i saw a film today, oh boy

心の1本を探す~私的・映画鑑賞記録

ラスト・デイズ (Last Days)

2006年04月07日 | 2006年の映画鑑賞
★★★☆☆(B゜)

生きているから、死ぬために歌った。

カート・コバーンの最期にインスパイアされた架空の物語。
でも、カートの最期として見るのが相当だろう。

なぜ彷徨うのか。なぜ苦痛で泣き叫んでくれないのか。
主人公ブレイクは、メッセージを発してくれない。
だからこそ、何の理由も脈絡もない彼の行動のひとつひとつが際立ち、
生と死の間で揺れる姿を浮かび上がらせる。

たとえば、生きていると腹が減る。
だから食う。シリアルやマカロニを。
ただ彼の場合、生き延びるために食うのではない。
生存本能の営みの環が途切れている。

歌うことはどうなのかと考える。
生きていると、苦しくなるから歌う。
歌は生きている証であり、
同時に自ら死に向かうための道筋でもある。

主演のマイケル・ピットが自ら書き下ろしたという
重々しい苦悩を、そして開放を叫ぶ歌。
それは極端に台詞の少ない作中で、
ブレイクがただ一度発する「理性の声」だ。
生きているから歌った。死ぬために。自由になるために。

彼が自分で命を絶つに至るまでを描いた説得力はすごい。
この作品を観る限り、やはりカートは死ぬしかなかったのかと、
絶望と安堵がない交ぜに去来する。

こうして、彼の歌だけが私たちの許に残された。
これで良かったのか。
これで良かったのだ。
これで良かったのか。

                  (シネマライズ渋谷)