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