山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

五輪の階級

2011-01-06 12:16:35 | Weblog
明けましておめでとうございます
今年も皆様にとって、柔道界にとって素晴らしい年でありますように

今年はいよいよオリンピック前年ということでランキング争いも厳しくなっていくことが予想される。以前にも書いたが、選手達の過密なスケジュールを考えると五輪で勝つことが目的なのだが、辿り着くまでのサバイバルレースを勝ち抜くことに多大な精力をつかってしまい、五輪直前に息切れするなどといったことがないように願うばかりだまた、この時期にきて万が一にも大怪我に見舞われれば、まずチャンスはなくなるのでこの点も十二分に注意が必要だろう。

今のシステムを考えれば五輪に連続して出場することは以前に比べて難しくなるだろう。そうなれば選手にとって五輪出場のチャンスは一回だけとなる可能性が高い。生涯に一度のチャンスをかけての闘いなのだから、今年そして来年にかけては、選手には多少我がままに見えようとも自分の納得のいく、悔いのない闘いをしてもらいたい。全日本の立場では強化選手の誰が出場しても(金メダルが狙える選手なら)構わない訳であり、個々の選手を思っていてもらっていると考えたら大間違いである。

オリンピックといえば、IJFのビゼール会長は2016年のリオ五輪から柔道競技に団体種目を入れたいと強く考えているようだ。そのために実績作りとしてヨーロッパ選手権に団体戦を導入したり(個人戦の日程の後に行う同時開催方式)、今年のパリの世界選手権でも行う。

ビゼール会長の強力なリーダーシップを考えれば、彼が「強く望む」ものであれば実現する可能性が高いだろう。しかし、問題はIOC(国際オリンピック委員会)である。オリンピックという船はすでに満員でこれ以上乗船させる余裕はない。つまり、新たに団体戦の人数枠を設けることは困難なはずである。となると、おそらくIJFがIOCと取引するのは階級の削減だろう。実際、昨年のグランドスラムにおいてビゼール氏に近い関係者からは、「7階級から5階級に変更する可能性がある」との話も聞いた。

ソウル五輪から無差別級がなくなったが、これは女子を入れる交換条件の一つであった。このことを考えると、2016年のリオで団体戦を導入する代わりに階級を減らすという交渉は真実味を帯びてくる。

女子のレスリングがそうであるように、五輪と世界選手権の階級が異なる可能性もあるだろう。いずれにせよ、こういった話がおそらく、かなりの段階で進んでいるにも関わらず、日本国内で知っている人がどれだけいるのか?選手にとっては非常に大きな問題である。例えば、下と上の階級を削るとなれば48kg級、60kg級はなくなる可能性もあり、ロンドンが最後のチャンスともなりかねない。

根本的な問題としても、五輪に団体戦が必要かという議論もある。個人戦を闘った選手が数日後にまた闘うことが可能なのか。個人戦で選手が怪我をした場合にはどうするのか?計量は?などなどテクニカルな問題も多い。私が噂を聞いているぐらいなので、上層部は当然のことながら対応策を既に検討し始めているだろうが・・・

強いリーダーシップによって良い面での改革がスピードを持って行われることもある。反面、多くの場合は秘密主義で情報公開がされずに密室、少人数で話が進んでいく懸念もある。今の体制が当分変わることも望めないのなら、せめて情報戦略をしっかりと自己防衛をしていかなければならない

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6 コメント

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日本寄りの改革 (一柔道家)
2011-01-06 18:42:28
山口先生、明けましておめでとうございます。
ヴィゼールの反対を押し切った強力な改革は、ルール面では柔道を原点に戻したもので、日本にとってたいへんな追い風でした。いきなりの足取りが一発で反則負けというのは、ヨーロッパで反対が強かったはずなのに、よくぞ実現できました。そんな思い切った発想は日本人もしなかったのではないでしょうか。
ランキング制は、昨年多くのベテラン選手を引退に追い込みました。選手にとってたいへんな負担ですが、一方では不透明な五輪選考ができにくくなったのも事実です。若手がどんどん誕生し、柔道界を活性化しています。今のところマイナス面はそれほど表面化していません。
さて、階級を減らしてオリンピックに団体戦を導入するという案はどうなのか。日本の伝統的な柔道観からすれば、細分化された階級を減らすことは原点復帰とも言えます。団体戦は日本ではたいへんに好まれている試合形式です。しかし、当初日本をないがしろにするかと思われたヴィゼールがここまで柔道を日本の伝統に沿った形で改革しようとは、私には意外な気がします。団体戦を導入して、日本以外のどの国が喜ぶのでしょうか?
あけましておめでとうございます (北陸人)
2011-01-07 10:03:21
オリンピック種目に団体戦の導入と階級の削減…。

団体戦はともかく階級が少なくなるのは選手にとって少なからず影響を及ぼしますね。少し前に岡野功さんが「東京五輪の時の四階級制に戻すべきだ。それで柔道本来の精神が戻るはずだ」と近代柔道の中でおっしゃっていましたが、確かに無差別の精神が戻るかもしれませんが、今の七階級制の時代で上手くいくか心配ですね。
7階級のままで (8度9度10度)
2011-01-11 23:02:31
本校のような弱小柔道部顧問で、かつクラス担任をしているような立場の者にとっては、階級の多い方が、強豪校の合間を縫って入賞しやすく、またそれが生徒の身近な練習目標になりやすいので、現行の階級のままでいいです。さらにその入賞歴が、大学を推薦で受ける際の特筆すべき活動実績となり、担任が推薦書に記入したり本人が面接でアピールしたりするのに都合がよいからです。
山口さんに質問です (Unknown)
2011-01-12 10:44:27
ランキング制導入の次は階級改革と想像されなかったのですか?信じてもらえないかもしれませんが、
私は想像してましたよ。まだ噂レベルでしょうけど、不思議ではないと思います。五輪以外の大会は今の階級のままで、五輪は階級少し減らすのでは?
レスリングは4階級.少ないですよね.でも増やすとしても1つぐらいでいいと思います。柔道もそれくらいになるのでは?
団体戦ですが、個人の代表になれなかった選手を出場させればいいと思うんですけど。私の知り合いは
五輪の時「柔道ってまだやってるの?」ってイチイチ聞きます。そういえば五輪は1日男女1階級ずつ
ですもんね。「途中間延びする」とも言ってたし。
失礼ですけども。
はじめまして (圭子)
2011-01-24 08:14:11
はじめまして。
以前、山口先生が武蔵大学に講師で来ていただいていた頃、柔道部でお世話になった菅野の娘です。
もしかしたら、大学関係の方からご連絡がいっているかもしれませんが、昨年の12月25日に突然ですが父が亡くなりました。
生前、よく山口先生のお話を父から聞いていました。本当に色々とお世話になりありがとうございました。
私も40歳を過ぎましたが、子供達と一緒に柔道を始めました。時間がかかるかもしれませんが、柔道をやっていた父の気持ちに少しでも近づきたく、黒帯を目指して頑張ります。
Unknown (山口香)
2011-01-24 10:01:53
 お父様のこと、大変残念です。菅野様には私も大変かわいがっていただきました。また、武蔵大学柔道部へも常に情熱を注いでいただきましたことを記憶しております。
 お嬢様そしてお孫さんが柔道をされているとのこと、お父様もさぞかしお喜びだったことでしょう。
お父様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。