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Especia メジャー・デビュー!カウントダウン企画(3)「ミッドナイトConfusion」

 Especiaメジャー・デビューまであと数日! 完全自己満足身勝手企画CDレヴュー第3弾は、“ミッCon”の通称でお馴染みのEspecia初のシングル『ミッドナイトConfusion』に迫ってみたいと思います。

◇◇◇



『ミッドナイトConfusion』(2013/09/11)
01 ミッドナイトConfusion
02 X・O
03 海辺のサティ
04 海辺のサティ(Greeen Linez Remix)
05 ミッドナイトConfusion (INSTRUMENTAL)
06 X・O (INSTRUMENTAL)
07 海辺のサティ(INSTRUMENTAL)
08 ミッドナイトConfusion (ACAPPELLA)
09 X・O (ACAPPELLA)
10 海辺のサティ (ACAPPELLA)

◇◇◇

 Especia初のシングル『ミッドナイトConfusion』はさまざまな意味で挑戦した作品となった。

 タイトル曲「ミッドナイトConfusion」はクラブ・シーン出身のSAWAが楽曲を提供。SAWAは半沢武志(FreeTEMPO)や福富幸宏、瀧澤賢太郎、RAM RIDER、中塚武らクラブ・シーンで活躍する作家陣による楽曲で注目された女性シンガー・ソングライターで、自分も☆Taku Takahashi(m-flo)の流れから彼女の1stフル・アルバム『Welcome to Sa-World』を聴いたクチだ。ハウス/エレクトロ系の4つ打ちをベースにしているのだが、純粋にハウス/ダンス・ミュージックとは説明しづらいSAWA流のポップネスが溢れた楽曲が多く、歌詞はシュールだったりと、無意識のうちに“ハウス耳”で聴く準備をしていた自分は面食らった記憶がある。それは『Welcome to Sa-World』のアートワーク、夜に輝くメリーゴーラウンドを前にミラーボールを持ったSAWAが佇む光景のジャケットが言い得て妙なサウンドだった。
 
 そのSAWAの提供曲ということで、聴く前はこれまでEspeciaが歌ってきたディスコ/ブギーやシティ・ポップあたりから逸脱するのではという危惧も個人的にはあった。確かに、ホーン・セクションが奏でる黄昏やアーバンなムードとは対照的な派手やかな打ち込みが全編を占めたアグレッシヴなトラックとなっているが、前作『AMARGA』でのキー曲「パーラメント」の世界観をよりキラキラとさせた、ファッション的なカラフル感覚にフォーカスしたサウンドと捉えれば、これまでの世界観とリンクしているともいえる。そのあたりはこれまでのEspeciaサウンドを全面的に手掛けてきたSchtein&Longerのアレンジの微調整もあるだろう。
 イメージでいえば、「パーラメント」のトレンディドラマ感をより絞って、ドラマ『男女7人夏物語』『男女7人秋物語』に特化したというところか。同ドラマの主題歌だった「CHA-CHA-CHA」や「SHOW ME」のユーロビートをバックグラウンドに持つディスコ・ポップ歌謡をSAWAの視点を通してアップデートさせたのが、この「ミッドナイトConfusion」といえる。クラブ・サウンドをベースにしたトラックにラグジュアリーなポップが乗り、さらにSAWAによるマジカルな詞世界が展開するという不可思議なマッチングが、予測以上の変化を見せたのだ。

 この楽曲の功績としては、フックでの“EYES ON ME”というシンガロングを生み出したこととともに、森絵莉加にソロ・パートが宛がわれたことだ。これまで冨永悠香と脇田もなりに集中しがちだったソロに最年少の森が加わったことで、ヴォーカル・ワークにおける新鮮さと森自身の歌唱への積極性も生み出した。ライヴでは“MAKE IT UP 聞き飽きた REASON WHY?~”のフレーズで森への“ケチャ”(インドネシアの呪術的な舞踏をモチーフとした祈りを捧げるような動作)も起こるなど、Especiaに新たな引き出しをもたらした。

 そして、Especiaの(いい意味での)変態性はこのタイトル曲だけに終わらない。むしろ、カップリングにその真骨頂が発揮されているといってもいいかもしれない。「ミッドナイトConfusion」の煌びやかなテンションとは真逆の「X・O」は、むせび泣くサックスが一層孤独と悲哀を運ぶムード歌謡調のスロー・バラード。歌唱レンジが広めなのと低音に軸を置いているため歌唱力が問われる曲だが、パンチと安定感のある脇田もなりを低音パートに据えて乗り切っている。一見、アーバンとは無縁な作風にも思えるが、横浜や神戸あたりの波止場に佇む男や海が見えるバーでグラスを傾けながら男を待つ女……といった絵面を想起させる、異なる視点からの港町=アーバンと解釈出来る曲だ。

 さらに、ファンの間でも人気が高いと思われるのが「海辺のサティ」。以前「不機嫌ランデブー」を提供したトラックメイカー、Pellycolo(マセラティ渚のメンバーでもある)による洗練されたフュージョン・サウンドを軸にした清涼と哀愁が入り混じったロマンティックなナンバーだ。80年代やディスコなどを全く知らないEspeciaが当時の楽曲を歌うというギャップはこのグループのセールスポイントの一つでもあったと思うが、それにしてもこの大人びた世界観を彼女らに表現させてしまおうという意図が面白い。
 歌唱力にはまだ不安定さも覗く彼女らゆえ、マッチングとしては面白くとも、それを消化/昇華させなければこの曲の良さを削ってしまうことになるが、そこはこれまでに多彩な楽曲を演じてきた彼女らの実力も培われてきたのだろう。「ミッドナイトConfusion」とは異なるスウィートな囁きやほんの僅かにアンニュイを漂わせる歌唱で、Especia流の刹那的で快楽的なムードを表現している。
 また、本作収録の“Greeen Linez Remix”を含め、この楽曲には他にもリミックスがあり、それぞれの違いを楽しめる汎用性の高さも魅力だ。

 前述の多彩な3曲を組み込んだことで、シングル規格以上のヴォリュームと音楽性の振幅を得た本作は、結果として以降のEspeciaの引き出しを(音楽性のみならずパフォーマンスという意味でも)増やした。その点からも、ターニングポイントの一つとなる作品といえるだろう。

◇◇◇

Especia「ミッドナイトConfusion」


Especia「海辺のサティ(Vexation Edit)」VJ MIX








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