山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

世界ジュニアと審判ランキング

2009-11-04 16:27:24 | Weblog
 先日行われた世界ジュニア選手権では日本選手の活躍が目立った。男女ともに4個の金メダルを獲得した。女子に関してはある程度予測可能なものであったが、男子はここのところ金メダルがとれなかっただけに大健闘と言えるだろう。8月の世界選手権で男子が金メダルゼロという結果に終わり、柔道界も意気消沈気味であったが若い選手達の活躍は将来に希望の光が見えた。

 この大会はいくつか新しいルールが試験的に適用された。ひとつは、帯から下に手で技に入ることを規制したものである。一度目は「指導」、2度目は「反則負け」という非常に厳しいルールとなった。肩車や双手刈、朽木倒などを得意とする選手達には大きなハンディーとなったに違いない。このルールが日本選手に追い風になったかどうかはこの大会だけでは判断できない。このルールは試験的に行われたもので、この後、理事会で議論されたあとに最終的な判断がくだされる。聞いたところによると、11月には決定を下すという予定であったが、2月まで決定が持ち越される見通しだという。日本が突然過半数のメダルを獲ったことが、ヨーロッパの理事たちには脅威にうつった可能性もある。

 ヨーロッパの選手達はルールへの適応が非常に早い。今回は適応しきれずに力を発揮できなかった選手も次回は調整してくるに違いない。こういったことを考えると日本選手はこの勝利に慢心することなくさらに上を目指してもらいたい。

 柔道がレスリングスタイルに近づくのを懸念した今回のルールだが、以前にも触れたが「講道館柔道」にある技が反則技、それも危険という理由以外でなるというのは方向性としては危険である。こうやって技を短絡的に規制していくことは嘉納治五郎師範が長い時間を費やして研究された技の体系自体を揺るがすことにもなりかねない。そういった意味で結論が先送りされたこの間に、講道館を中心に活発な議論を展開し、講道館としての声明を発表してもらいたい。

 もう一つの大きな試みは1人制の審判であった。聞いたところによると、思ったほどの大きな混乱はなかったという。しかしながら、センターテーブルのジュリーからの指示におどおどしている審判も見受けられたという。また、ジュリーの目が行き届かずに誤審とまではいい難いが、副審がいればおそらく訂正されたであろうというケースも少なくなかったという。世界ジュニアだから良かったとはいわないが、世界選手権やオリンピックとなると審判にかかるプレッシャーも計り知れない。この案が採用されるかどうかにも注目したい。

 IJFのホームページに選手のランキングと同様に審判のランキングが発表されている。これは今年の世界選手権に参加した審判員のランキングである。32名中、1~15位がAランク、16~26位がBランク、27~32位がCランクとなっていた。説明がなされていないのでよくわからないが、ナンバーが振ってあるということはAランクの中でも順位があるという解釈で良いのだろう。日本から参加した天野氏は3位にランクイン。日本人審判のレベルの高さを顕示した。2位にもフランス代表の女性審判がランクインしている。天野氏は今回はピンチヒッターでの参加であったが、これだけ評価が高ければ日本で最も権威のある全日本選手権大会でも近い将来審判をする日が来るやも知れない。

 よくわからないのは、このランキングは誰がどのように作成したものなのかということである。それぞれ世界ジュニア選手権などハードルを越えてきた一流の審判という自負がある人が多いと思うが、その人たちが評価基準も明らかにされないでホームページに載せられるというのはいかがなものだろう。また、このランキングはいったいどういった目的で作られたものなのかも不明である。選手であれば大会後との成績で入れ替わるが、審判はどうなるのか?どの大会が対象になるのかなどもわからない。

 IJFの最近のやり方はこういったものが多い。「なんとなくあったらいいかも?」と思えるようなことを議論を煮詰めることなくやってしまう。もちろん、議論ばかりで実行を伴わないのもいかがなものかと思うが、やってみたものの穴だらけですぐに訂正が必要になったり、廃止になったりでは組織としての信頼を欠く。いまのIJFは理事会がおよそ全てを決定できる権限を持つので余計に決定する際には注意が必要だともいえる。多くの人の目で見ないと大きな穴に気がつかないことも多い。知らないうちに柔道自体が大きな穴に落ちてしまわないように願うばかりだ。

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4 コメント

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審判員の公正とルール (初段)
2009-11-06 00:43:19
競技団体内の力関係による運営はどこの団体でもある事。ある程度致し方ないとは思います。
それにしても欧州の影響は少なくないようです。少し日本も東アジアと連携し組織として発言してもらいたいものです。以前に書きましたが減少する審判員の配置での誤審の危険。ルール改正という名の競技の制限は日本の為にならないし武道としての柔道の幅と弱体に繋がります。しいては人気低下地盤低下に繋がりかねないと思います。
禁止技 (山嵐)
2009-11-06 04:28:32
投げの形肩車を禁止するということは柔道そのものを否定することだと思います
judouは柔道から離れ独り歩きして行っていると思います
これを止める術はないのでしょうか
Unknown (Unknown)
2009-11-06 13:12:23
当て身がなくなり→日本拳法
寝技が制限され→BJJ,
Unknown (Unknown)
2009-11-06 13:17:39
当て身がなくなり→日本拳法
寝技が制限され→高専柔道、BJJ
格闘技として分割されてしまいますね。
こうなったら柔道フリースタイルつくって柔術家もオリンピックに出れる様にすれば盛り上がりますね!