俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

2月28日(月)

2011-02-28 11:16:11 | Weblog
●俳句の旅/伊豆修善寺梅林~伊豆南部河津桜

①平成23年2月22日

◇伊豆修善寺


梅と桜を一度に見る旅に句美子が連れて行くというので、誘いにのる。桜は河津桜。宿は、西伊豆の今井浜東急リゾートという。梅林は、熱海か修善寺かと聞くので、修善寺がよさそうだと二人旅に出かけた。新横浜から新幹線こだまに乗り、三島近くに残雪の富士を大きく見て、三島で下車。三島から伊豆箱根鉄道で修善寺に向かう。修善寺までは、先頭車両の最前席で、揺れながらも、まっすぐな線路を見ながらの旅。後ろを振返ると、いつも富士山がある。

修善寺駅に到着してから、修善寺梅林へすぐ向かう。修善寺駅から東海バスの「もみじ林行」に乗る。この終点となっているもみじ林に梅林がある。梅見に行く老婦人たちが乗っているが、途中、梅林ではないところで、なんども降りようとする。運転手は、観光案内も兼ねて、そのたび、ここは違う、終点で降りると案内する。立てば、よろけないように注意する。もみじ林で下車。入り口の蕎麦屋と、四十八ヶ所の札所の小さい菩薩の石碑を一つを過ぎて山道を梅林へ。三ヘクタールあるという梅林。歩くと落葉樹が葉を落として、日がよく降り注いでいる。もみじ林の名の由来がわかる。若楓のころは、美しいことだろうと思いながら歩く。ほどなく、右手に西梅林の入り口がある。数歩入れば、漂う梅の花の香り。ここの梅の木はどれも古木。幹はウメノキゴケが覆っている。百年の古木もある。樹のかたちも写真家が喜びそうな形が多くある。梅林の中の竹林は竹の秋。紅白の梅の花の後ろの竹の秋は色がつやつやとしている。梅林は丘となったりしている。丘に登れば、何か見えそうだ。登って見る。伊豆の高い山々が見える。

◇伊豆修善寺梅林


丘を降りて谷を下ると東梅林へ。こちらは、修善寺温泉へ通じる道らしい。文人の句碑もある。石の鳥居を潜ってさらに下り、温泉への分かれ道のところから、また登る。すると、戸外に太い薪を組んで、大きな炉をつくり、鮎を串刺しにして焼いている。一匹が六百円。一本ずつ食べる。腸までがおいしく食べれる。寒いので炉のほとりに近寄りたいが、火の粉が散って服に穴が開くのでいけないという。食べ終われば、ポリタンクのお湯で手が洗える。鮎を食べて、また梅林を。今度は、雪どけのあと、ますます葉の色が青くなった水仙の小道がある。ここを辿り、もとの西梅林へ。だれか少し上から不意に現れ驚くが、写真を撮っていたらしい。気づくと富士山の山頂が見えている。ちょうどその人がいた場所が富士見には一番良いところだ。写真はもっぱら句美子が撮っているが、富士を収めて来た道をバス停まで下る。バスが来るまで二十分ほど。山すそにパンジーや菜の花の花壇があって、三椏の花が咲いている。咲いているものは、黄色い花簪のようで、かわいらしい。

◇三椏の花(伊豆修善寺梅林)


来たバスに乗り、修善寺温泉まで。みゆき橋で下車。それから温泉街へ入る。句美子が目当とする蕎麦屋が見つからず、店に寄りながら歩く。修善寺に来たからには、修善寺に参らねば。御手洗は、温泉のお湯。賽銭をあげ、本堂を見る。きれいな本堂で、天井には花の絵がある。消えそうな絵もあって、つつましい。弘法大師の立像が庭にある。ちょうど年に二回のお寺の庭の公開期間中にあたっていた。旅館のおかみが持ち寄った雛人形が飾ってある。吊るし雛も部屋ごとに飾られている。吊るし雛はなにか強すぎる縮緬の色に情念あるようで、敬遠して、廊下から庭を見る。こじんまりとした鶴や亀、龍に見立てたもの石や滝を配している。滝の落ちるあたりに菖蒲らしき芽が見える。花が咲くときれいでしょう、と言うと、「いいえ、この庭は花を咲かせません。さつきでも花芽を摘んでしまいます。庭の形が崩れますから。」ということであった。住職の部屋からが正面となっている。写真で外から見るよりは、よい寺であった。

◇伊豆修善寺


寺を出て温泉街を歩く。からからと落葉が舞う。源氏にまつわる建物、墓がある。温泉街も終わりかというところに、目当ての屋台の蕎麦屋があった。よしずで囲った蕎麦屋である。二人ほど待って中に入る。寒いので暖かい蕎麦にしたいところだが、生わさびを摺ってくれるので、わさび食べたさにざるを頼む。ちょうど私たちの前で蕎麦が無くなたのでこれから捏ねるという。ずいぶんお腹をすかせてきたのに、捏ねて、切って、ゆでるとは。塗りの捏ね鉢にそば粉を入れて数分押しながら捏ね、それを秤ではかり筒へ入れ、ゆで釜の上の機械に入れた。すると、するすると蕎麦が出てきて、それをすぱっと包丁で切って、釜の湯へ落とす。わさびを客に摺らせたり、店自慢をしている間に出来上がる。地のりをかけてくれて出された。蕎麦つゆに柚子のかけらを入れてくれた。椿山荘の蕎麦と同じくらいおいしいといっておいた。一律500円。

屋台を出て、竹林へ。桂川が流れ、渡月橋がある。京都をまねているようだ。橋を渡り、独鈷(とっこ)の湯へ。弘法大師が独鈷を突き刺してお湯が出たところで、川に突き出していて、今は足湯処。川を眺めながら足湯につかる。四十五度以上はありそうなお湯。長く、ずっと浸かっていた。独鈷の湯を出て、温泉街へ。温泉饅頭は売り切れ。大杉で有名な日枝神社前の店で、「えびぽん」という桜海老のはいったぽんせんべい買う。伊豆には、千年の大木が多いらしい。その土産をもって、修善寺駅へ戻り、河津行きのバスに乗る。天城峠を越えて、1時間半ほどのバスの旅である。

バスは、若い句友の智久さんの住む湯ヶ島を通り、浄蓮の滝などを通り天城峠を越えて行く。天城峠近くに山葵田を見た。あまりに急峻なところにある小さな田に驚く。沢に作られたようで、水が零れ落ちている。天城峠を越えるころは、私たち二人以外に一人お客がいるだけになった。ループ橋という、奈落に底に落ちそうな橋をぐるぐると下っていって、河津七滝(かわづななだる)などを通り、川沿いに続く河津桜を見ながら河津駅に到着。四時半ごろだったろう。それから、海はどちらか方向を確かめ、少々街中を歩き、海沿いの遊歩道を伝って、今井浜のホテルへ。風が荒く、どおっと寄せて、白い飛沫散らす波が恐ろしい。山側は、河津桜がよく咲いて、椿も咲いている。これだけの風があっても暖かいのだろう。二十分ほど歩いてホテルに着く。送迎バスでなく、遊歩道を歩いたのは正しかった。

野に飛べる春鶺鴒や修善寺へ
修善寺の街のこぞって雛飾る
蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し
春浅し川に突き出す足湯なり
紅梅がかすみ白梅がかすみ
梅林の丘をのぼりて伊豆連山
鮎を焼く炉火に手を寄せ暖をとり
梢より富士の雪嶺に風光る
わさび田の田毎に春水こぼれ落つ
天城越ゆ春の夕日の杉間より
山々の春は名ばかり天城越ゆ

◇伊豆修善寺梅林


②平成23年2月23日

◇朝の今井浜からの相模湾を臨む・河津川の桜並木(伊豆南部河津町)


ホテルの名は、「今井浜東急リゾート」。シンボルマークがストレチア(極楽鳥花)の花。オレンジ色にどこかに明るい青がある。ホテルのフロントの女性のスカーフもオレンジと明るい青。五時前のチェックインとなった。食事は五時半を指定しておいたとホテルの係り。七時十五分から、夜桜見物の送迎バスが出るので、受け付けるという。まずは、六階の部屋に。部屋は、全室海に向いている。カーテンを開ければ、ビーチに寄せる荒い波が見える。ホテルの用意したさくらまんじゅうとさくら煎餅をお茶でいただく。少し休んだあと食事に。和食を頼んだというのでどういう料理か楽しみにした。先付けに豆乳玉子の葛あんかけが出て、ほどよく体があたたまった。わさびの葉のてんぷらがあったが、辛くもなく、味というほどの味はなかった。フロントは三階にあったが、レスランは一階。ビーチの境のホテルの庭には松の木があって、篝火が焚かれているが、炎が風で飛んでいる。ずいぶん日が長くなって、六時ごろもまだ浜は明るい。食事を終えて、部屋へ。夜桜見物までは、少し時間がある。コーヒーを飲みながら、椅子に座ってテレビを見ているとニュージーランドの地震報道。しかしながら、突然の睡魔。句美子によると、十五分ぐらいぐっすり寝ていたらしい。

夜桜見物には暖かくして出かける。一月の吟行で懲りたので、帽子、手袋は必携。ホテルのマイクロバスに乗って、五分ほどで河津駅に着く。河津駅から少し歩くと河津川に出て、その岸に三キロに渡って桜がある。夜桜はすべてライトアップされているわけではないようだ。橋の袂から河口へ向かって土手を歩き始める。三百メートルもしないうちに潮の香りがしてきた。ライトアップされた桜は、オレンジっぽく見える。緋寒桜と大島桜の自然交配種が河津桜ということなので、色が濃く、一か月近くも散らないという。途中から橋を渡って、民家が並ぶ土手を歩く。そこから空を見上げると、オリオン座の星雲までがくっきり見える。星がきれいに見えるところらしい。そして元の橋の袂へ。そこでホテルでもらった写真撮影のサービス券で、句美子と夜桜の下で記念写真を撮ってもらった。「河津桜まつり」と記録入り。会場近くに大きなスーパーがあって、句美子がそこで、鯵のひらきと、地のりと、桜あんの小さいどら焼きを買った。夜桜見物はそれだけにして、随時運行されている迎えのマイクロバスでホテルへ。鯵のひらきは冷蔵庫へしまう。よやく温泉に浸かる。すっかり暮れているので、露天風呂からは、星空と波の打ち寄せるどどっという音だけ。今夜はそこそこ温まって、明日の朝のお湯を楽しみ出る。

◇夜桜(伊豆南部河津町)


朝の温泉を楽しみに目覚ましをかけたが、眠すぎる。健康をとるべきか、温泉を楽しむか考えているうちに、再び、眠ってしまった。起きてカーテンを開けると、まぶしくて目が開けておれない。ちょうど真東に昇った太陽で海は灰色の光となっている。出発準備をしてから、庭に続くレストランで朝食。ブッフェなのだが、席に着くとすぐにボーイさんが、コーヒーを入れてくれた。句美子はミルクティー。ポトフの小ぶりにきった野菜がおいしい。大根、セロリー、ブロッコリーなど地元の野菜。それに白菜のコールスローも。普通はキャベツのところが、白菜。朝食後は、部屋に帰らず、庭を伝ってビーチへ。庭にストレチアの花が咲いている。プールにも水が貯められてきれいに澄んでいる。砂浜に出るとちょうど引き潮。貝のいるらしい穴がいくつも。人の足跡も。いのししの足跡と早合点してしまった大型犬の足跡などがある。ホンダワラなどの海草がところどころに打ち上げられている。ビーチの端の岩場に来たので引き返す。波打ち際を歩いて波に追いかけられた。危うく足を濡らすところ。誰一人いない砂浜だが、ただ一人カメラを持った人が通りすがっていった。朝のビーチの散策は温泉に匹敵すると、朝湯に行かなかった理由になった。ぐるっと回って行くと、きのう辿って来た遊歩道に出た。遊歩道をまた少し歩き桜や椿をきのうと同じように見て、浜へ引き返し、ホテルの部屋へ。バルコニーから句美子がビーチの写真を撮った。

◇朝の今井浜からの相模湾を臨む(伊豆南部河津町)


河津の桜まつりは朝九時から屋台が揃う。ホテルのマイクロバスで、二人だったが、河津駅まで運んでもらう。きのう来るときに桜は見たのでもうよいような気がしたが、朝の川岸の桜と菜の花がすがすがしい。河津川の水のきれいなこと。鮎が釣れるようだ。川の鴨が泳ぐ水かきまでもがよく見える。鶺鴒がいくらでもいる。桜や菜の花を見ながら歩く。途中のさくら足湯というところで、足湯をたのしむ。修善寺の独鈷の湯よりもぬるい。桜まんじゅう、さくらえびせんべい、栗ぽん、おやき、桜の苗木、吊るし雛などを売る屋台が続く。黒眼がねをかけ、黄色い服のイタリア人夫婦の屋台もある。つぶあんのよもぎのおやきをほおばる。桜海老せんべいを買う。川岸を上流へ、人がまばらになるところまでずいぶん歩いた。河津桜の絵を描いて売る人もいる。買う人もいる。「踊り子温泉会館」まで来た。近くに峰温泉という温泉がある。三十メートルほど温泉が噴きあがるのが売りもの。次の噴き上げは十二時三十分だという。三十分ほど待つ間、篭に卵を入れて、温に浸けて温泉玉子を作る。待ってる間も少し寒いので足湯をする。東洋一という温泉の噴き上げを見てそこを出る。バス停近くの店でケーキとコーヒー。来たバスに乗って、河津駅まで。見事な桜の原木がバスの窓から見えた。二十分ほど乗ったろうか、河津駅に着くとさすがにお腹が空いている。これから電車で帰途に着くわけだが、残っている駅弁は、この時間では、さざえ弁当だけ。わっぱ風の折に入って、さざえとひじきが載せてある。それを持って普通電車に乗る。三時間あれば帰れるので、踊り子号にも、スーパービューにも乗らないで、鈍行で帰る。二時四十六分発の熱海行。熱海からは、JRの快速アクティ東京行で横浜まで。相模湾が見える方、つまり行き手右側に席をとった。

◇河津桜(伊豆南部河津町)


鈍行の旅はいかに。花見客が大勢いた駅も乗ってみれば、席は空いている。二人掛けの椅子に並んで駅弁を開いて食べていると、反対側の横長い椅子のおじさんが声を掛けてきた。「河津桜を見に行ったの。どこから来たの。」自分たちは男六人、仕事明けで花見に来て帰るところだという。そして、「おーい、みんなこっちへおいでよ。」と仲間を誘う。一人背の高い、六十過ぎの緑色のマフラーを巻いた人がやってきた。「親子で旅行ですか。お父さんはお仕事?」と聞く。句美子が「はい、そうです。」と答える。話はそれきり。すると向こうへ行って桜まんじゅうを持ってきて食なさいという。いただく。もうひとつ食べなさいという、またいただく。「うちには、息子と娘がいるが、二人ともフリーターでね。職がないんだが、若いものは、一度就職すると、そこをやめないんだって。」「お嬢さんは、学生さん?」「いいえ、社会人です。」「そうか、今度就職するのかね。」「いいえ、四年目です。」「そうか、二年目か。」と少しちぐはぐな話が続く。すると、もう一人やせた人がやって来て、前の座席に座った。「私は、東京出身で、ギタリストになるつもりだったんだが、左人差し指が曲がらなくなってね、有楽町のそごうの店員になったんだよ。でもさ、性に合わなくてやめて、指の治療も兼ねて熱海にやってきて、ホテルマンを昭和四十五年から定年までしたよ。」「じゃ、六十四,五歳ですか。」と私。みんなが笑った。「私は七十二歳ですよ。」と帽子を取って頭を見せてくれた。銀髪がうすく透けている。ホテルマンらしくスマートな身のこなし。「ホテルでは営業のフロントをやらなくては、一人前ではないよ。」「フロントは、本根のところお客の何を見ているんですか。」と私。「それは、お客様が何を要望しておられるかを見ていますよ。」と模範回答。職業が身についておられる。やがて熱川を過ぎる。今度は、入れ替わり、みんなをこっちへ来いと呼んだ人が前の席に来た。来たとたん、手に持っていたビール缶を転がしたので、大変。ティッシュだのを総動員して、床にこぼれたビールを拭いた。私たちが四国から引っ越してきたというと、宇和島と道後温泉に行ったことがあるという。自分は東京出身で家も東京にあるが、女の人ばかりが住む家にして貸すことにしていると言った。そして、自分たちは小田原あたりに皆住んでるんだよ。小田原に家を買いなさいという。もとの席に帰って、リュックから、「うちの母ちゃんは仕事だよ。事務所のおばちゃんより、かわいいよ。」と言いながら、ごそごそとゆで卵を二つ出して、食べなさいという。いただいて食べる。すると、さっきの背の高い男の人からだと「ぽん栗」という焼き栗を二つ言付けて来た。これもいただく。そして、あとからその人が来て、「男は、性格だよ。女好きと、ばくち好きはだめ。家は、普通に働いてりゃ、だれでも持てるよ。」という。「俺たちは退職してから男ばかりで仕事をやってんだよ。」「NPOかなにかですか。それとも、男ばかりで会社を興したとか。」と私。「そんな大したことはやってないよ。料金所で働いてんだ。真鶴のさ。」「料金所には何人くらいいるんですか。」「みんなで四十人くらいかな。」「そんなに。」「そうさ、一日中車は通ってんだよ。四時間仮眠をするがね、寝た気にはならないよ。」初島が見えたとき、皆で「初島だ、初島だ」と窓から島を見ていた。伊豆高原駅に来たとき、「伊豆高原もこのごろはさっぱりさ。すがすがしいところだったが。」こんな話が続いて、終点の熱海が近づいた。誰か、どこかで見たことのあるような人ばかりであった。同じ花見帰りということか、母と娘の旅ということか、鈍行の旅のおかしさであった。海沿いの景色はどうだったのか気になったが、ずっと同じような景色だったよ、と句美子が言う。熱海からは、JRで横浜まで。それから東横線で日吉、日吉本町といつものコースで帰宅。夕食は早速土産を取り出して、鯵のひらきを焼いたり、せんべいやどら焼きや飴やと、あれもこれもと食べた。 梅と桜を見る旅であった。なお深く印象に残るのは、井上靖の「しろばんば」に書かれた湯ヶ島の暮らしの風景、天城の山葵田、今井浜ビーチ、鶺鴒が飛び交う清流である。それに、花見帰りのお土産をいっぱい持った定年後の男たち。

怒涛とは椿桜に飛沫くとき
海に向き伊豆の椿の紅きなり
夜桜は紅かんざしのごと灯る   
夜桜にオリオン星雲浮いてあり
重なりて透けることあり朝桜
菜の花に蛇行の川の青かりし
春浅き湯に聞くばかり波の音
春朝日海にのぼりて海くらし
春砂をゆきし足跡は浅し
引き潮の色こそ深き春の砂
早春の砂の風紋駈けてあり
鈍行の列車に剥ける春卵

(完)


◇河津桜・鷺・菜の花(伊豆南部河津町)


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2月27日(日)

2011-02-27 11:15:15 | Weblog
★水玉の散らばるごとく猫柳   正子
枝に連なる苞を出たばかりの猫柳は光りを帯び耀いています。「水玉の散らばるごとく」に春の川辺の情景の浮かびます。 (黒谷光子)

○今日の俳句
猫柳水の光りを纏いけり/黒谷光子
川べりの猫柳であろう。川の水のきらめきを受けて、猫柳の銀色の蕾が水の玉と見まがうように輝く。こころの弾む早春の景。(高橋正子)

◇生活する花たち「河津桜」(伊豆南部河津町)
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2月26日(土)

2011-02-26 11:14:23 | Weblog
★梅林の影あわあわと草にあり   正子
桜と違い梅はびっしりと花を埋め尽くすのではない。すっきりと伸びる花の枝と空間とのコンビネーションが美しい。日が差せば、花影は地の草に淡い濃淡を作るのであろうか。梅の季節に、地の草の陰影に目をやる姿に新鮮な驚きを感じます。(小西 宏)

○今日の俳句
淡雪のバス乗り継いで母を訪う/小西 宏
淡雪に象徴される母への思いがさりげなく詠まれている。バスを乗り継ぐことで淡雪の景色が広がっている。(高橋正子)

◇生活する花たち「水仙・三椏の花・竹林と白梅」(伊豆修善寺梅林)
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2月25日(金)

2011-02-25 11:13:35 | Weblog
★春寒の港のすべてすべて白   正子
立春を過ぎたばかりの港でしょうか。大きな客船の船体の白、冷たい風に波立つ波の白、港を取り巻く高層ビルの白を想像しましたが。「すべてすべて」の繰り返しで、彩りのない早春の港の風景を上手く表現されたと思います。(古田敬二)

○今日の俳句
落日の日矢の燦たり海苔粗朶へ/古田敬二
春の入日が海苔粗朶へ届く海の夕景は、写真にもよく撮られているが、それを俳句で表現した形だ。(高橋正子)
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2月24日(木)

2011-02-24 11:12:31 | Weblog
★梅の花遠くに白き昼の月   正子

○今日の俳句
池をめぐる樹々それぞれの木の芽張る/矢野文彦
早春の池の水の色と芽木の枝の張りに早春の淡さ、また、緊張感や芽ぐむものの希望が感じられる。(高橋正子)

○修善寺梅林と河津桜(2月22日~2月23日)

野に飛べる春鶺鴒や修善寺へ
修善寺の街のこぞって雛飾る
蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し
春浅し川に突き出す足湯なり
紅梅がかすみ白梅がかすみ
梅林の丘をのぼりて伊豆連山
鮎を焼く炉火に手を寄せ暖をとり
梢より富士の雪嶺に風光る
わさび田の田毎に春水こぼれ落つ
天城越ゆ春の夕日の杉間より
山々の春は名ばかり天城越ゆ

梅と桜を一度に見る旅に句美子が連れて行くというので、誘いにのる。桜は河津桜。宿は、西伊豆の今井浜東急リゾートという。梅林は、熱海か修善寺かと聞くので、修善寺がよさそうだと二人旅に出かけた。新横浜から新幹線こだまに乗り、三島近くに残雪の富士を大きく見て、三島で下車。三島から伊豆箱根鉄道で修善寺にかう。修善寺までは、先頭車両の最前席で、揺れながらも、まっすぐな線路を見ながらの旅。後ろを振返ると、いつも富士山がある。

修善寺駅に到着してから、修善寺梅林へすぐ向かう。修善寺駅から東海バスの「もみじ林行」に乗る。この終点となっているもみじ林に梅林がある。梅見に行く老婦人たちが乗っているが、途中、梅林ではないところで、なんども降りようとする。運転手は、観光案内も兼ねて、そのたび、ここは違う、終点で降りると案内する。立てば、よろけないように注意する。もみじ林で下車。入り口の蕎麦屋と、四十八ヶ所の札所の小さい菩薩の石碑を一つを過ぎて山道を梅林へ。三ヘクタールあるという梅林。歩くと落葉樹が葉を落として、日がよく降り注いでいる。もみじ林の名の由来がわかる。若楓のころは、美しいことだろうと思いながら歩く。ほどなく、右手に西梅林の入り口がある。数歩入れば、漂う梅の花の香り。ここの梅の木はどれも古木。幹はウメノキゴケが覆っている。百年の古木もある。樹のかたちも写真家が喜びそうな形が多くある。梅林の中の竹林は竹の秋。紅白の梅の花の後ろの竹の秋は色がつやつやとしている。梅林は丘となったりしている。丘に登れば、何か見えそうだ。登って見る。伊豆の高い山々が見える。

丘を降りて谷を下ると東梅林へ。こちらは、修善寺温泉へ通じる道らしい。文人の句碑もある。石の鳥居を潜ってさらに下り、温泉への分かれ道のところから、また登る。すると、戸外に太い薪を組んで、大きな炉をつくり、鮎を串刺しにして焼いている。一匹が六百円。一本ずつ食べる。腸までがおいしく食べれる。寒いので炉のほとりに近寄りたいが、火の粉が散って服に穴が開くのでいけないという。食べ終われば、ポリタンクのお湯で手が洗える。鮎を食べて、また梅林を。今度は、雪どけのあと、ますます葉の色が青くなった水仙の小道がある。ここを辿り、もとの西梅林へ。だれか少し上から不意に現れ驚くが、写真を撮っていたらしい。気づくと富士山の山頂が見えている。ちょうどその人がいた場所が富士見には一番良いところだ。写真はもっぱら句美子が撮っているが、富士を収めて来た道をバス停まで下る。バスが来るまで二十分ほど。山すそにパンジーや菜の花の花壇があって、三椏の花が咲いている。咲いているものは、黄色い花簪のようで、かわいらしi。

来たバスに乗り、修善寺温泉まで。みゆき橋で下車。それから温泉街へ入る。句美子が目当とする蕎麦屋が見つからず、店に寄りながら歩く。修善寺に来たからには、修善寺に参らねば。御手洗は、温泉のお湯。賽銭をあげ、本堂を見る。きれいな本堂で、天井には花の絵がある。消えそうな絵もあって、つつましい。弘法大師の立像が庭にある。ちょうど年に二回のお寺の庭の公開期間中にあたっていた。旅館のおかみが持ち寄った雛人形が飾ってある。吊るし雛も部屋ごとに飾られている。吊るし雛はなにか強すぎる縮緬の色に情念あるようで、敬遠して、廊下から庭を見る。こじんまりとした鶴や亀、龍に見立てたもの石や滝を配している。滝の落ちるあたりに菖蒲らしき芽が見える。花が咲くときれいでしょう、と言うと、「いいえ、この庭は花を咲かせません。さつきでも花芽を摘んでしまいます。庭の形が崩れますから。」ということであった。住職の部屋からが正面となっている。写真で外から見るよりは、よい寺であった。

寺を出て温泉街を歩く。からからと落葉が舞う。源氏にまつわる建物、墓がある。温泉街も終わりかというところに、目当ての屋台の蕎麦屋があった。よしずで囲った蕎麦屋である。二人ほど待って中に入る。寒いので暖かい蕎麦にしたいところだが、生わさびを摺ってくれるので、わさび食べたさにざるを頼む。ちょうど私たちの前で蕎麦が無くなたのでこれから捏ねるという。ずいぶんお腹をすかせてきたのに、捏ねて、切って、ゆでるとは。塗りの捏ね鉢にそば粉を入れて数分押しながら捏ね、それを秤ではかり筒へ入れ、ゆで釜の上の機械に入れた。すると、するすると蕎麦が出てきて、それをすぱっと包丁で切って、釜の湯へ落とす。わさびを客に摺らせたり、店自慢をしている間に出来上がる。地のりをかけてくれて出された。蕎麦つゆに柚子のかけらを入れてくれた。椿山荘の蕎麦と同じくらいおいしいといっておいた。一律500円。

屋台を出て、竹林へ。桂川が流れ、渡月橋がある。京都をまねているようだ。橋を渡り、独鈷(とっこ)の湯へ。弘法大師が独鈷を突き刺してお湯が出たところで、川に突き出していて、今は足湯処。川を眺めながら足湯につかる。四十五度以上はありそうなお湯。長く、ずっと浸かっていた。独鈷の湯を出て、温泉街へ。温泉饅頭は売り切れ。大杉で有名な日枝神社前の店で、「えびぽん」という桜海老のはいったぽんせんべい買う。伊豆には、千年の大木が多いらしい。その土産をもって、修善寺駅へ戻り、河津行きのバスに乗る。天城峠を越えて、1時間半ほどのバスの旅である。

バスは、若い句友の智久さんの住む湯ヶ島を通り、浄蓮の滝などを通り天城峠を越えて行く。天城峠近くに山葵田を見た。あまりに急峻なところにある小さな田に驚く。沢に作られたようで、水が零れ落ちている。天城峠を越えるころは、私たち二人以外に一人お客がいるだけになった。ループ橋という、奈落に底に落ちそうな橋をぐるぐると下っていって、河津七滝(かわづななだる)などを通り、川沿いに続く河津桜を見ながら河津駅に到着。四時半ごろだったろう。それから、海はどちらか方向を確かめ、少々街中を歩き、海沿いの遊歩道を伝って、今井浜のホテルへ。風が荒く、どおっと寄せて、白い飛沫散らす波が恐ろしい。山側は、河津桜がよく咲いて、椿も咲いている。これだけの風があっても暖かいのだろう。二十分ほど歩いてホテルに着く。送迎バスでなく、遊歩道を歩いたのは正しかった。
(続く)

◇生活する花たち「伊豆修善寺梅林」



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2月23日(水)

2011-02-23 11:11:31 | Weblog
★はつらつとまたかがやかにヒアシンス   正子
緑の長い葉に取り囲まれ、上へ上へとたくさんの花が咲き誇っています。白や赤、青など固まって咲いているヒアシンスの姿は、はつらつとして、かがやかしく、とても生き生きとしています。(藤田裕子)

○今日の俳句
にぎわいを芽木に残して目白飛ぶ/藤田裕子
目白の季語は、その繁殖期である夏とする歳時記、また秋とする歳時記がある。実際に人里でよく見られるようになるのは秋の終わりごろから。椿のころはよく庭に来る。芽木のころも丁度このころ。チリチリという小さな声ににぎわう芽木は、早春のあかるさに満ちている。(高橋正子)
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2月22日(火)

2011-02-22 11:10:33 | Weblog
★賽銭を放りて拝む梅の寺   正子
早春の境内に、静かに彩りと香りを放つ梅の花。古くから梅の寺として人々に親しまれているのでしょう。あたたかな気分に、お賽銭もぽんと放り投げてみたくなります。手を合わせ、明るい暮らしを祈念します。(川名ますみ)

○今日の俳句
梅ひとつ咲いて朝餉の一時間/川名ますみ
ゆっくりと進む朝餉の間、ほのかに香る一輪の梅の花。一輪の梅が咲いたよろこび、心が洗われる気持ち、それが意外にも大きい。(高橋正子)

○東海道五十三次俳句

 日本橋三句
春浅き日本橋を渡りけり/高橋信之
旅立ちに二月の高き空仰ぐ 〃
春浅しここに魚河岸がありき 〃

 品川宿二句
春旅の気ままさに煎餅を買う/高橋信之
木の家の下駄売る店の春曇り 〃

 川崎宿五句
春浅し六郷川に常夜灯/高橋正子
下萌えの六郷川の水青し 〃
六郷川流れて青し春の雲 〃
川向うは宿場よ春の雲浮かせ/高橋信之
川渡り西へ西への春の旅 〃

 神奈川宿五句
 神奈川通東公園(オランダ領事館跡・神奈川宿の江戸側入口)
銀杏芽木欅芽木立ち吾もここに/高橋信之
梅の香を息に吸い込みあるきけり/高橋正子
神奈川宿紅梅白梅匂いけり 〃
 宗興寺
牡丹の芽ヘボン博士のレリーフに 〃
 神奈川公園
下萌えは大樹の太る根もとより 〃

○東海道五十三次宿場解説(NHKプロモーション発行「広重二大街道浮世絵展」参考)
 
①日本橋(東京都中央区日本橋1丁目)
東海道を歩く(東海道五十三次)
http://www.sloway.net/diary/index.html
※2月14日(月)、信之先生俳句散策。

②品川宿
東海道品川宿:
http://japan-city.com/sina/
※2月14日(月)、信之先生俳句散策。

③川崎宿
川崎市川崎区のサイト
http://www.city.kawasaki.jp/61/61kusei/kawasakijuku/
※2月17日(木)、信之先生と歩く。

④神奈川宿
神奈川宿歴史の道
http://www.natsuzora.com/may/town/kanagawa-kanagawa.html
※2月12日(土)、信之先生と歩く。

○歌川広重/東海道五拾三次之内 ①日本橋 朝之景 ②品川 日之出 ③川崎 六郷渡舟 ④神奈川 台之景


○広重の東海道五十三次全図一覧:
http://www.e-subaru.jp/kinue.html


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2月21日(月)

2011-02-21 08:40:50 | Weblog
★蕗の花まつげあるごとひらきけり   正子
蕗のとうを見つけるとああ春が来たと嬉しいものです。気がつけばあっという間に花が咲いていて驚きます。「まつげあるごと」と花を詠まれ、優しく、かつ鋭い写生の素晴らしさを感じました。(後藤あゆみ)

○今日の俳句①
蕗のとう地を出たばかり摘まず置く/後藤あゆみ
ようやく地を出た蕗のとうへのいとおしみ。さみどりの蕗のとうの美し色とともに、ころんとした幼い形に「摘まず置く」の気持ちが働いた。それがよい。(高橋正子)

○今日の俳句②
春浅し六郷川に常夜灯/高橋正子
下萌えの六郷川の水青し/ 〃
六郷川流れて青し春の雲/ 〃

○2月17日、信之先生のお供で、川崎宿に出かける。信之先生は先日すでに川崎宿に出かけて、川崎駅バスターミナルから、旧東海道を六郷の渡しまで歩いている。遺跡と言われるものはないが、本陣跡、中本陣跡、などという跡だけがわかって、標が立っている。道中に砂子(いさご)の里資料館があって、広重の東海道53次の浮世絵や葉書などを学芸員が作って売っている。そこで売っている、一冊千円の「広重二大街道浮世絵展」を手に入れるためと、私を案内するために出かけたわけだ。本の発行はNHKプロモーションとなって、240ページある。それと、絵葉書を2枚買った。

川崎宿の行き当たりは、六郷川(多摩川)で、たもとに川崎大師から寄付された常夜灯と、明治天皇が東京遷都で、この川を渡られた記念碑がある。舟を川幅に23艘並べ、その上に板を渡して、渡られたということだ。そのときの絵がレリーフとしてあるが、川の蛇行の具合は、今とちっとも変わっていない。広重の浮世絵の六郷の渡しの川の曲がり方も同じである。絵から見る地形は、変わっていないのも面白いことだ。六郷川のたもとに立って見ると、羽田があるあたりは、六郷川の蛇行する水が青く見えて、のどかな雲が浮かんでいる。ここから渡しに乗れば、向こうは江戸。大田区となる。

六郷橋を渡って、東京都側へ。結構長い。670mくらいか。河川敷には、野球のグランドが4面、テニスコートが5面ある。橋を下ってすぐに、小さな公園あるので、立ち寄る。小便小僧の噴水がある。長くも居れないので、帰りの駅を探す。街を少し歩いて聞けば、京急線の「六郷川土手駅」がすぐそこにあるという。ガード下の切符を売るだけの駅で、向かいに、これもガード下だが、コーヒーが飲める店がある。清潔そうなので入ってみる。コーヒー一杯210円、ドーナツ130円。あんぱん110円。こういったものを注文。主婦やちょっとした旅行者、サラリーマン風の人がいて、電気スタンドも用意されている。小休憩のあと、この駅から川崎まで乗った。バスは駅西口からだが、すぐ傍にミューザ川崎という立派な音楽ホールがある。

帰宅してから、浮世絵の本を冒頭から読む。「江戸庶民の臥遊の山水ーー街道浮世絵の楽しみ」(小林忠 文)には、面白かった。臥遊とは、絵を見てそこに遊んだ気持ちになることであるらしいが、旅にあこがれた庶民に広重の絵が受けたようだ。広重の先に英泉という浮世絵画家の絵があったが、この人の絵は人物中心の風俗を描いていたので、広重の風景中心のほうに人気が移ったらしい。広重の絵のシンプルさと哀愁を帯びたところが人気を得たようだ。
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2月20日(日)

2011-02-20 08:23:04 | Weblog
★二月はや雛の鼓笛を持たさるる   正子
実にうまいと思います。技巧のすぐれた句は、余韻の無いさ末主義におちいりやすく、ただ興がっただけの、空疎な嫌味の句になりかねないものですが、この句は、そうならない前、ぎりぎりの句のように思えます。(川本臥風)

○今日の俳句
街筋の昼月ほっと梅開く/藤田洋子
街筋の空を見上げれば、白く透明感のある昼の月が浮かんでいる。昼月を遠く梅が開いて、昼月と梅との美しい出会いがある。(高橋正子)
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2月19日(土)

2011-02-19 08:21:13 | Weblog
★銀色の椿の蕾みな固し   正子
先日も、山裾にある「花の寺」に椿の開花を調べに訪れました。急坂の参道に高い椿の木があり、椿の時季には側溝に椿の落花が積重なり、それは見事な光景なのです。しかし、早春の為か固くて真っ白な蕾ばかりで「春浅し」そのものでした。「みな固し」との措辞に、早春の景が良くくみ取れ素敵です。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
海苔掻や潮目沖へと流れおり/桑本栄太郎
沖へと流れる潮目を見ながらの海苔掻きに、春の磯の伸びやかな風景が見えて、素晴らしい。(高橋正子)
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2月18日(金)

2011-02-18 08:19:31 | Weblog
 横浜港
★港湾の動きに満ちて春浅し   正子
大型船のゆっくりした動き、ちいさな船舶の活発な動き、岸壁でのガントリークレーンのゆっくりした動き船の上で動く人影などいろいろな動きが見える早春の港。その向こうにはキラキラ光る波。吹く風はまだ冷たいが確かな春の気配。本格的な春の到来を予感させる句である。(古田敬二)

○今日の俳句
耕しに土の中なる根のさみどり/古田敬二
「耕し」は、春の季語。春になると、種まきの準備など、田畑を耕す。耕していると、土の中に白い根ではなく、さみどりの根があることに驚く。土の中にもすでに春の息吹がある。(高橋正子)
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2月17日(木)

2011-02-17 08:18:27 | Weblog
★青空の果てしなきこと二月なる   正子
立春をすぎた頃の晴れた空は、うすみずいろに、春浅い二月ならではの軽やかさに充ちています。二月のひかりを伴い、果てしなく春へと向かう青空です。(小川和子)

○今日の俳句
二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)
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2月16日(水)

2011-02-16 08:17:19 | Weblog
 慶大日吉キャンパス
★煙る銀杏芽吹く気配を一心に   正子
春になり芽吹きが新鮮に感じる時期となりました。 煙る銀杏が春の兆しが一気に訪れを感じさせてくれます。(高橋秀之)

○今日の俳句
食卓を彩る一輪挿しの梅/高橋秀之
毎日の食事が並び、家族の団欒がある食卓。食卓の一輪挿しの一枝の梅が今日という日を清々しく、ことに季節の新しさを知らせてくれる。さりげなく梅の花がある生活がそのまま句となった。(高橋正子)
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2月15日(火)

2011-02-15 11:40:59 | Weblog
★菜の花へ風の切先鋭かり   正子
菜の花が咲き始めたころでしょうか。まだ春は浅く、ときに冷たい風が野を吹き抜けます。風に大きく揺れ動く菜花にはらはらさせられている作者の気持が端的に詠まれていると思います。(河野啓一)

○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)
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2月14日(月)

2011-02-14 11:39:49 | Weblog
★歩けばある梅咲くところが登り口   正子
お住まいの近くの歩いて行ける所の坂を登った場所に、神社か或いはお寺があるようですね!。その登り口にある梅も、もうそろそろ開花なのでは・・?と、春めいた陽気に心が逸っている作者です。心が弾む心情が想われ、素敵な一句です。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
★自転車の籠に紅梅つぼみもち/桑本栄太郎
停めてある自転車の籠につぼみをもっている紅梅を見た。どこかでもらった紅梅か、ここにもつぼみがついた花がある驚きと喜びがあって、句が生きいきしている。(高橋正子)
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