曜日のない暮らし

日々の暮らしにあるささやかで素晴らしい瞬間
暮らしと心を癒してくれる生き物たち
山本弘三の写真を中心にした日記帳

8月の 蝶と虫 (後篇)

2013年09月01日 | 日記

 毎日生き物の世話をしているとその生き物の健康状態がとても気になります。飼い犬のビーグルはもう10歳以上でおばあちゃんです。7月の梅雨明けのむし暑い時に患いました。いつものかかりつけの動物病院でも原因はよくわかりませんでしたが前足が痛いらしく歩けない状態になりました。その時頂いた薬を1週間与えた所何とか元気を取り戻し今は何事もなかったかのよう元気になっています。猫どもは暑くなると確かに食が落ちて餌をよく残すようになります。そして痩せます。飼育している蝶の幼虫も行方不明になったりもう一歩で蛹になれるところで力尽きたりいつも全員が元気であるとは限りません。今朝飼育室に蝶の様子を見に行ったらピンクの蛹(カバマダラ)が真っ黒になっていました。死んだかと心配しましたが明るいところへ持ってゆくと全体的には黒いけど羽の色が健全なので生きているなと安心しました。その蛹は1時間後に無事雌のカバマダラになりました。私の仕事は普段みかんの樹のお世話をすることですがこうして一か月を振り返ってみると毎日いろんな生き物と接する生活をしているのがよくわかります。町の中で人間や機械とだけ接する生活をしている多くの人からはこんな生き物係の生活は考えられないかもしれませんね。まあそんなことはどちらでもよいことなので8月の後半にまいります。

 

説明書きを付けました。記憶があいまいで間違っているところがあるかもしれません。ご容赦を



8月18日

カバマダラの幼虫 (飼育) 自宅

鉢植えのトウワタは小さいので時々他の株に移してやることがあります。そんな時面倒だから手でつまんで移すこともあります。毛虫や青虫など見ただけで嫌がる人もいますが危険な虫と安全なむしの区別がつかないから虫はみんなダメということになるのでしょうね。

幼虫時代から成虫になるための間の期間蛹になります。餌も食べないでひたすら体の組み替えをする期間が蛹でしょうが昆虫の変態って面白いですね。

 

8月19日

カバマダラ蛹になる

脱皮して蛹になって間もなくは幼虫の時の名残を残しています。それでも蛹になった瞬間には成虫になった時の羽の姿が見えています。幼虫の時の姿とこの蛹の姿の不連続は理解しにくいところがあります。

すぐ上の蛹の約3時間後の状態です。蛹としては形が出来上がっていますが幼虫時代の黄色の模様がまだ見えています。

タテハチョウの仲間はこのようにお尻の先にフックがあってその付け根に張った網のような糸にひっかけて固定してあります。蛹になる時の脱皮を見ていて初めは不思議に思うことがありました。脱皮の時皮を脱ぐのはまず背中の所から割れて頭の皮を脱ぎ全体をお尻の方へ向かって降ろして行きます。もちろんこの写真では上に向かって脱いでゆくことになりますが、問題はスカートやズボンを脱いだ時いったん足を床から上げないと脱いだ衣類を取り除くことができません。この幼虫は1本のフックで糸で作った網に引っかけているのにどうやって脱いだ殻を体から外すのかわからなかったのです。見ていると蛹になる時には体をしきりによじって脱いだ殻を上手にはずしてしまうのです。前蛹の時から1本のフックでぶら下がっているのですからそのフックを外して皮の外側に掛け変えることは考えられません。何度も何度も蛹になるところを撮影してみてようやく分かったのです。蛹は皮を脱ぎ終わる寸前に外側に体を支える新しいフックを出して糸の網に掛け変えるのです。そして前蛹の時支えていたフックは捨てることが分かりました。どんな場面でも安全のための巧妙な仕組みがあって虫の世界にも驚かされることが沢山あります。

 

8月20日

カバマダラの蛹

蛹になる時に脱いだ前蛹の殻が傍の葉の上に残っていました。

ほとんど同時に五つの蛹ができました。

ヤマトシジミ

ヤマトシジミはどこにでもいてごく普通にみられる蝶ですがこの交尾している雄と雌は私の目の前で交尾を始めました。普通には雄が雌を探していて雄の方から挑むことが多いようです。時には雌が拒んで逃げることもよくありますがこの時は雄が飛んできて雌の所に行くといきなりはじまりました。交尾している蝶のカップルはよく見かけますが始まるところは初めて見ました。

 

8月21日

生まれたばかりのカバマダラ

カバマダラは生まれた直後自分の卵の殻をほとんどきれいに食べます。初乳のように何か大事な成分が含まれているのかもしれません。カバマダラの幼虫はトウワタの葉を最初から食べますがトウワタには毒になる成分が含まれているので毒消しにでもなるのかもしれません。最初は植物の血管にあたる葉脈を裂けて食べているようです。少し幼虫が大きくなると葉の葉脈をかみ切ってから食べます。終齢間近になると葉の付け根の葉柄を噛んで樹液が流れないようにして食べます。毒草を食草にしていますがそれなりに工夫しているようです。

 

8月22日

キアゲハが羽化しました

このキアゲハが蝶になったのは蛹になって11日目でした。この時期の温度でしたらまあ普通でしょうか。同じアゲハの仲間のギフチョウなんかは6月に蛹になって蝶になるのは翌年の4月の初めです。およそ10か月もの間蛹で過ごすのですがどこが違うのでしょうね。

手に止まるのを少し嫌がりましたが我が家で飼育されたものは一度は手に乗ってもらわねばなりません。

野菜のパセリにこんな虫が乗っていたらほとんどの人はつまんで捨てるかもっと徹底的に足で踏みつぶすかするでしょう。多くの場合人間も天敵の一つです。

まったく偶然です。わざわざ並べたわけではありません。終齢の幼虫と前蛹と蛹が一枚の写真に納まりました。

 

8月23日

庭のトウワタにこんな小さな幼虫がいました。もう蛹になっている幼虫が多い中でこの幼虫はお盆過ぎてから産み付けられたものと思われます。発生にばらつきができてきた証拠でしょう。 

これらの大きい幼虫は第二グループです。奥の方に第一グループの蛹になったものが見えます。

 

8月24日

第二グループが前蛹になる場所を探し始めました。

飼育ボックスの天井に着いて前蛹になったキアゲハです。なかなか場所が決まらず何日か飼育ボックスの中を歩き回りました。

 

8月25日

いよいよ初めての羽化が始まろうとしています。ここまで中の様子がよく見えるようになると羽化が始まるのはもうすぐですね。私が撮影の準備をする余裕くらいはあるでしょう。

この蛹が割り箸についているのは不思議ではありませんか。鉢の周りに割り箸を立てておけばこのようになることもあるのですがこれは違うのです。上の方の写真を見たらわかると思いますが少し過密に飼育しているので、先に蛹になった所へまだ食欲旺盛な幼虫がやって来て蛹が付いている葉をきれいに食べてしまうことがあります。この蛹はそのようなしてついていた所を全部食べられて下に落ちてしまったのです。仕方がないので私がそれを拾って瞬間接着剤で割り箸にくっつけて鉢の中に立てておいたのです。割り箸は蛹から出てきた蝶が最初に掴むのに適しています。

上の写真と同じところから撮ったものですが後ろにある二つの蛹を見せたかったので少し絞りをきつめにしてみました。マクロレンズですので前後をみんなはっきり撮るのはきついのですが、かろうじて見えるくらいには映っていると思います。絞りを16まで絞るとシャッター速度が1/8秒にまで落ちます。

説明はこちらの写真で行う方が良いかと思います。

おもしろいのは緑の蛹とピンクの蛹が同じところについていることです。これはあり得ないことでおかしいと思った方もいらっしゃると思います。種明かしをすると先ほど書いたように、緑の蛹はもともとトウワタの葉についていたのですが他の幼虫に回りから食べられて下に落ちてしまったものなのです。それで私が割り箸に接着したのですが、そこへやって来た別の幼虫がここなら良いかと思い緑の蛹の隣で蛹化したのです。ところが接着している場所が緑ではないので色を合わせて蛹はピンクになりました。ピンクの方はこの日に蛹になったばかりで幼虫の時の体に付いた色がそのまま残っています。カバマダラの蛹にはこのように緑の蛹とピンクの蛹がいて私は最初雄と雌の違いかと思っていたら色に関係なく雄雌が生まれてくるので驚きました。色の違いは蛹になった場所の色に合わせた保護色だったのです。それが分かれば割り箸に緑の蛹が付いているのはおかしいことなのです。

このグループはメスが少なかったので心配でしたが数が多くなればオスメスとも同じほど生まれるはずですね。先月と言っても7月のことですがオオムラサキを追っていました。クヌギ林へ行っても山頂で待っていてもやって来るのは雄ばかりです。メスを見つけるのは容易ではありません。また、秋になってアサギマダラがフジバカマの花にたくさん集まってきますがこれも雄ばかりです。「メスはどこにいるんだ」と言いたくなります。元来同数いるはずの雄と雌ですがなかなかそうもいかないこともあるようです。

清浄無垢 きれいな雌です。

こういう色を「カバ色」というのでしょうか。最近の若い人に「カバ色ってわかる?」って聞いてもカバ色という言葉すら知らない人が多いように思います。私もカバマダラの名前を知った時に樺色という言葉は知っていましたがそれが厳密にどんな色をさすのかは知りませんでした。それまでは知る必要もなかったのでしょうね。日本語の中にはアサギ色とか茜色とかカキツバタ色とか潤朱色などめったに使わないいろのなまえがあります。昔の人は自然をよく観察していたんですね。

 

8月26日

次々と羽化するカバマダラ

この蛹はうまく落ちずに済みましたが葉の茎だけ残してすべて他の幼虫に食べられています。。

みんな明るい窓側に集まります。

この雄は野外で見つけた自然に育ったものですが、きっと飼育のグループと同じ時期に生まれたものと思われます。非常に天敵の多い時期に無事に育ったとはラッキーな雄です。

 

8月27日

今日は天気も良いので6頭すべて外に放つ予定です。飼育ボックスの中での交尾はついに見ることができませんでした。4年前の飼育の時も室内では交尾はしませんでした。その時にはハンドペアリングも試みたのですが上手くゆかず得られた卵はみんな無精卵でした。

 

 

8月28日

手に乗せてお別れの儀式です。我が家の飼育蝶は外に放つときいつも手に乗ってもらうようにしています。 

室内で交尾しないことと他にもう一つよくわからないことがあります。飼育ボックスの中にトウワタの花を入れてあるのですが吸蜜している姿を見たことがないのです。なのにこうして外に放つとすぐに花の所へ飛んで行って吸蜜を始めるのはなぜでしょう。

 

8月29日

外に出して一日が立ちました。自然にあるごとく雄が雌にちょっかいをかけています。メスはこの度は雄を無視しています。

この雌はもう卵を産み始めました。いつの間に交尾がすんだのでしょう。

これからは私の仕事はこの卵の観察です。どの埴いつ産み付けられたのか印をつけておかねばなりません。この卵のように目の前で産み付けられたものは産んだ日時がはっきりしているので後の管理が楽です。

卵探しをしているとヤクシマルリシジミが飛んできました。山口県ではここ大島で初めて発見されその後定着していますが数はさほど多くありません。

そろそろ秋です。クズの花が出てきました。よく見るとウラギンシジミの卵が産み付けられています。

 

8月30日

キアゲハとカバマダラの飼育が一段落したので何かほかのものをと考えていたらクロコノマチョウの初齢幼虫が見つかりました。

少し前にゴマダラチョウがエノキの木に産卵しているのを見つけましたが、その樹を探してみると幼虫がいました。

 

8月31日

今日もカバマダラの卵を探してマーキングをしました。一昨日印を付けた卵がもうなくなっているところもありました。

 

 

 


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