中小企業のES=人間性尊重経営のパイオニア/有限会社人事・労務 ES組織開発・人事制度改革ブログ

社員の幸せ、職場の幸せを基準に経営を、社風を変えたいと本気で思っている社長さん・人事担当者の方へのエールをあなたへ!

平成28年度第2回台東支部研修会 レポート

2017-03-30 16:49:18 | 組織開発・社風改革
2度目のオリンピックを迎える東京。1964年、新幹線をシンボルに高速道路、空路など物流インフラの整備によって「物の動き」に革命が起きました。そして2020年、留まるところを見せないIT技術の進歩とAIの台頭が「労働の意味と価値を問われる時代」の到来を告げています。



基調講演にご登壇頂きました大野先生はITの進歩とAIの台頭に社労士業務を重ねてお話をしてくださいました。
大野先生が開業した当時は、半ば自動的に経済が成長した時代における社会保険労務士の存在意義は労務管理の事務処理、いわゆるアウトソースがメインであり、受託先も経済成長に合わせて右肩上がりに増加してきました。しかし〝労働人口の減少〟、そして〝ITの進歩とAIの台頭〟を背景に、先生は「過去の成功体験は通用しない」と予見されます。



士業の人口は増え続けています。税理士や弁護士はすでに飽和状態に近づいてきています。社労士も平成15年に28000人だったのが、平成26年には38000人を超え、1万人以上増えています。このような状況の中、税理士や弁護士では、合併による大きな規模の事務所が多く誕生するようになっています。
今後デジタル時代になるにつれて、社労士業界も、大規模化、そして、二極化が進むことが予想されます。1・2号業務を単なる「事務処理」ではなく、社労士ならではの経験からスキルが必要な「手続き業務」ととらえれば、まだまだ、1・2号でも付加価値をつけることはできます。
そして、今後は、ワンストップサービスを求められるようになります。一人の個人事業主としてやっていくには限界があります。社労士業界として、共助して新たな業務領域を生んでいくことが必要です。多様な時代に、一人の社労士でできることは限られています。信頼できる仲間をもつことが大切です。
私たちはデジタル化、AI化を避けることはできません。じわじわ変化が進み、一定のレベルを超えた瞬間に突然、大変革が起こると確信しています。私たち一人ひとりは、お客様にAIや、デジタルツール、ビックデータなどを使うことから指導していかなければなりません。マイナンバーの対応の推進も重要な使命です。このような時代が来ることを予見しつつ、自分自身が「どんな社労士になりたいか」自分の事務所に未来を思考しなければならないという強いメッセージをいただきました。



第2部は、コーディネーターとして有限会社人事・労務代表取締役で社労士の 矢萩大輔氏が進行を務め、AI時代のこれからの働き方について、3名の先生方と会場を巻き込んでのパネルディスカッションを開催しました。
さすがのAIでも現時点においてはゼロから何かを生み出すことは出来ず、なんらかのインプットがあってはじめて思考をスタートするそうです。例えば給与計算代行業務。賃金規定や個人情報、勤怠や評価点等をインプットする事で給与明細の発行や銀行口座への送金、社員個々の入退社や休業状況、労働時間、評価の傾向等を高いレベルで処理しアウトプットしてくれます。
ではここで社会保険労務士としての職務は完了なのでしょうか。今回の研修を受けた事でもう一歩前へ思考を深めていく必要性を感じました。例えば、ここからが労務管理のプロである我々血の通った社会保険労務士の出番なのではないでしょうか。
そこで必要となるのが「経営の視点」です。例えば毎日遅刻ぎりぎりに出勤し、業績が芳しくなく、人事考課による評価が低い社員は一体何にやりがいや生きがいを持ち、どのような生活習慣をしているのか。この問題の原因追及と解決に向けた取り組みを行わないことは何よりも大切な「人」という経営基盤を揺るがすことにつながるのではないでしょうか。大野先生が言われる「業務処理」でなく、経験を生かした「手続き業務」をしなければならないといけないというのも、このあたりにあるのではないでしょうか。
野村総研の予測では、労働力人口の49%がAIにとって変わられるという。この未来予測をどうみるのかという話題になりました。それほど急には変わらないといつ意見と、もうすでに大変革に差し掛かっているという意見がありました。実際、税理士の仕分け作業や、弁護士の過去の判例検索作業などは、かなりAI化が進んできているとのことです。社労士の業務も単純な「作業」は、一気になくなっていくことであろうと思われます(それを効率化ともいえるでは)。そして、多様性がさらに進んでいくことは間違いなく、クリエイティブさ、つまり、第1部で大野先生がお話した、「自分自身はどうありたいか、どんな経営をしたいのか」という軸を持つことはこれからの社労士にとって必須と考えなければならないでしょう。
ただし、それは個人としての専門性を高め、ひたすら限られた分野を極めていくことだけではないと思います。自分の軸を磨きつつ(社労士として何をしたいのか?どのようになりたいのか)、同業や他士業とのつながりを持つべきです。そして、お客様への「ワンストップサービス」を実現し、常に新たなサービスを生む(イノベーション)ことができるように、アンテナを張り続けることが重要だと感じました。
AI時代は確実にやってきます。パネルディスカッションでしばしば話題にでた人と人との「つながり」「共感」といったことが、AI時代の社労士の仕事のポイントになるような気がします。
最後に大野先生が言われていた、ベテランの社労士になると新しい現象に対して「理解はできても、なかなか納得はできない」という言葉が印象に残りました。今後、どれだけ多様性を受け入れ、自分の過去の常識を覆しながら仕事に取り組めるか、心に留めながら日々の仕事に取り組みたいと思いました。