今日もまた、くすんだ空に太陽は昇る。
1週間前に、地球のどこかで大爆発が起こった。
核兵器か、それとも新型の爆弾か。
否、そもそもそれが人為的なものなのか――。
それすら分からない。
ただ、世界の終わりは、目前だった。
その証拠に、空はずっと煙っている。
今はまだこれといった被害はない。
しかし、たとえ今は何もなくとも。
それはやがて・・・ゆっくりと世界から熱を奪うのだろう。
世界を殺す、死の灰だ。
僕は今日も、ビルの屋上で空を眺めている。
目前に迫った死に、世界は混乱し――
やがて、混乱することにさえ疲れたように、無気力になった。
ヒトに出来ることなど、何もない。
僅か数日で、僕らは悟ったのだ。
死にたくない。
そんな思いを込めて、僕は空を睨む。
ゆるゆると僕らを殺す灰だけが、そこにあった。
直接手を下すことをしないそれが、酷く憎かった。
その時。
ポツリ、と、僕の頬に、雫が落ちた。
雨。
指で拭う。
――ぬるりとした、感触。
指は、黒く染まっていた。
ああ。
僕は、僕らは、何という勘違いを。
空がくすんだ日から、初めての雨。
太陽を遮る灰を、存分に含んだ雨。
きっと、僕らを殺す毒の雨。
死の灰は、限りなく直接的に、僕らを殺すのだ。
ゆるゆると殺すなどと、悠長なことはしない。
雨は、世界に、降り注ぐ。
ついに心が折れた僕は、視線の先を失って。
思考を止め、ただ毒の雨に打たれていた。
そして、皮膚を焼かれる痛みを感じながら、僕の意識は途絶えた。