旧ユーゴスラヴィアの本

旧ユーゴ地域についての本と、ときどき映画。
ミリャナ・カラノヴィッチのささやかなファンBlog。

『ウェディング・ベルを鳴らせ!』

2009-04-30 21:17:04 | 映画
を、二度目(一度目はフランス語字幕で、理解度は恐ろしく低かったのだけど。)に観て来る。
やはりクストリッツァの作品は、体力が必要不可欠。季節の変わり目で疲れ気味なわたくしは、へとへとになって帰って参りました次第です。
今回はいつにもまして大音量のアップテンポの音楽がほぼ全編にわたり流れている感じなので、余計にそうなのかもしれないな。
『ジプシーのとき』の音楽の引用があったり、音楽も興味深かったけれど、どちらかというとわたしはネレ&デヤンの方が好みかなぁ。
……と、作品そのものについて何も書いていないのですが。何か書けるようになるまでにはあと三回は観なくては、です。そこはクストリッツァ。
今回はいつになく表面は明るいけれど、いつになく深くて、一筋縄ではいかない作品のような気がします。
でも、「婚活」で大々的に宣伝しているのに、関連グッズがプログラムのみというのが、なんとなく寂しかったな。睡眠を呼ぶぐるぐるのキーホルダーとか、出せばいいのに。クストリッツァの村で売っているグッズとか。買うかどうかは分からないけれど。私自身。(笑)

どっちつかず

2009-03-21 23:39:34 | 映画
「Nešto između」IMDb(邦題「三人でスプリッツァ」)という映画を観た。これもスルジャン・カラノヴィッチ監督の作品。
アメリカからユーゴスラビアにやって来たジャーナリストの女性と、その元恋人のユーゴの医師、その友人のプレイボーイが話の中心。
医師役では若々しいミキ・マノイロヴィッチが出ている。といっても、雰囲気は今とそんなに変わらない……演技はやっぱりとんでもなく上手いし、改めて、すごい俳優だな、と。英語を喋らせたって、やはり絵になる人です。
とか考えると、ミリャナと夫婦を演じた「パパは出張中!」って、偉大。


原題の意味は「どっちつかず」。女性の揺れる心とか、ユーゴという国のありようなどの比喩になっている。それだけに限らず、「どっちつかず」はいろいろな所に見いだせた。たぶん、わたしが年をとるごとに、この意味もより深く分かることができるようになるんだろうな、と思う。そんなような、奥深い表現。
「ペトリヤ」では写真のコラージュだったけれど、この作品では冒頭でおばあちゃんが語りかけてきて、「どっちつかず」というゲームについての説明をする。それが全体を貫くモチーフとなる、という仕組み。
こういうカット、というか構成が好きな監督さんなのかもしれない。良い効果が生まれていて、なかなか素敵だと思う。


三人のやり取りの中でアメリカとユーゴがよく比較されるのが興味深かった。
東でも西でもないユーゴ。もちろんわたしはその時代にかの地に行ったことはないけれど、間接的には聞き知っている。でも、ああ、こういうことなんだな、とこの映画を観て腑に落ちた。もちろんごく一部に過ぎないのだろうけれど。
空襲訓練って、実際、あの通りにやっていたのだろうか。建物に火をつけたり、ミサイル?を処理したり。かなり気になる……。


旧ユーゴ関連の作品で、こういう軽快なタッチの男女の物語を観たのは、わたしにとっては初めてで、新鮮だった。
心理描写はすっきりしているけれど、しっかり個々の心の動きが描かれているし、展開も、落ち着いていながらも意外性抜群で、面白い。
ただ、残念なのは、音楽が少々野暮ったいこと。それと、JATのCM?というような、見事なまでの飛行機の俯瞰ショット。スポンサーだったんだろうな、きっと。
でもそれも愛嬌かな。なにせ「どっちつかず」だもの。


最後に、スプリッツァというのは、ワインとソーダを半々に割った飲み物のこと。
多民族、多文化が混じり合うユーゴという国、そして「どっちつかず」が重ねられている。


(こんな詳しい解説を見つけました。→link
ただし、ネタばれ満載なのでこれから見られる方はお気をつけて。)


ペトリヤの花輪

2009-03-08 21:00:00 | 映画
もう結構前のことなのだけど、「ペトリヤの花輪(Petrijin venac スルジャン・カラノヴィチ監督)」IMDbという映画を観た。
1980年制作。ミリャナ・カラノヴィチの(たぶん)スクリーンデビュー作。(情報源によって微妙に違うので、、、)

物語は貧しい農村から始まる。
結婚式を終え、夫の家族との同居生活を始めた女の子・ペトリヤ。未来への希望に胸を膨らませていた彼女を待ち受けていたのは、しかし、夫の両親の過酷な仕打ちだった。夫の無関心、戦争、戦後の社会の激しい変化。さまざまな苦難に会いながら、不器用に、でもしっかりと、彼女は歩んでいく。

いわゆる『女の半生』ものなんだけれど、一般的なそれとはかなり毛並みが違う作品。波乱に富んでいながら、全体的にすごく落ち着いていて。演出とか、音楽とか、何より、ミリャナ演じる主役のペトリヤが普通に地味な女の子。物凄い豹変もせず、最初から、最後まで。
そんな風に、派手さはないけれど、それだけに、なんとなくひきつけられる、そういう映画だった。

ペトリヤを取り巻く環境は本当に苛酷。
夫の両親の彼女への仕打ちは、日本の昼ドラの嫁姑争いとは、もう、性質が違うように感じてしまった。
びっくりしたのは、ペトリヤが納屋でたった一人で出産するというシーン。本当に、たった一人で……その上、生まれてすぐに赤ちゃんは死んでしまう。
こういう話が自然に展開していく(役者さんの演技も全然違和感がない)ところを観ていると、実はこれはそんなに特別な話ではないのかも、、、と思った。原作もあるようだし。(実話かどうかはわからないけれど。)
戦後、人々が飲み屋(?)を「ブルジョワ!」と非難し、店を壊していくシーンも、印象的だった。
バルカンの伝統的な家父長的な農村だとか、社会の急激な変革を静かに批難した作品ともとれるのかもしれないと思った。淡々としていて、そんなに表立ててはいないけど。それに、わたしも詳しくないのでむやみに断言はできないけれど……。
でも、もしそうだとすると、そういう作品も作ることができたユーゴは、不思議な国だな、と改めて思った。チトーの死後ということも影響しているのかもしれないけれど。

ペトリヤと同世代の人は、わたしよりずっと、感情移入するんではないか。親しみやすいヒロインだし。
それにしても、ミリャナってすごい。抑えた雰囲なのだけど、なんとなく最後まで気になってみてしまうようなヒロイン。新人とは思えない……。やっぱり、さすがです。

岩波ホールのパンフの中に「ペトリヤの道」という邦題で名前が出ていたので、日本でも上映されたことがあるのかも。でも、日本語字幕で観ることはかなわず、結局英語字幕で。もっと言葉が分かったら、また違うんだろうな、というのがわたしのちょっと残念なところ。

「Mi nismo andjeli 2(We are not angels 2)」

2008-08-12 14:25:23 | 映画
「Mi nismo andjeli」の続編、「Mi nismo andjeli 2」(IMDb)を観る。
前作から15年後、二コラは相変わらずプレイボーイ生活を満喫していて、どうやらマリナとは別居しているよう。
15歳になった娘のソフィアは、お年頃。ボーイフレンドもでき、デート三昧の楽しい日々を送っているのだが、そんな彼女を見守る二コラは心中穏やかではない。
娘の交際に口を出すし、デートの後はつけるし、まるで娘のストーカー。当然ソフィアは反発するのだが……


前作から13年後を経ての続編。
この間に内戦、ユーゴの崩壊があり、社会が大きく変化したこともあるのだろうか、続編とはいえ作品は前作とはずいぶん違った雰囲気。
始まりからのけぞってしまった。天使と悪魔が本当に空を飛んでいる……そう、前作と明確に違うのは、おそらく予算。特殊効果がいたるところで使われているのである。
でもそのせいか、シュールさが減ってしまったのが残念。彼ら、空は飛ばなくてもいいんじゃないか。


全体的に、アメリカのホームドラマっぽい。ドラゴエヴィッチ監督独特のグロテスクなモチーフがなかったら、完璧にそんな感じがする。(あの「肉片」には言葉を失った……)ニコラの「(自分は)夫としては最低だが、父親としては世界一だよ」という台詞とか、ストーリー展開とか、結末とか。あと音楽も。
前作や「ボスニア」にあった破天荒さが影をひそめて、良くも悪くも落ち着いて洗練されたという感じ。


マリナ役のミレナ・パブロヴィッチが、かなり変わっていて驚いた。
15年……夢中になって結婚した夫は外で遊んでいるし、「私は私の道を行くわ」という感じで弾けたおばさまになっている。それにおしゃれ。
ヴィオレッタとの関係とか、私が英語に弱いということもあって、よくわかんなかったのだけど。。。
そのヴィオレッタ役のヴェスナ・トリヴァリッチは、またすごいことになっている。
ニコラ・コーヨは、ちょっと太ったかな?娘を心配する一途さがなんだか可愛い。強面だがまったく愛嬌のあるおじさんである。


ブビがいないのが物足りなかったなー。マリナやヴィオレッタが弾けているし、ソフィアも可愛いんだけど、やっぱりブランカ・カティッチの元気さ、明るさというのは特別だと思う。


スルジャン・ドラゴエヴィッチ監督、作風変えてしまったのでしょうか。
最近の他の作品を見てないので何とも言えないのだけど、だとしたら残念。前のが好みだったので。。

「Mi nismo andjeli(We are not angels)」

2008-08-08 15:28:20 | 映画
この前取り上げた「ボスニア」の監督の「Mi nismo andjeli(We are not angels)」(1992年 スルジャン・ドラゴエヴィッチ監督IMDb)を観ました。
面白い!だけどちゃんとしたレビューは書けません。なぜなら英語字幕だから。そして私は英語に弱いから。(笑)
でも大まかにあらすじを紹介すると、

ベオグラードにプレイボーイがいる。その名はニコラ。
彼は真面目な女の子と一夜を共にし、彼女は恋に落ちる。そして妊娠してしまう。
でも男は再び会っても、女の子のことは思いだせない。
女の子と、その友達は彼を振り向かせようと悪戦苦闘して……

という感じ。ラブ・コメディです。とってもシュールな。

冒頭から天使と悪魔が登場。この二人(?)がおかしくてたまらない。
「この悪魔は何年か後にもっとイカれたヤクザに進化するんだよなー」なんてにやにやしてしまった。「黒猫白猫」のダダン役のスルジャン・トドロヴィッチが悪魔を演じているのです。
天使は天使でまたものすごくて、顔は真っ白に塗り(しかもマスカラつけてない……?)全身白の衣装……似合っているとかいないとか、もはやそういう次元を超えているのが、素敵。
結構見覚えのある役者さんが出ていました。
「パパは出張中」「黒猫白猫」のミキ・マノイロヴィッチ、「ライフイズミラクル」のぶっとんだママ、ヴェスナ・トリヴァリッチ、などなど。
あとニコラの弟なのかなぁ……スーツ着て、「時間が!」と飛び出していく人、見覚えがある気がするのですが、気のせいかな。
そして、ニコラ・コーヨ!
初めて二コラさんの若さを実感したかも。(笑)さすがにこの時彼は23歳ですから。
表情が何だか凄く可愛らしくて、いい感じ。とんでもない男なのに、怒りが湧かない。
そしてブランカ・カティッチのブビ(主人公の友人)が可愛いのなんのって!
恐ろしく変わった外見の女の子だけど、元気があって、これもいい感じ。
ブランカの出ている映画、探してみようかな。

個人的には主人公の妄想シーンが好きです。女の子の両親との悪夢のディナーが特に面白かった。


というわけで言葉がそんなに分からなくても、すごく楽しめる映画でした。

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ところで、セルビアなど旧ユーゴ圏内のDVD・CDを購入する時はいつもYu4You.combalkanmediaを利用しているのですが、日本に郵送してくれるところって他にもあるのでしょうか?もしくはチェコなど、他の中・東欧圏はどうなのでしょう。
「私はここを利用しているよ!」など、情報を知っている方、教えてくださると嬉しいです。