走れ、麦公

興味のあることや、その時思ったことなどを書いています

もらわれるチャンスがあったU^ω^U~”

2014-04-27 12:11:28 | 俳句
U^ω^U~”
 自分は一度他家へもらわれるチャンスがあった。言うのもなんだが自分は栗色の毛並みの愛らしい雑種の小型犬である。
 里子になりかけた家は山間の旧家である。昔は庄屋をやっていたらしい。そこの伊藤爺さんから「うちの飼い犬にならんか」との招請があったのだ。
 知り合った頃、爺さんはJA中央会の会長で、地元を離れて主人の家の近くのマンションに一人暮らしをしていた。窓から隣の寺の墓地が見えるのを嫌って自分が散歩の順路にしている道端のベンチでよく時間を潰していたのだ。やがてこの爺さんは主人とも仲良くなった。
 JA中央会の会長というのは兼職の肩書がめちゃくちゃ多い、日本農業新聞理事、家の光協会参事、厚生連会長、あと諸々、数えたら四十だか六十あったそうだ。とても一人でこなせるわけがないから爺さんには秘書課という優秀な事務がぴったりと付き添っていた。実務はすべて彼らがやるのである。実際、中央会の会長は各農協の組合長が持ち回りでやっている役職で、実務能力があるわけではないのだ。伊藤爺さんも、シリアの肥料工場へ視察に行くとき英字の名刺を持たされたのだが、自分で読めなくて苦笑いしていた。
 が、代々の会長と違って、この爺さんは秘書課ならびに組織の連中から多大な尊敬を受けていた。
 爺さんは只者ではなかった。JAは県内に十ばかりの総合病院を経営している。その一つを二百億ほどかけて新築する際、買収した土地の近辺の住民から〝迷惑料。を請求された。広大な駐車場から溢れる雨水が周辺に被害をきたすというのだ。要求額は七億円である。中央会では会議の結果しかたなかろうということになったが、伊藤爺さんは断乎反対した。そして秘書課が止めるのも聞かず、単身敵地に乗り込んだのだ。そのときの演説の様子は伝説的語り草だそうだが、要は値切ったのである。
 爺さんの地元は雪深い寒村である。昔は暮らしに困ると娘を売って食いつないだほど貧しい村だ。庄屋といっても暮らしは楽ではなかったようだ。小学校を出てすぐその土地ではじめて酪農をやりだした父親を手伝って牛の世話をした。だから爺さんの手は年取った今でも固く大きい。生活の信条は「質素倹約」である。以前主人が送った銘酒のお礼にと粗末な〝醤油の実。が送られてきて驚いたことがある。
 爺さんは値切り倒して七億を二億に負けさせた。五億の儲けである。かつてそんな大金を担いで戻った会長はいなかったから、それまでお飾りとあなどっていた秘書課の連中は度肝を抜かれた。秘書課で会計士の資格を持つ上野くんなどは主人の家に来て『伊藤会長は、不世出の大人物だ』と口を極めた賛辞を惜しまなかったものである。
 その伊藤爺さんは任期が終わって田舎へ帰って行った。それからまもなくして自分は主人と一緒に、辺鄙な土地の屋敷で無興をかこっているにちがいない爺さんの見舞いに出かけたのだ。
 爺さんは案外元気そうだった。藁の笠を被って畑からのしのし歩いてきた。独り暮らしなんだが、お手伝いさんと近くに住んでいる息子さんが世話をしてくれるからちゃんとアイロンをかけたシャツを着て身ぎれいにしていた。
「町にいたときはおもしろかったな」爺さんは機嫌がよい。それはそうだろう。歴代の会長が張り子の置物で祀られていたのを、自分は身に備わった才覚で衆目を見返してやったのだ。痛快だったろうし、なによりそれが等身大の地力だったのがうれしかったろう。飾りのない実力を評価されて、爺さんはその老体に言うに言われない満足を感じているようだった。
 そのとき「麦公は、うちの犬にならないか」とのお誘いを受けたのである。もちろんである。言をまたないの心境であった。敷地はざっと七百坪はある、屋敷は古いがでかくて豪勢なものだ。ここに飼われれば毎度おいしい食事にありつけるに決まっている。主人の家の昨夜のメニューは〝キャベツとたまねぎとドライソーセージのカレー煮込み。だった。こう書くとうまそうに見えるかもしれないが、あんたいっぺん自分で作って食べてみろ。
 尻尾を振ってごつごつした足になついていると、爺さん太い腕を庭の池に向かって突き出して言った。
「鯉をな、猫がよく取るんだ。その見張りにちょうどいいわい」
 自分は決然とその招聘を断ることにした。爺さんが不世出の大人物なら自分は稀代の賢犬である。しかも栗色の愛らしい小型犬だ。しかもだからどうだってこともないが、こんな田舎じゃ散歩姿を振り返るプードルのお姉ちゃんもいねえじゃないか。ということで断ったのである。だれが野良猫の番なんかできるものか。爺さんも否やは言えなかったろう。身の丈に合わない役回りは、その仕事が実力に対して高くても低くても辛いということをよく知っているはずだからである。
 これからお昼である。主人がトーストを焼いている匂いがする。
「マヨネーズかけるか、麦公」まだパジャマ姿の主人が縁側に出て来た。


・夏立つや貝殻混じる波寄せて     麦

イジス:
なつかしいな、あの爺さん
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棄教U^ω^U~”

2014-04-26 17:06:17 | 小説
U^ω^U~”
 門のところに人影が立ったので来客かなと思ったら、宣教師の瀬良くんだった。瀬良くんはエホバの証人である。独特な宗教観を持ったキリスト教の一宗派だ。月に一度必ず現れるが、いつもうすい冊子をたくさん鞄に詰めている。まるでチラシ配りみたいだ。瀬良くんは二十代半ば、細身だが精悍な顔立ちをした礼儀正しい好青年である。両親共に入信している家に生まれた熱心な信仰者だ。苦しみ多き世の中から人々を救わんがため、いまだ神の威光を知らぬ不浄の地のあちこちを、神の教えを印刷した冊子を抱えて歩いているのである。
 主人の邪険な声がして瀬良くんが玄関から出て来た。また追っ払われたようだ。うちの主人ほど神の救済を必要とする人間もいないと思うのだが、主人は徹底した宗教嫌いである。せっかくの福音を手に訪ねてくれても『そんなものに用はない』と不機嫌に言うばかりだ。ひん曲がった業悪の性根に自分で気がついていないのだからしかたがない。こんな無反省な男が相手では、瀬良くんもかわいそうなことである。
 すぐに帰っていくかと思ったら、一緒に来た男に断りをした後、こっちに歩いてきた。男は瀬良くんが玄関に入っている間、外で待っていたのだが、無口で謹厳そうな人だった。年齢は瀬良くんより上であろう。
「麦公、元気かい」
 瀬良くんがパンをくれた。五穀パンだ。好物である。粟やソバの雑穀を生地に練り込んで焼いたパンで素朴な味でおいしい。とくにこの〝佐藤苑。のは固過ぎなくてよい。耳のところを噛んでいると、瀬良くんがこんなことを言った。
「なあ、神様っていると思うかい」
 これには驚いた。しゃがんでいた瀬良くんと目が合うと、両手で顎を支えてひどく物思いに悩んでいる様子だった。
〝神様がいるか。っていえば、そりゃいるだろう。面倒なことはない。『ニワトリが先か卵が先か。という議論はどちらかがぽんとこの世に出て来たのでなければ現実の理屈に合わない。したがって神はいるのだ』とアリストテレスが端的に証明しているではないか。(『形而上学第12巻第7章:神の存在証明)現代物理学でいうビッグバンでもそれを何も無いところから引き起こしたのが神でないと誰が言い得るだろう。
 そんなことはしかし、瀬良くん自身がよく知っているはずだ。だいたい神がいるかどうかなどに迷っていたら宣教師など務まるはずがなかろう。
 これは後で知ったことだが、このとき瀬良くんは大いなる人生の難問に突き当たっていたのだった。
『わたしと付き合うのだったら、今やってる宗教をやめてほしい』と恋人から言われていたのである。
 恋人を取るか信仰を取るか、瀬良くんの葛藤いかばかりであろう。
 やがて瀬良くんは「聖書の言葉を信じます、神のご意志に従います。あなたの愛に生涯の身をゆだねます」と口の中で、宗派の誓文なのだろうか、低くつぶやくと立って行った。
 信仰者がその神を棄てるなんてことはできない相談だろう。彼らは自分たちの生命が神に守られているとかたく信じている。神は保護者でありファミリーの家長なのだ。瀬良くんに限っても物ごころつかないうちから両親と通っていた集会所の王国会館は第二の家のようなものだ。神という保護者を棄てて荒野にさまよい出ることを、子羊が自発的にするとは考えにくい。相手がどんなに魅力的な子であっても棄教を迫るのは難しいだろう。と思っていた。ところが瀬良くんはエホバの証人を辞めたのである。
 数ヵ月後、女の子と歩いている瀬良くんの姿を散歩の途中で見かけるようになった。女の子は可愛いが少しぼんやりした顔つきである。
 近所の理髪店の秋田犬のゴローによると、あれは瀬良くんが近頃もらった奥さんだそうだ。ネイルサロンに勤めていたのだが、友達と同乗したランチアが事故を起こして精神が子供に返ってしまったらしい。
 腕を組んで歩く瀬良くんの肩に頭をあずけた女の子はあどけなく笑っている。意識があるのかないのか定かでない表情は、とうていそのままでは生きて行けないかなしいはかなさがあった。それでも瀬良くんは選んで、あえてその子を生涯の伴侶としたのである。
 それまで神に守られて生きてきただろう彼は、今度はその子を守る保護者の立場になったもようである。
 おぼつかない足取りの女の子を支えて歩く瀬良くんの姿には、神ならざる人間のしかし神にも勝るかしれない愛の神々しさを感じないではいられなかった。
 王国会館の、瀬良くんが座っていた場所の机はいつまでも空いたままだった。脇を通りかかった信者の一人が庭で摘んだらしい白い木蓮の花を一輪、そこへ落して行った。


・俳句はできませんでした。  U,,・ω・)わん

イジス:
なんだそのすました顔文字は
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晩春U^ω^U~”

2014-04-25 09:24:43 | 小説
U^ω^U~”
 地下街のスタバを通りかかったら裕子さんがいた。裕子さんは近所の奥さんである。銀行員の妻で三人男の子がいる。上の子はもう社会人だから産んだ裕子さんもそれなりの年齢なのだが、なじみの喫茶店〝ガス燈。のママが『昔とちっとも変らない、いつまでもきれいな子だよ』と評する美人ママさんだ。
 テーブルの向かいの席に男がいた。旦那さんではない。あんなハゲとちがってこっちは背が高いし、ちゃんと髪の毛がある。スーツを着た渋そうな感じの男で、後ろからだったから顔はわからなかったが、それなりに二枚目らしい。というのは、両手でカップを持ってコーヒーを啜っている裕子さんの目がまんざらでもなさそうだったからだ。まずうちの町内の旦連中などは一生目にすることのできない、しなを作った女の表情である。
 このとき彼女は、白いブラウスに青い上着。ピッタリしたパンツの足をスツールから下ろしていたのだが、細身でとてもスタイルがよい。それに豊かな巻毛の髪で大きな瞳の顔も若い娘のようにつるつるしている。
 若々しい見かけはスポーツジムに勤めているからであろうか。近頃ショッピングセンターやデパートに出来ている女性だけの会員制のあのジムだ。彼女はそこでインストラクターをしている。旦那さんが銀行の支店長だから自分まで働くこともないのだろうが、年寄りが家に同居しているので、気が詰まらないよう外に勤めを持って出られるようにしているということだ。
 男が何か言うと、裕子さんは長い睫毛を瞬かせた。そしてうでを伸ばすと前のめりになっていた男の頬に指を触れた。唇には妖しい笑みが浮かんでいる。男は動揺して裕子さんの手をつかもうとしたが、裕子さんはプイと横を向いてしまった。おおなんと親密げな男女のやりとりだろう。これはもしかしたら道ならぬ恋の逢引きの現場なのか。自分は思わず入口の総ガラスに鼻を押し付けた。
 たしか裕子さんは高校を卒業してすぐ今の旦那さんと職場結婚してしまったのだ。だから若いうちに経験するような、くっついたり別れたりの恋の冒険をいくらもしていないだろう。とすれば、彼女の中に恋愛へのあこがれが、刺激的な男女関係への心残りがあっても不思議ではない。落ち着いた人妻であっても興味が残っていれば好奇心を起こして悪いことはない。それに彼女にはそれを実践的に行い得るだけの資格があるように思われた。〝ガス燈。のママが言う通りの『いつまでもきれいな子』なのだ。四十代半ばとは思われない若々しい色気が彼女にはあった。恋愛をするのに遅すぎることはないだろう。
 自分はマホガニー調の家具を置いた重厚な店の中で、長い髪に物憂げに指を絡めている彼女の姿を、フランス映画の一場面を見るごとくしばらく観賞していた。
 やがて、男を残して裕子さんが店を出て来た。手にレジ袋を提げている。スーパーで買い物を済ませた後だったらしい。
「あら麦公、こんなところまで散歩に来ているの。一緒に帰りましょうか」
 自分は白いハイヒールとレジ袋から頭を出している青いねぎに交互に目をやりながら後に従う事にした。ふり向くと男の顔がこっちを向いていた。額の広い証券マン風のいい男だった。もし自分が裕子さんの立場であればハゲの旦那も三人の子供も、駆け落ちした三日目くらいできれいに忘れてしまうかもしれなかった。
 大川の土堤道に来ると裕子さんは自分に買い物袋の見張りをさせて、少し先へ行ったところに立って大きな伸びをした。西日の中で見る彼女は逆光のせいもあってか地下街で見たときよりもいっそう若く見えた。まるで二十歳そこそこの感じである。自分は思わずごくりと唾を呑んだ。女って実年齢とこんなにかけ離れて見えるものなのか。
『女は危険だぞ、お前もメス犬には気をつけろよ、麦公。女という生き物は正体がわからん、もしかしたら魔物かもしれん。取って食われるぞ』と、いつだったか、飲み屋から帰ってきた主人がシャツの袖についたファンデーションをこすり落としながら、青くなって言っていたが、本当に女の人って魔物なのか?
「へへへ、あたしもまだまだ捨てたものじゃないわ。この年齢になってまさかコクられるとはねえ」晴れ晴れとした顔で帰ってきた裕子さんは、買い物袋を持ち上げてさっさと歩きだした。
 ついて行くのをためらっていると、裕子さんがしゃがんでおいでおいでをする。
「麦公にも食べさせてあげるわよ。明日次男がサッカーの試合なの。それで今晩の夕食はすき焼きにしたわ。ご馳走よ」
 自分はすぐに駆け寄った。ご馳走に惹かれたのではない。けっしてそうではないのだ。魔物でないことがわかったからである。家庭のことを話した裕子さんの声は紛うかたなく母親であり主婦である人の声だった。この人、見かけは異常に若いが、心はその年齢にふさわしい、ちゃんとした〝大人。だったのである。
 

・町はキラキラただ行く春を惜しみつつ   麦

イジス:
 こんなくだらない話で俳句を作るのはいやだ(笑)
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しろクマU^ω^U~”

2014-04-19 19:16:52 | 俳句
U^ω^U~”
 パスタ屋の前を通りかかったら中から出て来たおばさん達が『この店の〝ペンペンチーノ。おいしかったわね』と話していた。
 思わず吹き出した主人が、おばさん達をやり過ごしてから言った。
「〝ペンペンチーノ。だってさ、どこのパスタ屋にそんなメニューがあるんだい。それを言うならアレだろ、ほら、…ペンペロじゃない、ペロロンでもない、えーと」主人は言葉に詰まって黙った。しかし、五六歩行った時、珍しく天の啓示が降りたようだ。
「ペペロンチーノだよ!そうだよ。それを間違えて〝ペンペンチーノ。だなんて笑っちゃうよ。アハハハッ」
 よかったなご主人、でもあんただって急には出てこなかったんだから、他人のことは笑えないと思うぞ。
 そうそう、昨日の問題の答えですが、
『南へ下って東に曲がって、そこから北に上ったら出発点に戻った』ということですから、北極点を頂点とする球面三角形ですね。そこに棲息している熊ですから白熊が妥当なところでしょう。
答:シロ
 麦公は一瞬で解けたのでつまんなかったです。

・湯の街や煙りつつまた暮れ遅し    麦
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問題ですU^ω^U~”

2014-04-18 20:24:38 | 俳句
U^ω^U~”
問題:
 一頭の熊が点Pから南に向かって一キロ歩き、そこで方向を変えて真東に一キロ歩きました。そこでもう一度方向を変えて今度は真北に一キロ進みました。するとちょうど出発点のP点に戻っていました。さて、この熊は何色でしょうか?

幾何の前提から熊の色を求めることがはたしてできるのか( ゜Д゜)屮オオー!

コメントは要りません。
解った方はご自分にうぬぼれてください。
わからなかった方はイジスと同程度のおつむだとお考えください。



一句
 金魚玉 祇園の軒を 鮮やかに  麦
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