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 尾崎豊,大谷昭宏,石川達三(敬称略)・・・歌手,ジャーナリスト,作家として著名人ばかりだけれど,どういう関連があるのかと思われる方が多いでしょうね。さて,共通項は何でしょうか。
 正解者は少ないかもしれません。答えは,皆さん兄弟に法律家がおられることです。伝説の歌手で,今もファンの多い亡尾崎豊さんは,兄さんが現役の弁護士です。テレビによく出られる元読売新聞大阪社会部の大谷昭宏さんは,弟さんが,現在の最高裁事務総長です。びっくりですね。初回芥川賞受賞作家の亡石川達三さんは,弟さんが,元東京高裁部総括裁判官です。おそらく,同種の著名人はほかにもおられることと思います。
 さて,今日,特に取り上げたかったのは,亡石川達三の弟さんで,石川義夫さんという方です。私より約40年も先輩の裁判官で,今は弁護士も辞められているようです。1年半ほど前に話題になった石川さんの本で,「思い出すまま」(れんが書房新社)という回想録があります。実は,私は,最近になってその本を読みました。これがとても興味深く,戦後司法の一断面を紹介し,裁判所も日本文化や時代の波の中にあったことを改めて感じさせてくれます。石川さんは,最高裁事務総局経理局主計課長や司法研修所教官も務められた方なのですが,主計課長時代は,経理局が大蔵省主計局幹部や自民党法務部会の会員などの国会関係者をもてなす席があったことや,司法研修所教官時代は,当時の矢口最高裁事務総局人事局長(後の最高裁長官)に呼び出され,青法協に所属する修習生が判事補任官を志望した場合,いかに処置するかということで,矢口局長から,「研修所教官の方で,疑わしい連中の試験の成績を悪くしておいてくれれば,問題は解決するじゃないか,何とか考えてくれ」と言われたこと(上席教官が拒否の返答をしたそうです。)などを赤裸々に告白しています。びっくりしますが,そうしたことのほかに,自分の琴線に触れることがあると,黙って自分を押さえることができず,上司や最高裁事務総局に特殊な発言をしたことがあることを認めながらも,全体としては,裁判所が自分にとって寛大な場所であり,心の中で感謝しながら裁判所を去ることができたと述べられています。裁判官の独立が保障されているために形作られる裁判所組織文化のよさを感じると共に,石川さんが,裁判や裁判所を愛した人なのだなと実感させられます。興味のある方は,是非読んで下さい。(瑞祥)
(追伸)
 コメントで,亡尾崎豊の兄さんは,弁護士任官により,名古屋地裁判事となられていることが判明しました。コメントありがとうございます。この点,本文の記載には不正確な部分があることになりますが,コメントを生かすために,本文を残し,追伸の形で訂正します。

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コメント
 
 
 
Unknown (通りすがり)
2008-09-06 10:51:55
尾崎豊の兄尾崎康氏はその後弁護士任官され、現在名古屋地裁判事です。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2012-01-04 02:03:01
今、「思い出すままに」を読んでいます。もうちょっとで読み終えます。最近、裁判所を利用することがあり、幸運にも良い裁判官に恵まれたため、今は裁判所に好感を持ち、裁判官の著書を読んでいます。ちょっとだけ裁判官のファンになったかも
 
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