日本裁判官ネットワークブログ
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今月23日の例会(テーマは映画「それでもボクはやってない」をめぐって)が近付いて来ました。
当日は、映画の上映はしませんので、参加者が既に映画を見ているか、シナリオ本を読んでいるという前提で議論を進めたいと思います。
そうは言っても、映画公開は今年1月20日でしたので、映画を見た方も詳細な記憶は残っていないかも知れません。
そこで、映画と同名のシナリオ完全収録本(幻冬舎)によるシーン番号と頁数を付記したセリフ集を作ってみました。いずれも印象に残る名セリフではないでしょうか。
当日は、これらのセリフを取っかかりにして、意見交換したいと思います。

   シーン2(11頁)スクリーンに浮かび上がる文字
『十人の真犯人を逃すとも 一人の無辜を罰するなかれ』

   シーン19(29頁)浜田(当番弁護士)のセリフ
「はっきり言うけど、この種の軽微な事件でも、否認していれば留置場暮らしだ。裁判にでもなれば、被害者証言が終わるまで、へたをすれば3ヶ月くらい出てこられない。僕は半年勾留された人を知ってる。当時認めりゃ罰金5万円の事件だった。その上、裁判に勝てる保証は何もない。有罪率は99.9%。千件に一件しか無罪はない。示談ですむような痴漢事件で、正直、裁判を闘ってもいいことなんか何もない」

   シーン49(56頁)荒川(主任弁護人)のセリフ
「いいかい、痴漢冤罪事件にはね、日本の刑事裁判の問題点がはっきりと表れているんだ」

   シーン84(109~110頁)荒川(主任弁護人)のセリフ
「裁判官はね、常時二百件以上の事件を受け持ってる。その殆どが罪を認めている事件で、明らかな有罪ばかりだ。それを考えれば、確かに悪い奴を裁く場所かもしれない。ただ、その中で被告人の声を真摯に聞くことは容易じゃない。加えて、短期間に多くの事件を裁かないと勤務評定にかかわる。まあ、忙しすぎるんだな。裁判官の能力は処理件数で計られるから、早く終わらせることばかり考える」

   シーン86(114頁)大森(当初の担当裁判官)のセリフ
「証拠はないけど、本当は被告人が真犯人かもしれないなんて悩む必要はないんです。そんなことで裁判官が悩むと、証拠もないのに、勝手に検察官の言い分を補って、時には無罪の人を有罪にしかねません。検察官の証明を吟味して、有罪の確信が持てなかったら、無罪なんです。刑事裁判の最大の使命はなんだと思いますか」「最大の使命は、無実の人を罰してはならない、ということです」

   シーン88(117頁)室山(交代後の担当裁判官)のセリフ
「ここは、私の法廷です」

   シーン89(121頁)板谷(傍聴オタク)のセリフ
「とにかく、無罪判決を書くには、大変な勇気と能力がいるんです」

   シーン93(140~141頁)荒川(主任弁護人)のセリフ
「裁判官はね、被告人にだけは騙されまいと思ってる。恥だからね。頭の良さに自信のある人間ほど、目の前にいる人の言葉が、万が一嘘だったらどうしよう、それに乗せられたら恥だ、という心理が働くもんなんだ。」「裁判官に悪意があるとは思わない。毎日毎日嘘つきに会い、人の物を盗んではいけません、人を傷つけてはいけません、時には人気歌手の歌を引用して説教もする。その繰り返しだ。怖いのは、99.9%の有罪率が、裁判の結果ではなく、前提になってしまうことなんです」

   シーン114(164頁)徹平(被告人)の独白
「この裁判で、本当に裁くことができる人間は、僕しかいない。少なくとも僕は、裁判官を裁くことができる。あなたは間違いを犯した。」

   シーン116(165頁)最高裁判所の建物を背景に浮かび上がる文字
『どうか私を あなたたち自身が 裁いて欲しいと思うやり方で 裁いて下さい』

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (nanasi)
2008-09-10 19:29:26
いい記事だね。

感動、頄す・・・
 
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