俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

ブログ句集コメント3編/11月30日(日)

2008-11-30 13:05:39 | 俳句コメント
俳句

○晴れ


★志賀泰次ブログ句集のへのコメント★
泰次さんが俳句添削教室に投句された句の一つに
孫と吹く夢膨らんでシャボン玉
があって、入会された当時を思い出します。
それから俳句に精進されて瞬く間に5年の歳月が過ぎましたが、その間の句が句集となりまして、おめでとうございます。読ませていただき、3年目からの句は俳句は特に粒ぞろいの力作となっておられると思います。北海道の大地の、厳しいながらも、ロマンティックな風景は、つとに皆に知られていることではありますが、実生活者の俳句として、よりリアルに、お仲間の句として身近く受け入れられることは、大変幸せです。アスパラガスが育ち、山羊の仔の座る青草の季節には、喜びがあって、読めば幸せを感じます。2005年から2007年ごろの句は、内容が深くなって、「考える俳句」という印象を強くもちました。またその後の2008年ころからは、その俳句に自在さ、軽さ、透明感が加わっておられることを知りました。泰次さんの俳句には、骨格の太さ、深い思いがあって、通底には、誠実な人の苦労を思います。その誠実さに、網走にある亜浪先生の句碑を訪ねて、ご紹介くださったことも記憶に残っています。その時の句
亜浪碑にきょうの深雪の落日かな
を読み、私も一度亜浪先生のように網走を訪ねてみたいと思ったものでした。跋と重複する句もありますが、私が好きな句、特に明るく広がりのある句を以下にあげさせていただきます。人生の先輩の歩まれた道に多くを教えられ、励ましをいただいております。くれぐれも、お大事にお過ごしください。

山羊の仔の膝折りすわる草の青
アスパラの尖りの満ちて土かおる
一湾を流氷埋めて春浅し
雪降って降っては山が遠ざかる
流氷へ窓の曇りをひろく拭く
星の夜は星のいろして雪明かり
水音をはなして澄めり岩清水
冬ざれや棒なる案山子燃やさるる
一灯を過ぎれば行方雪明り
切花の桶せりせりと薄氷
初雪はひんやり水の匂いして
この先の牛舎に用ありえのこ草


★川名ますみのブログ句集へのコメント★
ブログ句集の出版、おめでとうございます。
ますみさんの俳句は、長く病気と闘っておられ、時にその辛さが垣間見れる句もありますが、表された句の多くは、それを感じさせない、若い人の、明るく西洋的な上品さがあります。また、繊細な感覚が、本質を突いていて内面性があり、話ことばの俳句も、アンデルセンの童話のような世界を広げています。旧来の俳句に囚われず、いいチャレンジをされていて、音楽で培った多くのことが、俳句にも表現されつつあることは、私たちにとって、いい刺激になっています。以下に好きな句をあげます。お大事にお過ごしください。

プールから花のタオルの中に入る
秋燈下マスカラの影ほほに揺る
中庭を来て髪梳けば草芳し
ラムネ飲むきれいに響くところまで
空見よと扉を叩く母秋立つ日
はつ雪よ真下の屋根を見てごらん
もう風は爽やかだから出ておいで
すらすらと風入る麻のワンピース
歯ブラシを朝涼の明るきへ立て
雪礫空に返したくて放る
脱稿をこの日と決めし一葉忌
水のいろ火のいろ街に秋燈
道ひろく春山絶えず正面に
小鳥来てわが目の高さそこに置く
雲の峯追うて何かを見逃せり
えのころの芯にぎっしり実の青き
ものすべて光らせ来たる木の芽風


★吉川豊子ブログ句集のへのコメント★
ブログ句集出版、おめでとうございます。
吉川豊子さんは、中途失明されたと聞いています。私も一時盲学校で教えたこともありますので、そのご不自由はいかばかりかと想像していました。ところが、パソコンを使って、また字を書く喜び、読む喜びを得られたようで、その積極的な生き方には驚かされました。それが俳句にもあらわれています。俳句に前向きな姿勢があります。初期の句は、いろいろと思い出す風景の句も多かったと感じましたが、最近の句は、実体験の句、つまり感覚を働かせた句が増えてきて、豊子さんの姿がよく見えるようになりました。私の一番好きな句は、

しいのみを掌に公園の風の中

です。しいのみのなつかしさ、過ぎる風の感触。それをじみじみと共有できます。また、次の句を詠まれたときは、私に、伊良子岬の菜の花を見せてあげたいと言ってくださったことなども思い出しました。大変うれしいことでした。

菜の花に街道染まる伊良子岬

こういった句も印象に残ります。そのほか好きなを挙げますが、いい抒情があります。末永く俳句を続けられることを願います。

進学に夢ふくらみて雛飾る
一握のげんげ机上に光満つ
つくし摘む子の歓声や日の溢れ
お水送る若狭の寺に春の雪
鶯や日のうらうらと遊歩道
子の忌日蕾ふくらむ無垢の百合
水田を渡る風あり梅雨近し
秋の宵遠くに聞こゆ祭り笛
海にそい雪に埋もるる千枚田
菜を洗う新涼の水やわらかき
比良の風吹きぬく水郷秋が行く
持ちかえる五分咲き竜胆みずみずし
コメント
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