*** june typhoon tokyo ***

Especia 『CARTA』~Antes~


 Especiaのアルバム『CARTA』を聴く前に。

 2月24日に大阪・堀江系ガールズ・グループ、Especiaのメジャー初となるフル・アルバム『CARTA』(カルタ)がリリースされた。2015年2月18日にミニ・アルバム『Primera』(プリメーラ)でメジャー・デビューした彼女たちが1年後に辿り着いたメジャー初のフル・アルバムという記念すべき一枚であり、現5名体制での最後の作品ともなるEspeciaにとってのエポックメイキングとなるアルバムだ。
 本来ならば早速アルバムを聴いて、その感想やレヴューを記事にエントリーしたいところ。だが、3名が卒業する2月末が目前に迫るなかで、そのカウントダウンが『CARTA』への考察にバイアスをかけてしまうかもしれない……。あくまでもグループの動向とは別として、作品は作品として冷静に言及したいという勝手な考えから、2月末までは『CARTA』のレヴューを取りやめることに。その代わりではないが、アルバム・レビュー前にこの“Antes”(前)という記事をエントリーした次第。

 レヴューや個人的評価は後日といいながら、やはり気になるのはアルバム冒頭曲の「Clover」だ。山根康広が詞を、藤井尚之が曲を手掛けたこの曲は、従来のEspeciaサウンドとは異なるアメリカン・ロックな曲風に乗せて拳を突き上げて“GO BABY GO”と高らかに宣言する泥臭さも感じるメッセージ・ソング。ライヴで聴いた限りではEspeciaの世界観には程遠い作風で、先日の1月の新木場STUDIO COASTでのツアー・ファイナルでは初めて聴くファンも多いなか、いきなりサビをシンガロングさせるという場面も。

 以前、若旦那による「We are Especia~泣きながらダンシング~」を当時のツアー・ファイナルで披露した際にも、最初はなかなか好評が得られなかった。直後にはSNSなどで曲への批判を目にしたことや、曲に対する反応だけならまだしも、プロデュースした若旦那へ辛辣な言葉が浴びせられたことなどに、メンバーたちはショックを受けていたという。それでも前半のスポークンワード的な語り部分を除けば、ホーンが高らかに鳴り、ブイブイとベースがうなるディスコ/ファンク調というEspeciaの世界観を描いた作風だったこともあって、次第にフロアを沸かせる楽曲の一つとしてぺシスト(Especiaのファン)たちの心を掴んでいった。

 ただ、今度の「Clover」はそういった転調や展開などはなく、アメリカン・ロック/AORを徹頭徹尾貫いている。見方を変えれば、斬新、大胆ともいえるだろう。だが、どうしてもEspeciaが歌うべき楽曲として認知出来ないでいたのも事実で、STUDIO COASTで拳を掲げてオーディエンスにシンガロングさせる場面は、言い方は悪いが「Especiaが好きならこの曲だって好きなはず」と強く促されているような、大袈裟に言えば何か“踏み絵”のような感覚にもなった。
 ファンのなかには「Especiaは当初からいつも何か遊びを採り入れてきたグループ。『Primera』の若旦那プロデュース曲もそう、今回の「Clover」もそう。冒頭曲にそういった遊びを仕込んでいる方が寧ろEspeciaらしい」と考える人も少なくないと思う。だが、それに対しては「“遊び”はどんどんやってくれて構わないが、“遊び方”が違うのではないか」と個人的には思ってしまう。どれが正解ということはないのだが。

 間違えて捉えてほしくないのは、「Clover」の楽曲の質が低いとか悪曲だとかいうことは一切ない。たとえば、TOTOやボストンなどのフォロワー・グループがいたとして、そのグループが歌うのであれば、拍手喝采していたかもしれない。それほどの快活なロックを展開していると思う。
 しかしながら、歌うのはディスコ、ブギー、ファンク、AOR、シティ・ポップなどによる世界観で特色と魅力を打ち出してきたガールズ・グループ、Especiaなのだ。問題は、果たしてその世界観を崩してまで歌う楽曲なのかどうか、なのだ。

 また、以前記事で述べた通り、ツアー・ファイナルの新木場STUDIO COAST公演を“東京進出と卒業発表の場”ではなく、純粋に彼女らの成長をはかれるステージにしてもらいたかったのと同様、『CARTA』が“5名体制ラストの集大成”などといった付加価値をもたらさずに、単に彼女らが飛躍的なスピードで成長を遂げていることの証左となる作品として存在して欲しかったということもある。5人のそれぞれの個性を活かしたバランスがようやく生まれ始めたと感じ始めた矢先だっただけに、ガールズ・グループとしての可能性を期待していただけに、まだクインテットEspeciaの終了に対して心の“シコリ”みたいなものがとれてないのかもしれない……ということで、5名体制が終わりを迎えてからアルバムを改めて聴き、冷静な面持ちで作品の感想やレヴューをしたいと思う。

 現時点では、Especiaの今後について未知数なことが多過ぎてなかなか実情を呑み込めない状況が続くかもしれないが、こればかりは“待つのみ”で、致し方がない。この胸の内を晴らすには相当なものが必要だと思う。
 たとえば、グループ随一のパンチ力を持ったヴォーカリスト、脇田もなりがKylie Minogue(カイリー・ミノーグ)ならぬ“waKylie Monague”となって半年後か1年後かにシラっと次のようにシーンに登場したとしたら、その時は“卒業も納得した”と手のひらを反すかもしれない(笑)。

Giorgio Moroder - Right Here, Right Now ft. Kylie Minogue

 このカイリーがジョルジオ・モロダーに客演した「ライト・ヒア・ライト・ナウ」はシャラマー「ナイト・トゥ・リメンバー」風のフレーズを散りばめたセクシーなディスコ/ブギーだし、結構似合うと思うのだけれども。

 さまざまブツクサと言い放ったが、ひとまずは2月末のファイナル公演まで、有終の美を飾るところを見届けたいと思う。



◇◇◇

 Especiaのメジャー初となるフル・アルバム『CARTA』は、2016年2月24日リリース。


■『CARTA』通常盤
通常盤(VICL-64501/VERSIONMUSIC)\2,315+税

□DISC 1
1. Clover
2. Over Time
3. Sunshower
4. Interstellar
5. Saga
6. Saudade
7. Rittenhouse Square
8. Mistake
9. Fader
10. サタデー・ナイト
11. Boogie Aroma (CARTA Ver.)
12. Aviator (CARTA Edit)


■『CARTA』Remix&Inst盤
初回盤/2CD(VIZL-924/VERSIONMUSIC)\3,241+税

□DISC 1
1. Clover
2. Over Time
3. Sunshower
4. Interstellar
5. Saga
6. Saudade
7. Rittenhouse Square
8. Mistake
9. Fader
10. サタデー・ナイト
11. Boogie Aroma (CARTA Ver.)
12. Aviator (CARTA Edit)

□DISC 2
1. Aviator (HyperJuice Remix)
2. West Philly (Tomggg Remix)
3. Security Lucy (Masayoshi Iimori Remix)
4. We are Especia~泣きながらダンシング~ (mel house Remix)
5. We are Especia~泣きながらダンシング~ (autoclef remix)
6. Clover (Instrumental)
7. Over Time (Instrumental)
8. Sunshower (Instrumental)
9. Interstellar (Instrumental)
10. Saga (Instrumental)
11. Rittenhouse Square (Instrumental)
12. Mistake (Instrumental)
13. Fader (Instrumental)
14. Boogie Aroma (CARTA Ver. Instrumental)
15. Aviator (CARTA Edit Instrumental)


■『CARTA』DVD盤
初回盤/DVD(VIZL-923/VERSIONMUSIC)\4,630+税

□DISC 1(CD)
1. Clover
2. Over Time
3. Sunshower
4. Interstellar
5. Saga
6. Saudade
7. Rittenhouse Square
8. Mistake
9. Fader
10. サタデー・ナイト
11. Boogie Aroma (CARTA Ver.)
12. Aviator (CARTA Edit)

□DISC 2(DVD)
SE. Intro
1. We are Especia ~泣きながらダンシング~
2. West Philly
3. Sweet Tactics
4. シークレット・ジャイヴ
5. さよならクルージン
6. Security Lucy
7. ミッドナイトConfusion
8. パーラメント
9. FunkyRock
10. YA・ME・TE!
11. アバンチュールは銀色に(PellyColo remix)
12. No1 Sweeper(nueva cocina)
13. 海辺のサティ(va Bien Edit)
14. Boogie Aroma
15. Aviator
16. きらめきシーサイド(12″ Extended Ver)





















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