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習国家主席の任期撤廃、権力闘争の再燃も / 【WSJ社説】終身国家主席へ、習近平氏の野望

2018-02-27 20:43:46 | 習近平国家主席

習国家主席の任期撤廃、権力闘争の再燃も

2018 年 2 月 26 日 10:00 JST   THE WALL STREET JOURNAL


 【北京】中国共産党が習近平国家主席の任期撤廃に向けた憲法改正を提案したと国営メディアが25日伝えた。これで一人の権力者が

支配する体制の復活に一歩近づいた。1976年の毛沢東死去後に導入されたチェック機能がなくなれば、過去の指導部交代に際して

起きたような権力闘争が再燃するリスクがある。


 習氏は約5年後に共産党中央委員会総書記と国家主席の2期目の任期が切れた後も続投するための力を得たようだ。3月5日に開幕する

全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、代表らが特に検討することなく撤廃を承認するとみられる。

 10年の上限が撤廃されれば、習氏は大国中国の復活を率いる国家主席として無期限にとどまることができる。撤廃の動きはまた、

不文律となっている共産党の定年年齢を無視し、2022年以降も党総書記にとどまろうとする習氏の意向を示している。


 習氏が長期続投を計画している兆しは昨年10月に強まった。共産党から偉大な思想家とたたえられ、総書記2期目を務めることに

なった際、後継者指名をしなかった。高官や国営メディアは、通常は毛沢東について使われる言葉で習氏を表現するようになった。


 中国政治の一部研究者によると、任期を撤廃すれば昇進したい若手が権力にしがみつく年配者にいら立ちを覚え、内部分裂が悪化

しかねない。習氏は党や軍の上層部を揺るがせた反汚職運動でライバルや潜在的ライバルを排除したが、既得権や汚職、政府の浪費を

攻撃した習氏への恨みは官僚組織内でくすぶっている。


 数十年前の毛沢東式リーダーシップへの回帰が起きている一方、中国は様変わりしている。当時よりはるかに繁栄しており、

世界経済ともつながっている。市民はある程度の個人の自由に慣れた。


 ベンチャーキャピタリストから活動家に転じた王功権氏は、ソーシャルメディア(SNS)の微信(ウィーチャット)で、国家主席の

任期撤廃の提案を「中国共産党の中央委員会が撤回するよう求める」「これは私たちの政治文化の後退だと思う」と述べた。


 共産党は総書記の任期に制限を設けていないが、2002年以来、68歳以上での最高指導部入りは控えるのが暗黙の了解となっている。

習氏は総書記3期目に入る22年には69歳になっている。


 党内には、習氏がモデルとしてロシアの大統領制を研究している可能性があるとの声も聞かれる。同国のウラジーミル・プーチン

大統領は広範な大統領権限を与えられており、08年の憲法改正を受け、今年の大統領選で再選を果たし4期目(24年まで)を務めると

みられている。


 中国の共産党中央委は国家副主席の任期撤廃も示唆している。複数の関係者によると、かつて反汚職運動を指揮した69歳の

王岐山氏は来月の国家副主席就任を目指している。


 香港中文大学のウィリー・ラム教授は「独裁者は大きな間違いを犯す傾向にある。誰も異議を唱えないからだ」と述べた。

10月の党大会後、習政権は極端な大気汚染防止策や出稼ぎ労働者の追い出しなど、いくつかの政策を批判されている。


 共産党関係者らは、中国の憲法が新たな政治的現実を反映して更新されるべきだとこれまで述べてきたが、国家主席の任期を

撤廃する計画については25日より以前には言及していなかった。



【WSJ社説】終身国家主席へ、習近平氏の野望

主席の任期撤廃が予測不可能な事態をもたらす可能性

2018 年 2 月 26 日 13:19 JST    THE WALL STREET JOURNAL

 中国国営の新華社通信は25日、政府が憲法を改正し、現在2期までとなっている国家主席の任期を撤廃すると発表した。習近平主席は

毛沢東氏以降で最も大きな力を手にしており、今回の改憲はその事実を決定付ける重大な出来事だ。任期制限などのルールは混乱を

極めた毛氏の時代が繰り返されないよう、鄧小平氏が1980年代に制定した。習氏はこれらの廃止に動いたことになる。


 2012年に国家主席に就任して以降、習氏は反汚職運動の名の下に政敵を排除し、自らに権力を集中させた。毛氏の時代以降は

中国共産党内の各派閥のリーダーが平等に権力を分け合うことがしきたりだった。習氏はそれも変えることになる。


 中国のエリート層による政治は、勝者一人勝ちの様相を見せるようになっている。これは鄧氏が恐れていた事態だ。習氏は毛氏に

似た個人崇拝を進め、40年以上にわたって使われていなかった最高指導者の呼称「領袖」を自らに付けるなどしている。


 新華社によれば、2023年以降も習氏が主席にとどまることは先月の共産党大会で決定した。大会直後の公式発表の中に決定が

含まれなかったことは、党内でもこの方針が物議を醸していること、そして習氏の権力掌握に抵抗する勢力がまだいることを表して

いる。共産党中央委員会は今週再び集まり、誰がどの重要ポストに就くかを話し合うが、形だけの議会がこれら人事を正式に承認・

任命するのはまだ数週間先だ。これも党内で内紛が起きていることを示している。

 

 習氏に権力が集中することで中国の経済政策にどのような影響が出るのか、現時点では不透明だ。改革派として知られる習氏の側近、

劉鶴氏は、昨年10月に共産党中央政治局に昇格し、副総理や中国人民銀行の総裁などに就任するとみられている。

劉氏は今週、首都ワシントンを訪れ、互恵関係にない米中経済をめぐる摩擦について話し合う予定だ。

 

 だが習氏が過去5年にわたって経済改革の再開を約束しておきながら、それを守ってこなかったことも覚えておくべきだろう。

社会のあらゆる面をコントロール下に置きたい習氏の政治意欲が、市場原理により大きな役割を担わせようと考えた劉氏の価値ある

アジェンダを無効化したのだ。23日に安邦保険集団が政府管理下に置かれたように、膨大な債務を必要とする景気刺激策によって

中国金融システムには危険なほどの不均衡が広まりつつある。それが中国の経済発展を危機にさらしている。


 習氏は中国を強くし、新たな繁栄の時代へと導いてくれる――。新華社はそう主張する。だが団結を見せる表向きの顔の裏では、

政治闘争が続く。自らが事実上の「終身国家主席」となることで、習氏は国内政治をより不安定かつ予測不可能なものにしたのだ。





1 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-03-20 00:34:12
リーダーシップは、独裁の危険が大きいんだ。